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印象を和菓子に 〜和菓子作家という活動〜

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最終更新日:2022年4月11日

印象を和菓子に 〜和菓子作家という活動〜

2022年4月

和菓子作家 坂本 紫穗

1.和菓子作家の仕事

 和菓子作家の名刺を作ってから間もなく10年が経とうとしています。和菓子の魅力に惹かれ夢中になるあまり、昼夜も休日も問わず和菓子作りに試行錯誤していた日々を昨日のことのように思います。

 大変ありがたいことに、この10年間というもの、たくさんの温かい応援とともにさまざまなご依頼を頂いております。初めてお会いする方には「和菓子作家ってどのようなお仕事なのですか?」とご質問を頂くことが多いので、まずは簡単にそのご説明をしようと思います(図1)。

 和菓子作家の仕事とは文字通り「和菓子を作り出すこと」なのですが、私の場合は自分のお店を持っておらず、お菓子の販売をしていません。ですので、お仕事として企業さまよりご依頼を頂く場合は “和菓子の監修” を主としています。そして自分個人としての和菓子作品は、作りたいタイミングでこつこつと作って、自分のSNSやウェブサイトにアップしています(図2)。

 さて、和菓子の監修について具体的に申し上げると、和菓子の意匠(デザイン)、菓銘、構成、素材などを考え、ご提案することです。場合によっては実際に使う材料の仕入れ先を探したり、PRのアイデアを出すこともあります。ご依頼主である企業さまと一緒に良いお菓子を作っていく、そんなイメージですね。

 もちろん和菓子を作り始めた頃は、いずれ自分の店を持って作りたいお菓子を自由に作ってお客様に食べていただくスタイルも考えました。それはとても素敵なことで今でも憧れているのですが、自分自身の性分をよくよく考えた末、お店は持たずに今のようなスタイルで積み重ねていくことに決めました。今こうして自分に合ったやり方で和菓子と向き合うことができ、とてもありがたくそして幸せに思っています。

図1

図2

2.活動の中で感じていること

 ご依頼を受けてお菓子を計画する際は必ず十分なヒアリングをしています。大変ありがたいことに「ぜひ、坂本さんの好きなように自由に発想してください」と言って頂くことが多いのですが、そう言っていただけるとなおさら、クライアントの期待や思いをかなえたくなるものです。それを実現するために、まずはよく「聞き」、そして「考える」「調べる」「試す」「再度、考える」と言う工程を繰り返しています。

 個人としての作品制作においてもほぼ同様です。

 例えば「春の切なさをお菓子にしたいなぁ」と思ったら、まずはそのイメージをスケッチに起こし、色や形のバランスを見ます。そして実際に制作してみてその仕上がりを実物と写真の両方で観察し、「このお菓子を通して伝えたい“切なさ”の印象が伝わるかどうか」を考え、十分でない場合は作り直します(写真1)。

 ご依頼内容によっては日々変化している市場のニーズやトレンドなどを調べて新たにインプットし、その変化の速さに驚くことも多々あります。やはりこれまでに無い新しいものは目を引きますし、私たちの好奇心をかき立てます。そして大胆なものにはインパクトがあり、中には見るからに食欲をそそるものもたくさんありますね。しかし、そんな目まぐるしいトレンドの流れの中でも、人々がお菓子に求めている変わらない期待値というものは必ずあると思っていて、私なりに感じているそのポイントを見失わないよう日々心がけております。

写真1

3.優しい気持ちがこもるお菓子を作りたい

 私個人の和菓子作品においても企業さまとのコラボレーション作品においても、それをもらう人・見る人・食べる人に向けた “優しい気持ち”がこもるお菓子を作りたいと思っています。“優しい気持ち”とは“思いやり”とも言えて、作る側と楽しむ側(食べる側)の心のコミュニケーションが取れるようなもの、そしてできるだけその意思疎通が温かい気持ちのやりとりであってほしいと願っています。例えば、食べる人の好みや健康を考えたちょうど良い甘さの加減というのも優しい気遣いの一つです。他にも、食感や水分量、風味、色合いをはじめとした季節感を含めるとその工夫の幅は常に無限大です(写真2)。私は色合いを大事にしているので、使うお砂糖は白双糖(しろざらとう)が多いですが、お菓子の種類や、出したい雰囲気によっては上白糖、粉糖、和三盆糖、黒糖なども同様に使用します。砂糖を変えるだけでも、質感や風味が大きく変わるので、その使い分けの工夫はとても楽しく、今後もいっそう学んでいきたい分野ですね。

 こうして丁寧に作られたお菓子を目の前にすると、自然と笑顔になったり、会話が弾んだり。心を込めて作られたお菓子には、そういう力があると思うのです。

 そんな力に導かれた結果、私は今こうして和菓子作家をしているのだと思いました。

写真2

4.今後、力を入れたいと思うこと

 和菓子の勉強を始めて12年、和菓子について考え知れば知るほど、まだまだ自分には知識も経験もそして人間的にも全く足りていないと感じています。これは焦っても仕方がないので、一生をかけて和菓子と向き合い、もがき、探求していこうと心に決めています。

 そのように私を魅了し、たくさんの喜びを与えてくれた「和菓子」という存在への恩返し、そして私の目標というようなものといえば、やはり和菓子の魅力をより多くの人に伝えることです。これは私が和菓子から頂いた喜びや恩恵を少しでも循環させていきたいという思いで、和菓子作家を名乗った日から変わらず持ち続けている意志でもあります。

 その一環として、和菓子教室やワークショップ、イベントのお声がけをいただきましたら、国内外を問わず積極的にお受けしてまいりました(写真4、5)。ワークショップの内容は、和菓子作り体験やお砂糖や粉類など和菓子の素材・種類の解説、そして和菓子と飲み物(お茶、コーヒー、お酒など)のマリアージュのテイスティング会などさまざまです。開催会場の設備や、主催者のご意向などを含めて柔軟に企画・実施しています。各イベントには基本的にその内容に興味のある方がいらっしゃるので、皆さま大変熱心に参加してくださり、しっかりと楽しんで理解を深めてくださっているように思います。

 今後も大人の方はもちろん、まだ和菓子になじみのない子供たちや海外の方にも伝えていけるよう努力を続けたいと思っています。

 和菓子の魅力を広げるために大切なこと。私はやはり、一つ一つのお菓子を心を込めて丁寧に作っていくことかなと思います。基本はいつもシンプルで、地道です。遠くに行こうとするほど、一歩一歩の歩み方が重要になってくると実感しています。私自身もこの気持ちを大切に守っていきたいと思っています(写真5)。

写真3

写真4

写真5

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272



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