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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年3月時点予測)

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最終更新日:2020年4月10日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年3月時点予測)

2020年4月

 本稿中の為替レートは2020年2月末日TTS相場の値であり、1米ドル=110(110.43)円、1ポーランド・ズロチ=29.04円である。
ブラジル
2019/20年度、生産量はわずかに増加するものの、輸出量はやや減少する見込み
 2019/20砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、砂糖の国際価格の低迷により他作物へ転作する動きが一部で見られるため、859万ヘクタール(前年度比0.7%減)とわずかに減少するが、生育期間を通じて天候がおおむね良好で、生育が順調であることから、サトウキビ生産量は6億4110万トン(同3.3%増)とやや増加すると見込まれる(表2)。
 
 長期化する砂糖の国際価格低迷などの影響を受けて、多くの製糖業者でエタノール生産を強化する動きが目立つものの、砂糖とエタノールの仕向け割合は前年度と同水準で落ち着くとみられることから、砂糖生産量は3161万トン(同1.2%増)とわずかに増加し、輸出量は2033万トン(同3.1%減)とやや減少すると見込まれる。

2020/21年度の砂糖生産量、原油価格や世界的な砂糖不足などを受けて前年度増の見込み
 ブラジルの大手製糖企業Raízen(ハイゼン)社の役員であるRichardo Mussa氏は3月9日、同社はすでに2020/21年度の砂糖生産量を前年度から増加させる計画を立てており、原油価格の下落を受けてサトウキビの製糖への仕向け割合をさらに増やす可能性があると述べた。同氏は、2020/21年度のブラジルの砂糖生産量は今年度と比較して300万〜600万トン程度増加するとみている。
 
 また、同国のコンサルタント会社の多くは、サトウキビの主産地である中南部地域の2020/21年度における砂糖生産量が3000万トンを超え(注)、サトウキビの砂糖への仕向け割合は40〜43%程度に増加するとの見通しを示している。世界的な砂糖不足が見込まれる中、ブラジルの通貨レアルの下落も製糖業者の輸出意欲を高める要因となり、砂糖の増産を後押しするとしている。

(注)ブラジル国家食料供給公社(CONAB)が2月に発表した資料によると、2019/20年度における中南部地域の砂糖生産量は2735万トン(前年度比3.2%増)と見込まれている。

2020年2月の砂糖輸出量、前年同月比12%増
 ブラジル経済省が3月2日に発表した統計によると、2月の砂糖輸出量は131万トンと、製糖期が終盤を迎えているため前月からは18.1%減少したものの、前年同月と比較すると12.4%増とかなり大きく増加した。一方、輸出金額は3億8884万ドル(427億7240万円、前年同月比14.6%増、前月比17.2%減)と、前年同月と比較してかなり大きく増加した。2019年4月から翌2月の累計輸出量は前年同期比6.5%減となっているものの、2020年以降の累計輸出量は同30.1%増の291万トンと大幅に増加した。ブラジル国家食料供給公社(CONAB)は、2020年初旬に見られた砂糖の国際価格の上昇やブラジルの通貨であるレアル相場の下落が砂糖輸出量の回復を後押しするのではないかとみている。
表2
(参考)ブラジル
インド
2019/20年度、輸出量はかなり大きく増加する見込み
 サトウキビの主産地であるマハラシュトラ州で発生した()(じょう)の浸水被害などが影響し、2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は463万ヘクタール(前年度比10.1%減)とかなりの程度減少し、サトウキビ生産量は3億5851万トン(同12.1%減)とかなり大きく減少すると見込まれる(表3)。
 
 糖みつなどを利用したエタノールの生産量は当初の予測を下回って推移しているものの、前述のサトウキビ生産量の減少や長雨によるサトウキビの糖度低下の影響を考慮すると、砂糖生産量は2933万トン(同18.1%減)と大幅に減少すると見込まれる。2月に輸出枠が再分配されたことや、今後数カ月でインドネシアへの輸出が行われる可能性を受けて、輸出量は前月の予測から17.5%上方修正され、625万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。
 
インドネシア、国内需要を満たすためインドから砂糖を輸入する意向
 インドネシア農業省は2月27日、5月までにインドから白糖13万トンを輸入する考えを明らかにした。インドネシアのサトウキビの収穫は通常5月から始まるが、2019年の干ばつによってサトウキビの植え付けが遅れたことで、収穫開始時期が2020年6月の下旬にずれこみ、現在の砂糖在庫量では国内の砂糖需要を満たせない可能性があるためである。
 
 また、インドネシアは輸入粗糖の基準をICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)色価 1200としていたが、同400〜800のインド産粗糖を輸入できるようにするため、輸入粗糖の基準を同600〜1200へ緩めたほか、インド産粗糖の輸入関税率を約5%まで引き下げた。しかし、業界関係者によると、基準の変更によって同国で既に発行された1月〜6月分の輸入許可証を修正する必要が生じ、インドからの輸入を直ちに開始できない状況にある。また、インドの業界関係者は、国内の粗糖在庫量が多くないことから、今後輸出できる粗糖の量は多くても25万トン程度になるとみている。

大手飲料メーカーのインド法人、2年以内に飲料の糖類含有量を削減する計画を発表
 世界的な大手飲料メーカーのインド法人は3月2日、今後2年間で飲料に含まれる糖類の量を削減する計画を発表した。一般的に、炭酸飲料には100ミリリットル当たり10グラム程度の糖類が含まれるが、同社の代表は、2年以内に糖類含有量を同6グラム以下に抑える目標を掲げていることを明かした。同社はここ1年で飲料の糖類含有量の削減に取り組んできたが、今後も低カロリーを訴求した商品の数を既存ブランドの中で増やしていくほか、無糖飲料の新規開発にも力を入れていくという。
表3
(参考)インド
中国
2019/20年度、輸入量はわずかに増加する見込み
 2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は118万ヘクタール(前年度比3.5%減)とやや減少し、天候不順で停滞していたサトウキビの生育状況に回復の兆しが見られるものの、収穫面積の減少による影響を相殺しきれず、サトウキビ生産量は7769万トン(同1.1%減)とわずかに減少すると見込まれる(表4)。てん菜については、収穫面積は21万ヘクタール(同12.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。主産地である内モンゴル自治区でヨトウムシなどによる害虫被害が発生したものの、糖度が前年度よりも高いことが収穫面積の減少を一部相殺し、てん菜生産量は同6.6%の減少にとどまると見込まれる。

 これに伴い、砂糖生産量は1103万トン(同5.2%減)とやや減少し、その不足分を賄うため、輸入量は497万トン(同2.9%増)とわずかに増加すると見込まれる。

広西チワン族自治区や雲南省で、新型コロナウイルスによる労働力不足などが砂糖生産に影響
 中国糖業協会によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響で季節労働者の不足や物流の停滞が生じ、中国南部のサトウキビ生産地である広西チワン族自治区(以下、「広西」という)や雲南省ではサトウキビの収穫作業や次期のサトウキビの植え付け、製糖工場の操業が滞っている。搬入されるサトウキビの量が不足し、製糖工場の操業率が低下しているため、製糖コストの上昇も懸念されている。
 
 現地情報などによると、2020年3月4日時点の砂糖生産量は、広西で574万トン(前年同期比33.7%増)、雲南省で99万トン(同0.5%増)と見込まれている。しかし、広西の半数以上の製糖工場は3月5日までに操業を終えており、2019/20年度の砂糖生産は平年より早く終了するとみられる。
表4
(参考)中国
EU
2019/20年度、輸出量は大幅に減少する見込み
 2019/20砂糖年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は161万ヘクタール(前年度比5.7%減)とやや減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、深刻な干ばつに見舞われた前年度からの反動で1億1466万トン(同3.1%増)とやや増加すると見込まれる。
 
 前年ほどではないものの平年より高温・乾燥した状況が続いた、EU最大の砂糖生産国フランスにおけるてん菜生産の落ち込みが響き、砂糖生産量は1794万トン(同1.9%減)とわずかに減少すると見込まれる。生産量が消費量を下回ると予想されることから、輸出量は107万トン(同43.9%減)と大幅に減少すると見込まれる。

ポーランド、「砂糖税」の導入は2021年に延期か
 ポーランド政府は2月6日、肥満人口の増加を抑制するために、糖類を含む飲料に課税する法案を閣議決定した。しかし、今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生によって経済が深刻な影響を受けるとの懸念が強まったことから、同政府は3月10日、法案が成立しても課税開始を2021年まで猶予する考えを示した。
 
 この法案は、糖類を含む飲料について、1リットル当たり0.5ズロチ(15円)が一律で課税され、カフェインやタウリンを含む場合は同0.1ズロチ(3円)が上乗せされる。さらに、糖類含有量が100ミリリットル当たり5グラムを超過する飲料の場合は、1グラムを超過するごとに1リットル当たり0.05ズロチ(1.5円)が課税される仕組みとなっている。
 
 同国保健省は、これによる税収の96.5%を基金として積み立て、糖尿病や心血管疾患、ガンなどの疾病対策に充てる計画を発表している。
 
 LMC Internationalによると、同国の1人当たりの年間砂糖消費量は約50キログラムと、日本人と比べて約3倍の砂糖が消費されている。また、国連食糧農業機関(FAO)によると、18歳以上のポーランド国民の肥満割合は年々増加しており、2016年の時点で約4人に1人が肥満とされる。
表5
(参考)EU
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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