鹿児島県における令和4年産さとうきびの生産状況および実績について

　鹿児島県の令和4年産さとうきびは、台風などの大きな気象災害の影響もなく、生産量は53万3111トン（平年比103％）、収穫面積は9566ヘクタール（同99％）、10アール当たりの収量は5573キログラム（同104％）となった。生産量について島別にみると、徳之島、沖永良部島および与論島で平年を下回ったものの、種子島、奄美大島および喜界島で平年を上回った。

　また、県平均の買入糖度は14.16度となった。
 

　さとうきびは、鹿児島県南西諸島の約6割の農家が生産している基幹作物であり、製糖業などの関連産業も含め、地域経済を支える重要な役割を担っている（表1）。

　本県のさとうきびの令和3年農業産出額は約130億円（前年比112％）であり、耕種部門の中では第4位となっている（1位：ばれいしょ、2位：米、3位：茶〈生葉〉、4位：さとうきび）。

　鹿児島県では、さとうきび生産農家の経営安定とさとうきび産業の維持・発展を図るため、令和7年産を目標年とする「鹿児島県さとうきび増産計画」（以下「増産計画」という）を策定し、生産者、製糖会社、関係機関・団体と連携し、受託組織の育成、堆肥投入などの地力増進対策や病害虫防除対策、地域の条件に適した優良品種の普及などによる単収・品質向上などの取り組みを推進している。

　近年は、生産者の高齢化などによる労働力の減少、台風などの気象災害により、増産計画で定めた目標値に至っていない状況が続いていることから、例年7月から8月にかけて、島ごとに増産計画の取り組みの検証・評価を行い、必要に応じて、改善方策の検討などを行っている。
 

ア　生育初期〜分げつ

　3、4月の平均気温が平年より1度ほど高かったことから、春植えや株出しの萌芽(ほう が)はおおむね良好であった。5月の日照不足などにより初期生育は遅れ気味であったが、適度な降雨があり、仮茎長は平年並み以上となった。

 
イ　伸長期

　高温傾向で推移し、局地的降雨があったことなどから仮茎長、茎数は平年並みとなった。

　しかし、9月18〜19日にかけて台風14号が接近し、葉先の裂傷などの被害を受けた。

 
ウ　登熟期

　台風の接近はあったが、期間を通しておおむね気象条件に恵まれた。他方で製糖期間中に強い寒波による葉先の裂傷の被害を受け、最終的な買入糖度は、12.74度となった。

 

ア　生育初期〜分げつ

　4月下旬〜6月中旬の日照時間は、ほとんどの島で平年の50％程度の寡日照で推移し、茎数は少ない傾向にあり、特に沖永良部島で少ない傾向となった。

 
イ　伸長期

　7〜9月の降水量は、ほとんどの島で平年を5割以上下回る期間が多かったが、台風による降雨や適度な局所的降雨により干ばつには至らず、平年並みの生育となった。

　一方、沖永良部島は干ばつ傾向にあり、茎長は平年を下回った。

 
ウ　登熟期

　台風の接近はあったものの、大きな被害もなかったことなどから、登熟は良好で、買入糖度は14.74度となった。

 

　収穫面積は9566ヘクタール（平年比99％）、生産量は53万3111トン（同103％）、10アール当たり収量は5573キログラム（同104％）となり、収穫面積、生産量、10アール当たり収量ともに、増産計画の目標^（注）を下回った（図1、2）。  

　各島別の生産実績は以下の通り（表3）。
 

ア　種子島（西之表市、中種子町、南種子町）

　収穫面積は2337ヘクタール（平年比104％）、生産量は15万4941トン（同119％）で、10アール当たり収量は6631キログラム（同115％）であった。

　株出し比率は67％で、品種別では、農林18号が43％、農林8号が25％を占め、令和4年産から一般栽培が始まったはるのおうぎは、21％を占めている。

 
イ　奄美大島（奄美市、宇検村、瀬戸内町、龍郷町）

　収穫面積は565ヘクタール（平年比97％）、生産量は2万8389トン（同110％）で、10アール当たり収量は5025キログラム（同111％）であった。

　株出し比率は69％で、品種別では、農林27号が32％、農林23号が20％、農林22号が9％を占めている。

 
ウ　喜界島（喜界町）

　収穫面積は1337ヘクタール（平年比99％）、生産量は7万7144トン（同104％）で、10アール当たり収量は5772キログラム（同104％）であった。

　株出し比率が67％を占める一方、夏植えの比率も22％と高い。品種別では、農林27号が46％、農林23号が26％、農林8号が10％を占めている。

 
エ　徳之島（徳之島町、天城町、伊仙町）

　収穫面積は3206ヘクタール（平年比93％）で県全体の34％を占め、島別では最も多い。生産量は17万964トン（同98％）となり、10アール当たり収量は5332キログラム（同104％）であった。

　株出し比率は75％で、品種別では、農林23号と農林27号がそれぞれ29％、農林8号が15％を占めている。

 
オ　沖永良部島（和泊町、知名町）

　収穫面積は1718ヘクタール（平年比106％）、生産量は7万7904トン（同88％）で、10アール当たり収量は4536キログラム（同84％）であった。

　生産量の減少については、梅雨時期の日照不足や梅雨明け後の干ばつ傾向などの影響が考えられる。

　株出し比率は73％で、品種別では、農林27号が31％、農林8号が21％、農林22号が20％を占めている。

 
カ　与論島（与論町）

　収穫面積は403ヘクタール（平年比99％）、生産量は2万3769トン（同95％）で、10アール当たり収量は5891キログラム（同94％）であった。

　株出し比率は81％を占め、島別では最も高い。品種別では、農林23号が81％を占めている。

 

　さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、国庫補助事業などを活用したハーベスタの導入が進められている。

　また、県では平成23年度から、低コストで持続的な生産体制の確立を図るため、耐用年数を経過したハーベスタの長寿命化（機能向上）のための事業を実施しており、令和4年度までに78台の機能向上を支援した。

　この結果、令和4年産では、収穫面積全体の96.5％、約9235ヘクタールでハーベスタ収穫が行われており、島別に見ると、沖永良部島が最も高い99％となっている。

　分みつ糖工場は、1島1社の体制となっており、6島6社（7工場）が操業している。

　分みつ糖工場における令和4／5年期の原料処理量は52万7917トンで、前年から9527トン減少した。平均買入糖度は14.16度で、前年より0.68度低くなっており、産糖量は6万2208トンと前年を1919トン下回った（表4）。
 

　鹿児島県では、関係機関・団体と一体となり、収穫面積の確保や単収向上に向けて、基本技術の励行はもとより、各種補助事業などを活用した、農業機械の導入や製糖関連施設の整備などの取り組みを支援しているところである。

　今後とも、さとうきび生産農家の経営安定と、製糖会社など関連産業を含めた地域経済の維持発展を図るため、増産計画で定めた令和7年産の目標達成に向け、大規模経営体や農作業受託組織などの担い手の育成、農業共済制度への加入促進による「経営基盤の強化」、機械化一貫体系の普及・確立や地力増進による「生産基盤の強化」、病害虫防除対策および鳥獣被害対策の推進や優良品種の育成・普及による「技術対策」などに取り組むこととしている。

　さらに、製糖会社に対しては、人材の確保と労働基準法の上限規制の適用猶予期間（5年間：令和5年度まで）内での長時間労働の是正を図るため、省力化設備・施設の整備への支援を実施しているところである。