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食品メーカーにおける甘味料の利用形態〜令和6年度甘味料およびでん粉の仕入動向等調査結果(1)〜

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最終更新日:2025年6月10日

食品メーカーにおける甘味料の利用形態
〜令和6年度甘味料およびでん粉の仕入動向等調査結果(1)〜

2025年6月

調査情報部

【要約】

 甘味料原料などの価格高騰や高止まりを背景に、製品への価格転嫁が行われているが、消費者の節約志向の影響が懸念されている中、令和6年度の甘味料仕入量は、令和5年度と比較して減少したと回答する者が多かった。

 このような中、仕入価格も高価格帯へ移行しており、輸入CIF価格の上昇を反映する結果となった。

はじめに

 食品の製造には、砂糖や加糖調製品、異性化糖の他にも黒糖やブドウ糖、水あめ、糖アルコールなどさまざまな甘味料が用いられている。その用途は、チョコレート、キャンデー、ガム、グミなどの菓子類の他、加工食品、清涼飲料、乳製品、パン、調味料類など多岐にわたる。

 黒糖は、菓子類向けの用途が多く、主に黒糖独自の風味を付けるために利用されている。ブドウ糖と水あめは、でん粉由来の甘味料で、主な用途は菓子類であるが、添加する目的として甘味調整の他にも食感向上、外観向上、離水防止など、機能面から用いられることも多い。また、砂糖と比較して安価であることから、さまざまな食品に利用されている。ソルビトールは、糖アルコール類の一つで、たんぱく質やアミノ酸とともに加熱しても変色しないことや消化・吸収されにくいなどの性質を持つことから、菓子の他に加工食品にも多く使用されている。

 当機構では、甘味料に対する実需者のニーズを把握し、甘味料の需給動向の判断に資する基礎的な情報を収集するため、食品製造事業者を対象としたアンケート調査を毎年度実施している。

 本稿では、令和6年度を対象に実施した「甘味料およびでん粉の仕入動向等調査」のうち、黒糖、ブドウ糖、水あめおよび糖アルコール(ソルビトール)の調査結果について報告する。

1 調査の方法

(1)調査期間
 
令和6年12月〜令和7年2月

(2)調査対象
 
甘味料を使用する食品製造事業者

(3)調査項目
 
ア 用途および使用する理由
 イ 仕入量および仕入価格の動向
 ウ 原料確保の評価

(4)調査対象期間
 
令和6年10月現在(ただし、年間を対象とした項目については令和5年10月から翌年9月までの1年間)の甘味料の用途、仕入状況などに関する事項

(5)調査方法
 
郵送または電子メールによる調査票の発送および回収を実施

(6)回収状況
 
配布企業数   331社
 回収企業数   78社(表1)
 調査票回収率  23.6%
 


(7)集計結果についての留意事項
 
ア 図中の「n」は、有効回答数を表す。
 イ 端数処理の関係により、図中の内訳の合計が100%にならないことがある。
 ウ 図に示す調査結果は、凡例と同様の選択肢による回答である。
 エ 各甘味料の用途および使用する理由は、表2の選択肢から回答を得た。
 オ 凡例の増減(または騰落)率に関する選択肢は、表3の通り。







(8)調査企業の概要
 
今年度調査で回答のあった78社の業種別構成比は、図1の通り。「菓子、パン」が42%(33社)と最も多く、次いで「畜産・水産食料品」が24%(19社)、「清涼飲料、酒類」が10%(8社)となっている。
 

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2 集計結果

(1)黒糖

ア 黒糖の用途
 黒糖の用途を見ると、「菓子」が20件で最も多かった。次いで「加工食品」が6件、「清涼飲料・酒類」が4件で続いている(図2)。


イ 黒糖を使用する理由
 
黒糖を使用する理由としては、「甘味調整(甘さを加える)」「風味調整」がともに21件で最も多かった。次いで「付加価値の訴求」が16件となった(図3)。


ウ 黒糖の仕入価格の動向
 
1キログラム当たりの仕入価格(令和6年10月時点)を見ると、回答があった中では「300円以上400円未満」の価格帯が25%と最も多く、次いで「500円以上」が19%となった。今年度調査においては、400円未満との回答の割合が直近6年間の調査において最少となり、これにより400円以上は同じく最多となった(図4)。


 

 令和5年度と比較した6年度の仕入価格が変動した場合の理由について、36社中15社から回答があった。

 15社のうち、「仕入先の価格改定によるもの」が87%(13社)で最も多く、次いで「市場相場の変動によるもの」が13%(2社)となった。

エ 黒糖の仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量
 
令和6年度(令和5年10月から翌年9月、以下同じ)の仕入量を見ると、「5トン未満」が42%を占め、次いで「5トン以上20トン未満」が31%であった(図5)。
 


 

(イ)仕入量の動向
 令和5年度と比較した6年度の仕入量の動向は、「横ばい」が42%で最多となったものの、「大幅に増加」と「やや増加」を合わせると33%となり、「やや減少」と「大幅に減少」を合わせた19%を上回った(図6)。



 今後の仕入量の見込みは、「横ばい」が64%となっており、「やや増加」が14%、「やや減少」「大幅に減少」が合わせて14%であった。

 過年度の調査結果と比較すると、令和6年度の仕入量の見込みは、1)「大幅に増加」との回答が1社も無かったこと、また、2)「やや減少」「大幅に減少」が5年度より増加するとともに、無回答の割合が直近3カ年で最も高くなっていること−から、原材料高や為替相場の変動に伴い仕入価格が上昇する中で、今後の仕入れが、より流動的となっているものと見込まれる(図7)。
 




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(2) ブドウ糖

ア ブドウ糖の用途
 
ブドウ糖の用途を見ると、「菓子」が11件で最も多かった。次いで「加工食品」が6件、「冷菓」「乳製品」「清涼飲料・酒類」が4件で続いている(図8)。

 また、その他が3件あり、具体的な用途として、「冷凍ホイップ」「うどん・ラーメンの粉末スープ」などが挙げられた。
 

イ ブドウ糖を使用する理由
 
ブドウ糖を使用する理由としては、「甘味調整(甘さを加える)」が23件で最も多かった。次いで「風味調整」が15件、「甘味調整(甘さを抑える)」が9件で続いている(図9)。

 また、「その他」が5件あり、具体的な理由として、「発色目的(ちくわの焼け色、天ぷらの揚げ色)に使用する」「品質保持のため」などが挙げられた。


ウ ブドウ糖の仕入価格の動向
 
1キログラム当たりの仕入価格(令和6年10月時点)を見ると、「170円以上」が60%で最も多く、次いで「150円以上170円未満」が7%となった。経年で見ると、「170円以上」の価格帯がここ3年で急増している(図10)。



 令和5年度と比較した6年度の仕入価格が変動した場合の理由について、42社中17社から回答があった。

 17社のうち、「仕入先の価格改定によるもの」が82%(14社)で最も多く、次いで「市場相場の変動によるもの」が18%(3社)となった。

エ ブドウ糖の仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量
 
令和6年度の仕入量を見ると、「10トン以上100トン未満」が36%で最も多く、次いで「100トン以上500トン未満」が26%となった(図11)。
 

 

(イ)仕入量の動向
 
令和6年度のブドウ糖の仕入量の動向は、「横ばい」が36%で最多となったものの、「大幅に増加」と「やや増加」が合わせて29%、「やや減少」「大幅に減少」が合わせて31%となった(図12)。



 今後の仕入量の見込みは、「横ばい」が71%で大半を占め、「やや増加」が17%、「やや減少」「大幅に減少」が合わせて12%となった。

 過年度の調査結果を見ると、令和4年度は「大幅に増加」と「やや増加」が3割近くを占めており、仕入れに積極的な社が多かったことがうかがえる。6年度の仕入見込みは、仕入先の原料高や為替相場の変動に伴う価格改定があったものの、横ばいの見込みとの回答割合が高かった5年度と比べ、「やや増加」が10ポイント以上伸びていることから、底堅い需要があることがうかがえる(図13)。








(3)水あめ

ア 水あめの用途
 
水あめの用途を見ると、「菓子」が19件で最も多かった。次いで「冷菓」が10件、「清涼飲料・酒類」が8件、「加工食品」が7件で続いている(図14)。

 また、「その他」が2件あり、具体的な用途として、「冷凍ホイップ」「液状ぶどう糖、異性化糖」が挙げられた。


イ 水あめを使用する理由
 
水あめを使用する理由としては、「甘味調整(甘さを加える)」が31件で最も多かった。次いで「食感向上」が18件、「風味調整」が15件、「甘味調整(甘さを抑える)」が11件で続いている(図15)。

 また、「その他」が7件あり、具体的な理由として、「光沢を出す」「生地の安定(製菓会社)」「製品の保形性、原料としての溶解性向上」「しっとり感を出す」などが挙げられた。



ウ 水あめの仕入価格の動向
 
1キログラム当たりの仕入価格(令和6年10月時点)を見ると、「140円以上」が58%で最も多く、次いで「100円以上110円未満」が14%となった。経年で見ると、「140円以上」との回答の割合が年々増加していることがわかる(図16)。



 

 
 令和5年度と比較した6年度の仕入価格が変動した場合の理由について、58社中24社から回答があった。

 24社のうち、「仕入先の価格改定によるもの」が71%(17社)と最も多く、次いで「市場相場の変動によるもの」が13%(3社)、「為替の変動によるもの」と「仕入先の変更によるもの」がいずれも4%(1社)となった。

 また、「その他」の具体的な理由として、「配送ロットの変更によるもの」などが挙げられた。

エ 水あめの仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量
 
令和6年度の仕入量を見ると、「1トン以上50トン未満」が33%と最も多く、次いで「50トン以上100トン未満」が17%、「1トン未満」が16%と続いている。1000トン以上との回答(15%)も多かった(図17)。
 


(イ)仕入量の動向
 
令和5年度と比較した6年度の水あめの仕入量の動向は、「横ばい」が34%であったものの、「やや減少」と「大幅に減少」を合わせた減少したとの回答割合が41%となった(図18)。
 


 今後の仕入量の見込みは、「横ばい」が64%と最も多く、「大幅に増加」と「やや増加」は合わせて19%、「やや減少」が16%となった。

 過年度の調査結果を見ると、令和4年度は「大幅に増加」「やや増加」の割合が合わせて35%と高く、仕入れに積極的な社が多かった。5年度もこうした流れを受け、引き続き横ばいの見込みとの回答割合が高かったが、6年度は、原材料高や為替相場の変動に伴い仕入価格の上昇が続く中で、「やや減少」との回答割合も高くなっていることがわかる(図19)。








(4)ソルビトール

ア ソルビトールの用途
 
ソルビトールの用途を見ると、「菓子」が7件で最も多かった。次いで「加工食品」が6件、「調味料・調味食品」が4件で続いている(図20)。


イ ソルビトールを使用する理由
 
ソルビトールを使用する理由としては、「甘味調整(甘さを加える)」が10件で最も多かった。次いで「風味調整」が8件、「食感向上」が7件、「甘味調整(甘さを抑える)」が6件で続いている(図21)。



 

ウ ソルビトールの仕入価格の動向
 
1キログラム当たりの仕入価格(令和6年10月時点)を見ると、「200円以上」が50%で最も多く、次いで「150円以上200円未満」が25%となった。経年で見ると、「200円以上」の価格帯の割合が高まっており、年々価格が上昇していることが分かる。特に前年度調査以降、150円未満での仕入れが難しくなったことがうかがえる(図22)。



 

 
 令和5年度と比較した6年度の仕入価格が変動した場合の理由について、4社から回答があった。

 4社のうち3社が、「仕入先の価格改定によるもの」、1社は「その他」と回答した。

エ ソルビトールの仕入量の動向
(ア)直近1年間の仕入量
 
令和6年度の仕入量を見ると、「1トン以上5トン未満」が42%で最も多かった。次いで「5トン以上20トン未満」と「100トン以上」が、いずれも21%となった(図23)。
 

 

(イ)仕入量の動向
 
令和5年度と比較した6年度のソルビトールの仕入量の動向は、「横ばい」が29%であったものの、「大幅に増加」と「やや増加」が合わせて30%、「やや減少」と「大幅に減少」が合わせて38%となっており、減少したとの回答割合が最も高い結果となった(図24)。
 


 


 今後の仕入量の見込みは、「横ばい」が63%と最も多く、「大幅に増加」と「やや増加」は合わせて17%、「やや減少」が13%となった。

 過年度の調査結果を見ると、令和4年度は「大幅に増加」「やや増加」の割合が合わせて22%と、直近3カ年で最も高かった。5年度もこうした流れを受け、引き続き横ばいの見込みとの回答割合が高かったが、6年度は、原材料高や為替相場の変動に伴い仕入価格の上昇が続く中で、「やや減少」との回答割合も高くなっていることがわかる(図25)。









(5)調達面の評価

 各甘味料に対する原料調達の評価について、「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」の5段階で回答を求めた。

 令和6年度は、「黒糖」「ブドウ糖」「水あめ」「ソルビトール」のいずれとも「普通」が最も多く、「満足」は1〜2割台という結果となり、前回調査から「満足」のポイントは大幅に減少した(図26)。

 一方、「やや不満」は「黒糖」で8%、「ブドウ糖」および「水あめ」がいずれも2%であり、「ソルビトール」では回答がなかった。

 また、「黒糖」の「やや不満」の具体的な理由として、「毎年物量が安定せず価格に影響する」「産地が急に変わる」などが挙げられ、「ブドウ糖」および「水あめ」では「賞味期限が短い」などが挙げられた。



 
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おわりに

 令和6年度を対象とした今回の調査では、仕入量が減少したと回答した社が多くなっており、最終製品への価格転嫁による消費の減少を反映したものと見込まれる。

 このような中、甘味料の原料の価格高騰や高止まりから仕入価格が上昇しており、円安による輸入価格の値上がりを背景に低価格帯での仕入れが困難になっている状況がうかがえる。

 今後の仕入量の見込みを見ると、「横ばい」とする回答が前回の調査と比べて減少し、消費者の節約志向による消費動向への懸念が生じており、甘味料などの価格動向を引き続き注視していく必要があると考えられる。

 最後に、お忙しい中、本調査に御協力いただいた企業の皆さまに、改めて厚く御礼申し上げます。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272