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鹿児島県における令和3年産さとうきびの生産状況および実績について

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最終更新日:2022年8月10日

鹿児島県における令和3年産さとうきびの生産状況および実績について

2022年8月

公益社団法人 鹿児島県糖業振興協会

【要約】

 鹿児島県の令和3年産さとうきびは、台風などの大きな気象災害の影響もなく、生産量は54万2729トン(前年比104%)、収穫面積は9511ヘクタール(同99%)、10アール当たりの収量は5706キログラム(平年比110%)となった。生産量について島別にみると、徳之島、沖永良部島および与論島で前年を下回ったものの、種子島、奄美大島および喜界島で前年を上回った。

 また、県平均の買入糖度は14.84度となった。

1.さとうきびの位置付け

 さとうきびは、鹿児島県南西諸島の約6割の農家が生産している基幹作物であり、製糖業などの関連産業も含め、地域経済を支える重要な役割を担っている(表1)。

 本県のさとうきびの令和2年農業産出額は、約116億円(前年比106%)であり、耕種部門の中では第5位となっている(1位:米、2位:ばれいしょ、3位:さつまいも、4位:茶〈生葉〉、5位:さとうきび)。

 鹿児島県では、さとうきび生産農家の経営安定とさとうきび産業の維持・発展を図るため、令和7年産を目標年とする「鹿児島県さとうきび増産計画」(以下「増産計画」という)を策定し、生産者、製糖会社、関係機関・団体と連携し、受託組織の育成、堆肥投入などの地力増進対策や病害虫防除対策、地域の条件に適した優良品種の普及などによる単収・品質向上などの取り組みを推進している。

 近年は、生産者の高齢化などによる労働力の減少、台風など気象災害などにより、増産計画で定めた目標値を達成できない状況が続いており、早期の生産回復が喫緊の課題となっていることから、例年7月から8月にかけて、増産計画の達成状況の検証・評価を島ごとに行い、必要に応じて、改善方策の検討などを行っている。
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2.令和3年産さとうきびの 生育状況

(1)種子島地域

ア 生育初期〜分げつ

 気温は高めで推移し、仮茎長は平年並み以上であったが、梅雨入りが平年より早く、長雨による日照不足の影響などがあり、茎数は平年を下回った。

イ 伸長期

 8月上中旬は、低温、多雨、日照不足で経過したが、下旬以降は天候が安定し、生育はおおむね順調に推移した。

ウ 登熟期

 生育期間中、大きな気象災害もなく、概ね気象条件にも恵まれたことから、最終的な買入糖度は、13.79度となった。

(2)奄美地域

ア 生育初期〜分げつ

 降水量が少ない時期もあったが、気温は、平年並みからやや高めで推移し、生育はおおむね順調であったが、茎数は少ない傾向にあった。

イ 伸長期

 8月、9月の降水量は、平年を5割以上下回る島が多かったものの干ばつには至らず、平年並みの生育となった。

ウ 登熟期

 台風の接近はあったものの、大きな被害もなかったことなどから、登熟は良好で、買入糖度は15.26度となった。

3.令和3年産さとうきびの 生産実績

(1)県全体

 収穫面積は9511ヘクタール(前年比99%)、生産量は54万2729トン(同104%)、10アール当たり収量は5706キログラム(平年比110%)となり、収穫面積、生産量、10アール当たり収量ともに、増産計画の目標(注)を下回った(図1、2)。

 なお、生産量の99%(53万7444トン)は、分みつ糖原料用として6社7工場に搬入・製糖されている。

(注)増産計画目標(令和7年産)
   収穫面積:1万300ヘクタール、生産量:63万700トン、単収:10アール当たり6120キログラム。
 
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 栽培型別の収穫面積は、株出しが6822ヘクタール(構成比72%)、春植えが1673ヘクタール(同18%)、夏植えが1016ヘクタール(同11%)であった(図2)。

 品種別の収穫面積の割合は、農林27号が23%を占め、次いで農林8号の19%、農林23号の19%の順であった。平成17年産で64%を占めていた農林8号の比率が年々減少し、各地域の気象条件などに適した品種への移行が進みつつある(図3、表2)。
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(2)各島の状況

 各島別の生産実績は以下の通り(表3)。

ア 種子島(西之表市、中種子町、南種子町)

 収穫面積は2207ヘクタール(前年比101%)、生産量は15万3197トン(同122%)で、10アール当たり収量は6941キログラム(平年比126%)であった。

 株出し比率は70%で、品種別では、農林18号が50%、農林8号が34%を占める。

イ 奄美大島(奄美市、宇検村、瀬戸内町、龍郷町)

 収穫面積は546ヘクタール(前年比98%)、生産量は2万6749トン(同109%)で、10アール当たり収量は4902キログラム(平年比115%)であった。

 株出し比率は71%で、品種別では、農林27号が31%、農林23号が17%、農林22号が10%を占める。

ウ 喜界島(喜界町)

 収穫面積は1295ヘクタール(前年比94%)、生産量は7万4256トン(同115%)で、10アール当たり収量は5736キログラム(平年比108%)であった。

 株出し比率が71%を占める一方、夏植えの比率も18%と高い。品種別では、農林27号が45%、農林23号が26%、農林8号が10%を占める。

エ 徳之島(徳之島町、天城町、伊仙町)

 収穫面積は3365ヘクタール(前年比99%)で県全体の35%を占め、島別では最も多い。生産量は17万2426トン(同94%)となり、10アール当たり収量は5124キログラム(平年比103%)であった。

 株出し比率は73%で、品種別では、農林23号と農林27号がそれぞれ29%、農林8号が16%を占める。

オ 沖永良部島(和泊町、知名町)

 収穫面積は1705ヘクタール(前年比101%)、生産量は9万1460トン(同94%)で、10アール当たり収量は5366キログラム(平年比100%)であった。

 株出し比率は71%を占める一方、夏植えの比率も17%と高い。品種別では、農林8号、農林22号および農林27号がそれぞれ23%を占める。

カ 与論島(与論町)

 収穫面積は394ヘクタール(前年比100%)、生産量は2万4642トン(同95%)で、10アール当たり収量は6259キログラム(平年比102%)であった。

 株出し比率は77%を占め、島別では最も高い。品種別では、農林23号が78%を占める。
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(3)ハーベスタによる収穫の状況

 さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、国庫補助事業などを活用したハーベスタの導入が進められている。

 また、県では平成23年度から、低コストで持続的な生産体制の確立を図るため、耐用年数を経過したハーベスタの長寿命化(機能向上)のための事業を実施しており、令和3年度までに62台の機能向上を支援した。

 この結果、令和3年産では、収穫面積全体の96%、約9113ヘクタールでハーベスタ収穫が行われており、島別にみると、沖永良部島が最も高い99%となっている。

4.製糖工場の操業状況

 分みつ糖工場は、1島1社の体制となっており、6島6社(7工場)が操業している。

 分みつ糖工場における令和3/4年期の原料処理量は53万7444トンで、前年から2万662トン増加した。平均買入糖度は14.84度で、前年より0.92度高くなっており、産糖量は6万4128トンと前年を1554トン上回った(表4)。
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おわりに

 鹿児島県では、関係機関・団体と一体となり、収穫面積の確保や単収向上に向けて、基本技術の励行はもとより、各種補助事業などを活用した、農業機械の導入や製糖関連施設の整備などの取り組みを積極的に支援しているところである。

 今後も、さとうきび生産農家の経営安定と、製糖会社など関連産業を含めた地域経済の維持発展を図るため、増産計画で定めた令和7年産の目標達成に向け、大規模経営体や農作業受託組織などの担い手の育成、農業共済制度への加入促進による「経営基盤の強化」、機械化一貫体系の普及・確立や地力増進による「生産基盤の強化」、病害虫防除対策および鳥獣被害対策の推進や優良品種の育成・普及による「技術対策」などに取り組むこととしている。

 さらに、製糖会社に対しては、人材の確保と労働基準法の上限規制の適用猶予期間(5年間:令和5年度まで)内での長時間労働の是正を図るため、省力化設備・施設の整備への支援を実施しているところである。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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