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鹿児島県における令和2年産さとうきびの生産状況および実績について

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最終更新日:2021年8月10日

鹿児島県における令和2年産さとうきびの生産状況および実績について

2021年8月

公益社団法人 鹿児島県糖業振興協会

【要約】

 鹿児島県の令和2年産さとうきびは、台風などの気象災害の影響が少なかったことから、生産量は52万2155トン(前年比105%)、収穫面積は9598ヘクタール(同105%)、10アール当たりの収量は5440キログラム(同100%)となった。生産量について島別にみると、種子島、奄美大島および喜界島で前年を下回ったものの、徳之島、沖永良部島および与論島で前年を上回った。
 また、県平均の買入糖度は13.92度となった。

1.さとうきびの位置付け

 さとうきびは、鹿児島県南西諸島の約8割の農家が生産している基幹作物であり、製糖業などの関連産業も含め、地域経済に果たす役割が極めて重要な作物である(表1)。

 本県のさとうきびの令和元年農業産出額は約109億円(前年比115%)で、耕種部門の中では第5位となっている(1位:米、2位:茶〈生葉〉、3位:さつまいも、4位:ばれいしょ、5位:さとうきび)。

 鹿児島県では、さとうきび栽培農家の所得向上とさとうきび産業の維持・発展を図るため、令和7年産を目標年とする「鹿児島県さとうきび増産計画」(以下「増産計画」という)を策定し、生産者、製糖会社、関係機関・団体と連携し、受託組織の育成や単収向上などの取り組みを進めている。

 近年は、度重なる台風などの気象災害や国内で初確認された病害虫の発生などにより、増産計画で定めた目標値を達成できない状況が続いており、早期の生産回復が喫緊の課題となっていることから、例年6月から7月にかけて、増産計画の達成状況の検証・評価を島ごとに行い、必要に応じて、改善方策の検討などを行っている。
 

2.令和2年産さとうきびの生育状況

(1)種子島地域

ア 生育初期〜分げつ

 仮茎長は平年並み以上であったが、4月の低温と4〜5月にかけての少雨の影響で、分げつ数を十分に確保できず、茎数は平年を大きく下回った。

イ 伸長期

 9月上旬の台風10号と10月上旬の台風14号の影響により、葉部裂傷や倒伏などの被害を受け、生育量が低下した。

ウ 登熟期

 台風10号、14号の影響により登熟のスタートが遅れたことに加え、暖冬により出穂が早かったことなどの理由により、最終的な買入糖度は12.86度と後半にかけての大きな糖度の上昇は見られなかった。

(2)奄美地域

ア 生育初期〜分げつ

 4月が平年より少雨、低温であったため生育への影響が懸念されたが、生育はおおむね順調であった。

イ 伸長期

 喜界島では9月上旬の台風10号の影響により被害を受けたが、その他の地域では大きな被害とはならず、茎長、茎数ともに平年をやや上回った。

ウ 登熟期

 喜界島では10月上旬の台風14号の影響により収量、品質が低下したものの、喜界島を除く地域では、大きな台風被害もなかったことなどから、登熟は良好で、買入糖度は14.25度と平年より0.28度上回った。

3.令和2年産さとうきびの生産実績

(1)県全体

 収穫面積は9598ヘクタール(前年比105%)、生産量は52万2155トン(同105%)、10アール当たり収量は5440キログラム(平年比105%)となり、収穫面積、生産量、10アール当たり収量ともに、増産計画の目標(令和2年産)を下回った(図1)。

 なお、生産量の99%(51万6782トン)は、分みつ糖原料用として6社7工場に搬入・製糖されている。

 栽培型別の収穫面積は、株出しが6604ヘクタール(構成比69%)、春植えが1800ヘクタール(同19%)、夏植えが1193ヘクタール(同12%)であった(図2)。

 品種別の収穫面積の割合は、農林8号が22%を占め、次いで農林23号の18%、農林27号の16%の順であった。平成17年産で64%を占めていた農林8号の比率が年々減少し、各地域の気象条件などに適した農林30号など、新たな品種への移行が進みつつある(図3、表2)。
 
 
 
 

(2)各島の状況

 各島別の生産実績は以下の通り(表3)。

ア 種子島(西之表市、中種子町、南種子町)

 収穫面積は2176ヘクタール(前年比102%)、生産量は12万5332トン(同97%)で、10アール当たり収量は5761キログラム(平年比102%)であった。

 株出し比率は71%で、品種別では、農林18号が41%、農林8号が40%を占める。

イ 奄美大島(奄美市、宇検村、瀬戸内町、龍郷町)

 収穫面積は558ヘクタール(前年比99%)、生産量は2万4663トン(同97%)で、10アール当たり収量は4416キログラム(平年比101%)であった。

 株出し比率は69%で、品種別では、農林23号が16%、農林22号が13%、農林27号が12%を占める。

ウ 喜界島(喜界町)

 収穫面積は1380ヘクタール(前年比106%)、生産量は6万4749トン(同83%)で、10アール当たり収量は4692キログラム(平年比83%)であった。

 株出し比率が67%を占める一方、夏植えの比率も21%と高い。品種別では、農林27号が35%、農林23号が27%、農林8号が12%を占める。

エ 徳之島(徳之島町、天城町、伊仙町)

 収穫面積は3407ヘクタール(前年比107%)で県全体の35%を占め、島別では最も多い。生産量は18万4008トン(同117%)となり、10アール当たり収量は5401キログラム(平年比113%)であった。

 株出し比率は69%で、品種別では、農林23号が26%、農林27号が21%、農林8号が18%を占める。

オ 沖永良部島(和泊町、知名町)

 収穫面積は1683ヘクタール(前年比105%)、生産量は9万7483トン(同117%)で、10アール当たり収量は5793キログラム(平年比112%)であった。

 株出し比率は65%を占める一方、夏植えの比率も22%と高い。品種別では、農林22号が27%、農林8号が26%、農林27号が14%を占める。

カ 与論島(与論町)

 収穫面積は394ヘクタール(前年比103%)、生産量は2万5921トン(同111%)で、10アール当たり収量は6577キログラム(平年比111%)であった。

 株出し比率は75%を占め、島別では最も高い。品種別では、農林23号が75%を占める。
 

(3)ハーベスタによる収穫の状況

 さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、国庫補助事業などを活用したハーベスタの導入が進められている。

 また、県では平成23年度から、低コストで持続的な生産体制の確立を図るため、耐用年数を経過したハーベスタの長寿命化(機能向上)のための事業を実施しており、令和2年度までに55台の機能向上を支援した。

 この結果、令和2年産では、収穫面積全体の95.6%、約9181ヘクタールでハーベスタ収穫が行われており、島別にみると、徳之島が最も高い99%となっている。

4.製糖工場の操業状況

 分みつ糖工場は、1島1社の体制となっており、6島6社(7工場)が操業している。

 分みつ糖工場における令和2/3年期の原料処理量は51万6782トンで、前年から2万4836トン増加した。平均買入糖度は13.92度で、前年から0.18度低いものの、平年より0.39度高くなっており、産糖量は6万2574トンと前年を2633トン上回った(表4)。
 
 

おわりに

 鹿児島県では、関係機関・団体と一体となり、収穫面積の確保や単収向上に向けて、基本技術の励行はもとより、各種補助事業などを活用した、農業機械の導入や製糖関連施設の整備などの取り組みを積極的に支援しているところである。

 今後とも、さとうきび生産農家の経営安定と、製糖会社など関連産業を含めた地域経済の維持発展を図るため、増産計画で定めた令和7年産の目標達成に向け、大規模経営体や農作業受託組織などの担い手の育成、農業共済制度への加入促進による「経営基盤の強化」、機械化一貫体系の普及・確立や地力増進による「生産基盤の強化」、病害虫防除対策および鳥獣被害対策の推進や優良品種の育成・普及による「技術対策」などに取り組むこととしている。

 さらに、製糖会社に対しては、人材の確保と労働基準法の上限規制の適用猶予期間(5年間:令和5年度まで)内での長時間労働の是正を図るため、省力化設備・施設の整備への支援を実施しているところである。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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