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糖に関する表示について〜新たな食品表示基準の下で〜

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最終更新日:2025年10月10日

糖に関する表示について
〜新たな食品表示基準の下で〜

2025年10月

精糖工業会 広報・技術グループ 課長 白岩 弘文
広報・技術グループ 主幹 富岡 直子

はじめに

 従来、わが国では食品表示について一般的な事項を定める法規として、「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」がありましたが、これらの食品表示に関する規定を統合して消費者、事業者双方にとって分かりやすい表示制度を作るべく、2013(平成25)年6月に「食品表示法」が制定され、2015(平成27)年4月1日から施行されました。さらに、具体的な表示のルールとして「食品表示基準」が定められ、食品の製造者、加工者、輸入者または販売者(食品関連事業者等)は、この基準を遵守することが義務付けられました。

 食品表示基準が施行されてから今年で10年が経ち、改めて砂糖や糖に関わる主な表示について説明したいと思います。

1 具体的な表示項目

 まずは、食品表示基準による具体的な表示について説明します。

 食品表示基準では、食品を1)加工食品、2)生鮮食品、3)添加物―の三つに区分しており、砂糖はこれまでと同様に、「加工食品」に分類されています。同基準第3条に、事業者が容器包装に入れた加工食品を消費者に販売する際に必要な表示事項が次のように定められています(表1)。
 
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 では、具体的な例として、砂糖に係る食品表示を見ていきましょう。

  名称については、「その内容を表す一般的な名称を表示するもの」とされています。例えば、上白糖、グラニュ糖、三温糖など。

  保存の方法および 消費期限または賞味期限は、同基準第3条第3項に掲げる区分に該当する場合にあっては、その表示を省略できるとされています。

  原材料については、原材料に占める重量の割合の高いものから順に、その最も一般的な名称をもって表示します。また、国内で製造したすべての加工食品の最も割合の高い原材料については、「原料原産地名」を表示することが2017(平成29)年9月に義務付けられ、猶予期間を経て2022(令和4)年4月より完全に義務化されました(原料原産地表示については後述します)。

 オ 添加物については、原則として含有する食品添加物は、すべて表示しなければならず、表示の際には、「/」で区分もしくは改行などを行い、原材料と明確に区別する必要があります。砂糖においては、三温糖など色の調整を行うためにカラメルを使用した場合に表示を行う必要があります。
 
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  内容量については、砂糖製品の場合、食品衛生法上は表示を省略できる場合がありますが、計量法において表示義務が課せられる場合があります(細工もの又はすき間なく直方体状に積み重ねて包装した角砂糖以外のもの)。

  栄養成分の量および熱量については、たんぱく質、脂質、炭水化物およびナトリウムの量と熱量(カロリー)の表示が義務付けられています。ナトリウム量は、食塩相当量に換算した量を記載します。炭水化物は、糖質と食物繊維を合わせたものです。また、糖質は、糖類とでん粉などからなる多糖類や糖アルコールを含みます。

  表示内容に責任を有する者の氏名または名称および住所については、その商品の製造者、加工者、販売者、輸入者など、表示の内容に責任を有する者の氏名または名称および住所を表示しなければなりません。

  製造所の所在地および製造者の氏名または名称の表示については、あらかじめ消費者庁長官に届け出た製造所固有記号を用いた表示が認められています。

 三温糖(写真)の例を下記に示します(表2〜3。ア、イなどの片仮名は上述の具体的な表示項目に対応しています)。なお、ウの「消費期限または賞味期限」は省略できるため、省略しています。






 
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2 原料原産地表示制度について

 現在、食品の原料調達先は多様化・グローバル化しています。食品の品質について、消費者の関心が高まり、その原産地についても品質に係る情報として重要視されています。

 そこで、2017(平成29)年9月に食品表示基準が改正・施行(2022〈令和4〉年4月から完全施行)され、国内で製造されたすべての加工食品に対して、使用した原材料に占める重量の割合が最も高い原材料の原産地を表示することが義務付けられました。

 砂糖も例外ではなく、原料原産地表示が義務付けられています。次に表示の一例を示します。



 上記の一例は、次のことを示しています。

 (1)この製品の原材料は原料糖であり、その原料糖の使用予定の製造地が3カ所以上となることが見込まれます。

 (2)製造地の異なる原料糖の使用順位が年間で変動するかもしれないため、「又は表示」としています。

 (3)製造地の異なる原料糖の年間の使用重量順位は「オーストラリア製造>国内製造>その他」となることが見込まれます。また、「原料糖の製造地は、2023年度の使用実績順によるものです。」などの注意書きは、原料原産地表示の根拠が2023年度の実績に基づくものであることを示しており、食品表示の欄外に記載します。

 

 

 

3 糖類に関する栄養強調表示

 商品を手にしたとき、さまざまな表示がされている中に、特定の栄養成分の含有量が強調された表示を目にすることもあるのではないでしょうか。

 例えば、糖類において、菓子や飲料などに「糖類ゼロ」「無糖」「シュガーレス」「低糖」「微糖」などをうたった商品が数多く見受けられます。これらの表示を、食品表示基準では、「栄養強調表示」といいます。

 栄養強調表示を行う際には、同基準において該当する栄養成分などが定められており、同基準上の糖類は、「単糖類および二糖類であって糖アルコールでないものに限る」とされ、二糖類の砂糖だけでなく単糖類のブドウ糖、果糖なども対象となっています。

 栄養強調表示を行う際は、消費者にとってあいまいで分かりにくい表示とならないよう、用語の使用に係る基準値が定められています。

 具体的に、糖類の栄養強調表示の一例として、同基準別表第13の「含まない旨の表示の基準値」「低い旨の表示の基準値」と「低減された旨の表示の基準値」を以下に示します(表4)。ここでの糖類の定義も、上記と同じです。
 



 また、これらと類似した表示として「甘さ控えめ」や「砂糖不使用」「糖類無添加」などの表示があります。

 実は、「甘さ控えめ」という表示は、味覚(甘さ)を表現したものであり、糖類の量を示す指標にはならないため、基準は適用されません。

 一方、「含まない旨の表示」と間違えやすい、「砂糖不使用」や「糖類無添加」の表示については、栄養強調表示のうち、「無添加強調表示」としての条件を満たさなければ表示できません。具体的には、以下の四つの条件をすべて満たす必要があります。



 
 
 (注1)例えば、ジャムや濃縮果汁などを「添加糖類に代わる原材料」として使用している場合でも、該当する糖類が含まれていれば、「糖類無添加」「砂糖不使用」とは表示できません。
 (注2)例えば甘酒などは、多糖類であるでん粉に一定の酵素を加えることで、でん粉が単糖類や二糖類に分解され、甘さがでます。最終製品になった時点の糖類の量が、もともと原材料に含まれる糖類の量より多くなるケースに該当し、この場合「糖類無添加」「砂糖不使用」とは表示できません。
 それでは、上記を踏まえ、以下の表示例により、食品栄養表示で何を伝えているのか考えてみましょう(表5〜7)


 (例1)パッケージに「糖類ゼロ」と記載のあるチョコレート

 ポイント
 食品100g当たり糖類0.5g未満の場合「糖類ゼロ」と表示できます。


 (例2)パッケージに「低糖」と記載されたコーヒー
 


 

 ポイント
 飲料100ml当たり糖類2.5g以下の場合「低糖」や「微糖」と表示ができます。


(例3)パッケージに「砂糖不使用」と記載された果物野菜ジュース
 


 

 ポイント
 
「砂糖不使用」や「糖類無添加」の無添加強調表示は、本項に示した四つの条件を満たしている場合に表示ができます。栄養成分表示を見ると、糖類が6.5gと表示されていますが、これは原材料となっている果実や野菜などにもともと含まれているもので、砂糖などの糖類を添加した(後から加えた)わけではありませんので、このケースでは「砂糖不使用」と表示できます。

 

おわりに

 食品表示基準が施行されてから10年が経ち、「糖類」に関する新たな食品表示の内容について解説してきました。

 糖類を含む炭水化物は、生命維持に欠かすことのできない大切なエネルギー源であり、砂糖を含む糖類は、素早く体内に吸収されるエネルギー補給のほか、食の楽しみを豊かにする重要な役割を果たしています。

 健康的な生活を心がける上で、バランスよく食事を摂ることはとても重要なことです。一つの食材を過剰に摂取することや過度に忌避することは、とてもバランスの良い食事とは言えないのではないでしょうか。そのため、さまざまな情報に惑わされず、その食品の内容を正しく理解する必要があると思います。

 正しい情報を基に、砂糖の持つおいしさやエネルギー源としての価値を理解し、皆さまが安心して商品を選択し、健康的で豊かな食生活を実現していきましょう。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272