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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年8月時点予測)

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最終更新日:2019年9月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2019年8月時点予測)

2019年9月

 本稿中の為替レートは2019年7月末日TTS相場の値であり、1インド・ルピー=1.74円、1ユーロ=123円(122.69円)である。

ブラジル

2019/20年度、輸出量はかなりの程度減少する見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2019年8月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は砂糖の国際相場の低迷により他作物へ転作する動きが見られるため、847万ヘクタール(前年度比2.0%減)とわずかに減少する見込みであるものの、生育状況がおおむね良好であることから、サトウキビ生産量は6億2900万トン(同1.3%増)とわずかに増加すると見込まれている(表2)。

 砂糖の国際価格の低迷が長期化していることから、サトウキビのエタノール生産への仕向け割合が上昇するとの見通しの下、砂糖生産量は3014万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同3.7%減)とやや減少し、輸出量は1950万トン(同7.0%減)とかなりの程度減少すると見込まれている。

ブラジル大統領、メルコスール改革に乗り出す
 南米南部共同市場(メルコスール)(注)は7月17日、首脳会談を開き、6月下旬に政治合意したEUとの自由貿易協定(FTA)について、各国の批准手続きを速やかに進めていくことを確認した。また、今回の会談の中でブラジルのジャイル・ボルソナーロ大統領は、域内関税の撤廃を目的として発足したメルコスールにおいて自動車(自動車部品を含む)と砂糖がいまだに例外品目扱いとなっている現状に触れ、「(対外通商交渉で関税撤廃を求める)われわれの中で実現できていない品目があるのは、道理に合わない」と述べ、メルコスールの枠組みや運用の見直しに着手することを示唆した。
 
 現地報道によると、同大統領は、かねてよりメルコスールの枠組みに縛られずに2国間の通商交渉を進めたい考えを示しており、メルコスール改革の方向性についてはすでにアルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領の支持を得ているとされる。

(注)外務省によると、メルコスールは域内の関税撤廃などを目的に発足し、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラ、ボリビアの6カ国が加盟している。ただし、ベネズエラは加盟資格停止、ボリビアは各国議会の批准待ちで現在議決権はない。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2018/19年度、輸出量は大幅に増加する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、サトウキビの買い取り価格が引き上げられたことに伴う生産意欲の高まりにより505万ヘクタール(前年度比4.7%増)とやや増加すると見込まれている(表3)。一方、サトウキビ生産量は主要生産地における干ばつや害虫被害の影響でサトウキビの生育が停滞しているため、3億9929万トン(同2.3%減)とわずかに減少すると見込まれている。

 砂糖生産量は3558万トン(同1.5%増)とわずかに増加すると見込まれている。輸出量は、インド政府が製糖業者に対し輸送費などへの助成措置と引き換えに500万トンの最低輸出義務を課していることや、インド製糖協会(ISMA)が同政府の支援を受けて中国、マレーシア、インドネシアなどの商社との間で覚書を締結し、輸出拡大に向けた環境が整いつつある状況を踏まえ、514万トン(同2.2倍)と大幅な増加が見込まれている。

砂糖の調整保管を400万トンに増加し、引き続き実施へ(注1)
 インドの政策決定機関である内閣経済対策委員会は7月24日、長引く砂糖の国内価格の低迷に対処するため、8月1日から砂糖の調整保管を400万トン規模で実施する計画を承認した。今回の措置は製糖業者に対し在庫の保管に係る経費を補助するもので、その総額は最大で167億4000万ルピー(291億2760万円)と見込まれている。

 同委員会の発表によると、インド政府は2018年7月1日から300万トン規模の調整保管を1年間実施し、国内の砂糖価格の上昇、製糖業者の経営状態の改善、農家に対するサトウキビ代金の支払い遅延の解消などを図ったが、結果として十分な効果が得られなかった。このため、調整保管の規模を300万トンから400万トンに拡大し、これらの問題の解決に引き続き取り組むとしている。

 なお、同委員会は同日、2019/20年度におけるサトウキビの最低買い取り価格(FRP)(注2)を3年ぶりに据え置き、100キログラム当たり275ルピー(479円)とすることも発表した。

(注1)詳細は、当機構のホームページの海外情報「砂糖の調整保管を400万トン規模で実施へ(インド)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002492.html)をご参照ください。
(注2)砂糖の生産コストなどを基に政府が算出する価格で、サトウキビを同価格より安く買い取ることが禁止されている。


マハラシュトラ州の砂糖生産量、2019/20年度は半減する可能性
 現地報道によると、8月上旬、砂糖生産量が国内第2位のマハラシュトラ州の西部沿岸地域(図3)において、豪雨による河川の氾濫などで47万人もの住民が避難する大規模な浸水被害が発生し、周辺の9万ヘクタール以上のサトウキビの()(じょう)が冠水した。

 同州に拠点を置く製糖業者らで組織する団体によると、同州における2019/20年度の砂糖生産量は今回の豪雨災害に加え、6〜7月にかけ干ばつに 見舞われたことも重なり、前年度比約50%減の520〜550万トンまで落ち込む可能性がある。

図3 豪雨災害の発生地域

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

中国

2018/19年度、輸入量は大幅に減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は122万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかな減少が見込まれる一方、生産量は7859万トン(同2.4%増)とわずかな増加が見込まれている(表4)。てん菜については、政府がトウモロコシ支援政策を変更(注)したことでトウモロコシ価格が低下したことを受け、内モンゴル自治区などの生産者がてん菜への転作を進めていることなどから、収穫面積は24万ヘクタール(同30.5%増)、生産量は1167万トン(同21.7%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている。

 砂糖生産量は、原料作物の増産が期待できるものの、天候不順などの影響で平均糖度が平年を下回るとみられることから、1164万トン(同4.4%増)とやや増加にとどまると見込まれている。輸入量は、米中貿易摩擦による中国経済の減速懸念などに伴い輸入量の落ち込みと内需の弱さが目立ち始めている現状を踏まえ、454万トン(同25.7%減)と大幅に減少すると見込まれている。

(注)政府は2016年4月、トウモロコシ備蓄政策について、最低保証価格を廃止し、市場買い付けとする変更を行った。

中国政府、砂糖の1日の摂取目標を「25グラム以下」と定める(注1)
 中国国務院(内閣に相当する行政機関)は7月15日、疾病予防・健康増進の推進に資する施策の指針となる『健康中国行動(2019〜2030年)』を公表し、健康寿命(注2)を延ばすために必要な取り組みと、達成すべき目標を示した。

 この中の食生活の改善に関する項目では、減塩、低脂肪、低糖質な食事を実践して、口腔の健康、適正な体重、健康的な体型を維持する「三減三健」という概念が提唱されている。これを実現させるため、現在国民1人当たり1日平均30グラム摂取している砂糖については同25グラム以下とする目標を定めた。また、6〜17歳の子どもの肥満率が10年前と比べ3倍に増加している状況などに鑑み、子どもの砂糖の適正摂取に向けたガイドラインの策定▽砂糖から低カロリー甘味料への切り替えを行う食品メーカーへの支援▽砂糖含有量を1日の摂取目標量に占める割合で表示するなどの食品表示ルールの見直し−などを行うことが明記された。

(注1)詳細は、当機構のホームページの海外情報「中国、砂糖の1日の摂取目標『25グラム以下』と定める−『健康中国行動』−」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002488.html)をご参照ください。
(注2)中国国務院によると、2016年時点での中国の平均寿命は76.7歳、健康寿命は68.7歳である。なお、健康寿命とは世界保健機関(WHO)が提唱した概念で、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。


RCEP閣僚会合、年内妥結を目指すことで一致
 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の閣僚会合が8月3日、北京で開かれた。会合後に発表された共同声明では、物品の市場アクセス交渉に関して「対象品目の3分の2以上について参加国のすべてが満足できるレベルにある」とし、残りの品目については年内妥結に向け、建設的な議論を積み重ね、現実的な着地点を模索する姿勢を示した。

 交渉の行方は、砂糖を含めた安価な農産物の流入に懸念を示すインドがどこまで歩み寄れるかが鍵になるとみられるが、5月に行われた総選挙でモディ首相が率いる与党が単独過半数の議席を獲得し、安定した政権運営の基盤が整ったことから、関係者の間では早期妥結の期待感が高まっている。

図4 アジア・太平洋地域における経済連携の状況

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2018/19年度、輸出量は大幅に減少する見込み
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は171万ヘクタール(前年度比1.2%減)とわずかな減少にとどまるものの、春先の冷え込みによる植え付けの遅れと、その後の少雨で乾燥した日が続いた影響により、てん菜生産量は1億1431万トン(同17.4%減)と大幅な減少が見込まれている(表5)。

 砂糖生産量はてん菜生産量の減少に加え、てん菜の平均糖度が平年を下回るとみられることから、1827万トン(同15.4%減)とかなり大きく減少し、輸出量は前年度の砂糖の生産割当撤廃に伴う輸出増の反動で、201万トン(同47.2%減)と大幅に減少すると見込まれている。

FTAに対する反対運動、フランスで先鋭化
 6月下旬にEUとメルコスールとのFTAが政治合意に達したことに続き、7月23日にはEU・カナダ包括的経済貿易協定(CETA)がフランス議会で承認された。これを受け、フランス全土でこれらに反対する農民らによる抗議活動の一部が過激化し、議員事務所が放火されたり、与党の地方支部が襲撃されたりする事件が起きている。メルコスールとのFTA批准に反対の姿勢を示しているフランスの農業相は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通じて一連の行動を起こした農民らを厳しく非難しつつも、「(農民らがメルコスールなどとのFTAに反対する)気持ちは十分に理解している」と述べ、今後は平和的・理性的に行動するよう呼びかけた。

 現地報道によると、メルコスールとの政治合意に達した直後は交渉結果を高く評価していた同国のエマニュエル・マクロン大統領も、こうした状況に最近はややトーンダウンし、メルコスールとの貿易協定草案について農業への影響を評価する専門委員会を設置し、その結果などを踏まえて批准するかどうかを慎重に検討していく考えを示した。

 なお、メルコスールとの砂糖に関する合意内容は、EUはブラジル産粗糖に対して現行の関税割当数量(33万4054トン)(注)の範囲内で無税の関税割当枠(18万トン)を設けるとされている。これに対しフランスのてん菜生産者は、EUの砂糖市場がすでに飽和状態にある中でさらに安価な輸入砂糖の流入が拡大すると、現在も続く砂糖価格の低迷から抜け出すのが一層難しくなるとの懸念を示している。

(注)ブラジル産粗糖に対する関税割当内の関税率は1トン当たり98ユーロ(1万2054円)、関税割当外の関税率は同339ユーロ(4万1697円)である。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合(2019年7月時点)

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