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3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2023年7月時点予測)

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最終更新日:2023年8月10日

3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2023年7月時点予測)

2023年8月

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2023/24年度の輸出量は、増産と国際需要の高まりを背景に大幅な増加を見込む
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の調査会社)による2023年7月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2023/24年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、農家がより収益性の高い大豆やトウモロコシなどの作物に切り替えたものの、846万ヘクタール(前年度比0.3%減)と前年度並みと見込まれる(表2)。サトウdキビ生産量は、主産地の中南部地域で好天に恵まれ収穫に良好な条件が続いたことなどから、6億6300万トン(同9.3%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、サトウキビの増産を受けて、収穫作業や工場での操業が加速しているほか、輸出関連の物流が全面的に稼働していることを背景に、4492万トン(同13.1%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、エルニーニョ現象による世界的な天候不順への懸念やインドでの輸出枠拡大を期待薄とする報道などを背景に、国際市場での輸入需要の高まりが期待されることから、3436万トン(同18.6%増)と大幅に増加すると見込まれる。

サトウキビ由来のバイオガス、ブラジルで規模を拡大
 ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)は7月4日、協会のホームページで同国のバイオガスの生産拡大について公表した。サトウキビ由来のエネルギー資源は同国の脱炭素化の推進と再生可能エネルギー供給源の多様化に寄与しており、近年はバイオエタノールや発電利用としてのバイオマスに加えて、新たにバイオガスの生産の勢いが増していると報じた。

 ブラジルバイオガス協会(ABiogás)の調査によると、稼働中の750以上のバイオガスプラントに加え、今後5年間で新たに65のプラントが稼働する予定で、数多くのバイオガスプロジェクトも発足すると見込まれている。また、2023年6月にはサンパウロ州西部のナランディーバにある工場がサトウキビの廃棄物からバイオガス(バイオメタン)を持続的に生産しているとしてRenovaBio(注)認証を取得するなど、バイオガスの同国での認知度合いは高まってきている。

 バイオマス発電はバガス(サトウキビ搾汁後の残さ)を利用するのに対し、バイオガスはエタノールの蒸留残さ液(ビナス)やフィルターケーキから生成されることから、どちらもサトウキビの加工で生じた廃棄物を原料としているため、生産上は競合関係にない。また、バイオガスは100%再生可能エネルギーで、ディーゼルや天然ガスといった化石燃料との代替が可能であることから、化石燃料と比較してCO2排出量を最大95%抑えることができるとされている。同国で消費される全ディーゼルのうち5%程度が製糖業界で使用される中、バイオガスによる代替の可能性は非常に大きい意味があるとしている。


 (注)同国がパリ協定に基づいて制定した政策であり、バイオ燃料の使用を拡大し、
    化石燃料による温室効果ガスの排出を相殺するための市場を創出することにより、
       同国の炭素強度(carbon intensity)の低減を目標に掲げている。
       なお、国家石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁によるとナランディーバの工場はバイオガスプラントで
       初めてRenovaBio認証を受けた工場である


 






 

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2022/23年度の輸出量は、減産と国内需要の確保により大幅に減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、主産地であるウッタル・プラデーシュ州やタミルナードゥ州での作付面積の拡大などから、557万ヘクタール(前年度比5.4%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。サトウキビ生産量は、ウッタル・プラデーシュ州やカルナータカ州で増産が見込まれるものの、マハラシュトラ州での天候不順による減産が影響し、4億6416万トン(同4.3%減)とやや減少すると見込まれる。

 また、砂糖生産量も、サトウキビの減産に加え、天候不順による早期出穂(しゅっ すい)によりCCS(注1)が低下したことなどから、3534万トン(同8.4%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量も、減産見込みや国内需要の確保、エタノールへの仕向け増のほか、輸出枠の前年比減(注2)などから、833万トン(同33.2%減)と大幅な減少が予想される。なお、現地報道によると、同国政府は昨年11月上旬に22/23年度の砂糖輸出枠を600万トンと発表しており、その後も輸出枠拡大の可能性は低いとしている。

 

(注1)可製糖率:サトウキビのショ糖含有率、繊維含有率および搾汁液の純度から算出される回収可能な糖分の割合。
(注2)21/22年度は輸出上限として、過去最高となる1120万トンが設定された。

バイオ燃料のグローバルリーダーへ
 7月11日付け現地報道によると、インドの石油・天然ガス相は22日にゴアで開催予定のG20エネルギー相会合でインドが米国とブラジルの支援を得て主導するGlobal Biofuel Alliance(GBA)(注1)を他国にも開放すると発表した。同相は以前から計画されているGBAについて、世界のエネルギー市場の歴史において画期的な出来事であり、石油輸出国機構のような大きな可能性を秘めていると述べ、いくつかの国がこの同盟に参加する意向を示していると付け加えた。同国と協力し、GBAを構築する米国とブラジルはバイオ燃料のグローバルリーダーであり、それぞれ世界のエタノール生産の6割弱、3割弱を占めている。また、GBAは世界経済フォーラム、国際エネルギー・フォーラム、国際エネルギー機関など、主要な国際機関からも支援を受けている。

 持続可能なバイオ燃料には大きな可能性がある一方、原料供給の問題、技術的な限界、政策的枠組み、資金調達や投資など多くの課題も存在する。同相は脱炭素による気候変動の緩和とSDGsの達成という世界共通の利益に応えるため、バイオ燃料の研究・開発の拡大と、より広範な国際協力を可能にし、根本的な課題に対処できる世界的なプラットフォームを持つことが急務であると述べた。

 政府の試算によると、同国のエタノール混合プログラムではエネルギーの安全保障を強化すると同時に、過去9年間で5400億ルピー(1兆422億円)(注2)以上の外貨節約につながったとしている。また、過去8年間で、同国の公営石油会社(OMCs)はエタノールの供給に対して8200億ルピー(1兆5826億円)以上を蒸留業者に支払い、そのうち4800億ルピー(9264億円)が農家に支払われたと推定されている。環境への影響については、本プログラムでこれまでに3000万トンの温室効果ガス排出削減につながっている。世界第3位の原油消費国であり、原油需要の85%以上を輸入に依存している同国にとってバイオ燃料の利用拡大は、エネルギー輸入への依存を減らし、エネルギーの使用によって急速に拡大するCO2排出量を抑えるという、二つの目的を達成するための重要な手段としている。

 なお、インドではガソリンにエタノールを20%混合した燃料(E20)が今年2月に販売が開始されてから5カ月ほどでE20を取り扱う店舗数が1350店に急増しているという。これを受けて、同国石油・天然ガス相はE20が25年までに同国全土で普及する予定であると発言している。

 

(注1)G20の議長国であるインドが先導し、主要バイオ燃料生産および消費国である米国とブラジルと共に
        持続可能なバイオ燃料の利用を強化することを目的に結成された同盟。GBAは市場の強化、
        グローバルなバイオ燃料貿易の促進、具体的な政策の教訓の共有、
    世界各国のバイオ燃料プログラムに対する技術支援の提供に重点を置く。
(注2)1インド・ルピー=1.93円(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の
    6月末TTS相場)。



 






 

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2022/23年度の砂糖生産量はかなりの程度、輸入量は大幅に減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、ユーカリ植林地からの転換などから、116万へクタール(前年度比3.9%増)とやや増加が見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地の広西チワン族自治区で昨年7月から11月の間で続いた干ばつの影響や病虫害の発生により、6264万トン(同13.2%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。また、同自治区では2月上旬から3月中旬にかけての降水量が史上最低(平年比約8割減)となったことから、3月の春植えの時期に十分な降水量を確保できなかったことも減産の要因とされる。一方で、同年度のてん菜の収穫面積は、20万ヘクタール(同38.2%増)と大幅な増加が見込まれる。てん菜生産量は、産地で特段の天候不順もなく、順調な生育が予測されており、875万トン(同23.8%増)と大幅に増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、サトウキビの減産予測から、970万トン(同6.1%減)とかなりの程度減少し、1000万トンを下回ると見込まれる。輸入量は、これまで国内生産の不足分を上回る量が輸入され、国内在庫が積み増しされてきたことから減少見通しが続いている。22/23年度も、国内での砂糖生産が減少予測となっているものの、近時の世界的な砂糖価格の上昇などを背景に、在庫の取り崩しなどが見込まれることから、584万トン(同16.2%減)と大幅に減少すると見込まれる。
 



 

 

 

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2022/23年度の輸出量は減産を背景に大幅に減少し、輸入量は大幅に増加する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、ウクライナ情勢の影響などにより、世界的な規模での食糧不足や価格高騰の懸念が広がる中、収益性が高く価格が高騰しているトウモロコシなどの穀物への転作が進んだことなどから、140万ヘクタール(前年度比3.8%減)とやや減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、昨夏の記録的な熱波や干ばつの影響のほか、肥料価格の高騰による施肥の減少やEU域内でのネオニコチノイド系農薬の緊急的使用の禁止などから収量が平年を下回ると予測され、9941万トン(同10.8%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

 砂糖生産量は、てん菜の減産のほか、干ばつなどの影響を受けたてん菜が12月中旬の急激な冷え込みと霜により含糖量が一層低下したことなどから、1575万トン(同8.8%減)とかなりの程度減少すると予想される。輸入量は、減産による不足分を補うため、ウクライナやブラジルからの輸入が増加し、290万トン(同36.0%増)と大幅な増加が見込まれる。一方、輸出量は、砂糖の減産などを背景に、90万トン(同31.7%減)と大幅に減少すると見込まれる。
 



 

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