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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年6月時点予測)

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最終更新日:2022年7月11日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2022年6月時点予測)

2022年7月

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2022/23年度の砂糖生産量はやや、輸出量はかなりの程度増加する見込み
 2022/23年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、大規模な植え替えが計画されているものの、前年度の不作による苗不足から、848万ヘクタール(前年度比2.3%減)とわずかに減少すると見込まれる(表2)。一方でサトウキビ生産量は、中南部地域において平年より乾燥したものの、サトウキビの生育に好条件が続いたことにより6億500万トン(同4.9%増)とやや増加すると見込まれる。砂糖生産量は、ガソリンなどの燃料にかかる商品流通サービス税(ICMS)の引き下げが6月に上院で可決されたことを受けて、エタノールのガソリンに対する価格競争力が下がり、製糖業者は砂糖製造への仕向け量を増やすと予想されることから、3927万トン(同4.1%増)とやや増加すると見込まれる。輸出量は、砂糖の増産や国際価格の高値基調などを受けて2835万トン(同6.1%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。




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2021/22年度の砂糖生産量はかなり大きく増加するものの、輸出量はかなり大きく減少する見込み
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、517万ヘクタール(前年度比5.3%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。主産地での降雨量は平年並みまたは平均を上回っており、生育状況は順調であることから、サトウキビ生産量は4億4311万トン(同5.1%増)とやや増加すると見込まれる。砂糖生産量は、北部で発生した収穫期前の大雨の影響が想定より軽微であったことや、主産地のマハラシュトラ州やカルナータカ州のサトウキビ生産量が過去最多を記録するとみられることから、3867万トン(同14.9%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、インド政府が同年度の輸出に際し許可制を導入したことを受けて先月予測の1075万トンから下方修正され、720万トン(同14.8%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。






 
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2021/22年度の砂糖生産量はかなり大きく、輸入量は大幅に減少する見込み
 2021/22年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、112万ヘクタール(前年度比3.6%減)とやや減少すると見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地である広西チワン族自治区や雲南省の好天などを受けて7389万トン(同0.4%増)とわずかに増加すると見込まれる。一方、同年度のてん菜の収穫面積は、トウモロコシへの転作の増加により、14万ヘクタール(同37.8%減)と大幅に減少すると見込まれる。てん菜生産量も、収穫面積の減少や冬季の寒波などを背景に、717万トン(同42.1%減)と大幅な減少が見込まれる。




 砂糖生産量は、原料の減産に加え、てん菜収穫期間中に発生した大規模停電による製糖工場の操業停止や、降雨によるサトウキビ収穫の遅滞などを受けて1024万トン(同11.2%減)とかなり大きな減少が見込まれる。輸入量は、2020年に引き続き2021年も国内生産の不足分を上回る量が輸入され、国内在庫が積み増されたことから、533万トン(同33.8%減)と大幅に減少すると見込まれる。
広西チワン族自治区でサトウキビ生産者向けの新保険制度を開始
 中国財政部、農業農村部および中国銀行業監督管理委員会(CBRC)は5月7日、広西(こうせい)チワン族自治区のサトウキビ生産者を対象に、主要な自然災害のほか、虫害や()害および想定外の事故などを対象に農業生産活動に係る経費を補償する「完全コスト保険」(原文:完全成本保険)と、サトウキビの価格と生産量の変動による収入の損失を補償する「作付収入保険」(原文:〇〈のぎへんに中〉植收入保険)を新たに実施するよう、同区の関係部門に通知を発出した。国内砂糖生産量第1位を誇る同区の砂糖産業のリスク耐性を強化し、砂糖供給体制を安定させることが目標とされている(図4)。
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 財政部によると、完全コスト保険と作付収入保険はもともと、米、小麦およびトウモロコシ生産者向けに2018年から試験的に導入されたものである。これらの保険を導入することにより、生産者は損失対象や補償額が増えるという。サトウキビ生産者の負担率を変えないことを前提に、同地区の平均的なサトウキビ生産者の収入で試算すると、最高補償水準は1ムー(注1)当たり約2400元(4万6752円(注2)、1ヘクタール当たり約70万円)となり、サトウキビ生産者向けの既存の保険の3倍に達すると財務部は説明している(注3)。一方、既存の保険は残すことで、保険ニーズの多様化に対応することとしており、サトウキビ生産者は()(じょう)の面積に関わらず、2022年から自由に保険を選択することが出来る。

(注1)1ムー=0.0667ヘクタール。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の5月末TTS相場1中国人民元=19.48円を使用。
(注3)完全コスト保険および作付収入保険の補償水準は、原則としてサトウキビ栽培による収入の80%以下とされている。
(注4)詳細は、2022年6月29日付海外情報(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003286.html)を参照されたい。


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2021/22年度の輸出量は、やや増加する見込み
 2021/22年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、146万ヘクタール(前年度比1.4%減)とわずかな減少が見込まれる(表5)。てん菜生産量は、干ばつを記録した前年と比べて生育期の降雨量が多く、大規模な病虫害も今期は発生していないため、1億1031万トン(同12.1%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。砂糖生産量は、生育期の多雨により、てん菜の生育状況が順調であったことから、1719万トン(同14.0%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、砂糖の増産などを受けて134万トン(同5.9%増)とやや増加すると見込まれる。

てん菜生産者団体、肥料価格やエネルギー価格の高騰を問題視
 欧州てん菜生産者連盟(CIBE)は6月1日〜3日、ポーランドで46回目となる会議を開催し、業界関係者約150人が参加した。会議報告書では、てん菜栽培にかかる肥料費、燃料費や農薬費の上昇により、2022年のてん菜生産コストは前年比で2〜3割程度の増加が見込まれている。また、欧州では天然ガスをはじめとしたエネルギー価格がさらに高騰し、てん菜生産コストを著しく引き上げるものと予想されている。

 CIBEは、EUで2017年に砂糖の生産割当が廃止されて以降、砂糖価格の低下やCOVID-19による砂糖需要の低下など、さまざまな危機が砂糖産業を弱体化させている中、生産コストの上昇は真っ先に対処されるべき重要事項であり、欧州の砂糖価格に生産コスト上昇分が適切に反映される必要があるとした。また、EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca(注))による、EU全体で肥料の供給や肥料価格の高騰に対する支援を早急に行うべきとの主張に対し、CIBEも賛同の意を表明した。

(注)Copa-Cogecaとは、欧州諸国の農業生産者によって構成されるCopa(欧州農業組織委員会)と、EU加盟国の農業共同組合により構成されるCogeca(欧州農業協同組合委員会)により組織された農業生産者団体である。CopaとCogecaは、独立した組織であるものの、両者は共同で事務局を設置し、主にロビー活動を行っている。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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