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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年5月時点予測)

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最終更新日:2019年6月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年5月時点予測)

2019年6月

 本稿中の為替レートは2019年4月末日TTS相場の値であり、1米ドル=113円(112.85円)である。

ブラジル

2019/20年度、輸出量はかなり大きく増加する見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2019年5月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は砂糖の国際相場の低迷により他作物へ転作する動きが見られるため、847万ヘクタール(前年度比2.0%減)とわずかに減少する見込みであるものの、サトウキビ生産量は生育状況がおおむね良好であることから6億2400万トン(同0.5%増)と横ばいで推移すると見込まれている(表3)。

 砂糖生産量は、砂糖の国際価格が過去10年で最低水準であった前年より回復すると予想されることから、サトウキビの砂糖生産への仕向け割合が上昇するとの見通しの下、3255万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同4.2%増)とやや増加し、輸出量も2234万トン(同12.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれている。

オーガニックシュガーの生産量、過去最高を更新
 ブラジル農務省(MAPA)は4月24日、2018/19年度の地域別糖種別の生産実績を公表した。同国の砂糖生産の9割を占める中南部地域の糖種別生産量を見ると、粗糖や精製糖は前年度と比べ大幅に減少する中、オーガニックシュガー(注)は過去最高となる23万7000トン(前年度比7.6%増)の生産量を記録した(表2)。

 現地報道によると、有機農産物を使用した菓子や飲料などの有機加工食品に対するニーズの高まりにより、オーガニックシュガーに対する需要は世界的に増加傾向にあるとし、2022年におけるオーガニックシュガーの市場規模は13億米ドル(1469億円)、2022年までの5カ年の年平均成長率は15.6%で推移すると予想されている。ブラジルは、世界におけるオーガニックシュガー生産の約4分の1のシェアを占めるとされ、同国が引き続きオーガニックシュガー市場の成長をけん引する重要な役割を果たすと期待されている。

(注)オーガニックシュガーとは、有機栽培のサトウキビまたはてん菜のみで作られた砂糖のこと。



中国の砂糖に対する追加関税をめぐり、中国政府との協議が続く
 MAPAの通商交渉官は5月5日、中国政府が輸入砂糖に課している追加関税措置が近いうちに解除されるとの見通しを示した。同交渉官は「中国との協議は順調に進んでいる」としながらも、同措置が解除される具体的な日程については明言を避けた。

 中国の砂糖に対する追加関税措置は、194万トンの関税割当数量を超えて輸入される砂糖に適用されるもので、2017年8月から実施されている。適用税率は1年目が95%とし、その後、毎年5%ずつ引き下げられる。ブラジルは2018年10月、中国によるこのような砂糖に対する追加関税措置を不服として世界貿易機関(WTO)へ2国間協議を要請していた。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2018/19年度、輸出量は大幅に増加する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、サトウキビの買い取り価格が引き上げられたことに伴う生産意欲の高まりにより503万ヘクタール(前年度比4.2%増)とやや増加すると見込まれている(表4)。一方、サトウキビ生産量は主要生産地における干ばつや害虫被害の影響でサトウキビの生育が停滞しているため、4億153万トン(同1.9%減)とわずかに減少すると見込まれている。

 砂糖生産量は3548万トン(同2.2%増)とわずかに増加し、輸出量は政府が製糖業者に対し輸送費などの助成措置と引き換えに500万トンの最低輸出義務を課していることから、370万トン(同56.6%増)と大幅な増加が見込まれている。

WTO協定に基づくブラジルとの協議、平行線で終了
 インド政府は4月14日、同国による砂糖の補助金政策に関して、ブラジル政府との間でWTO協定に基づく協議を開始した。現地報道によると、インドは発展途上国であることを理由に砂糖の輸出に補助金を支給する権利を有すると主張し、現行の補助金政策を見直す考えがないことをブラジル側に伝えたとされる。また、農業生産に対する財政支援はWTO協定において10%まで認められていることから、協定に何ら反していないと述べているという。しかし、インド側に対しWTO協定上認められる限度をはるかに上回る助成措置を自国の砂糖産業に与えており、世界での公平な競争を(ゆが)めていると反論するブラジルとの議論は平行線をたどり、結果、初協議は物別れに終わった。

 インドの砂糖の補助金政策に対するWTO協定に基づく協議の申し入れは、ブラジルのほか、豪州、グアテマラも行っており、近日中にこれらの国と協議が行われる見通しであるが、いずれの協議も平行線をたどるとみられる。協議が不調に終わった場合は、WTO協定に違反するか否かの判断を裁判の一審に相当する紛争処理小委員会(パネル)に委ねることとなる。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2018/19年度、輸入量はかなり大きく減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は122万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかな減少が見込まれる一方、生産量は7859万トン(同2.4%増)とわずかな増加が見込まれている(表5)。てん菜については、政府がトウモロコシ支援政策を変更(注)したことでトウモロコシ価格が低下したことを受け、内モンゴル自治区などの生産者がてん菜への転作を進めていることなどから、収穫面積は24万ヘクタール(同30.5%増)、生産量は1167万トン(同21.7%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。

 砂糖生産量は、原料作物の増産が期待できるものの、天候不順などの影響で平均糖度が平年を下回るとみられることから、1155万トン(同3.7%増)とやや増加にとどまると見込まれている。輸入量は、このところの伸びが鈍化し始めており、加えて米中貿易摩擦により中国経済の減速懸念が強まっていることから、最終的には前年度を下回る536万トン(同11.0%減)とかなり大きく減少すると見込まれている。

(注)政府は2016年4月、トウモロコシ備蓄政策について、最低保証価格を廃止し、市場買い付けとする変更を行った。

サトウキビの買い取り価格、行政介入は廃止へ
 広西チワン族自治区政府は4月15日、サトウキビの買い取り価格の決定プロセスを、生産者と製糖業者の自由な交渉に委ねると発表した。サトウキビの買い取り価格は、これまで同政府が定めていたが、必ずしも市況を反映した価格となっておらず、昨今の砂糖の国際価格の低迷下においては、硬直的で高止まりしているサトウキビの買い取り価格が製糖業者の収益を圧迫する要因になっていた。今後は、価格設定を市場原理に委ねることで、製糖業者が適正な収益を確保できる環境を整え、砂糖産業の競争力強化につなげる狙いがある。

 なお、サトウキビやてん菜を生産する他の省や自治区では、行政が直接価格決定に関与する制度をすでに廃止しており、中国最大のサトウキビ産地である同自治区だけが唯一、行政による価格介入を行っていた。

2019年3月の砂糖輸入量、前年同月を大幅に下回る
 中国税関総署が4月22日に公表した2019年3月の貿易統計によると、砂糖の輸入量は、前年同月と比べ85.3%減の6万トンと大幅に減少した。2018/19年度上半期の輸入量は、105万トン(前年同期比17.5%増)と大幅に増加しているものの、前月までの累計が前年同期比2倍に迫る伸び率であっただけに、輸入量の伸びに急ブレーキがかかった。

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2018/19年度、砂糖生産量はかなり大きく減少し、輸出量は大幅に減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は171万ヘクタール(前年度比1.1%減)とわずかな減少にとどまるものの、てん菜生産量は春先の冷え込みによる植え付けの遅れと、少雨で乾燥した日が続いたことから、1億1475万トン(同17.1%減)と大幅な減少が見込まれている(表6)。 砂糖生産量はてん菜生産量の減少に加え、てん菜の平均糖度が平年を下回るとみられることが影響し、1833万トン(同15.1%減)とかなり大きく減少し、輸出量は前年度の砂糖の生産割当撤廃に伴う輸出増の反動で、201万トン(同47.2%減)と大幅に減少すると見込まれている。

CEFS、メルコスールとの通商交渉に懸念を示す
 欧州製糖協会(CEFS)は5月14日、EUが南米南部共同市場(メルコスール)(注)との間で交渉を続けている自由貿易協定(FTA)においてメルコスール側が砂糖の市場開放を求めていることを受け、欧州委員会に対し安易に譲歩しないよう求める声明を発表した。

 この声明によると、EUが近年合意に達した他国との貿易協定の通商交渉では、相手国から譲歩を引き出すため、砂糖の関税引き下げが交渉のカードとして使われてきたとし、それらの国がEUの砂糖市場に有利な条件でアクセスできる数量はEUの砂糖の需要量をはるかに超えていると主張している。このため、これ以上の市場開放は、地域経済や社会を支えてきたEUの砂糖産業に壊滅的な打撃を与えるだけでなく、加盟国の政府は生産者や農村部の有権者からの支持を失い、今後の選挙で厳しい審判が下されることになると警告した。また、メルコスール加盟国であるブラジルの砂糖生産について、人権や環境への配慮に欠けており、EUが目指す価値観、基準と相容れないものであるとし、「ブラジル産砂糖を他国より有利な条件で輸入すべきではない」とも主張している。

(注)外務省によると、メルコスールは域内の関税撤廃などを目的に発足し、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラ、ボリビアの6カ国が加盟している。ただし、ベネズエラは加盟資格停止、ボリビアは各国議会の批准待ちで現在議決権はない。

欧州委員会、砂糖の2019/20年度需給見通しを公表
 欧州委員会は4月17日、2019/20年度の砂糖の需給見通しを公表した。この見通しによると、てん菜収穫面積は砂糖の国際価格の低迷や、ネオニコチノイド系農薬の使用が規制されることなどから、前年度と比べ3.6%減(6万3000ヘクタール減)の167万3000ヘクタールと見込まれている。てん菜生産量は、気象災害などの影響で大幅に減産すると見込まれる前年度に比べれば安定した生育が期待できるとし、1億1694万トン(前年度比8.2%増)とかなりの程度増加すると見込まれている。 これらを踏まえ、砂糖生産量は前年度と比べ3.2%増加し、1830万トンになるとの見通しを示した。他方、砂糖消費量は消費者の健康志向の中での低甘味や低カロリーに対するニーズの高まりを背景に2年連続で減少し、1810万トン(同2.1%減)となると予想している。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合(2019年4月時点)

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