糖蜜の施用により、土壌中の可給態窒素量は改善され、サトウキビ収量は増加した。また、糖蜜の有用性は、可給態窒素量の改善の他に、糖蜜に多量に含まれるカリ(カリウム:K
2O)の供給も挙げられる。表1に示した通り、糖蜜には肥料の3大要素である窒素、リン酸、カリのうち、カリは8.3%と非常に多く含まれている。この量は、糖蜜1トン当たりにすると83キログラムにもなり、これは北大東村のカリ施用量(慣行量)の8〜12作分に相当するほどである。そのため、前述の糖蜜施用試験の際、筆者らは、糖蜜中のカリを有効に利用し、化学肥料のカリを削減することが可能かどうか確認する必要性を感じていた。そこで、糖蜜に含まれるカリに着目し、糖蜜施用後、化学肥料のカリを無施用にした場合、土壌中のカリ
肥沃度の指標である交換性カリに及ぼす影響を検証する目的で、再度、圃場試験を行った。
試験は春植え栽培および株出し栽培2回の合計3作で行い、春植え栽培の植え付け前に糖蜜を施用した。試験区は、糖蜜を施用していない慣行区、糖蜜を10アール当たり2トン施用した糖蜜区の2処理区とした。肥培管理は、慣行区は全期間、地域慣行量の施肥を行った。糖蜜区は、新植時に糖蜜を10アール当たり2トン施用後、全栽培期間中、カリ肥料を施用しなかった。糖蜜区の窒素とリン酸は、慣行区と同量施用した。具体的なカリ施用量については、表4の通りである。
試験の結果、土壌中の交換性カリは、糖蜜区で糖蜜施用後、急激に増加した。施用から約1年後の春植え収穫期の交換性カリは、慣行区と糖蜜区でそれぞれ100グラム当たり59.4ミリグラム、75.3ミリグラムと糖蜜区で有意に高い値を示した(図4)。その後、両区の差は縮小し、株出し1回目の収穫時には慣行区、糖蜜区で100グラム当たり56.9ミリグラム、61.9ミリグラム、株出し2回目の生育盛期には慣行区、糖蜜区で100グラム当たり52.7ミリグラム、55.6ミリグラムと糖蜜区でやや高い推移をたどった。株出し2回目の収穫時には、慣行区と糖蜜区でほぼ同等となり、結果として、糖蜜区はカリ肥料を施用しなくとも慣行区のカリ肥沃度を下回ることはなかった。
また、糖蜜区ではカリ肥料を削減したことから、慣行区に比べ肥料コストを春植えで35%、株出しで13%削減することができた。
これらのことから、春植え新植時に糖蜜を10アール当たり2トン施用した場合、株出し2回目までカリ肥料を無施用としても、土壌中のカリ肥沃度を維持できることが明らかとなった。また、カリ肥料の施用量削減による肥料コスト低減の可能性が示された。今後、糖蜜を施用する場合は、基肥、追肥のカリ肥料を無施用にするなど施肥法を変えることが望ましい。