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甘しゃ糖工場における働き方改革の現状と課題

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最終更新日:2020年7月10日

甘しゃ糖工場における働き方改革の現状と課題

2020年7月

東京大学大学院農学生命科学研究科 教授 中嶋 康博
助教 竹田 麻里
助教 村上 智明

【要約】

 政府は働き方改革を推進する過程で、これまで時間外労働基準の適用除外となっていた「鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業」にも改正法施行5年後に一般則を適用することとした。ほとんどの甘しゃ糖工場は2交代制で操業していることから、来るべき期限までに大幅な改善措置が求められている。本稿では、現地調査を踏まえて、甘しゃ糖製造における労働・生産体系の現状と将来に向けた課題を検討する。

はじめに

 鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業では季節的な業務量の変動が著しい。製糖期に集中する業務には、季節工を雇用した上で、多くの事業所で社員と季節工による2交代制での就業対応が一般的に行われてきた。

  「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(2018年7月公布)による労働基準法の改正によって、時間外労働の上限規制が導入された。その際に、それまでの時間外労働に関する限度基準告示で適用除外となっていた「季節的要因等により事業活動若しくは業務量の変動が著しい事業若しくは業務又は公益上の必要により集中的な作業が必要とされる業務」に該当するとされた「鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業」については、改正法施行後5年間は1カ月100時間未満・複数月平均80時間以内の要件は適用しないものの、改正法施行5年後に一般則を適用することとなった。

 今後それへの対応のために、これまでの2交代制勤務を3交代制勤務へ変更したり、操業期間を延ばしたり、雇用者数を増やしたりしなければならない。現地ではどのような準備に取り組んでいて、そこにはどのような課題があるかを明らかにするために現地の製糖工場で聞き取りを行った(注1)(図)。なお、本調査は独立行政法人農畜産業振興機構の令和元年度砂糖関係研究委託調査により実施したものである。


(注1)調査先は、大東糖業株式会社本社(那覇市)、JAおきなわ本店(那覇市)、ゆがふ製糖株式会社本社(うるま市)、JAおきなわ伊江支店(伊江村)、宮古製糖株式会社那覇事務所(那覇市)、富国製糖株式会社本社(鹿児島市)、与論島製糖株式会社本社(鹿児島市)、富国製糖株式会社奄美事業所(奄美市)、水間製糖(龍郷町)、久米島製糖株式会社事業所(久米島町)、大東糖業株式会社南大東事業所、農業生産法人アグリサポート(南大東村)である。本稿はそこでの調査内容を取りまとめた結果である。調査先企業のご協力に心より感謝したい。
 

1.砂糖製造業の生産と雇用の特徴

 サトウキビは収穫後長く保存ができず、すぐに圧搾などの処理をしなければならない。また輸送費がかさむことから、原料は島内で収穫されたサトウキビだけに頼らざるを得ず、原料面での制約が工場の操業期間や操業度を大きく左右している。従ってサトウキビの生産状況によって工場の運営条件が島ごとに大きく異なることになる。

 鹿児島県や沖縄県の規模の大きな工場では、分みつ糖も含みつ糖も、季節工を計画的に雇用して、できるだけ3月末までに操業を終了することが望ましく、そのためにサトウキビも3月末を目途に収穫される。1月から3カ月程度操業することが一般的だが、島内の予想収穫収量に応じて12月中に開始したり、翌4月初めまで延長したりすることとなり、募集する際に雇用期間が安定していない。雇用期間が一定でないことは募集する上で不利に作用する。なお、鹿児島県の零細な家族経営による含みつ糖工場では、雇用労働に頼らず、5月ごろまでサトウキビを収穫し黒糖を製造する例もある(水間製糖)。

 製糖期は、正社員、季節工が総出で24時間の操業を行っている。その対応状況を表にまとめた。
 

2.季節工の確保に係る課題

 季節工の雇用は、沖縄本島や宮古島のように労働力が比較的豊富な地域では、これまで現地の人を対象に直接募集する場合が多かったが、人手不足のために徐々に県外から雇用することも増えている。

 離島ではもともと働き手が少なく、事業所によっては島内で募集するだけでは充足できないため、島外、県外へも募集をかけてきた。季節工にとって短期間で集中的に稼ぐことができる雇用の場となる2交代制は離島での勤務の不利性を補ってきた。一方、沖縄本島にあるゆがふ製糖株式会社(以下「ゆがふ製糖」という)はすでに3交代制で運営している。
 
 募集活動は、最近ではどの製糖工場も派遣会社に依頼することが多くなっている。派遣会社は募集だけでなく、住居の確保、損害保険や社会保障制度への対応、従業員同士のトラブルの仲介なども行っている。例えば、ゆがふ製糖の場合、地域で通勤可能な人を雇用する場合は工場が直接募集するが、県外の人を雇用する場合は派遣会社が募集し住居も手配している。大東糖業株式会社(以下「大東糖業」という)の場合は、募集は派遣会社に依頼し、南大東島内の住居は会社で用意している(写真)。

 離島の季節工の中には、例えば島内で夏場に観光業や漁業(モズク漁)で働き、また一部サーフィンや海外旅行など趣味的な生活を満喫して、冬場に砂糖製造業に戻ってくるような働き方をしている例や、夏場に北海道や沖縄県以外の都府県で働いて冬場に戻ってくる例がある(注2)。ただし最近、島によっては、通年で観光業を振興して周年就業が可能になったり(奄美大島)、リゾート開発ブームで建設業の募集が盛んになったり(宮古島)する場合もあり、砂糖製造業が雇用条件で見劣りするために、必ずしも次の年に継続して働いてもらえないことがある。このような状況下において他島との間で働き手を取り合う状況もうかがわれる。

 規模の小さい経営で収穫作業を完全に委託している農家が、製糖工場で働く場合もある。ハーベスタ収穫が拡大することで、生産部門と製糖部門とで雇用を補完しあっていると言える。ただし一方でハーベスタ作業の補助従事者を島外から雇用している例もあることからすると、雇用実態は複雑である。


(注2)大東糖業で季節工を対象に行ったアンケートによれば、回答者22人のうち、9人が、茶の収穫(京都府:4月〜7月・10月〜11月)やレタス収穫(長野県:6月〜11月)、農作業(群馬県:6月〜11月、北海道:5月もしくは6月〜11月)などの農作業と組み合わせていた。北海道で勤務する方には重機を扱える男性が多かった。また、非農業系の仕事と組み合わせているのは4人で、漁業、建設関係、調理関係などに従事していた。非製糖期に1カ月半程度の国内外の旅行やスポーツなどの趣味的な生活を送っている方は2人程度であった。
 

3.製造工程に係る課題

 時間外労働の上限規制に対応するため、必要作業員数を削減するには省力化・省人化を進めること、魅力的な労働条件にするには時間当たり賃金を引き上げることなどが必要となるが、どちらにおいても労働生産性を向上させなければならない。抜本的に解決するには、施設の更新が必要である。ほとんどの事業所では施設の老朽化が進んでいて、更新すべき状況なのだが、すぐに対応することが容易でない場合は、工程ごとの作業改善の積み重ねで対応せざるを得ない。

 全体の作業工程は、大きく分けて、(A)原料受入・品質取引、(B)前処理・原料投入、(C)圧搾以降の3工程があり、含みつ糖製造の場合は結晶、分離工程に代わり(D)箱詰めが加わる。A工程は日中での業務であり、女性職員も多い。B工程とC工程は現在、24時間操業での男性職員中心の2交代業務が主となっている。

 B工程については施設を更新して、トラッシュ除去(デトラッシャー)などの前処理能力を向上させて、処理済み原料を保管するストックヤードを新設することで、16時間での2交代業務にすることが検討されている(大東糖業)。手刈りからハーベスタ収穫に移行した結果、(しょう)(とう)()、葉、泥、そして金属異物が原料に混入する割合が高くなっている。それらは以下に述べるようにC工程の効率性に影響を与えている。

 デトラッシャーを導入することは前処理工程の作業効率化だけではなく、全体の生産性の向上に寄与する。梢頭部、ハカマ(収穫残渣)、土砂などの除去を効果的に行うことで清浄汁の粘度が低下して、結晶化の工程の作業効率化につながるのである。なお、デトラッシャーを外部組織として運営する取り組みもある(富国製糖株式会社〈以下「富国製糖」という〉)。

 C工程は、圧搾、ボイラー・電気、清浄、結晶、分離などの各部門から構成されている。そこで最も重要な業務はトラブル処理である。迅速に対処して、製造ラインの停止時間をどれだけ短くするかが、生産性を向上させる最も重要なポイントである。

 生産性向上のための第一の取り組みは、連続運転を維持して、稼働率を上げることである。そもそも製糖工場は装置型工場であるため、効率性の観点から頻繁に工場を止めることはせず、24時間操業を基本としている(注3)。ただし最近ではハーベスタによる収穫が多くなっているために、降雨が続くと()(じょう)の収穫ができなくなるために原料の搬入がストップして、工場を止めざるを得なくなっている(注4)

 装置の不具合も工場を止める原因となる。頻繁に起こるトラブルの多くは圧搾工程で起こっている。金属片の混入や圧搾機の原料の投げ込み量が不均一で詰まってしまったことなどがその原因である。前者については、前処理工程での目視確認の徹底、金属探知機の導入などで対応している。圧搾工程が停止すると、工場によってはボイラーへのバガス自動供給がストップするので、別途重機でバガスの追加搬入を行うなどの余分な作業が必要になる(注5)

 装置の不具合による不測の運転停止は、どの製糖工場も避けたい。定期的に操業中断する日を利用して、あえて1週間かけて大規模な修繕とメンテナンスを行った例もある(ゆがふ製糖)。このような操業休止は、株出し管理作業の推進、ハーベスタ収穫の遅れの調整、工場内のメンテナンス、労働時間の調整といった複数の目的を持っている。休糖期の約8カ月の間に装置(機械など)の整備を重点的に実施し、操業中に故障などがないように努めている。しかし、操業中に故障などが発生した場合、直ちに対応しなければならず、そのために入手が困難な特殊部品をストックしておくことも必要である。しかしすべてを常備しておくことは難しく、緊急に同業者へ問い合わせて融通してもらったこともあるという(富国製糖)。

 このようなトラブルに迅速に対応できる技能と経験を積んだ熟練作業員を確保することもポイントとなる(富国製糖)。熟練作業員となるには一定の経験年数が必要であり、継続して働いてもらえるよう労働条件や環境を整えることが重要である(注6)


(注3)JAおきなわ伊江製糖工場での聞き取りによれば、圧搾機の運転を始めてから6時間後にようやく全工程が稼働して、また圧搾機の運転を止めた後も糖汁が残っているために後工程でも半日程度作業し続けるとのことであった。

(注4)大東糖業での聞き取りによれば、2018/19年度(砂糖年度〈10月〜翌9月〉。以下同じ。)の総停止時間の2割強が原料切れによるものであった。その対策として、ストックヤードの保管システムを改良して、一定程度の原料バッファーを増やしつつ、前処理工程と圧搾工程をあえて連続させないシステム、またそれに加えてサプライジュースタンクで糖汁を貯留して圧搾工程が止まっても清浄工程以降が停止しないようにするシステムの構築に取り組んでいる。

(注5)富国製糖での聞き取りによれば、金属片は斧、鎌、ポール、サトウキビ運搬車両用クレーンのフックなどである。金属音が聞こえると圧搾を止めるが、そのたびに異物探索に15分程度かかるという。2017/18年度では12件約3時間、2018/19年度は16件8.5時間に及んでいたが、2019/20年度は3件50分まで削減されたという。ちなみにこの3件は金属探知機を通さない手刈り原料に含まれていた金属片によるものだったという。

(注6)大東糖業でアンケートに回答していただいた社員29人の回答を見ると、3年未満が8人、3年から10年未満が9人、10年から20年未満が3人、20年以上が9人であった。一方で季節工22人の回答を見ると、今年が初回だったのは9人、2回目は4人、3回目以上は9人であった。10回目という人も1人いた。習熟度の自己評価を見ると、「習熟」「やや習熟」と答えたのが10年未満の社員16人中12人、10年以上の社員12人中11人だった。なお、2回以下の季節工13人が全員、3回以上の季節工9人中6人がそのように答えており、季節工へのアンケートでは必ずしも製糖従事回数と習熟度の自己評価は比例しなかった。

4.福利厚生面などの課題

 労働条件には、福利厚生施設の充実度も含まれる。特に単身者に離島で勤務してもらうためには、生活環境の整備が欠かせない。住居、食事、娯楽、インターネット環境などにおいて改善すべき点はいくつもあるだろう。ただし、働く側からすると集中的に稼ぐためには金銭を浪費するような娯楽は充実していない方がよい、雇う側からしてもトラブルの原因になるので娯楽は充実していない方がよいという意見もある(注7)

 現在、2交代制で操業する場合、2人一部屋の共同利用であっても、昼勤と夜勤を組み合わせれば個室として利用できている。しかし3交代制になると在室時間が重複する場合がでてくるので、個室利用とはならなくなる。雇用条件に個室の提供が前提となっているならば、住居スペースを増やさなければならなくなる。

 島の魅力は働くインセンティブを与える大きな要素となり得る。島外から季節工として訪問してみて現地が気に入り、その後何度も働きに来たり、そのまま定住したりする例がある。島内で雇用者を確保している場合でも、実は島外出身者という例が少なくない(南大東島、奄美大島)。自然環境、文化、住民の雰囲気などが人々を引きつけている。そのことを意識した上で、幅広い年齢に合わせた暮らしやすさを支援する仕組みが雇用確保の上で有効である。

(注7)大東糖業での季節工を対象にしたアンケートによれば、昼勤後の過ごし方では、テレビやゲームよりもパソコンやスマートフォンによるインターネット通信の方が多く、また外出やスポーツをすることも多い(複数回答)。同じ質問を社員にも行ったが、インターネット通信よりテレビやゲームの方が多く、外出やスポーツは限られていた。

5.働き方改革を進める上での論点

 以上すでに指摘した点も含まれるが、改めて製糖工場における働き方改革を進める上でのポイントを整理しよう。

 現在の人員体制のままで総労働時間の規制を順守するには、製糖期間を延長しなければならないが、現場では、サトウキビ生産への影響や労働力の確保の面から見て選択肢として取り得ないという意見が大半である。一方、2交代制を3交代制へ単純に変更するならば、人員を1.5倍にしなければならない。このことを従業員の立場から見ると、働く時間が3分の2になり、残業手当もなくなることから大幅に収入減となって職場としての魅力が減少することを意味する。季節工を県外から確保することの多い離島では、このことは募集面で不利に作用するであろう。雇用側の立場から見ると、人手不足の中でさらに増員する困難に取り組まなければならず、もし雇用できたとしても間接経費も増加して人件費の負担が増えることになる。3班3交代(8時間勤務)のシフトが基本になると想定されるが、3班2交代(12時間勤務)にしてその代わりに休日数を増やすことも検討されている。

 したがって生産体系を見直し、業務改革を行って作業効率の向上、労働時間の削減を進めなければならない。ただし、工程によってはハード的対応が中心だったり、また別の工程ではソフト的対応が中心だったりする。

 機械類についてはできる限り自動化・集中管理化を進めることが必要となる。そしてその操作を集約するため、1人の工員が複数の業務ができるような多能工化が求められている。それらの対応ができる社員を増やしていくことが検討されている。

 多能工として勤務するためには、工程によっては資格を取得しなければならない。そのためのインセンティブを与えるため、資格試験の受験費用を補助したり、資格手当を付けたりしている(大東糖業、久米島製糖株式会社)。このように複数部門の技能と経験を積んだ多能工になるまで継続して勤務してもらうには戦略的に対応する必要がある。経験を積んだ季節工を正社員化することも考えられている。

 原料や蔗汁などが安定して流れているか、各機器が正常に稼働しているかなどの監視作業においては、監視カメラを増設して現場に出向く時間を節約するように集中監視室で対応することも省人化のための一方策である(富国製糖)。しかし複数の工程が建屋の中で異なった階に配置されていたり、同じ階でも離れていたりして、物理的に業務を統合できない場合もある。それを解決するために施設の再設計・改良もしくは工場の新設が必要な場合、取り組みへのハードルは高いと言える。
 

おわりに〜政策面で考慮すべき課題〜

 政府により働き方改革が導入されるに当たって、農林水産省は食品産業における推進の方向を取りまとめた。その中で食品製造業における課題として取り上げていたのは、(1)衛生面への配慮(2)厳しい労働環境(冷温環境での作業など)(3)商慣行への対応(ジャストインタイム納入の順守など)−であって、最終製品の製造部門を念頭においた整理であった。

 一方、鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業はもちろん食品製造業であるけれども、このような事項はほとんど該当しない。ここでは改めて原料一次加工産業であることに注目した整理をすべきであろう。そこでの課題は、これまでも繰り返し述べてきたように、季節性と雇用期間の不確実性と労働条件の不利性へどのように対応するかである。

 さらに政策的支援を進める上での課題として指摘しておくべき事項は、季節工の働き方が非正規型雇用であり、そして季節限定であるが継続的な勤務、非完結型勤務(年間通して生活するために所得を確保するには、これ以外で雇用される必要あり)だということであろう。実は、この特徴は、かつての農村で農作業と季節的に補完していた出稼ぎ労働のそれと同じである。しかし働き方改革の推進における制度改革において、筆者らはこのような短期での繰り返し出稼ぎ労働がどのように位置付けられているのか必ずしも承知していない。

 正規雇用における長時間労働の解消が大きな社会的課題になったことで、非正規雇用における労働条件の見直しにも波及したという印象がある。そして鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業での季節工という非正規雇用にも時間外労働の上限規制が課されることになった。しかしこの規制の制度設計は、そもそも一年間を通した健全な就業状態を維持するために、月別状況と複数月の状況を管理するものである。しかし砂糖製造業での季節工は短期集中型の雇用であり、その期間だけで時間外労働の上限制約が課せられることになる。砂糖製造業の現状からすると、この制約に短期間で対応できるような改善活動は困難なため、上記の課題を克服するための施設整備などへの公的な支援が今後も必要であろう。

 もちろん2交代制での勤務を3カ月間連続することは厳しい労働条件である。操業中の工場停止が休息になるという意見もある。ただし、その前後にどのような働き方をするかによって、健康面への影響度は違ってくる。もし短期間で就業場所を次々に変えていったとしても、それが記録として残り、累積労働時間が把握できるならば、産業医は健康状態への影響を詳しく検討できるだろう。しかし現実には統合した労働時間の捕捉ができないから、それぞれの就業期間ごとに規制を課さざるを得ない。季節工は広域に就業しているために、現場の行政や砂糖製造業者だけで対処できることは限られている。ただ、現在の情報通信技術(ICT)を活用するならば、このような課題を克服するための技術や制度を開発できる可能性はあるかもしれない。ギグワーク(インターネットを通じて短期・単発の仕事を請け負う働き方)や副業など、新たな雇用形態が生まれつつある時代だからこそ、検討に値する課題であろう。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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