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5. 日本の主要輸入先国の動向(2020年12月時点予測)

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最終更新日:2021年1月12日

5. 日本の主要輸入先国の動向(2020年12月時点予測)

2021年1月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピンで、2019年の主要輸入先国ごとの割合を見ると、豪州が81.4%(前年比10.2ポイント増)、タイが18.6%(同9.5ポイント減)となっており、2カ国でほとんどを占めている(財務省「貿易統計」)。

 以上により、この2カ国の動向については毎月報告し、フィリピンおよび南アフリカの動向についてはそれぞれ半年に1回の頻度で報告する(フィリピンは4月号および9月号、南アフリカは10月号および3月号を予定)。

 本稿中の為替レートは2020年11月末日TTS相場の値であり、1豪ドル=79円(78.91円)である。

豪州

2020/21年度、砂糖生産量はわずかに増加する見込み
 2020/21年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、36万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかに減少すると見込まれる(表6)。サトウキビ生産量は、記録的な干ばつに見舞われた2019年ほど極端な天候にはならないとの前提の下、3110万トン(同3.5%増)とやや増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、前年度の減産からの反動が押し上げ要因となり、サトウキビ生産量の増加も受けて、436万トン(同1.9%増)とわずかに増加すると見込まれる。輸出が消費量の落ち込みをある程度補うと予測されるものの、輸出量は334万トン(同3.0%減)とやや減少すると見込まれる。

インド政府の補助金をめぐるWTO紛争、2021年前半にも最終決定か
 2020年11月30日付の現地報道は、2019年3月頃、インド政府による砂糖産業への補助金が砂糖の国際価格低迷を招いているとして、豪州、ブラジル、グアテマラの各国政府が行った世界貿易機関(WTO)への提訴について、数週間以内に聴聞会が行われる予定であると報じた。当初、この聴聞会は5月に開催されることが予定されていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受け延期されていた。12月中に実施されるとみられる聴聞会は、通常であればWTOの本部があるスイスのジュネーブで実施されるが、今回はオンライン形式で開かれる予定である。豪州政府およびクイーンズランド州のサトウキビ生産者協会の会長は、早ければ2021年の前半で最終的な結果が出る可能性があるとみており、砂糖の国際価格の上昇に期待していると述べた。同会長によると、砂糖の国際価格はインド政府の補助金の影響を受けて下落し、国際価格の影響を大きく受ける豪州の砂糖産業の損失額は年間3億〜4億豪ドル(237億〜316億円)に上っているという。

 豪州に事務局を置く世界砂糖連盟(Global Sugar Alliance)(注)はインド政府に対し、砂糖産業への補助金を廃止し、国内で余剰となった砂糖を国外に輸出するのではなく、温室効果ガス排出量と石油の輸入量の削減が期待できるバイオエタノール製造などの促進を求めている。

(注)豪州、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、グアテマラ、南アフリカ、タイの製糖業者が加盟する連合組織。砂糖の貿易自由化の推進、世界の砂糖取引環境の改善などを行っている。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2020/21年度の輸出量は、大幅に減少する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、今期作の作付時点で、キャッサバなどのサトウキビとの代替性のある作物の収益性がサトウキビよりも高かったことから、代替作物がより多く作付けされたことにより139万ヘクタール(前年度比14.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれる(表7)。干ばつの影響を受けて、サトウキビ生産量は7000万トン(同6.5%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

 サトウキビ生産の落ち込みにより、砂糖生産量は823万トン(同6.5%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。砂糖の減産や在庫量の減少に伴い輸出余力が低下し、輸出量は543万トン(同33.5%減)と大幅に減少すると見込まれる。

OCSB、2020/21年度のサトウキビ圧搾量を前年度比10.5%減と見込む
 現地報道によると、サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)(注1)は11月25日、2020/21年度のサトウキビの圧搾開始日を12月15日とすることを発表した。当初、製糖業者は12月7日からの開始を提案していたが、農家は、収穫作業時の労働力不足を理由に、作業を遅らせるよう要望していた。

 産地では労働力不足が懸念されるなか、タイ政府は2018/19年度以降、大気汚染対策として、サトウキビの焼き畑収穫の削減計画に取り組んでおり、2020/21年度には焼き畑収穫の割合を収穫面積の20%、翌年度には0%から最大で5%以下に抑制することを目標に掲げている。一方、タイ製糖協会(TSMC)は、焼き畑削減のための過度な目標設定は、サトウキビの作付面積の減少につながると指摘し、同割合を40%程度とするよう求めており、双方の溝は大きい状況となっている。

 OCSBによると、2020/21年度は57工場が稼働し(注2)、圧搾されるサトウキビの量は、植え付け時の干ばつ拡大を受けて6704万トン(前年度比10.5%減)と、かなり大きな減少が見込まれている。

(注1)サトウキビおよび砂糖関連政策の執行機関である政府3省(工業省〈製糖関係〉、農業協同組合省〈原料作物関係〉、商務省〈砂糖の売買関係〉)とサトウキビ生産者および製糖企業の代表で構成され、工業省内に設置された、サトウキビ・砂糖委員会(TCSB)の事務局。
(注2)2019/20年度は、57工場が稼働した。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

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