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ルビーチョコレートとサステナブルチョコレートについて

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最終更新日:2020年6月10日

ルビーチョコレートとサステナブルチョコレートについて

2020年6月

バリーカレボージャパン株式会社 押切(おしきり) 一浩
 

はじめに

 バリーカレボーグループ(以下「バリーカレボー」という)はチューリッヒ(スイス)に本社を置く、高品質のカカオとチョコレート製品の世界有数のメーカーです。原料の調達から最高級のチョコレート製造まで、バリューチェーンのすべての段階に熟練しています。日本では群馬県高崎市に本社・工場を構え、東京都品川区大崎には、チョコレートの専門知識や技術の指導を行う、チョコレートアカデミーを設置しています。

 本稿では、チョコレートに関連して最近注目を集める二つの話題についてご紹介します。一つ目は、第4のチョコレートとして最近開発された「ルビーチョコレート」について、二つ目は私たちが力を入れている、持続可能性に配慮した「サステナブルチョコレート」についてです。

1.日本のルビーチョコレートについて

 日本の消費者は探求心が強く、製品知識も豊富です。そのような中で、最近、認知度の高まっているチョコレートに「ルビーチョコレート」があります(写真1)。

 

 ルビーチョコレートは、ダーク、ミルク、ホワイトに続き、約80年ぶりに発表された第4のカテゴリーのチョコレートで、美しいルビー色、濃厚なフルーティーさ、フレッシュで酸味を感じる香りが特徴です。

 ルビーチョコレートには、着色料やフルーツのフレーバーは一切使用されていません。ルビーカカオ豆内に天然に存在する独特な成分により、これまでになかったルビー色でフルーティーなチョコレートが生まれました。外観はルビー色をしていますが、使用されるカカオ豆は、ブラジル、コートジボワール、エクアドルなど一般的な産出国で育ちます。選別されたカカオ豆を用い、特別な製造加工方法でルビーチョコレートは製造されます。

 このルビーチョコレートが日本で発売され、約2年が経ちました。2020年に行った意識調査において、日本におけるルビーチョコレートの認知度は、約49%となりました(図)。また、食べたことがある人は約17%でした。昨年の同調査と比較すると、ルビーチョコレートの認知度は6.4ポイントアップして全体の約半数に、ルビーチョコレートを食べたことがある人は約12ポイントアップとなり、ルビーチョコレートが多くの人の生活に浸透してきています。

 ルビーチョコレートを使用したメニューをどのようなときに食べたいか聞いたところ、1位は「誕生日」でした。誕生日という特別な日にルビーチョコレートを食べたいという方が多くいることが分かりました。続いて2位は僅差で「バレンタイン」が選ばれました。また、「日常的に」と回答した人が、「クリスマス」を凌いで3位になり、2019年にコンビニエンスストアやスーパーマーケットでも手に入るようになったことから、日常生活にもルビーチョコレートが浸透していることが分かりました。
 
 
 

2.サステナブルチョコレートについて

 チョコレート産業の生産現場は、「貧しい農家」「低い生産性(カカオ豆)」「児童労働」「森林破壊」など、将来的に供給を脅かす深刻な問題に直面しています。

 チョコレート産業の未来を確保するために、バリーカレボーは、チョコレートのバリューチェーン内のすべての業界関係者との持続可能性運動を根強く支持してきました。2016年には、2025年までに持続可能なチョコレート(サステナブルチョコレート)を標準にする大胆な計画である「フォーエバーチョコレート」計画を立ち上げました。バリーカレボーのサプライチェーンの50万人以上のココア農家を貧困から脱却させ、児童労働を根絶し、森林ポジティブ(注1)、カーボンポジティブ(注2)を実現し、すべての製品に100%持続可能な原材料を使用する計画です。この計画達成に向けたそれぞれの取り組みの一例を紹介します(詳細については、英語版のみとなりますがバリーカレボーのホームページ〈https://www.barry-callebaut.com/ja-JP/group/forever-chocolate-our-plan-make-sustainable-chocolate-norm〉に掲載していますので、ご参照ください)。

(注1)明確な定義はないが、世界自然保護基金(WWF)によると、科学的根拠に基づく森林資源の利用、管理により多様で健全な森林を育てること。
(注2)温室効果ガスの吸収量が排出量を上回ること。

(1)ココア農家の貧困からの脱却

 カカオ豆の原産国では、栽培技術の未熟さに加え、樹齢の老化、必要な肥料を調達するための資金が乏しいなどの事情により収量が不安定となる結果、極度の貧困に陥っている農家が多数います。

 私たちは、営農指導や農業資材の提供、カカオの苗木の配布などを通じて農家が十分な収入を得られるよう支援しています。また、原産国の政府などと積極的に協働しながら、地域全体の生活水準の底上げにも取り組んでいるところです。

(2)児童労働の根絶

 西アフリカのカカオ豆の原産国では、いまだに多くの児童労働が行われています。子どもたちが働かざるを得ない事情には農家の貧困が根底にあると考えていますが、それを解決するだけでは十分ではありません。児童労働が行われる背景には、経済的、社会的、文化的な要因が複雑に絡み合っているからです。

 私たちは、この問題解決に貢献するため、まずは親や住民に対して学校教育の重要性について説明し、児童労働の根絶の必要性への理解を呼びかけています。また、住民らで児童労働を監視する体制づくりの支援も進めています。

(3)森林ポジティブ、カーボンポジティブの実現

 森林破壊は、地球温暖化の最大の原因の一つと考えています。農地の開墾を目的とした「焼き畑」もCO2を大気中に放出するとともに、CO2の吸収源である森林を減少させます。気候変動は、特に農業に深刻な影響を及ぼします。深刻な干ばつに陥れば、かんがい設備が整っていない地域や水資源が乏しい地域では、もはや農業の継続は不可能です。

 私たちは森林破壊をなくし、森林ポジティブを実現するため、サプライヤーや政府と協力しながら、原材料の生産履歴の整備(トレーサビリティの導入)を進めています。また、自社のカーボンフットプリント(原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでの商品のライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算した数値で表示したもの)だけでなく、サプライチェーン全体のカーボンフットプリントの正確な把握に努めています。これにより、CO2の排出削減を優先的に取り組む分野を特定することができます。

 こうした取り組みの結果、2018/19年度に私たちが調達した原材料の51%は、持続可能な方法で生産されたものでした。これは、前年度に比べ約16%増加しています。今年度は、この割合をさらに高められるよう、より多くの努力を注いでいます。

 最後に、持続可能性の問題に対する日本の消費者の意識は、国連の2030年の持続可能な開発目標(SDGs)に対する日本政府の強いコミットメントにより、前例のないレベルにまで上昇したものと思われます。これは、チョコレートメーカーとチョコレート職人が、サステナブルチョコレートを日本で標準にするという共通の目標のもとで団結する絶好の機会になると信じています。私たちは、サステナブルチョコレートの生産を通じて、ココアの将来の供給を確保し、農家の生計を改善することにこれからも取り組んでいきます。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272