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令和元年産てん菜の生産状況について

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最終更新日:2020年6月10日

令和元年産てん菜の生産状況について

2020年6月

北海道農政部生産振興局農産振興課

【要約】

 生産者の高齢化に伴う労働力不足などにより、てん菜の作付面積は減少しており、令和元年は糖分取引移行後、最も少ない5万6344ヘクタールとなった。

 一方、元年産の収穫量は、5月の強風の影響により再播(さいはん)や他作物への転換などが行われたが、6月以降、気温は平年並みから高めに推移し、病害虫の発生も平年より少なくなったことから、根部肥大が順調に進み、過去10年で最も多い398万5590トンとなった。

 その結果、10アール当たり収量は7074キログラムとなり、これは過去最高を記録した平成16年の6848キログラムを大きく上回るものとなった。

 糖度は平年並みの16.8%、歩留は16.3%となり、砂糖生産量は65万1155トンとなった。

1.最近のてん菜の作付動向

 てん菜は、北海道の畑作経営の輪作体系を維持する上で基幹的な作物であるとともに、てん菜糖業は地域経済の維持・発展に重要な役割を担っており、平成12年以前の作付面積は7万ヘクタール前後と安定して推移していた。

 近年、生産者の高齢化や経営規模の拡大に伴う労働負担の大きいてん菜から他作物への作付転換、天候不順などにより、作付面積は減少傾向で推移しており、24年から6万ヘクタールを下回るようになり、令和元年の作付面積は昭和61年の糖分取引移行後最小を更新する5万6344ヘクタールとなっている(図1)。
 

2.令和元年産てん菜の生育概況

 播種(はしゅ)期および出芽期はほぼ平年並みであり、融雪期以降、降水量は少なく推移したことから移植作業は順調に始まり、移植後の活着もやや良好であった。

 オホーツク管内を中心に、5月中旬の強風により移植苗や直播(ちょくはん)により出芽した個体が枯死し、被害を受けた地域では、補植・再播、他作物への転換が行われ、ほ場間の生育差が見られたが、生育は徐々に回復した。

 6月以降、気温は平年並みから高めに推移し、地域によっては少雨の時期もあったものの、全道的に草丈・葉数は平年を上回り、根部肥大も順調に推移した。生育は平年より4〜5日早く推移した(表1)。

 病害虫については、褐斑病、根腐病および西部萎黄病の発生量は平年より少なく、そう根病は平年並みとなった。ヨトウガは、発生期は早かったが、第1回目、第2回目の発生期ともに平年より少なく、テンサイモグリハナバエの発生も少なかった。
 

3.令和元年産てん菜の生産状況

 令和元年産てん菜の作付面積は、前年産と比べ865ヘクタール減少し5万6344ヘクタール(前年比98.5%)、10アール当たり収量は、763キログラム増加し7074キログラム(同112%)、生産量は、37万5062トン増加し398万5590トン(同110%)になった。

 また、平均根中糖分については、平年並みの16.8%となったが、前年産を0.4ポイント下回った(表2、図2)。
 
 品種別の作付構成は、「カーベ2K314」(34.4%)、「パピリカ」(25.4%)、「アンジー」(13.2%)、「リボルタ」(9.6%)の順となっている(表3)。

 「カーベ2K314」は、褐斑病やそう根病の抵抗性が優れており、「パピリカ」は、そう根病抵抗性に優れ根重が多く、作付けは増加傾向になっている。

 また、平成29年に優良品種に認定された「ライエン」も、そう根病抵抗性に優れ糖量が多く、作付けは増加傾向となっている。
 
 てん菜の作付け戸数は全道的に減少傾向が続いており、令和元年は10年前(平成21年)と比べ1999戸減少(23%減少)し、6856戸となった。

 一方、1戸当たりの作付面積は8.2ヘクタールと、10年で0.9ヘクタール増加している(表4)。労働力不足の中でこうした作付規模の拡大に対応するため、近年では、春の育苗・移植作業に要する労働力を大幅に削減できる直播栽培に取り組む地域が増加しており、令和元年の直播栽培の面積は、前年より1008ヘクタール増加し、1万5731ヘクタール(作付面積の27.9%)となり、作付面積全体の4分の1を占めている(図3)。

4.てん菜糖の生産状況

 北海道内の製糖工場は、3社で8工場を操業しており、令和元年産原料処理量は398万5590トンで前年比110%となった。また、歩留は前年産を下回ったが、砂糖生産量は65万1155トンとなり、同106%であった(表5)。
 

おわりに

 令和元年のてん菜生産については、近年の労働力不足や天候不順などにより作付けが減少傾向にある中、作付面積が昭和61年の糖分取引移行後最小となるとともに、5月の強風による被害を受けたものの、生産者の方々のたゆまぬ尽力により、10アール当たり収量は過去最高の7074キログラムとなり、糖分は平年並みの16.8%となった。

 てん菜は、本道畑作農業における基幹的な輪作作物であり、てん菜糖業は地域経済の維持・発展に重要な役割を果たしていることから、生産の維持・拡大を図っていくことが重要である。

 今後とも、生産者団体、製糖業者、行政などの関係者が連携し、低コストで省力的な持続的生産体制の確立や複合耐病性があり糖量の多い品種の育成・導入、気候変動に対応する風害・湿害対策の徹底など、安定生産に向けた取組をより一層、推進していく必要がある。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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