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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年10月時点予測)

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最終更新日:2020年11月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2020年10月時点予測)

2020年11月

ブラジル
2020/21年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅増の見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2020年10月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2020/21年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、原油の国際価格の動きに不安定さが見られ、バイオエタノール需要にも不透明感があるものの、バイオ燃料など再生可能エネルギーの生産・利用の促進を図るブラジルの国家政策「RenovaBio」の本格始動が生産意欲を後押しする可能性があることも踏まえ、864万ヘクタール(前年度同)と横ばいで推移すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、生育期間を通じて天候がおおむね良好で生育が順調であることから、6億5600万トン(前年度比2.1%増)とわずかに増加すると見込まれる。

 一方、砂糖生産量は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるバイオエタノール需要の不透明感を背景に、多くの製糖業者が砂糖生産に回帰する動きが見られることから、4359万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同37.0%増)と大幅に増加すると見込まれる。この予測の下、ブラジル通貨レアルが米ドルに対して安値圏で推移することで輸出意欲が向上し、輸出量は3371万トン(同65.9%増)と大幅に増加すると見込まれる。

米国政府、ブラジル産糖向け関税割当枠を8万トン追加すると発表
 米国通商代表部(USTR)は9月22日、同国農務長官が同月10日に発表した2019/20年度における粗糖の関税割当枠の追加分について、うち8万トンをブラジル、1万718トンを豪州へ分配することを発表した。また、同年度の粗糖の関税割当枠の適用期限も砂糖年度末の9月30日から10月31日まで延長された。ブラジルのボルソナロ大統領は、ブラジルと米国間で近年行われた砂糖およびエタノールに関する貿易交渉において初めての成果であると語ったものの、UNICAなどの業界団体は「今回の割当枠の追加は、米国が国内需要を賄えなかったり、他国が事前の見積数量を適切に供給できなかったりした際に実施する通常の手続きであり、貿易交渉の成果とは言えない」と指摘し、「ブラジルが9月に発表した米国産エタノールの無税枠の再設に比べ、規模がかなり小さい(注)」と主張した。

(注)米国産エタノールの無税枠をめぐる経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年9月号「エタノールの輸入関税をめぐりトランプ政権から圧力」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002293.html)および2020年10月号「米国産エタノールの輸入について、無税枠を90日間に限り再設」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002309.html)も参照されたい。
表2
(参考)ブラジル
インド
2020/21年度、砂糖生産量はかなり大きく増加し、輸出量は大幅に減少する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、豪雨による大規模な()(じょう)の浸水被害に見舞われた昨年度からの反動で、477万ヘクタール(前年度比7.4%増)とかなりの程度増加すると見込まれる(表3)。サトウキビの主産地であるマハラシュトラ州では、年間降雨量が集中するモンスーン期(6〜9月)における降雨が順調であることから、ダムの水位回復により、サトウキビ生産量は4億93万トン(同15.7%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は3397万トン(同15.4%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。2019/20年度は、在庫量が多かったことから輸出が好調だったが、その反動から2020/21年度は一定の在庫量を確保するため、輸出量は626万トン(同18.8%減)と大幅に減少すると見込まれる。

ISMA、2020/21年度における砂糖の輸出政策の早期発表を首相官邸に要請
 10月上旬の現地報道によると、インド製糖協会(ISMA)は首相官邸に対し、10月から始まる2020/21年度の砂糖の輸出政策を早急に発表するよう要請した。

 首相官邸は砂糖年度末となる9月に、世界貿易機関(WTO)の規則への整合性促進のため、輸出支援政策の段階的廃止(砂糖の輸出補助金を毎年20%ずつ削減)に努力することを発表したが、新年度に入ってもいまだ概要は明らかになっていない。また、2019/20年度における砂糖の輸出補助金の支払いは全体の1割しか完了していない状況にあり、コロナ禍における厳しい財政状況を理由に、2020/21年度の輸出政策の発表を遅らせているとみられている。

 毎年、10月から翌4月は、輸出競合国であるブラジルにおいて砂糖生産量が減少し、生産の端境期を迎える時期であるため、インドの製糖業者にとっては輸出を伸ばす格好の機会である。しかし、輸出政策が定まらない状況において、製糖業者においても契約規模を決められず、サトウキビの圧搾開始を躊躇(ちゅうちょ)する状況となっている。
表3
(参考)インド
中国
2020/21年度、輸入量はかなりの程度減少する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は118万ヘクタール(前年度比0.6%増)とわずかに増加すると見込まれる(表4)。7月の干ばつにより停滞していたサトウキビの生育状況は、8月には2つの台風によりもたらされた降雨により、回復の兆しが見られることから、サトウキビ生産量は7480万トン(同0.4%増)とわずかに増加すると見込まれる。

 また、同年度のてん菜の収穫面積は、内モンゴル自治区において、てん菜の買取価格が引き上げられたことから、生産者が作付面積を拡大し、収穫面積は23万ヘクタール(同7.8%増)とかなりの程度増加し、てん菜生産量は1145万トン(同5.1%増)とやや増加すると見込まれる。

 これら原料の増産に伴い、砂糖生産量は1136万トン(同0.8%増)とわずかに増加すると見込まれる。また、砂糖の国内在庫量が積み上がり、輸入糖の需要が低下すると予測されるため、輸入量は572万トン(同10.3%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

8月の砂糖輸入量、前年同月および前月から大幅に増加
 一方、中国税関総署が9月23日に公表した2020年8月の貿易統計によると、同月の砂糖輸入量は、前年同月比44.7%増、前月比2.2倍の68万トンと大幅に増加した。また、2019年10月からの累計では、322万トン(前年同期比14.2%増)とかなり大きく増加した。なお当該輸入量は、税関での正規手続きを経た数量であり、手続き外での輸入(密輸)分は含まれないため、実際の輸入量はさらに多いことが考えられる。しかし、業界関係者によると、今年度は、各国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大抑制のために都市封鎖などの措置が実施されて物流が停滞したことや、供給元のタイやベトナムにおける砂糖生産量の減少などを背景に、手続き外での輸入量は減少傾向にあるということである。
表4
(参考)中国
EU
2020/21年度の輸出量は、やや増加する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は148万ヘクタール(前年度比2.6%減)とわずかに減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は7月の深刻な干ばつに見舞われた上、8月の降雨が少なかったことから1億245万トン(同4.7%減)とやや減少すると見込まれる。 EU最大のてん菜生産国フランスでの長引く干ばつや萎黄(いおう)病の流行などが影響し、砂糖生産量は1646万トン(同3.1%減)とやや減少すると見込まれる。輸出量は195万トン(同3.4%増)とやや増加すると見込まれる。

フランス下院、ネオニコチノイド系農薬の緊急使用を含む法案を可決
 フランス国民議会(下院)は10月6日、同国で2018年以降、使用が禁止されている(注)ネオニコチノイド系農薬のてん菜種子へのコーティングを2021年から最大2023年まで許可する法案を可決した。現地報道によると、同国農相は下院での審議において、同法案は同国の砂糖自給率の維持を目的としており、環境に悪影響を与えるものではないと説明したとしている。今後は元老院(上院)での審議に移り、10月27日に採択が予定されている。

 同国では2020年に入って萎黄病の流行が各地で報告されており、てん菜の単収減少が危惧されている。てん菜生産者組合(CGB)は、「危機的状況にさらされているてん菜産業の持続可能性を確保するための、意欲的で勇気ある政府の取り組みを歓迎するとともに、上院での採択についても期待している」とのコメントを発表した。

(注)同農薬の使用をめぐる経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年9月号「フランス、ネオニコチノイド系農薬の緊急使用を認める方向」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002293.html)を参照されたい。
表5
(参考)EU
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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