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沖縄県における令和4年産さとうきびの生産状況について

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最終更新日:2023年9月11日

沖縄県における令和4年産さとうきびの生産状況について

2023年9月

沖縄県 農林水産部 糖業農産課

【要約】

 沖縄県の令和4年産さとうきびは、生産量73万7439トン(前年比90.4%)で、平年よりも少ない不作となった。収穫面積は1万3679ヘクタール(同99.2%)で前年とほぼ同じで、台風などの大きな災害はほとんど無かったものの、気象条件に恵まれなかったことにより、10アール当たりの単収は豊作であった前年を大きく下回る5391キログラム(同91.2%)となったことから生産量は平年より少なくなった。また、平均甘しゃ糖度は13.8度(前年15.2度、平年14.4度)と品質的にも低い年となった。
 

1.さとうきびの位置付け

 さとうきび栽培経営体は県農業経営体の約6割、さとうきび栽培面積は経営耕地総面積の約5割と、さとうきびは農業産出額の約2割を占める基幹作物であり、特に多くの離島を抱える本県において製糖業とともに地域経済、社会を支える重要な作物となっている。また、さとうきびは他作物に比べて比較的台風や干ばつに強く、離島地域においては代替の利かない作物である。

 沖縄県では、国の「さとうきび増産プロジェクト基本方針」に基づき、平成18年に策定した各島別および県段階における生産目標や取り組み方向を示した「さとうきび増産プロジェクト計画」を27年に改定した。さらに、令和4年度から新たにスタートした「沖縄振興特別措置法」に基づき、「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」を4年5月に策定し、この法律と計画によって生産基盤の整備、安定生産技術の開発および普及、機械化や地力増強、病害虫防除対策の推進、生産法人など担い手の育成、優良品種の開発・普及など総合的な施策展開による生産振興を推進している。
 
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2.令和4年産さとうきびの生育概況

(1)沖縄地域(沖縄本島、伊平屋島、伊是名島、伊江島、粟国島、久米島、南大東島、北大東島)

 株出し栽培の生育初期である4月は少雨傾向で、南大東島では平年の20%しか降雨がなかった。その後、梅雨に入ると5月の降水量は平年比で2倍以上となり、日照時間は50%程度と少なかった。8月31日には台風11号が大東地域に接近し、折損や葉片裂傷などの被害が見られた。登熟期にあたる11月は平均気温が各地域で平年より1.1度以上高くなり、また、特に本島地域と久米島では平年の2倍以上の降水量となった。この時期の多雨は糖度低下要因となるが降水が連続していなかったため、糖度低下への影響は限定的であった。製糖期になり、南大東島では2月の降水量が平年の29%と干ばつ傾向であったものの、収穫作業は順調に進んだ。
 

(2)宮古地域(宮古島、伊良部島、多良間島)および八重山地域(石垣島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島)

 2月と5月は降水量が多く、2月は平年の1.8倍以上、5月は3倍以上であった。それに伴い、生産量の多かった伊良部島や石垣島で前年度の収穫作業の遅れがあった。また、7〜8月は干ばつ傾向で、八重山地域は8月の降水量が平年の30%未満となり、生育が緩慢になった。8〜9月に台風11号、12号が連続して襲来し、石垣島で被害が見られた。10〜12月は平年より高温多雨で、宮古島では11月は平年と比較して平均気温が1.1度高く、降水量は5.3倍であった。それにより成熟が遅れ、糖度が低くなったものと考えられる。
 

3.令和4年産さとうきびの生産状況

 令和4年産さとうきびの収穫面積は1万3679ヘクタールとなり、令和3年産と比較して112ヘクタール減少の前年並みとなった(前年比99.2%)。生産量は7万7986トン減少し73万7439トン(同90.4%)、10アール当たり収量は5391キログラムと、前年に比較して10アール当たり522キログラム減少(同91.2%)した(図1、表1〜3)。









 沖縄地域では収穫面積(前年比24ヘクタール増)、10アール当たり収量(同35キログラム増)ともに前年並みであったことから、生産量は前年並みであった。宮古地域は収穫面積が48ヘクタール増加とほぼ前年並みであったが、10アール当たり収量が574キログラム減少したため、生産量は減少した。八重山地域では収穫面積が184ヘクタール減少し、10アール当たり収量も前年より1958キログラム減少したことから、生産量は大きく減少した。

 なお、各地域別生産量は、沖縄地域(周辺離島を含む)が全体の43.1%、宮古地域が45.0%、八重山地域が12.0%となっている。

 作型別では、夏植え栽培が前年と比較して604ヘクタール減少し3039ヘクタール(全収穫面積に占める割合22.2%)、春植え栽培が189ヘクタール減少し1164ヘクタール(同8.5%)、株出し栽培が680ヘクタール増加し9477ヘクタール(同69.3%)となった(図2)。新植栽培(夏植え・春植え)よりもコストが抑えられることから、株出し栽培が増加傾向となっている。

 


 品種構成は、Ni27(農林27号)が全収穫面積の41.4%を占め、次いでNi22(農林22号)が6.1%、NiH25(農林25号)が5.6%、RK97-14が5.3%、Ni21(農林21号)が4.9%、Ni29(農林29号)が4.4%、Ni28(農林28号)が3.6%となった(図3)。Ni27(農林27号)は茎のそろいや収量性がよく、株出し性や糖度についても安定しており、栽培性に大きな欠点がなくバランスの取れた品種であることから、近年生産が拡大している。しかしながら、早期の台風では被害が大きくなることや株出し栽培で黒穂病の発生が見られることから、一部産地ではNi27(農林27号)の品種割合を抑制して危険分散を図る動きがみられる。
 


 
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(1)沖縄地域

 収穫面積は5766ヘクタールで令和3年産に対して24ヘクタール増加し、10アール当たり収量は5508キログラム(前年比100.6%)と前年並み、生産量は31万7587トン(同101.1%)で3316トン増加した。

 作型別では、夏植え栽培は641ヘクタールで前年から80ヘクタール増加し、春植え栽培は694ヘクタールで同120ヘクタール減少、収穫面積の約8割を占める株出し栽培は4431ヘクタールで同64ヘクタールの増加となった。春植え栽培の収穫面積はやや減少したものの、夏植えと株出し栽培の収穫面積が増加したため全体的な収穫面積は前年並みであった。10アール当たり収量は春植え栽培でやや減少したものの、夏植え栽培で増加したことにより、全体的には前年並みであった。

 品種構成は、Ni27(農林27号)が33.5%、Ni29(農林29号)が9.9%、RK97-14が7.3%、Ni28(農林28号)が6.9%を占めている。
 

(2)宮古地域

 収穫面積は5975ヘクタールで令和3年産に対して48ヘクタール増加したが、10アール当たり収量は5550キログラム(前年比90.6%)となったため、生産量は33万1620トン(同91.4%)と3万1386トン減少した。

 作型別では夏植え栽培の収穫面積は1786ヘクタールで前年より518ヘクタール減少し、春植え栽培は315ヘクタールで同6ヘクタール減少、近年増加傾向にある株出し栽培では3874ヘクタールで同571ヘクタール増加した。

 品種構成は、Ni27(農林27号)44.4%と最も多く、次いでNi21(農林21号)が7.5%となっている。
 

(3)八重山地域

 収穫面積は1938ヘクタールで令和3年産に対して184ヘクタール減少し、10アール当たり収量は4552キログラム(前年比69.9%)、生産量は8万8232トン(同63.9%)で4万9916トン減少した。

 作型別では、夏植え栽培で166ヘクタール、春植え栽培で63ヘクタール減少した。10アール当たり収量が全作型で前年を下回ったため、生産量は全作型で前年を下回った。

 品種構成は、Ni27(農林27号)が48.4%と最も多く、次いでNi22(農林22号)が16.5%、NiH25(農林25号)が16.0%となっている。
 

4.ハーベスタによる収穫状況

 さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、これまで国庫補助事業などを活用したハーベスタの導入を推進してきた。さらに、県では既存のハーベスタの導入に加え、脱葉施設などの導入を進め、地域に応じた収穫体系を含む機械化一貫作業体系の確立を推進している。

 令和4年産では、県内全域において大型、中型、小型の各機種合計388台のハーベスタが稼働し、ハーベスタ、刈り倒し機および脱葉機を利用した機械収穫率は収穫面積の86.2%(前年収穫率84.6%)となっている。
 

5.製糖工場の操業状況

 沖縄県の製糖工場は、分みつ糖工場が8社9工場(8島)、含みつ糖工場が4社8工場(8島)操業している(表4)。

 分みつ糖工場の令和4年産原料処理量は、3年産より5万4247トン減少し67万8368トン(前年比92.6%)となり、買入糖度は、前年より低い13.7度となった。

 含みつ糖工場の4年産原料処理量は、3年産より2万3739トン減少し5万9072トン(同71.3%)となった。
 
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おわりに

 沖縄県では令和7年産を目標とする「さとうきび増産プロジェクト」および令和13年度を目標とする「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」に基づき、各種の生産振興施策・事業を展開している。

 4年産さとうきびは、台風などの大きな気象災害は少なかったものの、八重山地域を中心に前年の収穫遅れに加え、初夏の長雨による管理遅れや管理不足があり、10アール当たり収量が大きく減少して県全体としても73万トン台の生産量となった。

 さとうきびは比較的気象災害に強い作物ではあるが、本県は台風常襲地域で、気象条件などの年変動も大きいことから、これまで同様の取り組みの継続と強化が必要である。

 今後も継続して目標を達成していくため、気象災害と病害虫被害などに対応したセーフティネット(さとうきび増産基金)などを活用することにより、関係機関・団体が一体となって増産への取り組みを強化し、本県さとうきび生産農家と製糖企業の経営の安定化に向けて取り組んでいるところである。
 
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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