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畑作生産現場における機械化の現状と課題

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最終更新日:2026年2月10日


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畑作生産現場における機械化の現状と課題

2026年2月

農林水産省農産局地域作物課
課長補佐 五十嵐 洋介
課長補佐 松下 雄哉
種苗生産係 阿藤 真
いも類生産振興係 鈴木 麗

はじめに

 高温期の長期化や、局地的大雨などの異常気象、さまざまな原料・資材の価格の高騰が続く中、皆さま方におかれましては、大変厳しい事業環境において、砂糖・でん粉の安定供給にご尽力いただいていることに感謝申し上げます。

 農林水産省では、沖縄県、鹿児島県などのサトウキビ・かんしょ産地や北海道の畑作地帯などの畑作物産地における、持続的な畑作物産地体制の構築を図るため、労働力不足や病害虫の発生、気候変動、需要構造の変化への対応に向けた取り組みなどを支援しております。

 本稿では、てん菜・サトウキビ・ばれいしょ・かんしょの生産現場における機械化の現状と課題についてご紹介します。

1 てん菜の生産現場における機械化の現状と課題

(1)現状

 てん菜は、砂糖の原料になる作物で、ビートとも呼ばれています。日本では北海道で生産されており、北海道畑作において、麦類、豆類、ばれいしょなどとともに、輪作体系を構成する重要な作物です。

 てん菜は、春に育てた苗を畑に植える移植栽培が行われ、育苗・移植作業に時間を要することや、近年、高温などの影響から病害虫が多く防除作業が増加していることなどから、他の畑作物と比較して、労働時間が長く、生産コストが高いといった課題があります。

 こうした中、近年、てん菜の作付面積が減少する一方で、高齢化などによる農家戸数の減少などから農地集積が進んでいるため、1戸当たりの作付面積は約8ヘクタール超まで拡大しています(図1)。

 また、移植栽培から直播(ちょく は)栽培(畑に直接種をまく方法)への転換が進められています。直播栽培は、育苗・移植作業が不要となるとともに、麦や大豆との兼用の播種(は しゅ)機が使えることから、省力化に加えて育苗資材や機械に係る費用の低減にも効果があるため、その導入面積が年々増加し、令和6年産では作付面積の5割以上となり、今後も拡大が期待されます(表1)。



 
1

(2)課題

 このような中、直播栽培は、移植栽培と比較して収量が1〜2割程度低いことや、春先の低温や強風の被害を受けやすいといった課題もあることから、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下「農研機構」という)において、直播栽培であっても高糖収量となる品種や、直播栽培における生育初期の気象被害低減技術の開発が進められています(写真1)。

 このほか、一部地域では、収穫作業において、海外製の大型の多畦(た けい)収穫機による共同利用や受託作業も行われています(写真2)。

 こうした取り組みを後押しするため、農林水産省としても、てん菜の移植から直播栽培への転換や、収穫作業などの基幹作業の外部化・共同化に必要な機械の導入に対する支援を行っているところです。

 今後も規模拡大が見込まれる中、持続的なてん菜生産を行うためには、こうした省力化や低コスト化の取り組みを進めることが重要です。



 
2

2 サトウキビの生産現場における機械化の現状と課題

(1)現状

 サトウキビは、イネ科に属する多年生草本で、硬い茎皮を有し、折損さえしなければ茎倒伏や葉裂傷が発生しても回復し得るなど、台風などの自然災害への高い耐性を持っています。そのため、台風の常襲地帯である沖縄県と鹿児島県南西諸島の農業において、代替のきかない基幹的な作物となっています。

 サトウキビの生産構造を見ると、農業従事者の高齢化などにより、農家戸数は減少傾向にあり、農家1戸当たりの収穫面積は微増傾向です(表2)。

 サトウキビの生産現場における労働時間は、10アール当たり35.27時間(うち収穫作業が同5.97時間、植え付け作業が同5.57時間)であり、生産コストの低減や作業の省力化を図るべく、収穫機であるハーベスタを利用した収穫率は着実に増加しています。一方で、小規模圃場(ほ じょう)など一部の地域では、手作業で刈り取りが行われているところです。また、植え付け機械であるビレットプランタについては、従来普及している全茎式プランタと比較し、ハーベスタで収穫を行った裁断茎を直接圃場に植え付けることで大幅な植え付け作業時間の削減が可能となっており(同4.47時間→1.55時間)、ここ10年で稼働台数は増加傾向にあります。このように、生産環境は大きく変化しています(写真3)。

 新たな食料・農業・農村基本計画(以下「基本計画」という)では、2030年に生産量133万トン、10アール当たり単収5943キログラムとする目標を掲げており、その達成に向け、作業の省力化、効率化により、生産性向上を図る必要があります。



 
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(2)課題

 高齢化や人手不足が課題となっている中、作業の省力化を図るため、ハーベスタを始め、株出しのための株出管理機、栽培管理機、肥料散布機、ビレットプランタの導入といった、より一層の機械化一貫体系の推進が必要です。

 機械収穫率が増加する一方、ハーベスタ収穫後の欠株の発生や茎の硬さにより収穫に時間がかかるなどの課題があり、機械化一貫体系に適した品種開発も求められているほか、作業受託組織の育成、強化などを進めていく必要があります。

 また、生産コストの低減や作業の省力化のため、収穫後の株から再度発芽させる株出し栽培への移行が進んでいますが、単収減少の要因にもなることから、堆肥投入などの土づくりや適期管理などの基本技術の励行など、適切な栽培管理を行い、単収を安定・向上させていく必要があり、そのためにも機械化一貫体系は重要なものとなります。

 このような状況に対し、農林水産省としては、補助事業で農業機械の導入、機械化一貫体系の推進やオペレーターの育成研修、適期作業を推進する取り組みに対する支援を行っているところです。

3 ばれいしょの生産現場における機械化の現状と課題

(1)現状

 ばれいしょには、大まかに青果用、加工食品用、でん粉原料用という三つの用途がありますが、特に加工食品用、でん粉原料用は需要に対して供給が不足しており、生産拡大が求められている状況にあります。基本計画では、実需の意向などを背景に、需要が堅調に推移すると見込んでいます(2030年:生産量233万トン、作付面積7万4000ヘクタール)。目標達成には、生産の拡大と実需への安定供給体制の構築が必要です。

 他方、ばれいしょの10アール当たり労働時間(北海道)は、でん粉原料用で8.7時間、青果用・加工食品用で11.4時間と、麦・大豆に比べると非常に長くなっています(図2)。また、労働時間の40〜50%を費やす収穫作業が、特に課題となっています。

 ばれいしょの収穫では、ポテトハーベスタ上に4〜5人の作業員が乗りこみ、掘り取りと同時に機上選別を行う形態が一般的ですが、近年、産地では人口減少に伴って人員の確保が困難になりつつあるという声もあります。さらに、農家戸数の減少に伴う1戸当たり経営面積の拡大も進んでいることから、人員確保を必要とし、かつ、労働時間の長いばれいしょの生産拡大はより厳しくなってきており、適正な輪作体系維持にも支障を来す状況となっています。
 
4

(2)課題

 このような状況に対し、近年、多畦ハーベスタと倉庫前選別を組み合わせた省力化作業体系の導入に向けた動きが一部産地で活発化しています(図3)。多畦ハーベスタには、2畦けん引式、2畦・4畦自走式などのタイプがあります。いずれの機械も、従来の機上選別の作業を倉庫前選別へと移行することで、畑で倍以上の収穫速度を発揮するものとなっています。

 このような省力化・効率化作業体系の普及について、農林水産省は補助事業により後押ししているところですが、現在、多畦ハーベスタの導入には初期費用がかさむことなどが課題として挙がっているところ、その解決には収穫面積の拡大、複数の生産者での共同利用体制の構築やコントラクター組織の育成が必要となります。つまり、ばれいしょの省力作業体系の導入に当たっては、生産者の皆さんが今後の地域の運営方針について話し合い、合意形成を図ることが非常に重要です。

 また、多畦ハーベスタは従来のハーベスタよりも収穫速度に優れる一方、収穫されるばれいしょ塊茎が打撲などで受傷しやすいといった課題もあります。このため、これまでソイルコンディショニングなどの技術の普及のほか、現在、農研機構などによって打撲に強い耐性を有した品種の育成が進められています。他方、大型ハーベスタの導入が困難な環境での収穫に関しては、機上選別の作業を自動化するAI(人工知能)選別装置の開発も試行されています(図4)。

 このように、ばれいしょの持続的生産体制の構築のためには、品種開発および作業機械の開発・改良の両方で作業の効率化・省力化を進めていくことが重要です。



 
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4 かんしょの生産現場における機械化の現状と課題

(1)現状

 かんしょには、青果用、加工食品用、アルコール用、でん粉原料用と多岐にわたる用途があります。主な産地は茨城県、千葉県、宮崎県、鹿児島県であり、この4県で全国のかんしょ作付面積の約8割を担っています。近年、かんしょの国内需要は焼き芋などの人気により青果用を中心に増加する一方で、作付面積は農家の高齢化による作付けの減少や離農、南九州(宮崎県および鹿児島県)におけるサツマイモ基腐病(もとぐされびょう)まん延の影響により、減少傾向となっています(図5)。

 かんしょ作付面積の4割を占める南九州におけるかんしょ生産の担い手の状況を見ると、高齢化などの影響により農家戸数は減少傾向にあり、1戸当たり作付面積は微増傾向にあるものの、依然として1ヘクタール未満の農家が多く存在します(図6)。また、かんしょ生産における作業は、つるを土中に差し込む特殊な植え付け方法や収穫時の傷による貯蔵中の腐敗など、取り扱いが難しく、いまだ手作業が多く重労働で、多大な労働時間がかかっているのが現状です(図7)。

 基本計画では、2030年に生産量・作付面積ともにサツマイモ基腐病前の水準まで回復する(生産量84万トン、作付面積3万4000ヘクタール)ことを見込んでおり、目標達成に向けて、作業の省力化・効率化により生産性向上を図る必要があります。






 
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(2)課題

 かんしょ生産にかかる作業の省力化・効率化のためには、挿苗(そうびょう)機やしょ(こう)引き抜き機、ハーベスタ、生分解性マルチ栽培を核とした機械化一貫体系の普及が必要です(写真4、5)。また、かんしょ用機械は小型のものが多く、個別利用が主となっていますが、小規模・零細な農家については、作業受託組織や共同利用組織の育成により、作業を外部化・集約化することも必要となってきます。

 一方、生産現場では、手慣れた手作業から機械化一貫体系への転換に対する不安、現行機械の速度や馬力などの不足、高額な設備投資など、さまざまな課題が聞こえており、機械化一貫体系を促進する上での障壁となっています。

 このような状況に対し、2023(令和5)年5月には、苗の連れ出しによる欠株などの課題を改良した新型のかんしょ挿苗機の販売が開始されるなど、農家にとってより使いやすい機械の開発も進められており、今後の普及が期待されるところです。また、近年、農研機構などによって、挿苗機での植え付けに適した苗特性を持つ品種や高速収穫機による打撲に強い品種など、機械化栽培体系に適した品種の開発が進められているところです。

 農林水産省では、かんしょ生産現場の省力化・労働負担軽減を図るため、機械化適性品種および省力化機械の開発を支援するとともに、かんしょの機械化一貫体系の確立に向けて取り組む産地に対し、その実証や必要な機械導入などに対する支援を行っているところです。



 
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おわりに

 甘味資源作物の生産を支える糖価調整制度をはじめとする農林水産行政の推進に当たり、砂糖・でん粉関係者の皆さまに多大なるご理解とご協力をいただいておりますことに、心より御礼申し上げます。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8678