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3.世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2023年8月時点予測)

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最終更新日:2023年9月11日

2023年9月

 

2023/24年度の輸出量は、増産と国際需要の高まりを背景に大幅な増加を見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の調査会社)による2023年8月時点の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2023/24年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、農家がより収益性の高い大豆やトウモロコシなどの作物に切り替えたが、851万ヘクタール(前年度比0.3%増)と前年度並みの水準が見込まれる(表2)。サトウキビ生産量は、主産地の中南部地域で好天に恵まれ収穫に良好な条件が続いたことなどから、6億6300万トン(同9.3%増)とかなりの程度増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、サトウキビの増産を受けて、収穫作業や工場での操業が加速しているほか、輸出関連の物流の全面的稼働を背景に、4530万トン(同14.0%増)とかなり大きく増加すると見込まれる。輸出量は、エルニーニョ現象による世界的な天候不順への懸念や国際市場での輸入需要の高まりが期待されることから、3475万トン(同19.9%増)と大幅に増加すると見込まれる。なお、同国南部のパラナ州にあるパラナグア港とアントニーナ港の砂糖輸出量は、23年1月から7月までの合計で224万トン(前年同期比28.0%増)に達している。

 

 
 

 

2022/23年度の輸出量は、減産と国内需要の確保により大幅に減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、主産地であるウッタル・プラデーシュ州やタミルナードゥ州での作付面積の拡大などから、557万ヘクタール(前年度比5.4%増)とやや増加すると見込まれる(表3)。しかしサトウキビ生産量は、主産地であるウッタル・プラデーシュ州やカルナータカ州で増産が見込まれるものの、マハラシュトラ州での天候不順による減産が影響し、4億6416万トン(同4.3%減)とやや減少すると見込まれる。

 また、砂糖生産量も、サトウキビの減産に加え、天候不順による早期出穂(しゅっ すい)によりCCS(Commercial Cane Sugar)(注1)が低下したことなどから、3534万トン(同8.4%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸出量も、減産見込みや国内需要の確保、エタノールへの仕向け量の増加のほか、前年度と比較して輸出枠が減少(注2)したことなどから、844万トン(同32.3%減)と大幅な減少が見込まれる。現地報道によると、同国政府は22年11月上旬に22/23年度の砂糖輸出枠を600万トンと発表しており、その後も輸出枠拡大の可能性は低いとしている。
 
(注1)可製糖率:サトウキビのショ糖含有率、繊維含有率および搾汁液の純度から算出される回収可能な糖分の割合。
(注2)21/22年度は輸出枠上限として、過去最高となる1120万トンが設定された。

 

 

 
 

 

2022/23年度の砂糖生産量はかなりの程度、輸入量は大幅に減少する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、ユーカリ植林地からの転換などから、116万へクタール(前年度比3.9%増)とやや増加が見込まれる(表4)。サトウキビ生産量は、主産地の広西チワン族自治区で昨年7月から11月の間で続いた干ばつの影響や病虫害の発生により、6264万トン(同13.2%減)とかなり大きく減少すると見込まれる。また、同自治区では2月上旬から3月中旬にかけての降水量が史上最低(平年比約8割減)となったことから、3月の春植えの時期に十分な水量を確保できなかったことも減産の要因とされる。一方で、同年度のてん菜の収穫面積は、20万ヘクタール(同38.2%増)と大幅な増加が見込まれる。てん菜生産量は、産地で特段の天候不順もなく、順調な生育が予測されており、875万トン(同23.8%増)と大幅に増加すると見込まれる。

 砂糖生産量は、サトウキビの減産予測から、970万トン(同6.1%減)とかなりの程度減少し、1000万トンを下回ると見込まれる。輸入量は、これまで国内生産の不足分を上回る量が輸入され、国内在庫が積み増しされてきたことから減少見通しが続いている。22/23年度も、国内での砂糖生産が減少予測となっているものの、近時の世界的な砂糖価格の上昇などを背景に、在庫の取り崩しなどが見込まれることから、545万トン(同21.8%減)と大幅に減少すると見込まれる。
 
てん菜の生産と砂糖産業の発展を促進
 8月9日付け現地報道によると、中国北部のてん菜の主産地である黒龍江省訥河(とつ が)市の農業技術普及センターでは、てん菜の豊富な作付け経験と企業受注の利点を生かし、製糖企業と連携して科学的根拠に基づいた作付けモデルの構築を行っている。これにより、作付けの体系と品種の配置は最適化され、てん菜の生産と砂糖産業の発展につながるものと期待されている。

 現在、同市では初となる水と肥料を一体化したてん菜の栽培試験が実施されている。水と肥料を同時に供することで、てん菜の生育期間中に十分な栄養を与えるだけではなく、水資源の効率的な利用と農業によってもたらされる環境汚染の効果的な予防と抑制のメリットもある。同市の関係者は市の農業技術普及センターと製糖工場の技術者の協力により、てん菜の作付けは非常に良好で、来年も作付面積を拡大すると伝えている。

 また、同市では企業の原材料ニーズを確保するため、てん菜生産の回復と発展を目指しており、市党委員会と市政府は、年初からてん菜の輪作に係る補助金や保険など、てん菜産業を支援する政策を導入している。政府の支援と奨励もあり、同市では高収量てん菜の試験圃場を2410ムー(約161ヘクタール(注1))、二条植え(注2)の試験()場を1510ムー(約101ヘクタール)、合計3920ムー(約261ヘクタール)の圃場で試験が実施されている。新しい植え付けの技術により種子の発芽率が向上し、水と肥料の利用と品質が改善され、科学的な圃場管理と相まって、生産者が自信を取り戻すきっかけになったという。

 業界関係者は、伝統的な65センチメートルの(うね)に比べて、二条植えは苗の保持数が増加し、干ばつや洪水に強いため、高い収量が期待できると述べた。
 
(注1)1ムーは約0.0667ヘクタール。
(注2)一つの畝に2列の苗を植えることで、収量の増加を図るもの。

 

 

 
 

 

2022/23年度の輸出量は減産を背景に大幅に減少し、輸入量は大幅に増加する見込み
 2022/23年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、ウクライナ情勢の影響などから、世界的な規模での食糧不足や価格高騰の懸念が広がる中、収益性が高く価格が高騰しているトウモロコシなどの穀物への転作が進んだことなどから、140万ヘクタール(前年度比3.8%減)とやや減少すると見込まれる(表5)。てん菜生産量は、昨夏の記録的な熱波や干ばつの影響のほか、肥料価格の高騰による施肥の減少やEU域内でのネオニコチノイド系農薬の緊急的使用の禁止などから収量が平年を下回ると予測され、9943万トン(同10.7%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。

 砂糖生産量は、てん菜の減産のほか、干ばつなどの影響を受けたてん菜が12月中旬の急激な冷え込みと霜によりてん菜の含糖量が一層低下したことなどから、1577万トン(同8.8%減)とかなりの程度減少すると見込まれる。輸入量は、減産による不足分を補うため、ウクライナやブラジルからの輸入が増加し、299万トン(同40.3%増)と大幅な増加が見込まれる。一方、輸出量は、砂糖の減産などを背景に、90万トン(同31.7%減)と大幅に減少すると見込まれる。
 
てん菜生産者組合、萎黄病への警戒と損失補償を要望
 EU最大のてん菜生産国であるフランスのてん菜生産者組合(CGB)は8月10日、萎黄(い おう)(注)に関するプレスリリースを発表した。これによると、欧州連合司法裁判所は2023年1月にネオニコチノイド系農薬の緊急的使用を否認する判決を下したが、4月中旬に今期初のアブラムシが確認されて以来、てん菜業界とCGBは圃場におけるアブラムシが媒介する萎黄病の発生に警戒しているとしている。

 23年の萎黄病による影響は調査中であるが、いくつかの地域では症状が確認されており、その症状の度合は低〜中程度と見込まれ、具体的な被害状況の確認は9月中旬以降の収穫まで待つ必要があるとしている(なお、サントル=ヴァル・ド・ロワール地方とイル=ド=フランス地方では過半の圃場が影響を受けていることから、大幅な収量減が不安視されている)。

 このような中、2月初めに同国の農業・食料主権大臣は、萎黄病による損失は控除額や上限なしで全額補償されると公約しているが、一方で業界団体は政府から全額補償の発動を否認する書簡を受け取っている。

 この件についてCGBの会長は、全額補償の公約は守られなければならないものであると述べ、この問題に関係なく、てん菜の生産地を将来にわたって維持するためには補償が行われるべきであり、今後数年の間で、効果的な防除技術を生産者に提供することは急務であると発表している。
 
(注)萎黄病はアブラムシによって媒介される植物ウイルス病。

 

 

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