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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年5月時点予測)

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最終更新日:2020年6月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年5月時点予測)

2020年6月

本稿中の為替レートは2020年4月末日TTS相場の値であり、1インド・ルピー=1.58円、1米ドル=108(107.87)円である。
ブラジル
2020/21年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅に増加する見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2020年5月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2020/21年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、原油の国際価格の動きに不安定さが見られ、バイオエタノール需要も不透明感があるものの、バイオ燃料など再生可能エネルギーの生産・利用の促進を図るブラジルの国家政策「RenovaBio」の本格始動が生産意欲を後押しする可能性があることも踏まえ、859万ヘクタール(前年度同)と横ばいで推移すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、生育期間を通じて天候がおおむね良好で生育が順調であることから、6億5100万トン(前年度比1.6%増)とわずかに増加すると見込まれる。

 バイオエタノール需要の減退懸念などを受け、多くの製糖業者が砂糖生産に回帰する動きが見られることから、砂糖生産量は4196万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同31.9%増)と大幅に増加すると見込まれる。この予測の下、ブラジルの通貨レアルが米ドルに対して安値圏で推移することで、輸出意欲を刺激することとも相まって、輸出量は3225万トン(同59.1%増)と大幅に増加すると見込まれる。

サトウキビの製糖への仕向け割合、2019/20年度は過去最低水準に
 ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)は4月23日、2020年3月末で終了した2019/20年度(4月〜翌3月)第4回サトウキビ生産状況等調査結果を公表した(注)。これによると、サトウキビの収穫面積は、砂糖の国際価格の低迷を受けて他作物への転作が行われたことで844万ヘクタール(前年度比1.7%減)とわずかに減少するものの、天候に恵まれ、単収が前年度から増加したことで、サトウキビ生産量は6億4272万トン(同3.6%増)とやや増加すると見込まれる。また、サトウキビの品質が良好であったことを受け、1トン当たりの回収糖分(ATR)が前年度と比べて増加し、砂糖生産量は2980万トン(同2.6%増)とわずかに増加する見込みである。

 同年度におけるサトウキビ由来のバイオエタノール生産量は過去最高の340億リットル(同5.1%増)と見込まれており、前年度より多くのサトウキビがバイオエタノール生産に仕向けられることで、サトウキビの製糖への仕向け割合は34.9%(同0.6ポイント減)と、記録の残る2005/06年度以来最も低くなると予測される。

(注)同調査は、同年度におけるサトウキビ、砂糖およびエタノールの生産予測を四半期ごとに公表するものである。
表2
(参考)ブラジル
インド
2019/20年度、砂糖生産量は減少するものの、輸出量は増加する見込み
 サトウキビの主産地であるマハラシュトラ州で発生した豪雨による大規模な()(じょう)の浸水被害などが影響し、2019/20年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は461万ヘクタール(前年度比10.5%減)とかなりの程度減少し、サトウキビ生産量は3億6277万トン(同11.8%減)とかなり大きく減少すると見込まれる(表3)。

 サトウキビの減産や生育不良によってサトウキビの糖度が低下した影響で、砂糖生産量は2911万トン(同18.7%減)と大幅に減少すると見込まれる。生産量は前月から上方修正されたものの、下記の通り国内市場に販売できる砂糖の数量が削減され、インド政府による輸出促進政策(同政府は2019/20年度に「砂糖輸出量600万トン」の目標を設定)達成への動きが見られることから、輸出量は580万トン(同5.5%増)と前月の減少予測から一転して増加すると見込まれている。

砂糖需要の減少を受け、5月の砂糖の販売割当数量を削減
 インド消費者問題・食料・公共配給省は4月29日、国内の製糖工場545工場に対する5月分の砂糖の販売割当数量(以下「割当数量」という)を合計170万トンとしたと発表した(注)。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を防ぐための全国的な都市封鎖により、国内の砂糖需要が減少していることを受けて、5月の割当数量は前年同月から40万トン、前月から10万トン削減された。

 現地報道によると、菓子や飲料などの食品メーカーが都市封鎖によって工場の操業を停止していることから、砂糖の需要が少なくとも100万トンは減少すると予測されている。製糖業者は砂糖の販売に苦戦を強いられているため、同省は4月の割当数量を5月に繰り越すことを特例で認めるとも発表した。

(注)砂糖の過剰在庫を抱えるインドでは、供給過多による値崩れを防止するため、国内市場に販売できる砂糖(貧困層向けに低価格で配給される砂糖以外の砂糖)の量は、同省の命令に基づき月ごとに上限が設けられている。

インドネシアへ粗糖20万トン、精製糖15万トンを輸出か
 現地報道によると、インドの輸出業者は4月下旬、インドネシアへ粗糖20万トン、精製糖15万トンをそれぞれ輸出する契約を締結したとしている。現状、インド国内のほとんどの港は、COVID-19による都市封鎖によって本格的に機能していないことから、同国西部のムンドラ港のみで船積みされ、5月15日〜20日にインドネシアに到着するとみられる。関係者によると、粗糖の契約金額は1キログラム当たり20.7〜21.0ルピー(32.7〜33.2円〈FOB価格(注)〉、精製糖は、1トン当たり335〜340ドル(3万6180〜3万6720円〈同〉)としている。

 現在、インドの主な砂糖輸出先は、インドネシアとイランに限られている。これは、スリランカやアフガニスタン、シンガポールからの需要もあるものの、各国で実施されている都市封鎖の影響で物流が停滞し、輸出できない状況にあるためとされる。通常、インドネシアは主にタイから砂糖を輸入しているが、タイの砂糖生産量が干ばつの影響で大幅に減少したため、今回の契約で砂糖需要を賄おうとしているとみられる。

(注)輸出国における船積み価格。
表3
(参考)インド
中国
2019/20年度、輸入量は大幅に増加する見込み
 2019/20年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は118万ヘクタール(前年度比3.5%減)とやや減少し、天候不順で停滞していたサトウキビの生育状況に回復の兆しが見られるものの、収穫面積の減少による影響を相殺しきれず、サトウキビ生産量は7769万トン(同1.1%減)とわずかに減少すると見込まれる(表4)。てん菜の主産地である内モンゴル自治区でヨトウムシなどによる害虫被害が発生したことから、てん菜の収穫面積は21万ヘクタール(同12.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。生育期間を通じておおむね天候に恵まれ、てん菜の根中糖分は前年度を上回って推移しているものの、収穫面積の減少分を補うに至らず、てん菜生産量は1090万トン(同6.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

 これに伴い、砂糖生産量は1094万トン(同6.1%減)とかなりの程度減少し、輸入量は591万トン(同21.9%増)と大幅に増加すると見込まれる。

中国糖業協会、4月の砂糖生産量を公表
 中国糖業協会は5月9日、4月の砂糖生産量を公表した。てん菜糖の生産は2月に終了しているため、4月に生産された砂糖はすべて甘しゃ糖である。2019/20年度は例年よりも早期に圧搾が開始された影響で、工場の操業停止の時期も早まり、4月の生産量は40万トン(精製糖換算)と、前月から59.7%、前年同月から49.3%減少した。

 2019年10月から翌4月までの砂糖生産量の累計は、前年同期比4.4%減の1021万トンとやや減少した。種類別に見ると、甘しゃ糖生産量は同5.9%減の882万トン、てん菜糖生産量は同5.9%増の139万トンであった。

 同協会によると、5月上旬の時点で、雲南省を除くすべての製糖工場の圧搾が終了している。
表4
(参考)中国
EU
2019/20年度、輸出量は大幅に減少する見込み
 2019/20年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は162万ヘクタール(前年度比5.4%減)とやや減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、深刻な干ばつに見舞われた前年度からの反動で1億1465万トン(同3.3%増)とやや増加すると見込まれる。

 平年より高温・乾燥した状況が続いたEU最大の砂糖生産国フランスにおけるてん菜の根中糖分の低下などが響き、砂糖生産量は1823万トン(同0.2%減)と横ばいで推移すると見込まれる。輸出量は前月予測から上方修正されたものの、生産量が消費量を下回ると予想されることから、120万トン(同36.9%減)と大幅に減少すると見込まれる。

欧州委員会、砂糖の短期的需給見通しを公表
 欧州委員会が4月20日に発表した砂糖の短期的需給見通しによると、EUおよび英国における2019/20年度の砂糖生産量は、てん菜作付面積の減少が影響し、1740万トン(前年度比1.5%減、精製糖換算)と見込まれる。砂糖消費量は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止を目的とした都市封鎖の影響で家庭での消費が増えた一方、外食産業の需要が低下し、全体的には前年度からわずかに減少すると見込まれる。砂糖輸出量は、砂糖の減産や砂糖の国際価格の低迷による影響で110万トン(同31.7%減)、輸入量は200万トン(同6.7%増)と見込まれ、都市封鎖による物流の停滞が貿易活動に影響するとみている。

 10月から始まる2020/21年度のてん菜作付面積は、ここ2年間のてん菜価格の低迷を受けて、前年度から3%減少すると見込まれる。各国の動向を見ると、ベルギー、ドイツ、フランスで面積の縮小が見込まれる一方、ポーランドでは面積が維持され、オランダでは増加すると予測されている。

ネオニコチノイド系農薬のチアクロプリド、4月30日をもって農薬登録が期限切れに
 てん菜の黄化症状を引き起こす害虫を防除するために使用されるネオニコチノイド系農薬(注)の一種チアクロプリドは4月30日をもって、EUでの農薬登録が期限切れとなった。同農薬は、2019年3月に欧州食品安全機関(EFSA)において自然環境などに影響を及ぼす可能性があると報告されていた。これを受け、欧州委員会は2020年1月13日、4月末に期限が切れる同農薬の登録期間を更新しないと発表していた。

 チアクロプリドの登録が失効したことで、2018年6月に屋外での使用が禁止されたクロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムと合わせて、4種類のネオニコチノイド系農薬が禁止されたことになる。

 欧州てん菜生産者連盟(CIBE)は5月11日、同等の効果を持つ代替農薬がない中で、あまりにも早急に規制が進むと、てん菜生産者は害虫による被害を克服できなくなると懸念を表明した。

(注)ニコチンに似た化学構造を有する各種薬剤の総称で、根から吸収され植物全体に浸透する特性から、種子にコーティングしたり、種子をまく溝の中に散布したりするなどの方法で施用される。日本においては、ネオニコチノイド系農薬の使用に関する規制はない。
表5
(参考)EU
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272