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食品メーカーにおける砂糖類および人工甘味料の利用形態

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最終更新日:2019年11月11日

食品メーカーにおける砂糖類および人工甘味料の利用形態
〜平成30年度甘味料およびでん粉の仕入動向等調査の概要〜

2019年11月

調査情報部
【要約】

 砂糖類および人工甘味料の仕入量は総じて安定している。砂糖と異性化糖の仕入価格についても、今年度は「横ばい」と回答する企業が最も多く6〜7割に達した。今後の仕入見込みについては、「増加する」とした企業の割合が砂糖類は前年度調査より減少した一方、人工甘味料は増加した。

はじめに

 砂糖、異性化糖などの甘味料は、食品製造で甘味を付与するに当たり必要不可欠な原料である。甘味料の用途は、チョコレート、キャンディー・グミなどの菓子類の他、清涼飲料水、乳飲料・乳製品・水産練り製品、調味料類など多岐にわたる。

 農林水産省によると、砂糖の総需要量および1人当たりの年間消費量は、いずれも平成19年度以降は減少傾向で推移していたものの、令和元年度の砂糖の総需要量は192万トン、1人当たり消費量は15.2キログラムと平成29年度と同値まで回復する見込みである(図1)。

 砂糖の用途別消費動向を見ると、10年間で家庭用の用途割合が減少している(図2)。ただし、29年度の家庭用の割合は前年度と同水準であった。なお、菓子類や清涼飲料、パン類向けの用途が増加した一方、小口業務用、漬物・佃煮・練り製品などが減少した。

 人工甘味料は、飲料向けの用途が多く、甘さの調整や風味の付与を重視され、特に低カロリー商品に使用される傾向にあるが、近年は競合する商品が市場に多数ひしめき合う状況にあり、厳しい競争にさらされている。

 当機構では、実需者の甘味料に対するニーズを把握し、甘味料の需給動向の判断に資す基礎的な情報を収集するため、食品製造事業者を対象としたアンケート調査を毎年実施している。

 本稿では、平成30年度を対象に実施した「甘味料およびでん粉の仕入動向等調査」のうち、砂糖類(砂糖、黒糖、異性化糖)および人工甘味料の調査結果について報告する。なお、その他甘味料、加糖調製品、天然でん粉および化工でん粉については、次号以降に順次報告する。

 (注)砂糖は液糖を含み、黒糖は国内産に限り調査を行った。また、異性化糖は、日本農林規格(JAS)の分類に基づき、ぶどう糖果糖液糖(果糖含有率50%未満)、果糖ぶどう糖液糖(同50%以上90%未満)、高果糖液糖(同90%以上)について調査を行った。





1.調査の方法

(1)調査期間

令和元年7〜8月

2)調査対象

甘味料を使用する食品製造事業者

(3)調査項目

平成30年度(4月〜翌3月)の砂糖類および人工甘味料の用途、仕入れ状況などに関する事項

(4)調査方法

郵送による調査票の発送および回収を実施

(5)回収状況

配布企業数   180社
回収企業数   105社
調査票回収率  58.3%

(6)集計区分


 

(7)集計結果についての留意事項

ア.図中の「n」は有効回答数を表す。
イ.端数処理の関係により、図中の内訳の合計が100%にならないことがある。
ウ.「不明・無回答」は比較対象から除外する。

 

2.調査企業の概要

 甘味料を使用する企業105社の資本金の額と業種のそれぞれの構成比は、図3の通りである。

 

3.集計結果

(1)砂糖類

ア.砂糖類の用途

 砂糖類全体での用途を見ると、「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」が44件と最も多く、次いで、「和生菓子・洋生菓子」が39件、「プリン・ゼリー類」が26件、「キャンディー・グミ・チューインガム」が25件と続く(図4)。

 また、種類別に見ると、砂糖は「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」が最も多く、異性化糖は「プリン・ゼリー類」「アイスクリーム類」が同数で最も多かった。黒糖は「和生菓子・洋生菓子」が最多で、飲料への使用は見られなかった。

 具体的な食品への使用を見ると、「スナック菓子・米菓・油菓子・ビスケット類」はクッキーや焼き菓子が多く、その他に分類されるものは冷凍食品、醤油などが挙げられた。



イ.砂糖類を使用する商品の数

 砂糖類を使用する商品の数は、1企業当たり「5点以下」が最も多く(64件〈砂糖9件、黒糖42件、異性化糖13件〉)、「101点以上」(57件〈砂糖35件、異性化糖22件〉)が続いた。

 種類別に見ると、砂糖および異性化糖は「101点以上」が最も多い。黒糖は「5点以下」、次いで「6〜10点」が多く、使用する商品数が少ないことがうかがえる(図5)。
 
 

ウ.砂糖類を使用する理由

 砂糖類を使用する理由として、「商品に風味を加える」が80件と最も多く、次いで「甘味料そのものの味、風味が良い」が58件と続き、前年度調査と同様の傾向となった(図6)。

 種類別に見ると、いずれも「商品に風味を加える」が最も多いが、次項が異なり、砂糖と黒糖は「甘味料そのものの味、風味が良い」、異性化糖は「製造原価(製造コスト)を抑える」となっている。

エ.仕入量の動向

(ア)直近1年間の仕入量

 平成30年度の仕入量を種類別に見ると、砂糖、異性化糖ともに「500トン未満」が最も多く、次いで「500トン以上1000トン未満」「1000トン以上2000トン未満」の順となる(図7)。

 また、黒糖は「5トン未満」が半数近くを占め、次いで「5トン以上20トン未満」となった(図8)。
 


(イ)前年度と比較した仕入量の動向

 平成29年度と比較した30年度の仕入量の動向は、いずれの砂糖類も「横ばい」が最も多く、それぞれ半数を占めた(図9)。

 横ばい以外を回答した企業は、その増減要因として、「需要の変動」を挙げる例が多かった。特に異性化糖において「大幅に増加」「やや増加」と回答した企業の割合は、前年度調査よりも増加した。その理由として「需要の増加により出荷数量が増える」「新商品を開発」などが挙げられており、業種では清涼飲料、パン・菓子製造業での回答が多かった。

 減少の要因としては、「需要の変動」による影響を挙げるところが大半で、乳製品・乳飲料や製菓、製粉業での回答が目立った。
 

(ウ)今後の仕入量の見込み

 今後の仕入量の見込みは、いずれの砂糖類も「横ばい」が多くを占めた。これはいずれの品目でも平成29年度よりも割合が高く、特に黒糖は9割弱を占めた。砂糖は、1割程度が減少を見込んでおり、これは需要の減少が主な理由である。異性化糖は30年度の仕入量が増加した影響を受け、令和元年度は減少する見込みがやや多い。一方で、「やや増加する見込み」も1割強あり、理由は需要の増加が挙げられた(図10)。
 


オ.仕入価格の動向

(ア)直近の仕入価格

 1キログラム当たりの仕入価格(平成31年3月時点)を種類別に見ると、砂糖は「170円未満」が、異性化糖は「90円未満」が回答の中で最多を占めた(図11)。

 日本経済新聞社が公表する「主要相場」(以下「日経相場」という)によると、31年4月の上白糖の月平均市中価格(東京、大袋)は1キログラム当たり188円(図12)、糖化製品市中相場の異性化糖の月平均市中価格は、果糖分42%のものが同131〜132円、果糖分55%のものが同137〜138円であることから、いずれも日経相場を下回る仕入価格であった。

 黒糖は「300円以上400円未満」が最も多く、総じて他の砂糖類よりも高い傾向であった。

 

イ)前年度と比較した仕入価格

 平成29年度と比較した30年度の仕入価格の動向は、いずれの砂糖類も「横ばい」が最も多いものの、砂糖は「やや下落」の割合がそれぞれ2割程度と、「上昇」よりも「下落」と回答した企業の方が多かった。一方で、黒糖と異性化糖は「大幅に上昇」「やや上昇」と回答した者の方が多かった(図13)。

 増減要因としては「市場相場の変動によるもの」を挙げる企業も多かったが、「仕入先の価格改定によるもの」とする企業もあった。

 日経相場における上白糖の市中価格(東京、大袋)の推移を見てみると、29年8月に1キログラム当たり190円まで下落した。さらに30年7月に同188円に落ち込み、そのまま推移している。これは、砂糖の国際相場(ニューヨーク粗糖先物相場)の値動きに連動しているものとみられ、29年度は世界的に砂糖の増産が予測されたことなど、世界の砂糖供給が過剰となる見通しが強かったため国際相場が下がっていた。30年度後半に主産地で天候不順などの減産予測から一時的に価格が上昇したものの、この動きは落ち着き、その後も緩やかに下落傾向にある(図14)。





カ.砂糖類に対する評価

 砂糖類に対する評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、品質面については、いずれの種類も「満足」が過半を占めた。「やや満足」と合わせるとおおむね7割となり、前年度と同程度の満足度となった(図15)。

 調達面についても「満足」「やや満足」を合わせると、いずれも半数を超えた(図16)。「満足」と回答した割合は黒糖で増加し、おおむね5割に達した。砂糖と異性化糖は前年度と同程度になった。

 「不満」「やや不満」と回答した企業は、黒糖で減ったものの、異性化糖で増加した。この理由として、昨今の物流体制による供給不安などが挙げられていた。

 

 

(2)人工甘味料

ア.人工甘味料の用途

 人工甘味料の用途を見ると「キャンディー・グミ・チューインガム」が14件と最も多く、次いで「コーヒー・ココア・紅茶飲料」「氷菓(アイスクリーム類を除く)」がともに8件、「プリン・ゼリー類」が7件と続く(図17)。「その他」の用途は、タブレットの清涼菓子、水に溶かして飲む粉末状の飲料などであった。


イ.人工甘味料を使用する商品の数

 人工甘味料を使用する商品の数は、種類ごとにやや異なった(図18)。アスパルテームは「5点以下」「6〜20点」「21〜50点」が同率で分散され、アセスルファムカリウムは「5点以下」が、スクラロースは「6〜20点」が最も多かった。


ウ.人工甘味料を使用する理由

 人工甘味料を使用する理由は、「商品中のカロリーを抑える」が20件と最も多く、次いで「商品に風味を加える」(15件)、「他の甘味料との併用による甘さ調整」(14件)の順であった(図19)。

 種類別に見ても、おおむね同様の傾向が見られた。上位回答の「商品に風味を加える」「他の甘味料との併用による甘さ調整」と回答した企業の多くは、キャンディー・ガムなどの製菓業であった。

 平成28年度の上位にあった「商品のカロリーを抑える」が再び最も多い回答となり、29年度の上位回答の「他の甘味料との併用による甘さ調整」が第3位に後退する動きが見られた。


エ.仕入量の動向

(ア)直近1年間の仕入量

 平成30年度の仕入量は「100kg未満」が19%と最も多く、次いで「100kg以上300kg未満」(14%)、「5トン以上」(11%)の順であった(図20)。種類別に見ると、アスパルテームは「100kg以上300kg未満」、スクラロースは「100kg未満」が最多だった(図21)。

 

 

(イ)前年度と比較した仕入量の動向

 平成29年度と比較した30年度の仕入量の動向は、前年同様いずれの種類も「横ばい」が過半を占めた(図22)。「大幅に増加」「やや増加」と回答した企業はすべて「需要増加による商品の出荷数量の増加」を理由に挙げ、業種としては清涼飲料や乳飲料・乳製品などの製造業であった。

 「大幅に減少」「やや減少」と回答した企業は「需要減少による商品の出荷数量の減少」「商品数の削減」などを理由に挙げ、「増加」と同じく、業種は清涼飲料や乳飲料・乳製品、菓子などの製造業であった。同業種であっても、需要の増減が起因して仕入量に違いが見られることから、人工甘味料を使用した商品市場は厳しい競合下にあるとみられる。
 


(ウ)今後の仕入量の見込み

 今後の仕入量の見込みは、いずれの種類も「横ばい」が7〜8割と大半を占めた(図23)。アスパルテームは、前年度調査では回答のなかった「やや増加」が2割弱あり、他の品目を上回っている。アセスルファムカリウムは前年度と同程度である一方、スクラロースは前年度、「大幅に増加する見込み」が7%、「やや増加する見込み」が7%だったが、今年度は「やや増加する見込み」が12%に落ち着いている。なお、いずれの品目においても増加するとした業種は、清涼飲料、調味料、製菓業と多岐にわたっている。
 
 また、スクラロースでのみ「やや減少する見込み」と回答した企業があったが、理由としては「需要の減少」が挙げられた。

 

オ.仕入価格の動向

(ア)直近の仕入価格

 1キログラム当たりの仕入価格(平成31年3月時点)は「1万円以上2万円未満」が14%と最も多く、次いで「3千円未満」(12%)、「5千円以上1万円未満」(9%)となる(図24)。

 種類別に見ると、アスパルテームは「5千円以上1万円未満」が最も多く、と29年度最多の「3千円未満」と逆転している。アセスルファムカリウムは「3千円未満」が、スクラロースは「1万円以上2万円未満」が前年度と同様最も多かった(図25)。



 
(イ)前年度と比較した仕入価格

 平成29年度と比較した30年度の仕入価格の動向は、いずれの種類も「横ばい」が大半を占め、おおむね安定的に推移していると言える(図26)。ただし、スクラロースにおいては、一部「大幅に下落」という回答があり、要因に「仕入先の変更によるもの」が挙げられた。

カ.人工甘味料に対する評価

 人工甘味料に対する評価を「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階評価で尋ねたところ、品質面では「不満」とした企業はなかったが、すべての品目で「満足」「やや満足」が半数を上回った前年度と比べると今年度はアスパルテームのみ半数が「満足」に達している。アセスルファムカリウムとスクラロースについては、「満足」が3割台、「やや満足」を含めても4割程にとどまっている(図27)。

 調達面についても、いずれの種類でも前年度と比べ「満足」と回答した割合が低下し、3〜4割にとどまっている(図28)。

 

 

おわりに

 今回の調査では、砂糖類ならびに人工甘味料の仕入量および仕入価格の動向は、仕入価格が国際相場の変動に伴い上下した平成29年度よりも「横ばい」とする回答が多く、総じて安定していると見られる。

 仕入量についても、29年度と比べ「横ばい」とする企業がある一方、1割程度「減少」を選択する企業が乳製品・乳飲料や製菓、製粉業で見られた。一方、「需要の増加」「新商品を開発」を理由に「増加」を選択したのは、清涼飲料、パン・菓子製造業などで目立った。

 なお、異性化糖については、令和元年度の仕入量の増加を見込んでいるものの、物流の問題が挙げられるなど、価格のみならず砂糖類を取り巻く環境にも変化が起こっていることがうかがえる。

 一方、人工甘味料の仕入量については、平成30年度と比べ増加見込みの企業が増えており、需要の高さがうかがえる。人工甘味料を使用する理由として「商品中のカロリーを抑えるため」「風味を加えるため」という回答が多いことから、糖質を制限する食事法によるダイエットなどのブームによって、29年度から引き続き風味のよい「低カロリー」商品など、栄養・機能性はもとより、味わいなどの品質を重視した商品が注目される傾向が続いているとみられる。

 最後にお忙しい中、本調査にご協力いただいた企業の皆様に、改めて厚くお礼申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272