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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年3月時点予測)

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最終更新日:2019年4月10日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年3月時点予測)

2019年4月

 本稿中の為替レートは2019年2月末日TTS相場の値であり、1インド・ルピー=1.72円である。

ブラジル

2018/19年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅に減少する見込み
 2018/19砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、872万ヘクタール(前年度比1.2%増)とわずかな増加が見込まれている(表2)。一方、サトウキビ生産量は、北東部地域の全域と中南部地域の一部で高温少雨が続き、生育の遅れが見られることから、6億1550万トン(同4.0%減)とやや減少が見込まれている。砂糖生産量は、砂糖の国際価格の低迷に加え、エタノール価格が堅調に推移し、サトウキビをバイオエタノール生産に仕向ける動きが加速すると予測されるため、3120万トン(同24.8%減)と大幅な減少が見込まれている。輸出量は、主要輸出相手国である中国が追加関税措置を実施していることなども影響して、2048万トン(同34.0%減)と大幅な減少が見込まれている。

ブラジル、インドの砂糖産業に対する補助金についてWTO提訴へ
 ブラジル政府は2月27日、インド政府による砂糖産業への補助金が国際市場での公平な競争を(ゆが)めているとして、世界貿易機関(WTO)に提訴する手続きを始めたと発表した。

 ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注)は、今回の政府の発表に歓迎の意を表するとともに、「サトウキビは、砂糖を作り出す以外にさまざまな用途での利用が可能である。今回を機にインドにおいて、現在、製糖業者や生産者に支払われている補助金の財源が、それらの研究のために活用されることを願っている。われわれは、バイオエタノール生産に関して多くの実績とノウハウを有していることから、インドの製糖業者に技術的支援などを行う用意がある」と表明した。

(注)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2018/19年度、砂糖生産量はほぼ横ばいで推移する一方、輸出量は大幅に増加する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は512万ヘクタール(前年度比6.0%増)とかなりの増加が見込まれている(表3)。マハラシュトラ州やカルナータカ州において干ばつや害虫の大量発生がサトウキビの生育を停滞させたものの、収穫面積の拡大により相殺され、サトウキビ生産量は3億9243万トン(同0.2%減)、砂糖生産量は3450万トン(同0.6%減)とほぼ横ばいで推移すると見込まれている。輸出量は、政府が製糖業者に対し500万トンの最低輸出義務を課すことから、332万トン(同40.6%増)と大幅な増加が見込まれている。

インド政府、サトウキビ生産者への延滞金を解消するための対策に乗り出す
 インド政府は2月28日、製糖業者向けに790〜1054億ルピー(1358億8000万〜1812億8800万円)規模の低利子融資枠を設定する計画を承認した。これにより、製糖業者は市中の金融機関から一般より7〜10%低い金利で融資を受けることができる。

 インドでは、国内の砂糖価格の低迷などにより製糖業者の収益が圧迫され、資金繰りが悪化した影響で生産者への原料代の支払いが滞っており、2月22日時点で総額約2000億ルピー(3440億円)が未精算となっている。このため、今回の政府による低利子融資制度は延滞金の解消を最大の目的としており、製糖業者に融資される資金のほとんどは生産者への原料代の支払いに充てられるとみられる。

 しかし、一部の業界関係者は、通常でも政府の計画が実行に移されるまで少なくとも2〜3カ月の期間を要するうえに、5年に1度の総選挙を4〜5月に控える状況にあるなどの政治情勢を考慮すると、迅速に対策が実施されるかどうか懐疑的な見方を示した。

インド政府、砂糖の最低支持価格を1キログラム当たり31ルピーまで引き上げ
 インド政府は2月14日、現行1キログラム当たり29ルピー(50円)に設定している砂糖の最低支持価格(注1)(MSP:Minimum Selling Price)を、同31ルピー(53円)に引き上げると発表した。今回の措置について、同国政府は製糖業者の収益性を改善することで生産者への原料代の支払いの延滞を解消することがねらいとしているが、一部の関係者は「総選挙に向けて農村部の有権者の支持を固めたい思惑がある」との見方を示している。All India Sugar Trade Association(AISTA)(注2)によると、砂糖の国内価格が上昇すると、輸出するより国内に販売した方が利益を見込めるため、今後、製糖業者は砂糖の輸出量を減らす可能性がある。しかし、インド製糖協会(ISMA)は今回の措置でも採算に見合わないとして、同国政府に対し同35〜36ルピー(60〜62円)までMSPを引き上げるよう要求していくとしている。

(注1)製糖業者が卸売会社などに砂糖を販売する際の最低価格。
(注2)製糖業者、貿易業者、砂糖の大口仕入れ先など、砂糖産業関係者から成る協会。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2018/19年度、砂糖生産量、輸入量ともにわずかに増加する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は122万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかな減少が見込まれる一方、生産量は7859万トン(同2.4%増)とわずかな増加が見込まれている(表4)。てん菜については、政府がトウモロコシ支援政策を変更(注)したことでトウモロコシ価格が低下したことを受け、内モンゴル自治区などの生産者がてん菜への転作を進めていることなどから、収穫面積は24万ヘクタール(同30.5%増)、生産量は1167万トン(同21.7%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。以上のとおり、原料作物の増産が期待できることから、砂糖生産量は、1128万トン(同1.2%増)とわずかな増加が見込まれている。また、輸入量は、604万トン(同0.4%増)とわずかな増加が見込まれている。

(注)政府は2016年4月、トウモロコシ備蓄政策について、最低保証価格を廃止し、市場買い付けとする変更を行った。

2019年1月の砂糖輸入量、前年同月と比べ大幅に増加
 中国税関総署が2月23日に発表した2019年1月の貿易統計によると、砂糖の輸入量は13万トン(前年同月比4.2倍)で、前年同月と比べ大幅に増加した。しかし、雲南省と広西チワン族自治区でサトウキビ収穫の最盛期に入り、国内産糖の供給が十分にあったことや、春節を控え輸入貨物が緩慢な荷動きとなったことなどから、前月と比較すると23.5%減少した。2018年10月〜翌年1月の総輸入量を見ると、98万トンと前年同期と比べ約2倍の増加となった。ただし、この数量には台湾やミャンマーなどの周辺国を経由した密輸品が含まれていないため、実際の輸入量はさらに多いと推測される。

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2018/19年度、砂糖生産量はかなり減少し、輸出量は大幅に減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は171万ヘクタール(前年度比1.1%減)とわずかに減少すると見込まれているが、生産量は1億1891万トン(同14.1%減)とかなりの減少が見込まれている(表5)。てん菜生産量の減少に加え、てん菜に含まれる不純物が多いことも影響し、砂糖生産量は1883万トン(同12.9%減)とかなり減少する見込みである。輸出量は、前年度の豊作時と比較して原料が減産となったことで、179万トン(同52.9%減)と、平年並みに戻ると見込まれている。

欧州委員会、ネオニコチノイド系農薬の例外的な散布も禁止を検討
 現地報道によると、欧州委員会は2月19日、使用が制限されている農薬であっても、代替手段では害虫を抑止できない危険性がある場合に限り例外的に散布を認める措置について、ネオニコチノイド系農薬には適用しない方向で調整している考えを明らかにした。

 ネオニコチノイド系農薬は、てん菜生産においてウイルス性の萎黄病を媒介する害虫を防除する最も有効な薬剤とされている。しかし、EUではその散布がミツバチなどの生態系に影響を及ぼすとして、同農薬のうちクロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムを主成分とする薬剤については、2019年から屋外での使用が全面的に禁止される。その一方、ハンガリーやポーランドなどでは、同薬剤の使用が暫定的に禁止された2013年以降も、EU規則に基づき例外的な使用を認めており、引き続きの使用が可能となっていた。こうした状況に、環境保護団体などから強い非難の声が出ていたことに加え、例外的な使用が認められていないEU加盟国からも「不公平である」と不満の声が上がっていた。

 同薬剤の使用が禁止された経緯の詳細については、次のURLを参照されたい。
  https://alic.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002218.html

EUの菓子業界、日本の原産地規則に懸念を表明
 欧州チョコレート・ビスケット・菓子協会(CAOBISCO)は2月20日、同月1日に発効した日EU経済連携協定(日EU・EPA)において適用される原産地規則(注1)について、日本側が産品の原材料の重量を基準に原産地を判定している現状に懸念を表明した。EUで生産した菓子に使用している砂糖の中には、輸入粗糖を原料に生産されたものも一般に流通しているため、EU域内で栽培されたてん菜から生産された砂糖が産品にどの程度含まれるかを、菓子メーカーや輸出業者などが立証することは難しいとされる。このため、あめやキャラメル、チューインガムなど砂糖が多く使われる菓子は、原産地規則の要件を満たすことができず、結果として日EU・EPAによる関税引き下げの恩恵を享受できない可能性を指摘した。
 
 CAOBISCOは、日EU・EPAの原産地規則について、EUがこれまで締結した貿易協定の相手国・地域の多くが採用している、価額基準(注2)で判定する内容に改めるよう求めていくとしている。

(注1)関税の適用などのために輸入貨物の原産国を決定するためのルール。
(注2)価額基準は、(1)産品の価額に占める非原産地から調達した原材料の価額の割合(2)産品の価額に占めるその国で新たに付与された価値の割合−のいずれかで判定する。いずれの方法も、非原産の原材料を多く使用したとしても、産品に投下した経費(労務費や加工費、販売経費などの原価)や原価に上乗せした利益が多ければ産品に占める割合は重量基準と比べ相対的に低くなる。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合(2018年12月時点)

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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