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沖縄県における貨物船による分みつ糖輸送について

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最終更新日:2019年12月10日

沖縄県における貨物船による分みつ糖輸送について

2019年12月

カシャッサ・カウンシル・ジャパン主任研究員 麻生(あそう) (まさ)()

はじめに

 日本に焼酎、ロシアにウォッカ、カリブにラム、メキシコにテキーラがあるように、ブラジルにはカシャッサがあります(写真1)。カシャッサはブラジル原産の蒸留酒で、原料はサトウキビです。同国で国民的に広く親しまれています。このカシャッサというお酒は、ユーロモニターインターナショナルによるとウォッカ、ソジュ(韓国)に次いで、世界で3番目に多く消費されている蒸留酒とのことです。にもかかわらず、日本をはじめ世界での知名度は決して高いとは言えません。なぜでしょう!?

1.不定期船航路について

 諸説があるため断定はできないものの、サトウキビ由来の蒸留酒としては世界最古のものとする説があるカシャッサ。その出現は16世紀の初頭から前半にかけて作られたサトウキビ農園と製糖工場のいずれかと考えられています(1516年〜1526年の間のペルナンブコ州や、1532年のサンパウロ州サンヴィセンチにおいて発祥したという説などがあります)。

 もともと先住民族が暮らしていた南アメリカ大陸のこの地にポルトガル人が入植したのが1500年のこと。やがてポルトガル人はマデイラ諸島などで行っていたサトウキビ栽培や製糖の技術をこの地に持ち込みます。後にブラジルと呼ばれることになるこの地にサトウキビは順応して、同国の植民地時代の最初の大掛かりな産業が砂糖産業となりました。

 約500年の歴史を持つと考えられているこのお酒は、現在も生産量、輸出量ともに世界で1、2を争う砂糖大国ブラジルの歴史とともに発展を続けてきました(写真2)。

 本稿では、このカシャッサという蒸留酒の特徴、魅力、製法を紹介したいと思います。
 
 

2.分みつ糖輸送について

 カシャッサが“世界で3番目に多く消費されている蒸留酒”とされながらもそれほど知名度が高くない理由は、ほとんどがブラジル国内で消費されているからだと思われます(輸出は全生産量の0.5%〜1%)。ブラジルカシャッサ研究所(IBRAC)によると2018年のカシャッサの生産量は12億リットルであったのに対し、輸出は841万リットルでした。

 それでもカシャッサは同年、77カ国に輸出されています。そのうち金額ベースで見た輸出量の7割近くを占めている上位5カ国は、米国、ドイツ、パラグアイ、ポルトガル、イタリアで、欧州での存在感が目立っています。

 また、ブラジル農牧食料供給省が公表している「カシャッサ年鑑 2019年版」によると、正規に登録されているカシャッサおよびアグアルデンチ・ジ・カーナの生産者はそれぞれ951件と611件で、製品数はそれぞれ3648種と1862種となっています。このうち、カシャッサとアグアルデンチ・ジ・カーナのどちらも製造している生産者が165件あるため、両種類の正規生産者数の合計は1397件となります。

 ところが、ブラジル地理統計院(IBGE)の農牧畜業実態調査(2017年)では生産者数は約1万1023件と公表されています。この差は、生産者の80%以上が正規に登録された蒸留所ではないことを示唆しています。

 また、1397件の登録蒸留所のうち98%が中小および零細生産者となっています。カシャッサは、大規模な施設で大量生産されるインダストリアル・カシャッサと、中小および零細生産者が蒸留器で造る製品とに大きく分類することができます。生産量の約70%を占めるのは前者のインダストリアル・カシャッサです。

(1)さとうきび栽培から分みつ糖製糖

 インダストリアル・カシャッサ(カシャッサ・インドゥストリアウ)は大量生産を目的とするため、一般的に、原料にはプランテーション(単一作物の大規模農業)で作られたサトウキビを使い、大規模な施設で発酵、蒸留を行い、蒸留は主に連続式で行われます。これらのカシャッサは、国中で日常的に親しまれている「カイピリーニャ」をはじめ、さまざまなカクテルのベースとして広く親しまれています。先述したピンガという愛称で親しまれているのはこうしたインダストリアル・カシャッサに多く見られます。

 また、近年ではインダストリアル・カシャッサのブランドが、従来とは異なる消費者層に向けて、自社のカシャッサを木の樽で熟成させたプレミアム・カシャッサの製造も行っています。

 中小零細規模の蒸留所が造るカシャッサに関しては、非正規(未登録)の蒸留所が作るものから、国際的な蒸留酒コンクールで他の蒸留酒を押しのけてメダルを獲得するほどの銘酒まで、種類も、品質もさまざまです。

 このうち近年、国内外でじわじわと注目を集めているのが、ブラジル各地にある酒造家が丹精を込めて造る品質の高いクラフト・カシャッサ(カシャッサ・アルテザナウ)と呼ばれるカシャッサです。

(2)海上時化との関係

 カシャッサの酒造りは、サトウキビの栽培から始まります。収穫、洗浄、搾汁後、ろ過や希釈などを経て得られた絞り汁はモストと呼ばれ、これに酵母を加えて発酵させます。

 カシャッサの品質は、原料であるサトウキビの選別から栽培方法、製造の仕方によって大きく異なります。そして、クラフト・カシャッサは高い志を持った生産者によって、あらゆる工程に細心の注意が払われています。

 そのため、クラフト・カシャッサの生産者の多くは自らの手でサトウキビを栽培しています。その土地の気候や土壌に合った品種を選び、疫病対策のためモノカルチャー(注1)を避けて複数の品種(3〜8種)を植え付けます(写真3)。

 収穫の作業も手作業で“火入れ”をせずに行われます(写真4)。大規模なプランテーションでは収穫のとき、効率的に葉を除去するため“火入れ”を行うことが少なくありませんが、搾汁時に灰が残っていると発酵の過程や最終的な製品の品質に影響を与えるためです。もちろん、収穫後にサトウキビをきちんと洗浄することも重要なプロセスの一つです。

 そして、収穫後のサトウキビの劣化が進まないうち(24時間以内)に搾汁を行い新鮮な搾り汁(ガラッパ)を作ります。ガラッパは十分にろ過されたのち、希釈が行われ、発酵を待つモストとなります(写真5)。

 収穫はサトウキビが最も熟したタイミングを計って行われるため糖度は高く、搾り汁のブリックス度(注2)は14〜24度くらいになっており、14度より高い場合はブリックス度を発酵に適した14〜16度に下げるため水を加えて調整します。希釈に使う水が汚染されていると発酵に支障を来すため、水質も重要です。それ故、良質なクラフト・カシャッサを造る蒸留所の多くは、サトウキビがよく育ち品質の良い水が得られる、自然環境に恵まれた場所に作られています(写真6)。

(注1)特定の一種類の農作物を栽培すること。
(注2)搾汁液の中に溶けていて乾燥させると固まる物質(可溶性固形分)の割合。搾汁液には、蔗糖、転化糖、その他の成分が溶けており、これをブリックスと表すが、糖分そのものではない。

(3)南大東島での積み込み

 安全運行への取り組みの一環として、南大東島での積み込みを一例として挙げたい。南大東島は沖縄本島から約400キロメートル東方に位置する大東諸島の一島である。周囲を断崖絶壁に囲まれた、いわば「絶海の孤島」とも呼べる島であり、島全体に大きな波が四六時中打ち寄せるため、他の港のように直接貨物船を接岸することができない(写真2)。南大東島での接岸は、沖と岸壁の中間地点に船を係留させることで成立する(岸壁から約200メートル程度沖の海中に係船ブイが位置しており、港湾業者によりブイを海上へ出して係船することとなる)。

 船舶は、荷役中、常に大きなうねりを直接受け左右に揺られる状態が続く。岸壁に近づきすぎると、断崖絶壁に船が当たることになり船体が破損してしまう。しかしながらそれを懸念しすぎるあまり沖に係留しすぎると荷役を行うクレーンが船まで届かず積み込みができない。

 うねりが大きな日であれば、まずもって接岸することができず、一度南大東島に近づいても予報以上にうねりが大きく本島へ引き返すこともしばしばある。

 また、いざ積み込みが開始してもうねりが大きく危険性が増せば、一旦離岸させ、沖待機や再接岸、もしくは再接岸できずに積み込み途中でその日の荷役は終了、翌日に再開ということも起こる。さらに、南大東島は風向きによって3港(北港、西港、島の南に位置する(かめ)(いけ)港)を使い分けて当日の天候に最も適した港で荷役が行われることとなる。

 南大東島のような非常に特殊な港では、船員や不定期航路担当者はもちろん、港湾従事者や見守ってくれている農家の方々など、現地関係者の協力の下、荷役の安全性が確保されている。安全運航への配慮が必要なのは航海中や避難中だけではないことが分かる事例となっている。

 上記のように分みつ糖輸送には、船を運行する上での海象のみならず天候も加味し、各工場の能力をも頭に入れつつ、船員と協力しながら業務に当たらなければならない。また南大東島の他にも、接岸だけでなく荷役スタイルにも特徴のある離島港はいくつかあるので細心の注意を払いながらの配船となる。本稿では紙幅の関係上記述する余裕はないが、積港のみならず県外の揚地港においても注意すべき港がいくつかあることも留意すべき点である。
 

おわりに

 内航海運業界、特に沖縄を拠点とする船会社は、観光業をはじめとする県経済の発展、好調に支えられ順調に推移している。貨物船による分みつ糖輸送についても、天候に左右される部分はあるものの、沖縄県が策定した「さとうきび増産計画」や「沖縄21世紀ビジョン基本計画」に基づいた各種取り組みや農家への支援などのかいもあり平年並みのさとうきび生産量がここ数年は維持され、順調な貨物量を輸送している。しかし沖縄航路に従事する船員の高齢化と後継者不足は、不定期航路における昨今の重要課題であり、内航船各社が今後取り組んでいくべきことの一つとなっている。

 さて、琉球海運ではこれからも不定期船を用いた分みつ糖輸送を行っていく。それは沖縄県に根ざした企業として誕生し、そして沖縄県に支えられてこれまで歩んできた当社の使命であると考えているからである。多くのサトウキビ農家が安心して栽培を続けるためにも、わが社は安全かつ確実に、沖縄本島や離島で製造された分みつ糖を県外の精製糖工場まで届けなければならない。またこのことによって、多くの離島で基幹産業となっている製糖業を守り、関連産業に従事する人々も含めた、島の暮らしや文化を守ることにつながる。ここにわれわれが「夢とくらしと文化」を運ぶ地域に根ざした企業としての社会的使命があり、分みつ糖輸送の意義があるのである。

参考文献

沖縄県農林水産部糖業農産課(2019)「沖縄県における平成30年産さとうきびの生産状況について」『砂糖類・でん粉情報』(2019年9月号)独立行政法人農畜産業振興機構
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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