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令和2年産てん菜の生産状況について

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最終更新日:2021年7月9日

令和2年産てん菜の生産状況について

2021年7月

北海道 農政部 生産振興局 農産振興課

【要約】

 生産者の高齢化に伴う労働力不足などにより、てん菜の作付面積は減少しており、令和2年産は5万6749ヘクタールとなった(糖分取引移行後、最も少なかった令和元年産を若干上回った)。

 一方、2年産の収穫量は、6月下旬の低温・寡照(かしょう)、7月下旬までの少雨傾向により、根部肥大の停滞が懸念されたが、草丈・葉数ともに平年を上回り、病害虫の発生も平年より少なくなったことから、順調な生育となり、収量は平年よりも多い391万2401トンとなった。

 その結果、10アール当たり収量は6894キログラムとなり、過去最高を記録した令和元年産の7074キログラムに次ぐ豊作となった。

 糖分は気温の日較差が小さく、高温傾向が続いたことから、平年をやや下回る16.4%、歩留は16.1%となり、砂糖生産量は63万1241トンとなった。

1.最近のてん菜の作付動向

 てん菜は、北海道の畑作経営の輪作体系を維持する上で基幹的な作物であるとともに、てん菜糖業は地域経済の維持・発展に重要な役割を担っている。

 近年、生産者の高齢化や経営規模の拡大に伴い労働負担の大きいてん菜から他作物への作付転換や天候不順などにより、作付面積は総じて減少傾向で推移しており、令和2年産は、5万6749ヘクタールとなり、糖分取引移行後、最も少なかった令和元年を若干上回った(図1)。
 

2.令和2年産てん菜の生育概況

 播種(はしゅ)期、出芽期および移植期は平年並となり、移植直後の気温は高めに推移したことから、活着は「やや良」となった。その後、6月上旬までの高温・多照や6月下旬の低温・寡照、7月下旬までの少雨傾向により、根部肥大の停滞が懸念されたが、生育は平年より早く進み、草丈・葉数は平年を上回るなど、順調な生育となった(表1)。

 病害虫については、褐斑病、根腐病、黄化病の発生量は平年より少なく、そう根病は平年並であった。ヨトウガは初発期がやや早く、第1世代の発生量はやや多かったが、第2世代は平年並、テンサイモグリハナバエは少なかった。
 

3.令和2年産てん菜の生産状況

 令和2年産てん菜の作付面積は、前年産と比べ405ヘクタール増加し5万6749ヘクタール(前年比100.7%)、10アール当たり収量は、180キログラム減少し6894キログラム(同97.5%)、生産量は、7万3189トン減少し391万2401トン(同98.2%)になった。

 なお、単収は過去最高となった令和元年産に次ぐものとなったが、根中糖分については、気温の日較差が小さく、高温傾向が続いたことから、平年をやや下回る16.4%となり、前年産を0.4ポイント下回った(表2、図2)。
 
 
 
 品種別の作付構成は、「カーベ2K314」(43.1%)、「パピリカ」(25.7%)、「ライエン」(10.0%)の順となっている(表3)。

 「カーベ2K314」は、褐斑病やそう根病の抵抗性が優れており、「パピリカ」は、そう根病抵抗性に優れ根重が多く、平成29年に優良品種に認定された「ライエン」は、そう根病抵抗性に優れ糖量が多いことから、その作付けは増加傾向となっている。
 
 てん菜の作付け戸数は全道的に減少傾向が続いており、令和2年産は10年前(平成22年)と比べ1770戸減少(21%減少)し、6793戸となった。一方、1戸当たりの作付面積は8.4ヘクタールと、10年で1.1ヘクタール増加している(図3)。

 労働力不足の中でこうした作付規模の拡大に対応するため、近年では、春の育苗・移植作業に要する労働力を大幅に削減できる直播(ちょくはん)栽培に取り組む地域が増加しており、2年産の直播栽培の面積は、前年より1994ヘクタール増加の1万7725ヘクタール(作付面積の31.2%)となっている(図4)。
 
 

4.てん菜糖の生産状況

 北海道内の製糖工場は、前年同様、3社8工場で操業しており、令和2年産原料処理量は391万2401トンで、歩留は16.1%となったことから、砂糖生産量は63万1241トン(前年比97%)となった(表4)。
 

おわりに

 令和2年産のてん菜生産については、近年の労働力不足や天候不順などにより作付けが減少傾向にある中、大きな自然災害がなく天候に恵まれたこと、また、生産者のたゆまぬ努力により、10アール当たり収量は6894キログラムと、おおむね良好な作柄となった。

 てん菜は、本道畑作農業における基幹作物として重要であり、今後とも、生産者、製糖業者、行政などの関係者が連携し、直播栽培と風湿害に強い栽培技術の拡大、複合耐病性品種の導入推進など、低コストで省力的かつ安定的な生産体制の確立に向けた取り組みをより一層、推進していく必要がある。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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