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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年2月時点予測)

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最終更新日:2021年3月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年2月時点予測)

2021年3月

 本稿中の為替レートは2021年1月末日TTS相場の値であり、1ポーランドズロチ=29.02円である。
ブラジル
2020/21年度の砂糖生産量、輸出量ともに大幅増の見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2021年2月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2020/21年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、原油の国際価格の動きに不安定さが見られ、バイオエタノール需要にも不透明感があるものの、バイオ燃料など再生可能エネルギーの生産・利用の促進を図るブラジルの国家政策「RenovaBio」の本格始動が生産意欲を後押しする可能性があることも踏まえ、871万ヘクタール(前年度比1.2%増)とわずかに増加すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、生育期間を通じて天候がおおむね良好で生育が順調であることから、6億6000万トン(同2.7%増)とわずかに増加すると見込まれる。

 一方、砂糖生産量は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるバイオエタノール需要の不透明感を背景に、多くの製糖業者が砂糖生産に回帰する動きが見られることから、4485万トン(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉、同41.0%増)と大幅な増産が見込まれる。この予測の下、ブラジルレアルが米ドルに対して安値圏で推移することで輸出意欲が向上し、輸出量は3396万トン(同67.1%増)と大幅に増加すると見込まれる。

UNICA、2021/22年度のサトウキビ生産量について、前年度比減を予測
 2021年1月26日付の現地報道によると、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)の技術部長は、サトウキビの主産地である同国中南部地域の2021/22年度におけるサトウキビ生産量が前年度の水準に届かず、ATR(サトウキビ1トン当たりの回収糖分)も前年度の145キログラムから、2〜3年前の水準である138キログラム台にまで減少すると予測している。減産要因として同部長は、2020年はサトウキビの植え替えが進まず、単収増加が見込めない状況であったことに加え、夏季の暑熱による生育不良、一部圃場(ほじょう)での火災の散発、大豆など高収益性作物への転作などを挙げている。一方、2021年は、2019年までとはいかないものの、COVID-19の影響で落ち込んだ燃料需要の回復が見込まれる中、砂糖の国際相場もここ数カ月堅調に推移していることから、製糖業者は砂糖およびエタノールの生産に意欲的であると考えられるとしている。
表2
(参考)ブラジル
インド
2020/21年度の砂糖生産量はかなり大きく増加するものの、輸出量はわずかに減少する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、豪雨による大規模な圃場の浸水被害に見舞われた前年度からの反動で、473万ヘクタール(前年度比6.5%増)とかなりの程度増加すると見込まれる(表3)。サトウキビの主産地であるマハラシュトラ州では、年間降雨量が集中するモンスーン期(6〜9月)における降雨が順調であることから、ダムの水位回復により、サトウキビ生産量は3億9338万トン(同13.6%増)、砂糖生産量も3343万トン(同13.6%増)といずれもかなり大きく増加すると見込まれる。輸出補助金の発表や粗糖の国際価格の堅調な推移、国内の砂糖価格の下落などを受けて、製糖業者は砂糖輸出を促進すると見られるものの、コンテナが不足している影響で砂糖の輸出ペースが鈍化しており、輸出量は810万トン(同1.9%減)とわずかに減少すると見込まれる。

コンテナ不足により砂糖輸出が停滞
 インドでは、2020/21年度の砂糖増産が予測される中、国内製糖業者は輸出に前向きで、海外需要も堅調であるにもかかわらず、輸送用コンテナの不足が、輸出に影響を与えているという。

 現地報道によると、2020年下半期は物流需要が予想以上に多かったことで、国内ではコンテナ不足が発生すると同時に、世界的に海上輸送費が上昇している。また、海運会社が利益の上がる中国発の輸送を優先させ、米国などで帰便の積載を待たずに空のままコンテナを中国に返送する事態が頻発するなどしてコンテナが中国に集中し、その影響でインドの輸出業者は必要量の4割程度しかコンテナを確保できず、砂糖だけでなく、米などの他の商品の輸出にも影響が生じている、と伝えている。

 国内製糖業者は、1月中に粗糖を含む約20万トンの砂糖をアフガニスタン、スリランカ、東アフリカ諸国などへ輸出すると推定されているが、コンテナ不足から実際の荷動きは非常に遅くなっている。

 こうしたインドからの砂糖の輸出停滞が、1月初旬に3年ぶりの高値に上昇した国際白糖相場の価格を下支えする可能性があるとの見方も出ている。
表3
(参考)インド
中国
2020/21年度の輸入量は、やや増加する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、雲南省では面積の増加が見られるものの、広西チワン族自治区と広東省での面積減少を受けて、116万ヘクタール(前年度比1.6%減)とわずかに減少すると見込まれ、サトウキビ生産量も、7360万トン(同3.5%減)とやや減少すると見込まれる(表4)。

 また、同年度のてん菜の収穫面積は、内モンゴル自治区において、てん菜の買い取り価格が引き上げられたことから、生産者は作付面積を拡大し、収穫面積は23万ヘクタール(同8.8%増)とかなりの程度増加すると見込まれ、てん菜生産量も、単収の増加に伴い、1238万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、1135万トン(同0.8%増)とわずかに増加すると見込まれる。輸入量は、2月中旬から始まる旧正月が明けるまでは沈静化するとみられるものの、ブラジル産砂糖の輸入量が2020年末にかけて急増したことなどから、696万トン(同4.2%増)とやや増加すると見込まれる。

新型コロナウイルス感染症、2020年の砂糖消費量に影響を及ぼす
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、2020年の国内砂糖消費量の減少をもたらした。中国国家統計局によると、同国における1月から11月のソフトドリンク生産量は前年同期比7.4%減の1億5057万トン、1月から6月のあめ生産量は同13.8%減の127万トンとなった。

 2021年はCOVID-19による砂糖需要の落ち込みが回復すると予測されている。中国農業農村部が2021年2月に発表した短期的需給見通しによると、2020/21年度の砂糖消費量は1530万トン(前年度比2.0%増)と増加し、COVID-19発生前の2018/19年度の消費量1520万トンをも上回る見込みとなっている。

 また、砂糖輸入量についても390万トン(同3.7%増)と増加が見込まれている。なお、現地報道によると、中国の砂糖産業は長年砂糖の密輸問題に悩まされてきたが、2020年はコロナ禍における需要の減退に加え、移動制限などを背景に砂糖密輸量が著しく減少したとしている。その一方で、同国の砂糖業界は、同年春頃から無税で輸入できるASEAN加盟国原産液糖の輸入量が急増していることを問題視している(注)。液糖輸入は税率改正などの対策が講じられない限り今後も増加傾向で推移する可能性があるとみられており、業界関係者は状況を注視していると現地報道は報じている。

(注)液糖輸入をめぐる最近の動向については、『砂糖類でん粉情報』2021年2月号「砂糖の国際需給 3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年1月時点予測)」の中国の項(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002383.html)を参照されたい。
表4
(参考)中国
EU
2020/21年度の輸出量は、砂糖減産を受けかなりの程度減少する見込み
 2020/21年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は147万ヘクタール(前年度比2.8%減)とわずかに減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、EU最大のてん菜生産国であるフランスで感染が広がる萎黄(いおう)病の被害を受けて、前月予測から下方修正され、9941万トン(同9.4%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

 てん菜生産量の落ち込みを受け、砂糖生産量は1520万トン(同10.4%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量は砂糖の減産に伴い、134万トン(同6.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

ポーランドの「砂糖税」、2021年から導入
 ポーランド政府は2021年1月4日、国民の肥満抑制を目的に同年1月1日から糖類を含む飲料への課税(いわゆる「砂糖税」)を施行したと発表した。当初、砂糖税は2020年7月から施行される予定であったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による経済への影響を考慮し、施行時期が延期されていた。

 糖類を含む飲料に係る税率は、糖類50グラム以下を含有する飲料(注1)1リットル当たり(注2)0.5ズロチ(15円)で、カフェインやタウリンが含有される場合は、さらに同0.1ズロチ(3円)が上乗せされる。また糖類含有量が50グラムを超過する場合は、10グラム超過するごとに同0.05ズロチ(1.5円)が課税される仕組みで、課税額の上限は同1.2ズロチ(35円)とされている。

 ポーランドの市場監視センター(CMR)は2月18日、砂糖税導入後において同国のノンアルコール飲料の価格が10%以上、フレーバー付きミネラルウォーターやアイスティーの価格では15%の値上げが生じ、COVID-19関連規制も影響するなどして、糖類含有飲料の売上高は、砂糖税導入前と比較し16%減少したことを公表した。

 同国政府は、砂糖税による収入の96.5%を基金として積み立て、糖尿病や心血管疾患、ガンなどの疾病対策に充てると説明しているものの、現地報道によると、国民の過半は砂糖税導入の目的を、残りの3.5%の使途に当たる国税確保にあると考えている。

(注1)果物や野菜のジュース、エナジードリンクは課税対象外。
(注2)税法上は、100ミリリットル当たり糖類5グラム以下。
表5
(参考)EU
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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