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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年6月時点予測)

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最終更新日:2021年7月9日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2021年6月時点予測)

2021年7月

ブラジル
2021/22年度の砂糖生産量はかなりの程度、輸出量はかなり大きく減少する見込み  
 2021/22年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、863万ヘクタール(前年度比0.8%減)とわずかに減少すると見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、生育期間における降雨量が少なく、単収が減少することで、6億100万トン(同8.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。砂糖生産量は、国際価格の上昇や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるバイオエタノール需要の不透明感などを背景に、前年度に引き続き多くの製糖業者が砂糖の生産割合を高めると予想されるものの、原料の減産を受けて、4048万トン(同9.3%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量も、砂糖の減産を背景に、2916万トン(同14.1%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。

ブラジル砂糖企業、ハラル認証取得で売上増を目指す  
 ブラジルの大手砂糖企業のEnergy社は、ハラル認証機関(FAMBRAS HALAL)により同社の砂糖の製造・包装工程および納品業者から供給された全ての製品がハラルに準拠していると確認され、約3カ月の審査期間を経てハラル認証を3月12日に取得した。取材に対し同社の部門責任者は、今後2年間でイスラム諸国での売り上げを3倍に伸ばすことができると述べていると、現地報道は6月8日付けで伝えた。  

 同社は、同国の砂糖企業で唯一、主要輸出港であるサントス港に自社のコンテナターミナルなどを有する商社で、ひと月当たり約2万トンの砂糖を生産し、その半分を輸出に回し、輸出先は110カ国に上っている。  

 同社によると、現在、イスラム圏向けの輸出先国はアラブ首長国連邦、ギニア、ソマリアなどに限られるが、イスラム諸国への輸出拡大を視野に、国内外の需要増に対応するため、近い将来、生産能力を増強する意向であるとしている。
表2
(参考)ブラジル
インド
2020/21年度は増産するも、輸出促進策の発表の遅れなどを受け、輸出量はやや減少する見込み  
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、豪雨による大規模な()(じょう)の浸水被害に見舞われた前年度からの反動で、489万ヘクタール(前年度比5.3%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。ウッタル・プラデーシュ州で赤腐病(red rot)(注1)の被害が確認されているものの、マハラシュトラ州では、年間降雨量が集中するモンスーン期(6〜9月)における降雨が潤沢であったことから、サトウキビ生産量は4億249万トン(同8.9%増)とかなりの程度、砂糖生産量は3343万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、COVID-19による物流の混乱は解消しつつあることで、足元の輸出は復調傾向にあるものの、輸出促進策の政府発表の遅延も影響するなどして、結果として前年度ほどの輸出水準には届かず、801万トン(同3.4%減)とやや減少すると見込まれる。

(注1)真菌の感染によって引き起こされる病気で、茎の内部が腐り、赤色に変色する。サトウキビの単収や砂糖の回収率に深刻な影響を与えるとされている。
(注2)インド政府の2020/21年度における砂糖の輸出政策の経緯については、『砂糖類・でん粉情報』2020年11月号のインドの項「ISMA、2020/21年度における砂糖の輸出政策の早期発表を首相官邸に要請」(https://www.alic.go.jp/joho–s/joho07_002327.html)も参照されたい。
表3
(参考)インド
中国
2020/21年度の輸入量は、かなりの程度増加する見込み  
 2020/21年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、雲南省では面積の増加が見られるものの、広西チワン族自治区と広東省での面積減少を受けて、116万ヘクタール(前年度比1.6%減)とわずかに減少し、サトウキビ生産量も、7360万トン(同3.5%減)とやや減少すると見込まれる(表4)。また、同年度のてん菜の収穫面積は、内モンゴル自治区において、てん菜の買い取り価格が引き上げられたことから、生産者は作付面積を拡大し、収穫面積は23万ヘクタール(同8.8%増)とかなりの程度増加すると見込まれ、てん菜生産量も、単収の増加に伴い、1238万トン(同13.6%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。  

 砂糖生産量は、1152万トン(同2.3%増)とわずかに増加すると見込まれる。輸入量は、722万トン(同8.1%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。
表4
(参考)中国
EU
2020/21年度の輸出量は、かなりの程度減少する見込み  
 2020/21年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は148万ヘクタール(前年度比2.8%減)とわずかに減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、EU最大のてん菜生産国であるフランスで感染が広がる萎黄病の被害を受けて、9946万トン(同9.6%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。てん菜生産量の落ち込みにより、砂糖生産量は1521万トン(同10.3%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量は、砂糖生産量の減少によって輸出余力が低下し、133万トン(同7.5%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

フランス、ネオニコチノイド系農薬に代わる薬剤の確保に苦慮  
 フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)(注1)は6月2日、てん菜の種子処理に使用するネオニコチノイド系農薬に代わり、単独での使用で効能が確認できる薬剤の特定ができなかったことを発表した。  

 EU最大のてん菜生産国であるフランスでは、てん菜の萎黄病により、砂糖産業の生産量が大幅に減少している。同病にはネオニコチノイド系農薬が有効とされているが、ミツバチの激減を背景に、生態系に強い悪影響を及ぼす懸念から同農薬のてん菜への使用を禁止した。しかし、萎黄病の流行を抑制するため最長で2023年まで同農薬の緊急使用を認めており、これまで同国では、同農薬を使用しない方法について模索してきた。  

 ANSESによると、現時点においては同農薬の使用に置き換わる短期的な解決策として4種(注2)が確認されたとするが、これら代替策のほとんどは、単独で使用した場合、ある程度の効果を示すものの、経済的に許容できるレベルまで被害を減らすには不十分だとしている。

(注1)ANSES(Agence nationale de sécurité sanitaire de l’ alimentation, de l’ environnement et du travail)は、健康・農業・環境・労働・消費者問題省の傘下で、健康、安全問題を担当する各機構をサポートするために、食品、環境及び職場のリスク評価を行う政府機関。2010年7月にフランス食品衛生安全庁とフランス環境労働衛生安全庁が合併した組織。
(注2)従来の農薬製品(2種)とアブラムシの数を減らすための2つの農業技術(マルチングと有機肥料)を挙げている。
表5
(参考)EU
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272