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令和3年産てん菜の生産状況について

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最終更新日:2022年7月11日

令和3年産てん菜の生産状況について

2022年7月

北海道 農政部 生産振興局 農産振興課

【要約】

 令和3年産てん菜の作付面積は、5万7509ヘクタールと前年から760ヘクタール増加した。生産量は、一部地域において夏期の高温・少雨による影響が懸念されたが、全道的には順調な生育となり、平年よりも多い406万849トンとなった。その結果、10アール当たり収量は7061キログラムとなり、過去最高を記録した令和元年産の7074キログラムに次ぐ豊作となった。糖分は、平年をやや下回る16.2%、歩留は15.8%となり、砂糖生産量は63万9985トンとなった。

1.最近のてん菜の作付動向

 てん菜は、北海道の畑作経営の輪作体系を維持する上で基幹的な作物であるとともに、てん菜糖業は地域経済の維持・発展に重要な役割を担っている。

 近年、生産者の高齢化や経営規模の拡大に伴い、労働負担の大きいてん菜から他作物への作付転換や天候不順などにより、作付面積は総じて減少傾向で推移してきたが、令和3年産は、5万7509ヘクタールと前年より増加した(図1)。

 

2.令和3年産てん菜の生育概況

 播種(  はしゅ)期、出芽期および移植期は平年並となり、移植後の気温が高めに推移したことから、活着は「やや良」となった。その後、7月からの高温・少雨により一部地域において生育の抑制がみられたものの、8月以降の降雨で少しずつ生育が回復し、その後、順調に根部肥大が進み、全道的には順調な生育となった(表1)。

 病害虫については、褐斑病、根腐病、そう根病、黄化病の発生量は平年より少なかった。ヨトウガは初発期がやや早く、第1世代の発生量は平年並であったが、第2世代は平年より少なく、テンサイモグリハナバエは少なかった。
 

 

3.令和3年産てん菜の生産状況

 令和3年産てん菜の作付面積は、前年産と比べ760ヘクタール増加し5万7509ヘクタール(前年比1.3%増)、10アール当たり収量は、167キログラム増加し7061キログラム(同2.4%増)、生産量は、14万8447トン増加し406万849トン(同3.8%増)となった。

 なお、単収は、過去最高となった令和元年産に次ぐものとなったが、最低気温が高めで気温の日較差が小さかったことや収穫期の降雨の影響により、根中糖分については、直近10年の平均である16.6%をやや下回る16.2%となり、前年産を0.2ポイント下回った(表2、図2)。

 

 

 品種別の作付構成は、「カーベ2K314」(38.7%)、「パピリカ」(26.2%)、「ライエン」(12.9%)の順となっている(表3)。

 「カーベ2K314」は、褐斑病やそう根病の抵抗性が優れており、「パピリカ」は、そう根病抵抗性に優れ根重が多い。また、平成29年に優良品種に認定された「ライエン」は、そう根病抵抗性に優れ糖量が多いことから、その作付けは増加傾向となっている。

 

 てん菜の作付戸数は全道的に減少傾向が続いており、令和3年産は10年前(平成23年)と比べ1516戸(18.5%)減少し、6698戸となった。一方、1戸当たりの作付面積は8.6ヘクタールと、10年で1.2ヘクタール増加している(図3)。

 労働力不足の中でこうした作付規模の拡大に対応するため、近年では、春の育苗・移植作業に要する労働力を大幅に削減できる直播(ちょくはん)栽培に取り組む地域が増加しており、3年産の直播栽培の面積は、前年より2711ヘクタール増加の2万436ヘクタール(作付面積の35.5%)となっている(図4)。

 

 

4.てん菜糖の生産状況

 北海道内の製糖工場は、前年同様、3社8工場で操業しており、令和3年産原料処理量は406万849トンで、歩留は15.8%となったことから、砂糖生産量は63万9985トン(前年比1.4%増)となった(表4)。

 なお、北海道糖業株式会社本別製糖所にあっては、令和5年3月をもって生産を終了するものの、原料てん菜については、近隣の工場にてこれまで通り受け入れる計画となっている。

 

おわりに

 令和3年産のてん菜生産については、一部地域では夏期の高温・少雨による影響が懸念されたものの、その後の天候に恵まれたこと、また、生産者のたゆまぬ努力により、10アール当たり収量は7061キログラムと、全道的にはおおむね良好な作柄となった。

 てん菜は、小麦や豆類、ばれいしょとともに、本道畑作農業における基幹作物として重要であり、今後とも、生産者、製糖業者、行政などの関係者が連携し、直播栽培の拡大、自然災害に強い栽培技術の普及、複合耐病性品種の導入推進、大型機械による作業効率化、作業の外部化や共同化など、低コストで省力的かつ安定的な生産体制の確立に向けた取り組みをより一層、推進していく必要がある。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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