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令和6年産てん菜の生産状況について

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最終更新日:2025年7月10日

令和6年産てん菜の生産状況について

2025年7月

北海道 農政部 生産振興局 農産振興課

【要約】

 令和6年産てん菜の作付面積は、4万8847ヘクタール(前年比4.4%減)と前年から2234ヘクタール減少したが、10アール当たり収量は、過去最高の7134キログラムとなり、生産量は、前年より増加し348万4827トンとなった。糖分は、高温や褐斑病(かっ ぱん びょう)の影響などにより平年を下回る15.7%、歩留まりは15.5%となり、てん菜糖生産量は前年を上回る54万250トンとなった。

1 最近のてん菜の作付け動向

 てん菜は、北海道の畑作経営の輪作体系を維持する上で基幹的な作物であるとともに、てん菜糖業は地域経済の維持・発展に重要な役割を担っている。

 近年、農業従事者の減少や高齢化の進行、経営規模の拡大に伴う労働力不足などにより、他品目への転換が進んだことから、作付面積は減少傾向で推移してきた。また、砂糖の消費量の減少や糖価調整制度の調整金収支の累積赤字が増大していることを踏まえ、令和4年12月に農林水産省が、てん菜糖の交付金の対象数量を令和8砂糖年度までに段階的に削減する方針を決定したことなどを背景として、令和6年産の作付面積は、前年から2234ヘクタール減少し、4万8847ヘクタール(前年比4.4%減)となった(図1)。
 
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2 令和6年産てん菜の生育概況

 春先は天候に恵まれたため、移植作業や直播(ちょく はん)栽培の播種(は しゅ)作業はおおむね順調に進んだ。
6月中旬以降は高温傾向で推移したため生育は平年より早く進み、7月下旬以降は多雨傾向となり、褐斑病が多く発生したが、防除を徹底したことや8月下旬から日最低気温が平年並みで推移したことにより、発病の勢いは収まった。なお、収穫期直前の生育は平年より早く、根周は平年並みだった(表1)。

 その他の病害虫については、根腐病(ね ぐされ びょう)やそう根病、黄化病(おう か びょう)の発生は少なく、ヨトウガの発生量は平年並みからやや多く、テンサイモグリハナバエの発生は平年並みであった。
 
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3 令和6年産てん菜の生産状況

 10アール当たり収量は、生育期間中の気温が総じて平年より高く推移し、十分な降水量もあったため、前年から473キログラム増加し7134キログラム(前年比7.1%増)となり、直近10年の平均を592キログラム上回り、過去最高となった。また、生産量は、作付面積は減少したものの、前年より8万2168トン増加し348万4827トン(同2.4%増)となった。

 根中糖分については、高温や褐斑病の発生により15.7%と平年を下回った。一方、防除を徹底したことや8月下旬から日最低気温が平年並みで推移したことにより、褐斑病の多発で昭和61年の糖分取引開始以降最低となった前年と比較すると、2.0%高かった(表2、図2)。

 品種別の作付け構成は、「カーベ2K314」(31.7%)、「パピリカ」(23.1%)、「プロテウス」(12.2%)の順となっている(表3)。

 「カーベ2K314」は、褐斑病やそう根病の抵抗性が優れており、「パピリカ」は、そう根病抵抗性に優れ根重が多く、令和5年に優良品種に認定された「プロテウス」は、褐斑病と根腐病抵抗性に優れていることから、作付け割合が高くなっている。

 てん菜の作付戸数は全道的に減少傾向が続いており、令和6年産は5973戸(前年比4.2%減)と、前年より260戸減少し、10年前(7470戸)と比較して20.0%(1497戸)減少した。一方、1戸当たりの作付面積は8.2ヘクタールと、令和3年をピークに減少傾向にあるが、10年前と比べると0.5ヘクタール増加している(図3)。

 労働力不足の中で作付け規模の拡大に対応するため、近年では、春の育苗・移植作業に要する労働力を大幅に削減できる直播栽培に取り組む地域が増加傾向にあり、令和6年産の直播栽培の面積は、前年より1952ヘクタール増加の2万4587ヘクタール(作付面積の50.3%、前年比6.0ポイント増)となっている(図4)。
 











 
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4 てん菜糖の生産状況

 北海道内の製糖工場は、令和5年3月に北海道糖業株式会社本別製糖所が製糖を終了し、現在、3社7工場で操業している。なお、本別製糖所は製糖終了後、本別事業所としててん菜の買い入れを継続し、近隣の2工場で製糖されている。

 令和6年産原料処理量は348万4827トンで、歩留まりは15.5%となったことから、てん菜糖生産量は54万250トン(前年比20.7%増)となった(表4)。
 
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おわりに

 令和6年産のてん菜生産については、作付面積は減少したが、収量が過去最高となったため、生産量は前年を上回った。また、前年に褐斑病が多発したことから、生産者だけではなく、団体、糖業、行政などの関係者が連携し、防除を徹底したことなどが奏功して前年より糖分が高くなり、産糖量も増加した。一方で、生産者の防除に係る労働負担や費用が増加し、今後の課題となった。

 てん菜は、小麦や豆類、ばれいしょとともに、北海道の畑作農業における基幹作物であり、てん菜を原料とする製糖工場は、地域経済や雇用を支える上で重要な役割を果たしている。今後とも、てん菜を安定的に生産していくためには、関係者が連携し、直播栽培の拡大に向けた機械の導入など省力・低コスト生産を進めるほか、気候変動に対応した品種の開発や選抜、技術の普及に適切に対応していくことが重要である。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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