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4. 日本の主要輸入先国の動向(2019年5月時点予測)

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最終更新日:2019年6月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2019年5月時点予測)

2019年6月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピン、グアテマラで、2018年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が71.1%(前年比1.6ポイント増)、タイが28.1%(同3.1ポイント増)と、この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。

 豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回はフィリピンについて報告する。本稿中の為替レートは2019年4月末日TTS相場の値であり、1フィリピン・ペソ=2.3円である。

豪州

2019/20年度、砂糖生産量、輸出量ともにやや増加する見込み
 2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は39万ヘクタール(前年度同)と横ばいで推移し、サトウキビ生産量は3417万トン(前年度比5.2%増)とやや増加すると見込まれている(表7)。

 砂糖生産量は489万トン(同3.6%増)、輸出量は356万トン(同4.3%増)と、ともにやや増加すると見込まれている。

クイーンズランド州の生産者団体、環境規制強化に強い不快感を示す
クイーンズランド州の生産者団体であるCANEGROWERS(注)は4月29日、グレートバリアリーフ(サンゴ礁)保護を目的に州政府が制定した「グレートバリアリーフ保護対策法」の改正案をめぐって強い不快感を示す声明を発表した。同団体によると、法案の審議が付託された州議会の委員会に対し生産者に過度な負担を強いるおそれがあるとし、再三にわたり法案の修正を要請してきたにもかかわらず、同委員会が4月下旬にまとめた法案の修正案にCANEGROWERSの意見がほとんど反映されなかったと述べている。そして、「規制ありきで議論が進んでおり、非常に遺憾だ」と批判した。

 今回の改正案は、白化現象が深刻化するサンゴ礁の保護をさらに強化・徹底するため、保護活動に関する産業界の自発的な取り組みの推進に重きを置く現行法を見直し、施用した肥料や農薬の量と種類を詳しく州政府に報告させることや、()(じょう)からの肥料・農薬成分の河川や地下水への流出を厳しく規制するなど行政の関与を強める内容となっている。なお、州政府は2019年半ばまでに法案を成立させ、2022年ごろから本格的に適用する考えを示している。

(注)CANEGROWERSは1934年に設立され、クイーンズランド州のサトウキビ生産者の4分の3が加入している。

表7 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2018/19年度、輸出量はやや増加する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は179万ヘクタール(前年度比0.1%増)とほぼ横ばいで推移すると見込まれるものの、サトウキビ生産量は台風の勢力が弱まった熱帯低気圧が多く通過し、サトウキビの倒伏、茎葉の傷みなどが発生した影響を受け、1億3100万トン(同2.9%減)とわずかに減少すると見込まれている(表8)。

 砂糖生産量は、気象被害が少なかった東北部のサトウキビの平均糖度が平年を上回り、サトウキビの減産分をカバーするとみられることから、1552万トン(同0.4%減)と横ばいで推移すると見込まれている。一方、輸出量については、前年度のサトウキビの豊作により積み上がった過剰在庫を解消するため輸出を強化するとみられることから、1055万トン(同4.7%増)とやや増加すると見込まれている。

焼き畑の抑制対策、目標にわずかに届かず
 サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)(注)は5月17日、2018/19年度に操業した56の製糖工場のほとんどが製糖終了を迎え、今年度のサトウキビの圧搾量は1億3110万トン、平均CCS(可製糖率)は12.6度(前年度比0.2ポイント増)となったと発表した。加えて、焼き畑により収穫されたサトウキビの量が8000万トン(生産量に占める割合61.1%)に達したことも明らかにした。

 タイ政府は、サトウキビの(しょう)(とう)()や葉を燃やした後に収穫する焼き畑が大気汚染悪化につながっているとし、2月以降、焼き畑の抑制に向けた対策に乗り出していたが、今年度の焼き畑による収穫率を6割以下とする目標にあと一歩届かなかった。ただし、焼き畑による収穫率をわずか3カ月で前年度と比べ5ポイント以上抑制しており、緊急的な対応であったものの、一定の効果が見られた。

(注)サトウキビおよび砂糖関連政策の執行機関である3省(工業省〈製糖関係〉、農業協同組合省〈原料作物関係〉、商務省〈砂糖の売買関係〉)とサトウキビ生産者および製糖企業の代表で構成され、工業省内に設置された、サトウキビ・砂糖委員会(TCSB)の事務局。

表8 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

フィリピン

2018/19年度、砂糖生産量は横ばいで推移する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は42万ヘクタール(前年度比1.2%増)とわずかに増加すると見込まれている一方、サトウキビ生産量は主要生産地の直近4カ月間の降雨量が平年の半分程度と少なく、乾燥した気候が続いていることから、2300万トン(同3.6%減)とやや減少すると見込まれている(表9)。

 砂糖生産量は、サトウキビの平均糖度が平年を上回り、サトウキビの減産分をカバーするとみられることから、208万トン(同0.2%減)と横ばいで推移すると見込まれている。輸出量については、21万トン(同3.9%増)とやや増加すると見込まれている。

砂糖税の導入後、コーヒーミックスの消費が拡大
 フィリピンとインドネシアの両政府は4月1日、フィリピンが2018年8月以来実施しているインドネシア産インスタントコーヒー製品に対するセーフガード措置の解除に向け、両国間の貿易・投資を活発化させることで合意した。これを受け、インドネシアの大手食品メーカーは、今後5年間でフィリピンに8000万米ドル(90億4000万円)を投資し、インスタントコーヒー製品を製造するための工場を建設すると発表した。

 フィリピン国立食品栄養研究所(FNRI)の調査によると、フィリピンの家庭内で消費される食品の中で、コーヒーは7番目に多く消費される食品とされる。また、同国のインスタントコーヒー市場においては、砂糖と粉乳が入ったインスタントコーヒー(以下「コーヒーミックス」という)の方が、コーヒーの抽出液を乾燥・加工したシンプルな商品より消費量が多いといわれている。昨今では、2018年1月に導入された糖類を含む飲料への課税(砂糖税)(注)の対象からコーヒーミックスが除外されたこともあり、さらに消費量が伸びている。このため、前出のインドネシアの食品メーカーも、フィリピンに建設する工場においてコーヒーミックスを主力に生産するとみられる。

(注)課税の対象となる飲料には、粉末飲料も含まれる。税額は、砂糖を加えたものが1リットル当たり6ペソ(約14円)、異性化糖を加えたものが同12ペソ(約28円)である。コーヒーは、フィリピン人の食生活・食文化に欠かせない食品の一つであるとされ、砂糖税の導入に当たっては、業界団体や国民からの強い反対の声に押され、政府はコーヒーミックスへの課税を断念した。

表9 フィリピンの砂糖需給の推移

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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