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タイ王国のサトウキビ研究開発を先導するミトポンサトウキビ研究所

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最終更新日:2020年4月10日

タイ王国のサトウキビ研究開発を先導するミトポンサトウキビ研究所

2020年4月

琉球大学農学部 渡邉 健太

【要約】

 世界でもトップクラスの製糖企業であるミトポングループ(Mitr Phol group)は、タイ東北部にサトウキビ専門の研究所を有しており、育種や病害虫防除を担当する作物生産部門、工程管理の改善や新製品の開発を担う製糖技術・糖製品部門、原料糖や製糖副産物の高付加価値化を目指すバイオ製品・バイオエネルギー部門に分かれ、日々研究開発に取り組んでいる。

はじめに

 ミトポングループは、タイを中心にラオス、中国、豪州に事業を展開する世界的な製糖企業である。グループ全体の2018/19年度のサトウキビ圧搾量は約4000万トン、砂糖生産量は470万トンと世界第2位の規模を誇る(図1)。また、砂糖生産だけでなく、コージェネレーション(熱電併給)による発電および売電、糖みつまたは圧搾汁を使ったバイオエタノールの製造、サトウキビの搾りかす(バガス)を使った木質ボードの生産なども行っている。同社の有する六つの管轄地の中でもプーキアオ(Phukhieo)地区には、グループ最大規模の原料糖生産工場のほか、精製糖工場、バイオ電力工場、バイオ燃料工場を統合したコンビナートが形成されている(図2、写真1)。ミトポンサトウキビ研究所(以下「研究所」という)は、同グループの研究開発および生産者への技術移転を目的として1997年にプーキアオに設立された、タイ初となる民間のサトウキビ研究機関である(写真2、3)。

 筆者は、2017年4月から2019年9月までの2年半、海外研究員の一人として同研究所に勤務し、タイのサトウキビ研究に携わる機会をいただいた。本稿では、研究分野ごとに研究所の活動内容について取りまとめたので報告する。
 

 

 

 

 

1.ミトポンサトウキビ研究所の構成

 研究所には、80人以上の研究員(うち博士号取得者20人)が勤務しており(写真4)、主に作物生産、製糖技術・糖製品、バイオ製品・バイオエネルギーの三つの部門に分かれて、日々研究開発を行っている(図3)。作物生産部門および製糖技術・糖製品部門のメンバーはプーキアオ地区にある本所勤務だが、バイオ製品・バイオエネルギー部門メンバーの一部はパトゥムターニー県のタイランド・サイエンスパーク内にある第2研究所で働いている(図2参照)。各部門の中には研究分野によってさらに細分化されたチームも存在し、日常業務やプロジェクトを共同で行うことになる。これらの研究開発部門に属するメンバーは、博士号取得者を中心に各分野のスペシャリストから構成されており、極めて専門性の高い研究を可能としている。加えて、自身で研究開発を行うことはまれだが、世界の研究開発に関する動向の調査や特許の取得、産学連携の推進などを担うイノベーショングローバルソーシング部門がバンコク県のミトポングループ本社内に存在する。次章からは、研究開発を行う三つの部門について具体的な研究内容を交え紹介する。

 ちなみに、外国人は筆者を含め数人であり、研究員のほとんどがタイ人であった。ありがたいことに多くのタイ人研究員が英語でコミュニケーションできたため、2年半滞在したにもかかわらず筆者のタイ語はとうとう日常会話レベルに達しなかった。

 

 

2.作物生産部門

 タイでは、コーンケーン3(Khon Kaen 3、KK3)が最も主要な品種であり、ミトポングループの管轄するサトウキビ農地の約90%を同品種が占めている。KK3は、タイの重要病害であるサトウキビ白葉病に対して感受性があり、干ばつへの耐性も高いとは言えない。このような単一品種のモノカルチャー(特定の一種類の農作物を栽培すること)はリスク管理の面から非常に不利であることから、研究所ではKK3に代わる新品種の育成・普及に取り組んでいる。高単収・高糖度といった基本的な形質の他、干ばつ・たん水耐性、病虫害抵抗性、機械化適応性、高繊維分などの新たな育種目標を掲げている。育種チームは、研究所から西に100キロメートルほど離れたペッチャブーン県ナムナーオに交配施設を有している(写真5、6)。同地区は、タイの中では比較的冷涼な山間部に位置し、他地域と比較し出穂が生じやすいため、交配地として選出されたという経緯がある。規模はそれほど大きくないが、数ヘクタールの土地で200以上の系統を栽培している。研究所は、その中で2017/18年度に新品種として登録されたプーキアオ1(Phu Khieo 1、PK1)を近隣の農家へ配布している。サトウキビの育種過程は長く、新品種の育成に通常10年以上を要するが、研究所では近年従来法に加え、DNAマーカーを利用した効率的な育種方法の開発にも取り組んでいる。現在は目標形質と関係の深い遺伝子を明らかにするなど基礎的な情報を集めている段階である。

 研究所は、組織培養技術を利用した病原菌フリー苗の生産も行っており、研究所内での試験に利用されている(写真7)。育種チームは、研究所の中でも最も規模が大きく多額の予算が使われていることから、期待の大きい研究分野である。

 植物防除チームは、タイの病害虫や雑草の生物的防除に関する研究を行っている。図4は、タイにおける主要病害の発生状況を示している。サトウキビ白葉病はその中でも最も重要な病害として位置付けられており、年によって異なるがその被害額はミトポングループだけでも年間7億〜20億円に上るという。病原体はファイトプラズマで、感染経路は媒介虫であるヨコバイ類による場合と感染したサトウキビを種苗として利用する場合の二通りがある1)。発病したサトウキビは、葉の黄化とともに成育速度が低下し、その後葉の白化を経て枯死に至る(写真8、9)。特に株出し時に被害が顕著であるため、株出し回数の低下や低収の一要因となっている。感染後の治療は不可能で、今のところ抵抗性品種や有効な防除法は存在しない。研究所は、近隣諸国とタイで発見された白葉病系統の比較やサトウキビと()(じょう)の雑草などに発生した系統の比較、各品種の葉の厚さと媒介虫誘引効果の調査、白葉病に対する抵抗性誘導因子の開発など多岐にわたる研究を行っている。

 

 

 

 また、タイでは「Sugarcane stem boring grub」というコガネムシの幼虫による被害が甚大であり(写真10)、同チームはメタリジウム(Metarhizium)という昆虫病原糸状菌を利用した生物防除法の研究を行っている。メタリジウム菌を幼虫に接種すると、菌の産生する毒素で幼虫は死に至る。その致死率は、接種9日後で100%に達する。接種後、湿度が十分な場合、緑色の菌糸が体表面を覆い、胞子が生産される(写真11)。研究所は、このメタリジウム菌の胞子をカプセルに封入した製品を開発し、5〜6月に肥料と同時に施用することを推奨している。製品は、1ヘクタール当たり2000〜2500バーツ(7100〜8875円)と安くはないが、施用により1ヘクタール当たり13〜26トンの増収、同3500〜7000バーツ(1万2425〜2万4850円)の増益となるため費用対効果が高い。

 その他、アカシアやユーカリの葉の抽出物を用いた除草剤やタバコの製造過程で生じる副産物を用いた殺虫剤など環境負荷の少ない生物農薬の開発にも取り組んでいる。

 

 

 研究所の位置するタイ東北部は、雨季の5〜10月に降雨が集中しており、11〜翌4月の乾季の降水量は極めて少ない。そのため、サトウキビの植え付けは雨季の終わりに当たる10〜11月ごろに土壌に残った水分を利用して行われることが多い。東北部は、保水能力の低い砂質土壌が分布しており(写真12)、サトウキビの安定生産には乾季の水管理が非常に重要である。筆者の所属していたかん水・肥培管理チームは、バイオ製品・バイオエネルギー部門の研究員と協力し、バガスを配合した吸水ポリマーの製造およびその実証試験を行っている。ポリマーは水に漬けると数百倍にも膨れ上がることから(図5)、ポリマーを施用した土壌の保水性は大きく高まる。植え付け後にかん水を制限するストレスをかけた試験を行ったところ、サトウキビの発芽率および初期成育はポリマー施用により向上した(図6)。製造コストや分解性などの問題もあるが、本技術が確立されれば同地域の干ばつ対策の一助となるため、今後の研究成果に期待がかかる。

 また、土壌ではなくサトウキビの根が持つ吸水能力の観点から干ばつ問題を捉えた研究もある。筆者らは、大型のコンクリートポットを用いて肥料の施用位置や水ストレスの有無が根の成長に与える影響について調査した(写真13)。水ストレス期間中、根は伸長を停止させるが、再かん水後はストレスを受けなかったサトウキビより根の成長速度が高まることが明らかになった。

 同チームは、他にも新製品の緩効性肥料やpH矯正を目的としたベントナイト(鉱物を主成分とする粘土の総称)土壌、エタノール蒸留残さ液(ビナス)の施用効果など土壌理化学性の改善に関する幅広い研究を行っている。また、北部ターク県メーソートではサトウキビの収穫を行っていない時期を対象に数カ月で収穫可能なスイートソルガムを栽培し、バイオエタノール工場の稼働期間を拡大させる試みも行っている。

 

 

 

 

 情報技術チームは、衛星画像データやドローンなどの高度な技術や機械を用いたスマート農業の開発に取り組んでいる。具体的には、地理情報システムを用いて各圃場の情報(圃場位置、植え付け日・収穫日、予想収量)を蓄積したり、衛星画像データを用いて作物の成育状況を把握したりしている。人工衛星のうち、Sentinel-2やLandsat-8は可視光から近赤外光までの波長域のデータを収集する。一方、Sentinel-1はそれよりも長波長のマイクロ波を対象とする。前者からは直感的に分かりやすい可視光画像が、後者からは天気や時間帯に影響されないレーダー画像が入手可能である(図7)。このように、状況に応じてタイプの異なる衛星データを利用し植生指数を計算することで、より成長解析の精度を高めることができる。また、サトウキビ農地を拡大するに当たり、水や土壌などの重要な因子を衛星画像から入手し、その地域のサトウキビ栽培への適性を評価する試みもなされている。今後は、高精度な気象予報データに基づくかん水方法の提案や病害虫発生の予測とそれに基づく適切な防除法の提案を行う予定である。

 

3.製糖技術・糖製品部門

 同部門は、研究所敷地内にパイロットプラント(ほぼ実際の工場と同様の機能を持った小型の実用プラント)を有しており、実践的な研究が可能となっている(写真14)。工程管理に関しては、清浄工程で投入する凝集剤の種類や量を変化させ清浄化の効率を検証した研究や化学物質によらない膜技術で圧搾汁から水だけをろ過した研究などがある。また、この膜技術を利用してラカンカと呼ばれるウリ科つる植物の果実から甘味成分を抽出し、甘味料として利用する試みも行っている。筆者は、所属する部門は異なるものの、彼らの協力を得て、工場内でのサトウキビ圧搾汁中のミネラル含量のモニタリングにも携わった(写真15)。圧搾汁中にカリウムや塩素といったミネラルが多量に存在すると、スクロースが可溶化し原料糖生産工程の遠心分離の効率を悪化させるため、サトウキビ栽培段階での施肥管理を通じてミネラル含量を低減させられないかと考えたためである。

 

 

 サトウキビの品質劣化とは、収穫前の低温や火入れ、収穫後の刈り置き、不衛生な工場環境などが原因で、サトウキビに含まれるスクロースがデキストランやマンニトールなどの製糖阻害物質に変化する現象のことである。研究所は、これらの製糖阻害物質を正確に定量する方法を考案したり、分解酵素の利用により製糖過程でのデキストラン量を低減する試みを行ったりしている。また、収穫後管理に関する研究も行っている。タイでは、いまだ火入れを行った後に手刈りを行う焼き畑による収穫が多いが、プーキアオ工場界隈(かいわい)では搬入される原料の半分が火入れせず機械で収穫されている。推奨されている収穫から圧搾までの時間は、火入れせず手刈りで収穫された原料で36時間以内、焼き畑で収穫された原料で24時間以内、機械収穫で6時間以内とされている。歩留まりに大きく影響を与え、また改善効果が大きいことからも、各原料に応じた適切な収穫後管理を行う必要がある(写真16、17)。

 

 

 日本の黒糖のような含みつ糖は、タイでは露店などのローカルマーケットで売られたり、家庭内で作られたりするのみで、あまり量産されていない。同部門は、含みつ糖の市販化を目指し、高ミネラルの砂糖製品の製造に取り組んでいる(写真18)。筆者も日本で作られた黒糖や和三盆を参考材料として提供したこともある。また、同一結晶格子内に二つ以上の分子が存在する「共結晶」と呼ばれる結晶性物質の製造も行っている。共結晶は、単に物質が物理的に混ざり合っているだけでなく、水素結合などにより結晶化しているため、溶解性や水和安定性などが改善される。

 研究とは直接関係ないが、同部門の研究員は時折、搾りたてのサトウキビジュースを用いてフローズンドリンクやアイスキャンディーなどを作り(写真19)、休憩時間のおやつとして楽しんでいる。辛い物だけでなく甘い物も好きなタイ人には大人気であった。

 その他、同部門はサービスラボと呼ばれる、分析室の運営も行っている。研究所内外のサンプルを対象に、サトウキビ葉身の元素含量、原料茎の糖度・元素含量、糖みつやバガスの元素含量、土壌や有機肥料の理化学性など広範囲の分析を請け負っている。

 

 

4.バイオ製品・バイオエネルギー部門

 同部門は、一次製品である原料糖やその生産過程で生じるバガスやフィルターケーキ、糖みつといった製糖副産物の高付加価値化に関する研究を行っており、その中でもバガスにはさまざまな用途がある。バガスは、主にセルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成されているが、バガスから各成分を抽出する方法も多様であり、効率的な抽出方法に関する研究がなされている。

 難消化性のキシロオリゴ糖は、血圧を制御したり脂質を吸収したりする効果を持つとされるプレバイオティクス(大腸内の特定の細菌の増殖および活性を選択的に変化させることにより、宿主に有益な効果をもたらす難消化性食品成分)である。人間や動物体内に存在する酵素によって分解されないことから、食品や飼料への添加物として利用される。キシロオリゴ糖の生産には、ヘミセルロースの主成分であるキシランを加水分解するキシラナーゼという酵素が必要となる。研究所は、在来系統である細菌Bacillus haloduransによって産生されるキシラナーゼより高い活性をもつ系統を探索したり、キシラナーゼの産生に適した培地の検討を行ったりしている。最終的には生産したキシロオリゴ糖を使った試作品の開発も行う予定である。

 フラクトオリゴ糖は、スクロースに1個以上のフラクトース残基が結合したオリゴ糖類で、ビフィズス菌やミネラルの吸収を促進する作用があるプレバイオティクスである。スクロースにβ-フラクトフラノシダーゼという酵素を作用させることで生成できる。キシロオリゴ糖同様に、研究所では高いβ-フラクトフラノシダーゼ活性を持つ系統の探索や生産効率の高い環境の検討を行っている。

 サトウキビ産業において酵母は一般的にエタノール生産に用いられるが、研究所では新たなタンパク源として食品や飼料に添加する利用方法を考えている。酵母は、さまざまな種類の炭素源を糧に速やかに増殖することができ、また乾燥重量ベースで細胞の40〜50%がタンパク質で構成されていることから、貴重なタンパク源になり得る。研究所において工場などから単離された酵母数十系統のタンパク質含量を調査したところ、フィルターケーキから単離した系統で市販の酵母よりも高い含量を示すものが認められた。これらの酵母をさらに温度やpHなどでスクリーニング後、耐性のあるものを飲料に添加し、プロバイオティクス(宿主の健康に好影響を与える生きた微生物菌体)製品を開発する計画もある。

 その他、バガスを配合した吸水ポリマーや家畜飼料(写真20)、フィルターケーキ、糖みつを用いたバイオ肥料(写真21)など製糖副産物を利用した高付加価値製品が製造されており、実用化に向けた試験が行われている。

 

 

5.地域住民との関わり

(1)生産者への栽培指導

 作物生産部に属する研究員は、定期的に各地の集会所へと出向き、生産者を対象に効率的な病害虫防除法や肥培管理法に関する講演を行っている(写真22)。また、筆者の退社後ではあったが、2019年11月には一般の方々を研究所へと招待するオープンハウスと称したイベントを開催した(写真23)。マスコミが集まったこともあり、普段はなかなか公開できない技術や製品について一般の方にも広く知っていただき、研究所の活動について大きく宣伝することができた。さらに、研究所敷地内には学習センターを建設中であり、センター訪問者は研究所の開発した製品や新品種について学ぶことができる。

 

 

(2)生産者による新系統評価

 育種過程初期段階における各系統の評価は、主に研究所の育種チームが担当するが、最終段階の現地適応性検定試験では地域の生産者を招き、研究員同様に評価を行ってもらっている(写真24)。ある年の系統評価結果では、基準品種であるKK3より新系統を選ぶ生産者が圧倒的に多かった(図8)。このように実際に新品種を使用する生産者の意見を取り入れることで彼らがどのような品種を求めているかを把握でき、また登録後も新品種を普及させやすいという効果がある。各系統・品種の前には交配組み合わせや単収・糖度などの情報を記したボードがあり、生産者はスマートフォンを使ってQRコードを読み取ることで簡単にそのデータを入手できる(写真25〜27)。


 

 

 

 

(3)小学生へのサトウキビ教育プログラム「Connext ED」

 研究所は、時折近隣の小学校の生徒を招き、サトウキビについて講演し、研究所が行っている活動を子どもたちに知ってもらう「Connext ED(connectとnextをつなげた造語と思われる。EDはeducation)」というプログラムを行っている。フィールドを散策しながらサトウキビの形態や栽培方法について学んだり、一芽苗を植え付けたりと、一日のプログラムを終えると子どもたちのサトウキビに関する知識はかなり深まる(写真28〜30)。日本人ということで、中には筆者に興味を持ってくれる子もいた。あいにく現地の言葉をほとんど話せなかったため交流は難しかったが、サトウキビと触れ合い楽しそうな子どもたちの顔を見ることができたのは良い思い出である。大きくなった彼らの中には将来この研究所で働く者が現れるかもしれない。彼らが何か少しでも筆者から感じとってくれたことがあれば光栄である。

 

 

 

おわりに

 これまで紹介したように研究所は、サトウキビ生産者や糖業関係者が現場で直面している課題から将来を見据えた高付加価値化製品の製造まで幅広い分野を対象に研究開発を行っている。そこで勤務する80人以上の研究員たちは、各分野の最先端を行く専門家の集まりであり、まさしくタイのサトウキビ研究を先導する存在と言えるだろう。一方で、例えばバイオ製品・バイオエネルギー部門の研究員の中には畑で育つサトウキビに触れたことがない者もおり、他分野への興味・関心があまり感じられないこともあった。実際、自身の属する部門・チーム以外の研究を詳しく把握できている研究員はごくわずかであったと思う。他分野の知識があることで自身の研究を飛躍的に進められることもあるので、今後は各分野のつながりをより強めていく必要があるだろう。

 ミトポングループは、タイ国内では知らない人がいないほどの大企業である。企業のイメージアップも兼ねてのこととは思うが、種々のイベントを通して栽培指導や教育・人材育成など地域住民と積極的に交流を図る研究員の姿は非常に印象的であった。このように研究開発以外の活動にも注力する点はぜひ見習っていきたい。

 最後になるが、タイへと招待してくださった所長のKlanarong Sriroth博士をはじめ、2年半もの間ともに勤務したミトポンサトウキビ研究所のメンバーにはこの場では伝えきれないほど大変感謝をしている。見ず知らずの土地で言語も分からないまま始まった海外生活であったが、大好きなサトウキビの研究に携わる機会をいただき、かけがえのない良き仲間と出会えたことは今後の人生の中でも忘れられない貴重な経験となるだろう(写真31)。同研究所で学んだことを糧に今後も研究活動に励み、いつかまたこの地を訪問できる日が来ることを心から願っている。

 

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272



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