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大日本明治製糖株式会社の持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みについて

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最終更新日:2022年2月10日

大日本明治製糖株式会社の持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みについて

2022年2月

大日本明治製糖株式会社 サステナビリティ推進室長 橘 香織

はじめに

 SDGs「Sustainable Development Goals」とは、2030年の達成を目指す「持続可能な開発目標」のことです。2030年を達成年限とした「17の目標と169のターゲット」から構成されています。国家(先進国・途上国)、企業、個人などが一丸となって、環境、社会、経済の三方面から持続可能な開発を目指すもので、2015年9月の国際連合総会において全会一致で採択されました。

 大日本明治製糖株式会社サステナビリティ推進室は、2018年10月に製糖業界で初めてのSDGs専門部署として発足しました。発足当初から今日に至るまでの活動についてご紹介します。

1. 発足当初から社内浸透、 目標策定まで  

 「SDGs」「サステナビリティ」という言葉は、最近ニュースや新聞などで頻繁に取り上げられるようになりましたが、サステナビリティ推進室の発足当初である2018年10月頃は、社内はもちろん、世の中にも今のように浸透していませんでした。恥ずかしながら私も全く聞いたことがありませんでした。そこでまず、私自身が勉強をすると同時に、社員全員への説明会からスタートしました。全社員約100人を少人数のグループに分け、社内ミーティングを開催し「SDGs」の理念や採択された背景などを丁寧に説明し理解を求めました。しかし、社員の反応は肯定的な意見と否定的な意見の両方があり、取りまとめの難しさを改めて感じました。当時は、環境問題の大切さは理解しているもののコスト削減や利益を重視していた節もあり、「会社として、もっと他に優先するべきことがある」「利益を出していない部署ではするべきことが無い」「世界的な情勢からもすぐにでもやるべき」「既に行っている活動がある」など社員一人ひとりの意見もさまざまで各人の認識の違いもあらわになりました。また、男女での認識の違いもみられました。「17の目標のうち、No.5“ジェンダー平等を実現しよう”はすぐにでも達成できる」との男性社員の意見に対し、「“ジェンダー平等を実現しよう”の達成が当社にとっては一番難しい」との女性社員の意見もあり、改めて考えさせられました。

 そして社員全員との社内ミーティング終了後、各部署から代表メンバーを集めて「私たちのSDGsへの取り組み」を決定すべく何度も打ち合わせを重ねました。会社全体としての取り組むこと、部署ごとに取り組むべきことなど多方面からのいろいろな意見を集約し以下の通り「三つの柱と八つのゴール」を決定し、当社ホームページにて公表(2020年4月)しました(図1)。ここまでの活動に約半年間を費やしました。

 以下が、〜私たちのSDGsへの取り組み〜になります(表)。

 また、「働きやすさNo.1を目指す」を掲げ、SDGsの取り組みを通じて従業員のみならず、お客さまやすべてのステークホルダーからも選ばれる企業でありたいという願いが込められています。

図1

 

2. 大日本明治製糖 SDGsへ の取り組み2020  

 2019年4月からはSDGsを学びながら、私たちにできる取り組みを考え、小さいことから一つ一つ始めました。活動にあたり大切にしているのは、先に挙げた『食』『環境』『地域』の三つです。「食」に携わる会社として社会貢献はもちろん、「環境」や「地域」への貢献は業種を超えて必要なものであると考えています。私たちの活動の一部をご紹介します。

 三つの柱の内の一つ 『食〜食を通じて“こころ”と“からだ”を豊かにします〜』 のゴールを目指す中で、女子3人制バスケットボールチーム「湘南サンズ」(現在、新型コロナ禍で活動は停止中)とのスポンサー契約を結びました。彼女たちの仕事とスポーツとの両立を目指す姿勢や、東日本大震災の被災地への継続的な訪問支援、湘南の海の清掃など社会・地域貢献活動にも非常に熱心なところに共感したのが契約に至った理由です。バスケットボールイベントを通じて、子どもたちへ「食」と「スポーツ」を融合させた食育活動を行っています。そのご縁から、特定非営利活動法人国連UNHCR協会(国連難民高等弁務官事務所)を知ることとなり、当社の家庭用の砂糖を多く販売している九州地区において同商品の売上の一部を寄付させて頂く活動にもつなげることができました(写真1)。こちらの寄付金は、世界中の難民支援に役立てて頂いています。また、子供たちに少しでも幸せな気持ちになってもらえたらと、北九州市内全域の子供食堂(約37カ所)へ当社の砂糖を寄贈したり、児童養護施設へ当社の砂糖を使用したお菓子やクリスマスケーキを贈る活動をしています。

 また、もう一つの柱 『地域〜地域社会の発展に貢献します〜』では、製糖業界にとって必要不可欠である「サトウキビ」と関係が深く当社のグループ会社がある沖縄県石垣島で「サトウキビ生産体験研修」を実施しています(写真2、3)。私たちの砂糖の原料となる「サトウキビ」がどのように作られ、そして地域社会とどのように結びついているのかを社員一人ひとりが実際に農作業をすべて手作業で体験することで、石垣島のサトウキビ産業への理解を深めています。その活動の詳細は、「石垣島のおいしいお砂糖日記」としてホームページで随時更新しています。

 そして、三つ目の柱『環境〜自然・労働・社会環境に配慮します〜』では、輸送方法の見直しによるCO2の排出量削減、業務のペーパーレス化など外部環境への取り組みや、包装資材にバイオマスプラスティックを使用し、業務用製品包装資材には水性インクを使用するなど、自然環境への負荷低減を推進しながら地球に優しい環境配慮企業を目指し取り組みを続けています。また、ワークライフバランスの充実を図るために時間単位年休制度やボランティア休暇制度を導入するなど、社員一人ひとりが働きがいを持てるよう職場環境改善にも積極的に取り組んでいます。

 そして2020年度には、世界共通のゴールである“2030年”に向けての目標をホームページにて公表し、ゴールまでの10年間を見据えた「重点目標」と、5年間での達成を目指す具体的な数値(2019年度比)を盛り込んだ「短期目標」を策定しました(図2)。短期目標では、例えば、全事務所の電気使用量10%削減、水道使用量5%削減、ペーパーレス化推進で紙の使用量15%削減、業務の効率化による残業時間の削減や育児休暇取得率向上など、社員全員がこの目標を共有し高い意識を持って一丸となって取り組んでいます。

写真1

写真2

写真3

図2

3. コロナ禍でのSDGs活動

 2019年に活動を開始したものの、新型コロナウイルス感染症(COVID–19)の影響は非常に大きいものでした。コロナ禍で制約が多い中、できる範囲での活動が重要だと考えました。そして、何よりも「継続すること、持続させること」に意義があると思っています。

 まず、注目したのは社員です。「働きやすさNo.1を目指す」当社にとって、社員のみならずそのご家族の健康を守るためにも、賛否両論はありますが在宅勤務を推奨しています。当然ながら、顔を合わせる機会が減少することによるコミュニケーション不足の問題や、一人暮らしの社員などからは「寂しい」などの意見もあり、問題の解消のため部署ごとにウェブ上でのコミュニケーションを強化し、心のケアの充実を図ってきました。また、2020年10月からは「絆サポート制度」を導入しました。この制度はコロナ禍で家族との外出や外食も難しい中で、当社が掲げる八つのゴール(図1)に絡めた行動をした社員には、会社より金銭的補助(上限あり)を行うものです。正社員だけでなく製造現場のパート従業員の方々など当社に関係するすべての方を対象としています。例えば、家族や親戚、友人とスポーツや食事をして絆を深めた場合も該当します((2)すべての人に健康と福祉を(5)働きがいも経済成長も)。また、ボランティア活動なども該当します。そのような活動を通じて、社員一人ひとりがSDGsの活動につながっていることを体感してもらうことも大切だと思っています。

 さらに、2020年10月より「SDGsだより」の発行を開始しました(図3)。毎月一つSDGsに関係するテーマを決めて社員に情報発信をしています。内容はさまざまで、「日本のSDGs達成度」「食品ロス」「エコバックとプラスティックごみ」など、まさに“SDGs”なもののほか、各部署での取り組みを紹介したり、ホームページで掲げている目標の達成報告など、「SDGsを自分ごと」として捉えてもらえる環境作りに力を注いでいます。

 また、直近では、在宅勤務が続く中で社員の健康管理にも注目し、運動不足やストレスを解消し、心身ともにリフレッシュして仕事もプライベートも一層充実してもらいたいと考え健康アプリを導入しました。社員に一日8000歩を目標に歩いてもらい、目標を達成すると会社が寄付を実施することになっており、楽しみながら健康になり社会貢献もできるという取り組みです。寄付先は参加者全員で決める予定です。個人やグループ(部署など)での順位が随時分かるので、予想以上にみんなで協力して頑張っており、チームワークの強化にもつながっているように感じます。

 そして、当社と関係の深い石垣島では、社会福祉法人石垣市社会福祉協議会を通じて市内全域の子ども食堂や生活困窮家庭への石垣島産サトウキビ100%で出来た砂糖の配布を始めました。島内の方々に、島の産品を直接味わっていただき少しでも地域産業の発展に貢献できれば嬉しく思います(写真4)。

図3

写真4

おわりに

 初めは耳慣れない人も多かった「SDGs」という言葉は、最近では新聞やテレビなどさまざまなところで頻繁に見聞きするようになりました。そして、社内でも着実に浸透しています。

 これまでの活動を通じて、「砂糖」という商品は、裾野がもっとも広い基礎調味料の一つである一方で、「砂糖」単体の商品だけを通じてSDGsの活動を広めるのには限界があると感じています。また製糖業界全般に言えることとして、大もとの原料のサトウキビは、バガス(サトウキビの搾りカス)まで工場のボイラー燃料に利用するなど完全に再利用されているものの、粗糖(サトウキビから製造される原料糖)の精製段階では「水」「電気」「ガス」の使用を欠かすことが出来ません。日本は2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標に掲げています。脱炭素社会の実現に向けて、私たち製糖会社は何をしなくてはならないのかを真剣に考える時が来ています。そして、その目標達成のためには流通の皆さまやお客さまのご理解とご協力、すなわちパートナーシップが重要であると考えます。SDGsの達成は、個人の力で実現できるものではありません。手を取り合うことが大切です。目標達成には高いハードルがありますが、企業として競い合うところは競い合い、連携が必要な場面は連携し合うメリハリのある活動を行っていきたいと思います。

 社会環境の変化のスピードは想像以上に早く、国連が掲げる2030年までの持続可能な開発目標「SDGs」のゴールまで、いよいよ残すところ9年を切りました。私たちの事業を通じて、このかけがえのない地球にとってかけがえのない存在となれるよう、これからもできること、するべきことを考え、目標に向かって前進していきます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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