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ご当地アイスの魅力と日本アイスマニア協会の活動

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最終更新日:2023年9月11日

ご当地アイスの魅力と日本アイスマニア協会の活動

2023年9月



一般社団法人日本アイスマニア協会
代表理事 アイスマン福留

はじめに

 はじめまして。私はアイスの評論家として活動している“アイスマン福留”と申します。アイスクリームがもともと大好きだったことから、これをテーマにして活動を開始し、今年で13年目を迎えます。ニックネームの“アイスマン”は、私自身の活動をわかりやすく表現するために付けました。同様に、“アイス評論家”という肩書も自ら創り上げたものです。容姿に特徴がないため、山高帽をトレードマークにして、強烈なインパクトを持つニックネームを自ら選びました。

1.活動のはじまり

 私の活動は、最初は「コンビニアイスマニア」というブログを立ち上げ、単純にコンビニのアイスの感想をつづっていたことから始まりました。幼い頃からアイスが好きだったのですが、メーカーやフレーバーごとに情報がまとまったサイトが存在しなかったことに気が付きました。それだけでなく、「食」に関する専門家が数多く存在する中で、アイスクリームのようなキング・オブ・デザートに特化した専門家が不在だったことも私の活動を決断させる要因となりました。コンビニで手軽に入手できるアイスクリームの魅力の一つとして、近所にあることから「全国各地を食べ歩かずに済む」という点もあり、気軽な一歩を踏み出しました。

 また、本気で取り組むならば、自分の活動を広く知ってもらう必要があると考え、「私、アイスマン福留は、コンビニアイス評論家として本格的に活動をスタートします。」という文面を報道関係者向けにプレスリリースで発信しました。当時、特定のカテゴリに特化した専門家やマニアはまだ少なかったため、マスメディアからの依頼が相次ぎ、私のメディア出演は次第に増えていきました。

2.時代の変化とアイスの魅力

 かつて、マスメディアが特集するスイーツといえば、代官山の洗練されたパフェ特集など、オシャレな要素が豊富であることが多かったものです。しかし、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の登場と普及により、個人が情報発信する時代が到来し、「共感性」が高まることで、「身近で手軽に手に入るもの」をランキング形式で発表するコンテンツが増加しました。このような状況において、全国に流通しているアイスクリームは、素材として最適であると感じました。

 私自身もアイスクリームの専門家として、数多くの番組に出演させていただきましたが、その中でも、人気番組「マツコの知らない世界」の影響力は絶大でした。深夜の枠での「コンビニアイスの世界」から始まり、ゴールデンタイムに進出し、「冬アイスの世界」と「アイスの世界」の3度にわたって出演する機会を得たことで、アイス評論家の仕事が一気に増えたのです。この経験を通じて、アイスクリームというコンテンツの持つ強力な魅力と、マツコ・デラックスさんの圧倒的な影響力を改めて実感しました。

3.一般社団法人日本アイスマニア協会の設立

 2014年に私が立ち上げた“一般社団法人日本アイスマニア協会”(以下「アイスマニア協会」という)は、アイスクリーム愛好家(アイスマニア)が集う団体です。この団体は、ネット上でアイスに関する検定試験(アイスマニア検定)を行い、合格した方々のみが所属できるという特別な仕組みを持っています。現在の会員数は約1万3000人(2023年7月現在)で、会費などはないため、会員同士が仲良くつながり、まるで大学のサークルのような雰囲気で楽しんでいます。定期的に会員100人ほどで開催している“アイスマニア☆ミーティング”は、アイスクリームメーカーから提供いただいた未発売の商品や普段なかなか味わえないアイスの試食会が行われる楽しいイベントとなっています(写真1、2)。イベントではアイスにまつわるクイズ大会やゲームも行われ、ここで会員同士が交流し、新しい味を堪能しながら、アイスクリームへの思いや情熱を共有します。 







 
 また、私たちの協会では、“冬アイス”の市場を盛り上げる活動にも力を入れています。2016年には、11月15日を“冬アイスの日”として制定しました(図)。この日は「立冬」という季節が冬に入る節目の月に位置し、また、アイスクリームの成分規格である“乳固形分15.0%以上”にちなんで15という日にちを選びました。この日にはアイスクリームメーカーやコンビニ各社から提供された最新の冬アイス約8000個を無料で配布しています。

 私たちが目指すのは、“一消費者として楽しめること”を最優先に考える姿勢です。アイスクリームの啓蒙活動やPRにはそれほど焦点を当てていませんが、楽しむことに重きを置き、その楽しみが結果的にPRにつながることを理想としています。広告や宣伝とは異なる“ニュートラルマーケティング”を掲げ、私たちコアなアイスクリームファン(アイスマニア)がおすすめをシェアすることで、業界を活性化していくことを目指しています。

 今の時代は“共感の時代”と言われます。素晴らしい商品や役立つ情報は積極的にシェアされ、人々の共感を得ることが重要とされています。私たちが大切にしているのは、“分かち合う楽しさ”です。それが、アイスクリームの魅力を広め、さらなる愛好者を増やしていくキーワードとなるのです。
 
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4.アイスクリーム万博「あいぱく®」の開催

 アイスクリーム万博「あいぱく®」は、日本全国各地から厳選した素晴らしいアイスクリームを集め、”アイス好きの楽園”をコンセプトに掲げる一大イベントです(写真3)。このイベントは、日本アイスマニア協会が主催し、ご当地アイスの魅力を広める使命を担っています。

 2015年に第1回「あいぱく®」が東京・原宿ラフォーレミュージアムで開催され、以来、全国各地で続々と開催されてきました。その結果、累計で360万人の来場者を魅了する大規模なアイスクリームイベントとなっています。

 「あいぱく®」では、会場で直接楽しめる実演販売のソフトクリーム、かき氷、ジェラートなどが豊富に用意されています(写真4)。しかし、それだけではありません。お土産や持ち帰り用に販売されるカップアイスも、人気を博しています。ここでしか手に入らない限定のアイスクリームを求めて、多くの人が訪れます。会場内は、アイスクリームの甘くて誘惑的な香りが漂い、一歩足を踏み入れれば、まるでアイスの夢の国に迷い込んだかのような錯覚を覚えることでしょう。バラエティ豊かなフレーバーに目移りし、ふんわりとした口当たりや濃厚な味わいを堪能しながら、訪れる人々は至福の時を過ごします。

 「あいぱく®」の魅力は、単なるアイスクリームの祭典にとどまらず、地域ごとの個性や伝統を反映したアイスクリームとの出会いを楽しめることです。各地のアイスクリームメーカーや職人たちが、地元の特産品や文化をアイスに融合させた新しいクリエーションを提案しており、来場者たちにとって食の冒険と感動の場となっています。

 「あいぱく®」は、アイス好きなら誰もが心躍る楽園。ひとたび足を運べば、そこはアイスクリーム愛に包まれた幸せな空間です。機会があればぜひ一度お越しください。



 
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5.ご当地アイスの魅力

 前段にて、「あいぱく®」が「ご当地アイス」の魅力を広める使命を担っていると述べましたが、ご当地アイスの最大の魅力は、その土地固有の食文化を通じて、地域の魅力を疑似体験できる点にあります。例えば、地方で昔から営業を続けるアイスキャンデー屋さんを訪ねると、かつての昭和の風景が目に浮かびます。割り箸を斜めに突き刺した手作りのアイスキャンデーは、素朴で懐かしい雰囲気を醸し出し、裸のまま袋に包まれ、新聞紙で包んでくれる姿勢は、昔ながらの温かなおもてなしを感じさせます。また、屋台のアイスも魅力的で、道路の端や道の駅・公園などでカラフルなビーチパラソルを立てて販売するお店もあれば(写真5、6)、チリンチリンと鐘を鳴らしながらリヤカーで街を練り歩く店もあります。  
 






 
 訪れる店は旅によって毎回異なりますが、基本的には、その土地の人々が日常的に楽しむ「ソウルアイス」を求めて行くことが多いです。観光客ではなかなかたどり着けないような食堂や売店、喫茶店などで、その土地ならではの味を堪能します。まるで地元民のように振る舞い、「ソウルの味」をたしなむことで、少しだけ地元の人々の気持ちを共有したような気になります。それだけでなく、私はよそ者ゆえに、地元の人々にとっては当たり前すぎて気付かないような魅力を見つけられる喜びもあるのです。

 このように魅力あふれるご当地アイスですが、世の中が便利で快適になる一方で、昔ながらのアイスを取り巻く環境は年々厳しさを増しています。法規制により、製造方法や販売方法への風当たりが強まり、地域固有の伝統的な食文化や昭和の懐かしい面影が徐々に失われつつあります。

 アイスキャンデー屋さんや屋台のアイスは、地域の方々にとっても愛され続ける存在であり、地域の特産品として誇りに思われています。それが失われてしまうと、地域のアイデンティティにも大きな影響を及ぼす可能性があります。現代を生きる私たちにもできることは何かを考える必要があります。アイスの伝統を守り、未来に継承していくために、地域と一体となって取り組むことが重要です。法規制に対応するために、伝統的な製造方法や販売方法を大切にしつつ、新しい取り組みも模索していくことが必要かもしれません。地域のアイスメーカーやアイスキャンデー屋さん、そして私たち消費者も、その魅力を広めるために協力し合い、支援していくことが大切です。地域ごとに異なるアイスの魅力を知り、伝えることで、日本全国のご当地アイスが新たな輝きを放ち、未来への架け橋となることでしょう。昔ながらのアイスの良さを忘れずに、新しい時代に適応しつつ、伝統と未来をつなぐ架け橋としてのアイスの役割を見つめ直すことで、全国各地のご当地アイスの魅力を守り続けていけることを願っています。

 なお、先ほどご紹介した「あいぱく®」では、イベントの開催によってご当地アイスの魅力を広く知ってもらうほか、通販サイトでもご当地アイスを購入することができる事業を行っています。ぜひ、ご当地アイスの魅力をご自宅でも楽しんでみてはいかがでしょうか。
 

おわりに

 日本全国には数々の魅力的なアイス屋さんが存在しますが、その情報はまだまだ広く知られていないことが現状です。これからも個性的で、哀愁が漂いつつ奥深い魅力を持った日本中のご当地アイスを食べ歩き、情報発信をしていきたいと思っています。旅先で出会う一口のアイスが、地域の歴史や文化、人々の心温まるおもてなしと一体となって、思い出深い体験となります。未知のアイスの世界をさまざまな表情で愉しむことは、私たちの食の冒険でもあります。

 全国各地のご当地アイスとの出会いを重ねつつ、日本ならではの伝統技術と愛情が凝縮されたご当地アイスと寄り添いながら、末長く活動を続けていきたいと思います。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272