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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年6月時点予測)

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最終更新日:2019年7月10日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年6月時点予測)

2019年7月

ブラジル

2019/20年度、輸出量はわずかに減少する見込み
 2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、砂糖の国際相場の低迷により他作物へ転作する動きが見られるため、847万ヘクタール(前年度比2.0%減)とわずかに減少する見込みであるものの、サトウキビ生産量は生育状況がおおむね良好であることから6億2400万トン(同0.5%増)と横ばいで推移すると見込まれている(表2)。

 砂糖の国際価格の低迷が長期化していることから、サトウキビのエタノール生産への仕向け割合が上昇するとの見通しの下、砂糖生産量は3092万トン(同1.2%減)、輸出量は2045万トン(同0.6%減)と、ともにわずかに減少すると見込まれている。

メルコスールとEUのFTA交渉、最終局面か
 ブラジルのジャイル・ボルソナーロ大統領は6月6日、南米南部共同市場(メルコスール)とEUとの間で交渉が続く自由貿易協定(FTA)について、「間もなく合意に達するだろう」との見通しを示した。
 
 他方、現地報道によると、5月13日から17日にブエノスアイレス(アルゼンチン)で行われたメルコスールとEUによる今年2回目のFTA交渉では、最大の焦点である砂糖などの農産物の市場開放をめぐって、EUが消極的な姿勢を見せていることから合意に至らず、議論は次回以降の会合に持ち越された。このため、現状では交渉が円滑に進むかどうか予断を許さない状況にあるとみられる。

中国の砂糖に対する追加関税、ブラジル政府はパネルの設置を求めない方針
 中国の砂糖に対する追加関税措置(注)をめぐり、ブラジル政府は5月21日、世界貿易機関(WTO)協定に基づく紛争処理小委員会(パネル)の設置を求めない方向で調整を進めていることを明らかにした。同政府は、「ブラジルと中国の双方が満足のいく結果が得られた」と述べるにとどめ、詳細は明らかにしなかった。

(注)中国の砂糖に対する追加関税措置は、194万トンの関税割当数量を超えて輸入される砂糖に適用されるもので、2017年8月から実施されている。適用税率は1年目が95%とし、その後、毎年5%ずつ引き下げられる。ブラジルは2018年10月、中国によるこのような砂糖に対する追加関税措置を不服としてWTOへ2国間協議を要請していた。

ブラジル農務相、GMサトウキビ由来の砂糖の対中輸出に意欲
 ブラジルのテレザ・クリスチーナ農務相は5月16日、中国政府に遺伝子組み換え(GM)サトウキビ由来の砂糖の輸入を承認するよう要請したと発表した。同相は、「砂糖は、サトウキビに含まれるスクロースという糖の結晶であるため、砂糖の成分から組み換えられたDNAやタンパク質が検出されることはない。このことは、科学的にも立証されている」と述べ、「こうした事実を中国の政府関係者に丁寧に説明し、早期に承認を取り付けたい」と輸出実現に意欲を示した。

 ブラジル政府は2017年6月にGMサトウキビの商業栽培を世界で初めて承認し、そのサトウキビから作られた砂糖は米国食品医薬品局(FDA)でも安全性が確認されている。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2018/19年度、輸出量は大幅に増加する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、サトウキビの買い取り価格が引き上げられたことに伴う生産意欲の高まりにより503万ヘクタール(前年度比4.2%増)とやや増加すると見込まれている(表3)。一方、サトウキビ生産量は主要生産地における干ばつや害虫被害の影響でサトウキビの生育が停滞しているため、4億153万トン(同1.9%減)とわずかに減少すると見込まれている。

 砂糖生産量は3558万トン(同2.5%増)とわずかに増加し、輸出量は政府が製糖業者に対し輸送費などへの助成措置と引き換えに500万トンの最低輸出義務を課していることから、370万トン(同56.6%増)と大幅な増加が見込まれている。

マハラシュトラ州の砂糖生産量、大幅に減少する見込み
 インド政府は6月10日、前年6月から9月にかけ深刻な干ばつに見舞われたマハラシュトラ州では、2019/20年度におけるサトウキビ収穫面積が前年度比で約3割減少するとの見通しを明らかにした。また、同政府は「同州における干ばつは、飼料作物生産にも大きな被害を与えており、飼料の代用としてサトウキビを給与する生産者がいるほど深刻な飼料不足を引き起こしている」と述べ、これらの影響を踏まえ同州の砂糖生産量は同39.2%減の650万トンになるとの試算を示した。そして、同州は同国第2位の砂糖生産量を誇ることから、同州の砂糖生産が減速すれば、インド全体の砂糖生産量も減少するだろうとした。

 現地報道によると、業界関係者からは、サトウキビの増産で砂糖在庫が記録的な水準に積み上がっていた状況が改善するきっかけになるとの期待感が出ているという。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2018/19年度、輸入量は横ばいで推移する見込み
2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は122万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかな減少が見込まれる一方、生産量は7859万トン(同2.4%増)とわずかな増加が見込まれている(表4)。てん菜については、政府がトウモロコシ支援政策を変更(注)したことでトウモロコシ価格が低下したことを受け、内モンゴル自治区などの生産者がてん菜への転作を進めていることなどから、収穫面積は24万ヘクタール(同30.5%増)、生産量は1167万トン(同21.7%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。

 砂糖生産量は、原料作物の増産が期待できるものの、天候不順などの影響で平均糖度が平年を下回るとみられることから、1164万トン(同4.4%増)とやや増加にとどまると見込まれている。輸入量は、このところの伸びが鈍化し始めており、加えて米中貿易摩擦により中国経済の減速懸念が強まっていることから、604万トン(同0.4%増)と横ばいで推移すると見込まれている。

(注)政府は2016年4月、トウモロコシ備蓄政策について、最低保証価格を廃止し、市場買い付けとする変更を行った。

サトウキビの主産地、深刻な干ばつ被害に見舞われる
 中国工業・情報化部は5月27日、広西チワン族自治区に次ぐサトウキビの産地である雲南省において、サトウキビの栽培面積の約35%に当たる9万9893ヘクタールの()(じょう)が干ばつに見舞われ、初期生育が著しく阻害されるなどの被害を受けたと発表した。また、被害面積のうち、約1万5000ヘクタールは被害の程度が壊滅的なレベルに達しており、現在も干ばつが緩和されないまま推移していることから、被害がさらに拡大する可能性があるとした。同部によると、4月以降平均気温が平年より2度程度高く推移し、降水量も平年より4割程度少なかった。

 これを受け、雲南省砂糖協会は同日、2019/20年度のサトウキビ生産量は前年度と比べ少なくとも223万トン、砂糖生産量は同28万トン減少するとの見通しを示した。なお、2018/19年度の砂糖生産量は、207万トン(前年度比4.9%増)と見込まれている。

4月の砂糖輸入量、前年同月を大幅に下回る
 中国税関総署が5月23日に公表した2019年4月の貿易統計によると、砂糖の輸入量は、前年同月と比べ26.4%減の34万トンと大幅に減少した。2018年10月から翌4月までの輸入量は、139万トン(前年同期比1.9%増)とわずかに増加している。ただし、2018/19年度上半期(10月〜翌3月)の累計が前年同期比15%増以上で推移していたことから、輸入量の増加率は急激に縮小した。

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2018/19年度、輸出量は大幅に減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は171万ヘクタール(前年度比1.1%減)とわずかな減少にとどまるものの、てん菜生産量は春先の冷え込みによる植え付けの遅れと、その後の少雨で乾燥した日が続いた影響により、1億1475万トン(同17.1%減)と大幅な減少が見込まれている(表5)。

 砂糖生産量はてん菜生産量の減少に加え、てん菜の平均糖度が平年を下回るとみられることから、1833万トン(同15.1%減)とかなり大きく減少し、輸出量は前年度の砂糖の生産割当撤廃に伴う輸出増の反動で、196万トン(同48.6%減)と大幅に減少すると見込まれている。

フランス政府、テンサイ褐斑病の防除剤を販売禁止に
 フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)は5月28日、EU加盟国において初めて、テンサイ褐斑病の防除剤として用いられているエポキシコナゾールを主成分とする農薬の国内での販売を禁止すると発表した。その理由を、「エポキシコナゾールの長期にわたっての使用は、野生生物や人体に危害を及ぼす可能性が高い」と説明した。同庁は、有害性を評価するに当たって、欧州化学物質庁(ECHA)が2018年6月に示した指針に基づき判断したと述べていることから、エポキシコナゾールの使用を規制しようとする動きは今後、他のEU加盟国にも波及する可能性がある。

 現地報道によると、エポキシコナゾールを主成分とする農薬は、かつて同国のてん菜作付面積の約7割に相当する圃場で使用されていたとされる。しかし、農薬メーカーは、同剤が販売禁止になることを見越し、2015年以降販売を縮小させており、2019年に入ってからは販売を取りやめていた。また、エポキシコナゾールと同等の効果がある薬剤が他にもあることから、今回の政府の決定に生産者や業界団体などからの批判の声はほとんど聞かれない。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合(2019年4月時点)

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