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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年12月時点予測)

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最終更新日:2019年1月10日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年12月時点予測)

2019年1月

 本稿中の為替レートは2018年11月末日TTS相場の値であり、1インド・ルピー=1.79円である。

ブラジル

2018/19年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅に減少する見込み
 2018/19砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、869万ヘクタール(前年度比1.3%増)とわずかな増加が見込まれている。一方、生産量は、北東部地域の全域と中南部地域の一部で高温少雨が続き、生育の遅れが見られることから、6億200万トン(同6.1%減)とかなりの減少が見込まれている(表2)。砂糖生産量は、サトウキビの減産に加え、堅調なエタノール価格を追い風に、サトウキビをバイオエタノール生産に仕向ける動きが加速すると予測されるため、3064万トン(同26.2%減)と大幅な減少が見込まれている。輸出量は、主要輸出相手国である中国が追加関税措置を実施していることなども影響して、1943万トン(同37.3%減)と大幅な減少が見込まれている。

中国の追加関税措置をめぐり、12月下旬にWTOのパネル設置を要求か
 中国政府が課す砂糖への追加関税措置をめぐって、ブラジル政府が10月下旬にWTOの紛争解決手続きの一つである2国間協議を要請してから、一向に進展する気配が見られない。WTO協定では、2国間協議において60日以内に両国が合意できなければ、提訴した国が小委員会(パネル)の設置を求めることができると定めている。このため、ブラジル関係者の間では、60日目を迎える12月18日以降、ブラジル政府がこの定めに基づきパネルの設置を求めるのではとの憶測が広がっている。

 UNICAは、「中国がセーフガードを発効して以降、ブラジルから中国への砂糖輸出量が前年の10分の1まで激減した。われわれが中国政府に期待することは、関税を元の水準に戻すことだ」と述べた。現地報道によると、ブラジル政府は中国政府に対し、中国が追加関税措置の終了期限と定める2020年半ばまでの間、ブラジルから輸入する砂糖に対し、毎年250トンを上限に関税率50%を適用するよう求めているとされる。

製糖業者、次年度に向けてエタノール生産設備へ投資の動き
 現地報道によると、2019年1月に大統領に就任するジャイル・ボルソナロ氏がバイオ燃料の開発や普及を促進する姿勢を打ち出していることを受け、ブラジルの製糖業者の間で、バイオエタノールに関連した設備投資が活発化している。世界的な穀物商社の一つ、ルイ・ドレフュス・ホールディング傘下のBiosev社は、サトウキビのエタノール生産への仕向け割合を現行の50%から90%へ引き上げる計画で、すでにこれに対応した施設の建設に着手したと発表した。また、大手製糖業者のUsina Coruripe社や中規模の製糖業者でも、バイオエタノールの生産能力を増強するために必要な投資を行っている。製糖業者の多くは、サトウキビのバイオエタノール生産への仕向け割合を高めることで世界の砂糖需給を引き締め、現在低迷する国際価格を押し上げたいとの狙いもある。

 ブラジル鉱山エネルギー省は、政府が2018年に施行した再生可能エネルギー促進政策「Renova Bio」により、バイオ燃料の需要は2018年の267億リットルから2028年には471億リットルまで増加すると予測している。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2018/19年度、砂糖生産量は減少する一方、輸出量は大幅に増加する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は512万ヘクタール(前年度比6.1%増)とかなりの増加が見込まれるものの、マハラシュトラ州やカルナータカ州において干ばつや害虫の大量発生がサトウキビの生育を阻害しており、3億8122万トン(同3.1%減)とやや減少が見込まれている(表3)。砂糖生産量についても、3235万トン(同6.8%減)とかなりの減少が見込まれている。輸出量は、政府が製糖業者に対し500万トンの最低輸出義務を課している影響で、416万トン(同76.2%増)(注)と大幅な増加が見込まれている。

(注)2017/18年度の輸出量が前回予測から約50%下方修正(216万トン減)されたため、前年度比は前月号の8.0%減から一転して大幅増加となっている。

ウッタル・プラデーシュ州、2018/19年度の サトウキビ価格を据え置き
 インドのサトウキビ生産量第1位の産地である ウッタル・プラデーシュ州の政府は11月下旬、2018/19年度のサトウキビの適正買い取り価格(SAP)を前年度と同額の1トン当たり3150ルピー(5639円)とすると発表した。サトウキビ生産者は、燃料代や肥料代、人件費などの生産コストが上昇していることを理由に、SAPを1トン当たり4000ルピー(7160円)まで引き上げるよう州政府に要求していたが、却下された形となった。州政府は、製糖業者の多くが現行のSAPでさえも生産者に払えていない状況などを踏まえ、SAPの引き上げは現実的ではないと判断したとみられる。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2018/19年度、砂糖生産量はやや増加、輸入量はやや減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は126万ヘクタール(前年度比2.6%増)、生産量は7889万トン(同2.8%増)と、ともにわずかな増加が見込まれている(表4)。てん菜の収穫面積は22万ヘクタール(同20.5%増)、生産量は1118万トン(同16.6%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。砂糖生産量は、7月〜10月にかけて良好な天候に恵まれ、原料作物の増産が期待できることから、1157万トン(同3.8%増)とやや増加が見込まれているが、依然として消費量を大きく下回る水準である。輸入量は、573万トン(同5.2%減)とやや減少が見込まれている。

10月の砂糖輸入量、前年同月比で約2倍に増加
 中国税関総署が11月26日に発表した2018年10月の貿易統計によると、砂糖の輸入に追加関税(注)を課しているにも関わらず、砂糖の輸入量は前年同月比99.1%増、前月比78.9%増の34万トンと大幅に増加した。10月は2018/19年度の開始月であるが、今年度の輸入量はわずか1カ月で前年度の約14%に達したことになる。ただし、国内の生産量では需要が追い付かない状況が続いているため、周辺国で生産された砂糖を国境が接するミャンマー経由で密輸入する業者が後を絶たない。その数量は正規の輸入量と同等もしくはそれ以上と言われていることから、実際の輸入量はさらに多いものとみられる。

(注)追加関税は2017年5月から適用されており、その税率は1年目が45%、2年目が40%、3年目が35%と段階的に引き下げられることとなっている。

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2018/19年度、砂糖生産量はかなり減少し、輸出量は大幅に減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)てん菜の収穫面積は171万ヘクタール(前年度比1.0%減)とほぼ横ばいで推移すると見込まれているが、生産量は1億1675万トン(同14.6%減)とかなりの減少が見込まれている(表5)。てん菜生産量の減少に加え、てん菜の根中糖分が低いことも影響し、砂糖生産量は1847万トン(同14.6%減)とかなり減少する見込み。域内における異性化糖の供給不足を砂糖で相殺する動きが予測されるほか、砂糖の期首在庫量が減少していることを考慮して、輸出量は163万トン(同57.2%減)と、大幅な減少が見込まれている。

イタリア、2019年から砂糖税導入の見込み
 イタリア政府の2019年度予算案は、欧州委員会から「国の財政赤字の削減ではなく、赤字拡大につながる可能性がある」との指摘を受け、イタリア政府は予算案の修正を求められていた。そこでイタリア政府は、2019年度の予算案の歳入拡大に向けた施策として、糖類を含む炭酸飲料に対する課税(いわゆる「砂糖税」)を導入する方針を打ち出した。与党幹部は2018年11月15日、「砂糖税の導入を盛り込んだ2019年度予算案は、年内2018年12月中に国会で承認される見通しである」と述べた。前出の幹部は、砂糖税の内容について「糖類を多く含む飲料に課税対象を限定する」と述べるにとどめ、詳細について明らかにしなかったものの、得られた税収は、主に砂糖税の導入で影響を受ける中小の小売店に対する減税対策や、教育関連の支援に充てられるとみられる。

2019/20年度の砂糖生産量、大幅に減少する可能性
 EUの多くの砂糖業界関係者は、2019/20年度のEUの砂糖生産量について大幅に減少する可能性があるとの見方を示した。英国の農業団体は、昨今の国際価格の低迷を受け、多くの生産者がてん菜の契約栽培面積を減らしていることを明らかにした。11月末にロンドンで開催された国際砂糖機関(ISO)の観測会議でも、民間の調査会社は、「EUの生産者の間で、てん菜からより収益性のある作物に転作する動きが広がっている」と述べた。このほか、ドイツの砂糖産業団体は、「ドイツの生産者は、2018年産の栽培面積を昨年産から7%程度縮小させたが、砂糖の国際価格の低迷が長期化すれば、さらに減少幅は大きくなる」と述べた。

 他方、欧州委員会の決定(注)により、2019年以降ネオニコチノイド系の農薬が使用できないことも、てん菜生産に影響を及ぼす可能性がある。フランスのてん菜生産者団体は、「甚大な害虫被害が発生した場合、てん菜の収穫量は最大で50%減少するだろう」と述べ、ネオニコチノイド系の農薬を散布する方法以外の有効な害虫防除法を早期に確立するよう求めている。

(注)欧州委員会は2018年4月27日、ネオニコチノイドと呼ばれる農薬のうち、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムを主成分とする薬剤について、すべての作物への使用を禁止すると公表した。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

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