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4. 日本の主要輸入先国の動向(2021年1月時点予測)

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最終更新日:2021年2月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2021年1月時点予測)

2021年2月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同 1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、豪州、タイ、南アフリカ、フィリピンで、2019年の主要輸入先国ごとの割合を見ると、豪州が81.4%(前年比10.2ポイント増)、タイが18.6%(同9.5ポイント減)となっており、2カ国でほとんどを占めている(財務省「貿易統計」)。

 以上により、この2カ国の動向については毎月報告し、フィリピンおよび南アフリカの動向についてはそれぞれ半年に1回の頻度で報告する(フィリピンは4月号および9月号、南アフリカは10月号および3月号を予定)。

豪州

2020/21年度の砂糖生産量は、わずかに増加する見込み
 2020/21年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、36万ヘクタール(前年度比1.0%減)とわずかに減少すると見込まれる(表6)。サトウキビ生産量は、記録的な干ばつに見舞われた2019年ほど極端な天候にはならないとの前提の下、3112万トン(同3.6%増)とやや増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、前年度の減産からの反動が押し上げ要因となり、サトウキビ生産量の増加も受けて、437万トン(同2.1%増)とわずかに増加すると見込まれる。一方で、前年度の減産により期末在庫量(当期期首在庫量)が減少したことを受け、今年度の増産が輸出量の落ち込みをある程度補完するものと想定されるものの、輸出量は335万トン(同2.8%減)と、依然減少傾向が続くと見込まれている。

オーストラリア・トビバッタの大量発生を懸念
 2021年1月13日付けの現地報道によると、クイーンズランド(QLD)州南部と、隣接するニューサウスウェールズ(NSW)州北部で、数年ぶりとなるオーストラリア・トビバッタ(Australian plague locust。以下「トビバッタ」という)の発生が確認された。豪州東部では近年の干ばつにより、この10年ほどの間、トビバッタによる被害は、ほとんど見られなかったものの、2020年12月頃から成虫の群れが目撃されはじめ、現在、それらの卵が孵化し、大量の幼虫が発生している状況にあるという。

 オーストラリア・トビバッタ委員会(APLC)のクリス・アドリアンセン委員長によると、豪州東部では2009年と2010年を最後にNSW州とビクトリア州で広範囲にトビバッタの群生行動が確認されておらず、QLD州でも2008年以降、大規模な蝗害(こうがい)は報告されていないとしている。

 この度の状況に対しNSW州政府機関であるローカル・ランド・サービス(LLS)は州内の農家に対し、トビバッタの飛来状況を注視し、被害に備えるよう促すとともに、農地所有者に対しては、被害のまん延を未然に防ぐべく、トビバッタの動きや被災状況などをLLSに報告するよう求めている。

 またLLSの専門家は、今年は適度な降雨が発生しているところ、今後、夏から秋にかけて、より広範囲でトビバッタが大量に発生する可能性があるとみており、これらの地域ではサトウキビ生産をはじめとした農業全般が脅威にさらされる危険性があるとしている。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2020/21年度の輸出量は、大幅に減少する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、前期作でのキャッサバなどの代替作物の収益性が高かったことから、今期作では代替作物がより多く作付けされたことにより、139万ヘクタール(前年度比14.4%減)とかなり大きく減少すると見込まれる(表7)。加えて今期のサトウキビ生産量は、前期に続き干ばつの影響を受け、7000万トン(同6.5%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

 サトウキビ生産の落ち込みにより、砂糖生産量は823万トン(同6.5%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。砂糖の減産や在庫量の減少に伴い輸出余力が低下し、輸出量は533万トン(同34.7%減)と大幅に減少すると見込まれる。

タイ産砂糖に対するアンチダンピング関税措置の導入の懸念
 ベトナム政府は、2020年9月からWTO規則に基づくタイ産砂糖の輸入に対するアンチダンピング調査を開始しているが、12月22日付けの報道によると今後、アンチダンピング関税措置の導入が決定された場合、タイ産砂糖の需要を圧迫する可能性があり、関係者によると、一部のバイヤーでは、アンチダンピング関税措置として、税率が現行の5%から37.9%に跳ね上がる可能性があると見込み、既に第4四半期の購入量を減らす動きも見られている。

 ベトナムでは2020年1月1日付で、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)に基づき、ASEAN加盟国原産の砂糖輸入枠を撤廃し、2020年1月から10月にかけて、約115万トン(粗糖48万トン、精製糖67万トン)の砂糖が輸入された。これは前年同期のほぼ5倍の量に当たり、砂糖輸入量の急増を受け、同国内の砂糖価格は下落し、砂糖生産量も減少している。2019/20年度の操業工場数は前年度比で11工場減少し29工場となり、今後も原料不足などの理由により、さらに4工場での操業停止が見込まれているとしている。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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