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3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2023年1月時点予測)

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最終更新日:2023年2月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2023年1月時点予測)

2023年2月



2022/23年度の砂糖生産量および輸出量は減反ながらも増加を維持する見込み
 2022/23年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、前年度の不作による苗不足や大豆やトウモロコシなど他の作物との競合から855万ヘクタール(前年度比1.5%減)とわずかに減少すると見込まれる(表2)。一方でサトウキビ生産量は、中南部地域が平年より乾燥した後、9月以降は降雨が続いて収穫作業が遅れたものの、その他の地域ではサトウキビの生育に良好な条件が続いたことから6億600万トン(同5.1%増)とやや増加すると見込まれる。砂糖生産量は、7月から相次ぐガソリン卸売価格の引き下げやガソリンに対する連邦税の免税措置延長を受けて、相対的に同国内でのバイオエタノール需要減少から砂糖仕向けの増加が見込まれることや、中南部地域の気候が良好で、雨季開始前に予想以上のサトウキビが粉砕されたことなどから、3968万トン(同5.5%増)とやや増加すると見込まれる。輸出量は、インドの輸出量が予想を下回ったことや、砂糖への仕向け増を背景に2917万トン(同7.7%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。

ブラジルサトウキビ産業協会、ガソリンの免税延長による損失を試算
 2023年1月3日付けの現地報道によると、ブラジルのルーラ新大統領は、22年12月末で期限を迎えたガソリンに対する連邦税の免税措置延長を発表した。これを受けてブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)は、新たな期限となる2月28日までの60日間で、エタノール産業界全体で30億レアル(約786億6000万円(注))の損失が生じるとの試算を発表した。また、この免税措置延長によりガソリンとエタノールが同じ税体系になることに対し、環境保護の観点から異なる製品をあたかも同等に取り扱っているとの不満を示している。

 ボルソナロ前大統領は、22年10月の大統領選での再選を目指すべく、同年7月にガソリンの連邦税を引き下げたのに対し、ルーラ新大統領は、同年11月に行った就任前の演説で免税措置の見直しを表明していた。免税はガソリン消費を刺激する一方で、競合燃料であるエタノールは価格競争力を失い、影響を受けることとなる。また、エタノールの供給量の減少は、エタノールの製造残渣(ざんさ)を原料とするバイオガスやバイオメタン分野にも影響が及び、この分野で2億レアル(51億2400万円)規模の投資計画があったもの、免税措置延長により停止される可能性が生じているとされている。

(注)1レアル=25.62円(ブラジル中央銀行の12月末TTS相場:1レアル=5.22米ドル、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の12月末TTS相場:1米ドル=133.70円を使用して算出)。

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2022/23年度の砂糖輸出量は800万トン台を維持する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、前年が豊作だったことに加えサトウキビ価格の上昇によりさらに拡大するとの予測から、546万ヘクタール(前年度比5.7%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。サトウキビ生産量は、主産地であるマハラシュトラ州やカルナータカ州における降水量の偏りや日照時間の短さなどによる生育不良から収穫量が減少したものの、最大生産地のウッタル・プラデーシュ州では順調な生育となったことから、4億6135万トン(同3.7%増)とやや増加すると見込まれる。一方で、砂糖生産量は、同国内でのサトウキビのエタノール仕向け量が増加したことなどから、3748万トン(同3.2%減)とやや減少すると見込まれる。輸出量は、同国政府が11月上旬に22/23年度の砂糖輸出枠を600万トンと発表したものの、前年度と同規模の生産が見込まれる中で21/22年度と同様に輸出枠の追加承認が想定されるとして、20/21年度を上回る866万トン(同30.6%減)が見込まれる。なお、同国の製糖工場はこれまでに550万トンの砂糖輸出契約を締結しているとされ、そのうち180万トンが22年末時点で国外に輸出されている。

インド自動車工業会とブラジルサトウキビ産業協会が共同展示
 2023年1月13日から18日までインドで開催された自動車展示会「Auto Expo 2023」において、インド自動車工業会(SIAM)とブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)が共同で、エタノールをテーマに出展した。 展示は三つの区画に及び、一つ目は、エタノールの利点やフレックス燃料車などの技術紹介を、二つ目は、エタノール燃料による排ガス削減効果をVR体験できるプログラムを、三つ目は、UNICAとSIAMによるバイオマスやバイオエネルギーに関連する最新の情報がそれぞれ展示され、技術的進歩、技術基準、規制、公共政策、持続可能性に関するトピックなどが紹介された。なお両者の共同声明では、このような自動車展示会でバイオ燃料に焦点を当てることは、今回が初めての試みとしている。 また同展示会では、自動車分野におけるエタノールとその混合物の利用促進に関するインドとブラジルの二国間協力に基づき、UNICAとSIAMはCoE(注)を立ち上げた。SIAMの事務局長は、エタノール技術と投資を組み合わせ、低炭素モビリティという共通の目標を達成するためにUNICAと提携することはとても有益であると述べた。

(注)CoE(Center of Excellence):地理的・組織的な境界を越えて、多様なチームの能力や知識、専門性を結集し、その領域で模範となる際立ったものを創出する拠点。今回の展示会ではヴァーチャルによるもので、来場者の情報発信源(knowledge portal)として機能するもの。

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2022/23年度の輸入量は増産と在庫積増を受けかなりの程度減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、113万ヘクタール(前年度比1.0%増)とわずかに増加すると見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地の広西チワン族自治区の一部で熱波や干ばつの被害を受けたものの、その他の地域での被害は軽微であったことから、7185万トン(同0.4%減)とわずかな減少にとどまると予想される。一方で、同年度のてん菜の収穫面積は、トウモロコシ価格高騰を背景に2022年3月の政府による穀物増産の呼びかけから他作物への転作が増加したものの、14万ヘクタール(前年度同)と見込まれる。てん菜生産量は、順調な生育により748万トン(前年度比5.9%増)とやや増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、サトウキビ主産地の広西チワン族自治区の一部で22年7月から11月まで干ばつが続いたものの、順調に生育していることや、農家へのてん菜栽培を促すために、工場が期初にてん菜の買取価格を過去最高値に引き上げたことなどから、1064万トン(同3.0%増)とやや増加すると見込まれる。輸入量は、20年に引き続き21年も国内生産の不足分を上回る量が輸入され、国内在庫が積み増しされている中で662万トン(同6.2%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。
 

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2022/23年度の輸出量は、前月予想から引き続き100万トン割れの見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、収益性が高く、価格が高騰しているトウモロコシなどの穀物への転作が進んだことなどから、140万ヘクタール(前年度比3.8%減)とやや減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、今夏の記録的な熱波や干ばつの影響、肥料価格高騰による施肥の減少、スペインでの豪雨による収穫の停滞などから収量が平年を下回るものと見込まれ、9922万トン(同11.0%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。砂糖生産量は、てん菜の減産見込みを受けて1566万トン(同8.9%減)とかなりの程度減少すると予想される。輸出量は、砂糖の減産などを背景に99万トン(同24.7%減)と前月予測と同様に100万トンを下回り、大幅に減少すると見込まれる。

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