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5. 日本の主要輸入先国の動向(2019年9月時点予測)

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最終更新日:2019年10月10日

5. 日本の主要輸入先国の動向(2019年9月時点予測)

2019年10月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピン、グアテマラで、2018 年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が71.1%(前年比1.6ポイント増)、タイが28.1%(同3.1ポイント増)と、 この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。

 豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ 月に1回の報告とし、今回はグアテマラについて報告する。
 
2019/20年度、砂糖生産量はかなりの程度減少する見込み
 2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は39万ヘクタール(前年度比1.3%増)とわずかに増加するものの、高温少雨な気候がサトウキビの生育を妨げ、サトウキビ生産量は3097万トン(同4.9%減)とやや減少すると見込まれている(表6)。サトウキビの減産に加え、CCS(可製糖率)も前年度よりやや低く推移していることから、砂糖生産量は436万トン(同7.8%減)とかなりの程度減少するとみられる。また、輸出量は砂糖の国際価格の低迷で輸出を控える動きが見られることから、330万トン(同15.1%減)とかなり大きく減少すると予測されている。

 インドの新たな輸出補助政策を批判
 世界貿易機関(WTO)は8月15日、グアテマラ、ブラジル、豪州のそれぞれの政府からインドの砂糖産業への支援政策に対する2回目の申し立てを受けて、裁判の一審に当たる紛争処理小委員会(パネル)を設置したと発表した。これらの国々は、パネルにおいてインドと政治的な場での対話を望んでいたが、インドは8月28日に来年度の輸出補助政策を発表し、引き続き砂糖の輸出を促進する方針を明らかにした。

 これに対して豪州砂糖製造業者協議会(ASMC)の代表は、WTOが正式にパネル設置を発表した直後に、インド政府が新たな支援政策を発表したことに驚きを隠せないと述べ、インド政府の決定は市場のゆがみを招き、豪州の粗糖輸出を停滞させる可能性があるとした。さらに、インド政府には供給過剰状態の国際市場に砂糖を流出させるのではなく、国内での長期保管など代替案を求めたいと語った。また、クイーンズランド州の生産者団体であるCANEGROWERSも、インド政府の発表した輸出補助政策は砂糖の国際価格を低迷させるだろうと懸念を示し、WTOでの手続きについて、新たな補助政策も考慮しつつ、可能な限り迅速に進めてほしいと主張した。
 
 
2019/20年度、砂糖生産量は減少するものの、輸出量は大幅に増加する見込み
 タイ中部では平年と比較して少雨傾向が続いているほか、東北部では干ばつの後に激しい豪雨に見舞われており、サトウキビが損傷を受けていることから、2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は157万ヘクタール(前年度比12.2%減)、サトウキビ生産量は1億1500万トン(同12.2%減)、砂糖生産量は、1323万トン(同14.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれている(表7)。一方、輸出量については、前年度のサトウキビの豊作により積み上がった過剰在庫を解消するために輸出を強化するとみられることから、1308万トン(同23.4%増)と大幅に増加するとみられる。

農薬の使用規制に向けて、農家や製糖業者向けの技術指導を実施へ
 タイ甘しゃ糖技術者会議(TSSCT)とタイサトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)は9月以降、サトウキビ農家や製糖業者を対象に、除草剤の一種であるパラコートとグリホサートの適切な使用方法について技術指導を行う予定としている。これは、3種類の農薬(パラコート、グリホサートおよび殺虫剤のクロルピリホス)の使用が10月20日以降法律で規制されるためで、農家は指導を受けた後に政府の実施する試験に合格しなければ、これらの農薬を購入できなくなる。

 上述の農薬はいずれも人体に有害とされており、パラコートについては30カ国以上で使用が禁止されている。政府は2019年2月、2年間は3種類の農薬の使用を条件付きで認めるものの、この間に安全性の高い代替農薬を探すとともに、農家へ農薬の適切な使用方法の指導を行うことを決定した。
 
 
 
2019/20年度、輸出量はかなり大きく増加する見込み
 2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は27万ヘクタール(前年度同)と横ばいで推移し、生産量は2727万トン(前年度比0.4%減)とわずかに減少すると見込まれている(表8)。砂糖生産量は305万トン(同4.5%減)とやや減少すると予測されている。砂糖の国際的な供給過剰を受けて積み上がった在庫を削減するため、輸出量は228万トン(同11.5%増)とかなり大きく増加すると見込まれている。

鉄や亜鉛、葉酸などの微量栄養素も砂糖への添加を検討
 グアテマラでは、栄養不良による失明を防ぐために1975年から砂糖にビタミンAが添加されているが、現地報道によると、鉄や亜鉛、葉酸といった微量栄養素の添加も行うことが国会で検討されている。

 微量栄養素の添加を推進する団体に所属する医師によると、これらの栄養素は肉などの特定の食品にしか含まれていないが、日常的にそれらを摂取できる国民は一部であるという。そのため、国民が頻繁に摂取する食材である砂糖に栄養素を添加することで、乳幼児の認知機能の発達や貧血の改善、妊婦の妊娠中毒症などの予防ができるとしている。鉄や亜鉛、葉酸を砂糖に添加するコストは高くなく、ビタミンAを添加する機械で代用できるため、製糖業者にとっても添加する栄養素の種類を増やすことは大きな負担にはならないと考えられるという。

 グアテマラ製糖協会(ASAZGUA)は、微量栄養素の添加が乳幼児や妊婦の健康状態を改善すると科学的に立証されていることや、鉄と葉酸については砂糖の色や味に影響を及ぼさないことを挙げ、国会の検討に前向きな姿勢を示している。
 
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