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「ポテトプロテイン」の食品利用と今後の可能性

北海道産ばれいしょでん粉加工副産物
「ポテトプロテイン」の食品利用と今後の可能性

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最終更新日:2026年5月12日

北海道産ばれいしょでん粉加工副産物
「ポテトプロテイン」の食品利用と今後の可能性

2026年5月

株式会社コスモ
品質保証部 部長 輿水 誠

はじめに

 ばれいしょは主に北海道で生産され、食品としての用途は「生食用」、「加工用」、「でん粉用」の三つに分けられるが、中でも「でん粉用」ばれいしょがでん粉に加工される際には、副産物として搾汁液(ポテトジュース)が得られる。ポテトジュースは通常、廃棄されてしまうものであるが、その中にはタンパク質が少なからず含まれている。

 株式会社コスモでは、「未利用資源の有効活用」という経営理念を軸に、このポテトジュースに含まれるタンパク質を原料として利用し、各種の調味料を製造している。

1 ばれいしょについて

 ばれいしょは、北海道の主要な作物の一つである。農林水産省の資料1)によれば、令和5年産のばれいしょ(春植え)は日本全国で232万6000トンの収穫があり、そのうち北海道の収穫量は191万6000トンと実に全体の82%を占める。また、北海道で収穫されるばれいしょのうち、28.3%が「加工用」、11.8%が「生食用」として流通しており、38.6%が「でん粉用」として加工されている。そのでん粉加工工程中に出るポテトジュースは、多大な量となる。

 生ばれいしょ中には約2%のタンパク質が含まれており、でん粉製造工程ではその多くがポテトジュース中に移行する。このポテトジュースに含まれるタンパク質(ポテトプロテイン)は、年間約1万5000トンに近い量に上るが、これまで十分に利用されないまま処理されてきたのである。

 当社では、この未利用のポテトプロテインに着目して、図1に示すように、ポテトジュースをデカンテーション(固形物の沈降後に上清を注ぎ出すこと)によって固液分離して不溶のでん粉を除去した後、液中の水溶性タンパク質を熱と酸により変性させ、分離・乾燥を行って得たポテトプロテインを原料として利用し、各種調味料の製造を行っている。
 
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2 北海道産ばれいしょを原料とする強み、特長

 北海道産ばれいしょを調味料原料として用いる特長として、以下の3点が挙げられる(図2)。



 

 一つ目は、調味料原料を「北海道産」に限定できるため、トレーサビリティを確保することができることである。

 特長の二つ目は、原料が「アレルギー表示対象外」であることである。現在、市場に流通している調味料の多くは、大豆や小麦由来のタンパク質を原料としており、加工品として使用したほとんどの場合、特定原材料としての表示を行わなければならない(小麦:表示必須、大豆:表示推奨)。それらに対して現在までのところ、ばれいしょタンパク質はアレルギー表示の対象とはなっておらず、使用しても特定原材料としての表示は不要である。

 さらに、三つ目としては「Non-GMO(遺伝子組換えでない)」であることである。ばれいしょは遺伝子組換え表示の対象作物ではあるが、上述のように原料原産地が北海道であり、トレーサビリティを確保できることから、遺伝子組換えを行っていない原料を使用することができ、これら三つの特長で調味料原料としての「安心・安全」を確保している。

 このように、北海道産ばれいしょが持つ強みを生かした製品の製造を行っている。

3 ポテトプロテインを原料とした調味料

(1) 酸加水分解型脱塩粉末調味料

 ポテトプロテインを酸加水分解してタンパク質をアミノ酸にまで分解した後、中和し精製・脱塩工程を経て、噴霧乾燥した淡黄色粉末タイプの天然マルチアミノ酸調味料である(図3)。製品のアミノ酸組成は、大豆タンパク質の加水分解物と類似したアミノ酸組成を示し、バランスの良いアミノ酸組成を有する(図4)。中でも、グリシンなどの甘味を有するアミノ酸が豊富であり、また、うま味を有するグルタミン酸なども多く含まれていることから、甘味・うま味を呈する調味料として用いることができる。

 また、加水分解・中和時に生成される食塩を除去しているため、酸加水分解型調味料としては数少ない無塩タイプの調味料となっている。通常、調味料の場合、食塩を調整するためにデキストリンなどを加えるが、アミノ酸特有のうま味や甘味が薄まってしまうため、素材由来のアミノ酸の味を十分に生かすことができない。しかし、脱塩を行うことで素材由来のアミノ酸のうま味、甘味を引き立てることができ、また、塩分を気にせずさまざまな食品への利用が可能である。
 





 

 酸加水分解型調味料の用途としては、天然マルチアミノ酸調味料であり呈味力が強いことから、調理品に対して0.5〜1.0%添加することで、マイルド感やコク味を付与することができる。原料がばれいしょであるため、特にばれいしょを利用したフライドポテトや肉じゃが、コロッケなどの調理品・加工品に対して相性が良い。

 また、ポテトチップスなどの菓子類のシーズニングパウダーとしても利用でき、味の付与だけでなくばれいしょ特有の風味やコクを増強させることができる。

(2) 酵素分解型調味料

 ポテトプロテインを酵素分解し、ペプチドの状態で噴霧乾燥することで得られる淡黄色粉末タイプの調味料である(図5)。

 酵素分解によるペプチドが主成分であるために、酸加水分解型のようなアミノ酸特有のうま味や甘味などを呈することはないが、酸加水分解では得られないばれいしょ特有の風味が残っており、ばれいしょを食べた時のような後味やばれいしょをふかした際の皮の風味などを付与することができる。また、酸加水分解型調味料やその他のうま味調味料などと併用することで、うま味の伸びを増強し、より呈味を持続させることができる。



 

 酵素分解型調味料の用途としては、加工食品などに添加することにより、コク味の付与やうま味の伸びを増強させることができる。カレーやシチュー、ポテトスナックなどへ少量添加することでコク味の増強素材として、また、ばれいしょ風味の付与素材として利用できる。

 また、発酵促進作用を示すことから、キムチ、みそ、納豆などのさまざまな発酵食品に利用することができ、健康機能性食品としては、飲料やゼリー、各種サプリメント食品などに使用することも可能である。

4 今後の可能性と課題

 近年、プロテインの摂取がブームとなっている。一般に使用されているプロテイン原料としては、大豆や乳(ホエイ)がほとんどであるが、これらの原料はいずれもアレルギー表示対象となっている。

 最近では、アレルギー表示対象外であるビープロテイン(えんどう豆プロテイン)も市場に出ているが、こちらは海外産がほとんどである。ポテトプロテインは前述の通り、アレルギー表示対象外であるとともに国産のプロテインであるため、今後が有望な植物性タンパク資源の一つであると考えられる。

 さらに、ポテトプロテインはでん粉加工の際に発生する未利用資源であるポテトジュースを原材料としており、副産物に新たな付加価値を与えることも可能となる。

 しかし、ポテトプロテインを生産できるでん粉工場は北海道内でも限られるため、生産しているでん粉の加工工程で排出されるポテトジュースについては排水、もしくはポテトプロテインを分離しても乾燥まではせず、肥料や燃料として利用しているのが現状である。食品用原料としてアップサイクルするシステムの構築が課題となっている。

 また、現在当社が活用しているポテトプロテインは、そのまま食品へ使用するとばれいしょ特有の土臭さがあり、使用用途が限定されてしまうことや、水への分散性が悪く飲料などには使用しづらいなど、広く食品に使用するにはまだ課題が多い。

おわりに

 ばれいしょは、塊根・塊茎作物の中でも比較的多くのタンパク質を含んでおり、そのタンパク質は未利用資源としてとても魅力がある素材であると考えられ、植物性プロテイン素材を国内で製造できる点も強みとなるため、国内自給の観点からも、ばれいしょ生産量を増やすことが望まれる。この魅力あるポテトプロテインを調味料や健康機能性食品としてだけではなく、課題を克服していくことで、今後さらなる有効利用の可能性が期待される。
【参考文献】
1)農林水産省農産局地域作物課「令和6年度いも・でん粉に関する資料」
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/r5shiryo.html

 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8678