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5. 日本の主要輸入先国の動向(2018年12月時点予測)

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最終更新日:2019年1月10日

5. 日本の主要輸入先国の動向(2018年12月時点予測)

2019年1月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、2017年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が69.5%(前年比17.3ポイント増)、タイが25.0%(同22.7ポイント減)と、この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。
 豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回はグアテマラを報告する。

豪州

2018/19年度、砂糖生産量はほぼ横ばい、輸出量はやや減少の見込み
 2018/19砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、39万ヘクタール(前年度比2.5%増)とわずかな増加が見込まれるが、冬期(北半球は夏期)にクイーンズランド州とニューサウスウェールズ州で発生した干ばつの影響を受けて、生産量は、3278万トン(同1.7%減)とわずかな減少が見込まれている(表6)。砂糖生産量は、449万トン(同0.6%増)とほぼ横ばいで推移すると見込まれている。また、輸出量は344万トン(同3.5%減)とやや減少すると見込まれている。

インド砂糖政策に対する疑義、WTO農業委員会で支持を獲得
 サイモン・バーミンガム豪州貿易投資相は、11月26〜27日に開催されたWTO農業委員会の終了後、会議に出席した10カ国以上がインドの砂糖政策に疑問を呈する豪州政府の立場を支持したと明らかにした。この結果に対し、豪州砂糖製造業者協議会は「インドの補助金が輸出補助金に該当すると判断する明確な根拠を豪州政府が示したことが大いに役立ったのではないか」と分析する。また、同協議会は「インドは、WTOが定める開発途上国に関するルールに基づき優遇措置を受けている。しかし、現在、インド政府が実施する砂糖産業への支援策は合理性に欠けており、インド政府は各国から反発を招くことを想定できたはずだ」とも主張した。

 今後、豪州政府がWTOの紛争解決手続きに踏み切る可能性は低く、インド政府に対しWTO農業委員会を通じた協議で自主的に補助金を廃止するよう促していくものとみられる。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2018/19年度、砂糖生産量はかなり減少する一方、輸出量は大幅増の見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、179万ヘクタール(前年度比0.9%増)とほぼ横ばいで推移すると見込まれている。生産量は、台風の勢力が弱まった熱帯低気圧が多く通過した影響でサトウキビの倒伏、茎葉の傷みなどが発生していることから、1億2500万トン(同7.4%減)とかなり減少すると見込まれている(表7)。また、主要産地の降雨量は例年より少なく、サトウキビの砂糖含有量が低下すると予測されることもあり、砂糖生産量は、1439万トン(同7.7%減)とかなりの減少が見込まれている。一方、輸出量については前年度のサトウキビの豊作により積み上がった過剰在庫を解消するため輸出を強化するとみられることから、1305万トン(同29.5%増)と大幅な増加が見込まれている。

サトウキビ生産量、2020年には1億トンに減少との予測も
 サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)(注)によると、2017/18年度のサトウキビ生産量の実績は1億3500万トンであったが、2020年には1億トンまで減少すると予測される。これは、サトウキビの栽培面積が176万ヘクタールから144万ヘクタールまで減少すると見込まれているためである。タイ製糖協会も、砂糖価格が低迷する中、生産者はサトウキビより収益性の高いキャッサバの作付面積を増やす可能性があるため、今年度および次年度のサトウキビ生産量は減少するとみている。

 他方、タイ政府は、ガソリン中のバイオエタノールの混合率を現行の13%から15%へ引き上げることを検討しており、これを達成するため、2020年までに現在1日当たり464万リットルで推移するバイオエタノールの生産能力を同520万リットルに引き上げる計画である。これに伴い、サトウキビのバイオエタノールへの仕向け割合が上昇するため、砂糖生産量は、サトウキビ生産量の減少幅を上回って減少する可能性がある。

(注)サトウキビおよび砂糖関連政策の執行機関である3省(工業省〈製糖関係〉、農業協同組合省〈原料作物関係〉、商務省〈砂糖の売買関係〉)とサトウキビ生産者および製糖企業の代表で構成され、工業省内に設置された、サトウキビ・砂糖委員会(TCSB)の事務局。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

グアテマラ

2018/19年度、砂糖生産量はほぼ横ばい、輸出量は大幅に増加の見通し
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は26万ヘクタール(前年度同)と横ばいが見込まれている一方、生産量は2559万トン(前年度比1.3%減)とわずかに減少すると見込まれている(表8)。

 砂糖生産量についても、296万トン(同0.1%減)とほぼ横ばいになると見込まれている。輸出量については、226万トン(同23.8%増)と大幅に増加すると見込まれている。

砂糖業界、持続可能性に向けた公約を発表
 グアテマラ砂糖協会(Guatemalan Sugar Association、ASAZGUA)は2018年夏頃、国連が定める持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、SDGs)(注)に基づき、2025年までに砂糖業界が達成すべき目標を以下の通り定めたと発表した。

1:再生可能エネルギーの研究の促進と、関連インフラおよび技術への投資を促進する
2:製品ライフサイクルを通じて化学物質やすべての廃棄物の環境に配慮した管理を達成する
3:天然資源の持続可能な管理および効率的な利用を達成する
4:若者や障害者を含むすべての男性および女性の雇用と同一労働同一賃金を達成する
5:特に女性労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する
6:女性、子ども、高齢者および障害者を含め、人々に安全で利用が容易な公共スペースへのアクセスを提供する
7:技術開発、研究および技術革新を支援する
8:WTOのルールに基づいた平等な多角的貿易を促進する
9:技術向上および技術革新を通じた高いレベルの経済生産性を達成する

 また、焼き畑による収穫の実施率を50%削減し、温室効果ガスの排出抑制に努めるとともに、これに伴い職を失う可能性のある労働者を含めた2000人程度を対象に、ハーベスタなどの機械オペレーターを育成することを目標に盛り込んだ。ASAZGUAは、「砂糖産業は、今後もグアテマラの経済を支える基幹産業としてあり続けるため、今回の目標を必ず達成する」と述べた。

(注)国連によると、持続可能な開発目標(SDGs)(通称「グローバル・ゴールズ」)は、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにするため、世界が一丸となって達成すべき目標とされている。

表8 グアテマラの砂糖需給の推移

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272