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4. 日本の主要輸入先国の動向(2020年8月時点予測)

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最終更新日:2020年9月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2020年8月時点予測)

2020年9月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピンで、2019年の主要輸入先国ごとの割合を見ると、豪州が81.4%(前年比10.2ポイント増)、タイが18.6%(同9.5ポイント減)となっており、2カ国でほとんどを占めている(財務省「貿易統計」)。

 以上により、この2カ国の動向については毎月報告し、南アフリカおよびフィリピンの動向についてはそれぞれ半年に1回の頻度で報告する(南アフリカは3月号および10月号、フィリピンは4月号および9月号を予定)。

 本稿中の為替レートは2020年7月末日TTS相場の値であり、1豪ドル=77(77.37)円である。

豪州

2020/21年度、砂糖生産量はわずかに増加する見込み
 2020/21年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、36万ヘクタール(前年度比1.0%減、7月予測より変化なし)とわずかに減少すると見込まれる(表6)。サトウキビ生産量は、記録的な干ばつに見舞われた2019年ほど極端な天候にはならないとの前提の下、3095万トン(同3.0%増、7月予測より減少)とやや増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、前年度の減産からの反動が押し上げ要因となり、434万トン(同1.3%増、7月予測より減少)とわずかに増加すると見込まれる。消費量の落ち込みを輸出促進によって相殺すると予測されるものの、輸出量は336万トン(同9.3%減、7月予測より減少)とかなりの程度減少すると見込まれる。

サトウキビ生産者団体、窒素施用量の規制を再考するよう上院委員会に要請
 クイーンズランド(QLD)州の生産者団体であるCANEGROWERSは7月下旬の上院委員会において、2019年9月にQLD州議会が改正したグレート・バリア・リーフ環境保護法1994年の内容を再検討するよう求めた(注1)。同法には、サンゴの白化現象(注2)を抑制するため圃場から河川や地下水への肥料・農薬成分の流出を厳しく規制することなどが盛り込まれており、一部地域では既に施行されている。CANEGROWERSは、同州政府が定めた窒素施用量はサトウキビ栽培に最適とされる量の7割程度でしかなく、新基準を適用した場合、同州のサトウキビ生産量は年間230万トン減少し、同州が受ける損失は今後10年間で13億豪ドル(1001億円)に上るとした。

 また、CANEGROWERSは、そもそも河川や地下水への窒素流出量は、サンゴ礁に直接的な影響を与えないと言われており、本法による窒素施用量の規制は科学的な根拠がないと指摘し、グレート・バリア・リーフの水質調査を再度行い、調査結果を公正に政策へ反映させるよう上院委員会に併せて要請した。

(注1)詳細は、「畜産の情報」2020年2月号「豪州肉用牛産業における環境対策について〜持続可能性の確保に向けて〜」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000969.html)を参照されたい。
(注2)水産庁によると、白化現象とは、サンゴ礁を形成する造礁サンゴに共生している「褐虫藻」と呼ばれる藻類が失われることで、サンゴの白い骨格が透けて見える現象。白化した状態が続くと、サンゴは褐虫藻からの光合成生産物を受け取ることができず、壊滅する。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2019/20年度の輸出量は、大幅に減少する見込み
 2019/20年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、砂糖の国際価格の低迷により他作物への転作が活発化したことで、156万ヘクタール(前年度比15.0%減、7月予測より変化なし)とかなり大きく減少すると見込まれている(表7)。加えて、2019年初頭の降雨量が少なく、サトウキビの生育が停滞していることから、サトウキビ生産量は7489万トン(同42.8%減、7月予測より変化なし)と大幅に減少すると見込まれる。

 サトウキビ生産の落ち込みにより、砂糖生産量は881万トン(同43.0%減、7月予測より変化なし)と大幅に減少すると見込まれる。砂糖の減産に伴い輸出余力が低下し、輸出量は813万トン(同19.6%減、7月予測より減少)と大幅に減少すると見込まれる。

ツマジロクサヨトウによる被害の拡大を警戒
 現地紙は8月10日、タイ最北部に位置するチェンライ県の水田で、ツマジロクサヨトウ(注)による被害が確認されたと報じた。これに対しタイ農業・協同組合省農業普及局(OAE)は、被害拡大を防ぐべく監視を強化することを発表し、トウモロコシ、米、サトウキビなど食用作物の栽培地域におけるツマジロクサヨトウの発生状況の調査・監視を国内すべての県に要請した。また、トウモロコシ生産者に対して、ツマジロクサヨトウへの警戒を促すとともに、定期的に圃場を調査して、ツマジロクサヨトウによる農作物の被害がないか確認を行うよう要請し、防除・駆除の方法をまとめた印刷物を配布して指導を行うとした。

(注)ツマジロクサヨトウは、南北アメリカ原産の農業害虫で、トウモロコシ、ソルガム、サトウキビ、野菜類など、80種類以上の作物に被害を与えることなどが知られており、日本では、2019年7月に初めて発生が確認された。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

フィリピン

2020/21年度、生産量はわずかに減少し、輸出量は大幅に増加する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、バナナやパイナップルなど輸出用作物として増産傾向にある他作物への転作が影響し、40万ヘクタール(前年度比1.1%減)とわずかに減少すると見込まれる(表8)。また単収が前年度より落ち込むことで、サトウキビ生産量は2262万トン(同3.2%減)とやや減少すると見込まれる。しかし、気象条件が良好であったことから、糖度の高さがサトウキビ生産量の減少を相殺し、砂糖生産量は213万トン(同1.2%減)とわずかに減少すると見込まれる。輸入量は、国内需要を賄うために37万トン(同88.3%増)と大幅に増加すると見込まれる。輸出量は、米国向け輸出量の増加を受けて、18万トン(同27.5%増)と大幅に増加すると見込まれる。

表8 フィリピンの砂糖需給の推移

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272