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―第1回 トレハロース―
最終更新日:2026年9月10日



(注1)グルコース同士が結合した二糖類では麦芽糖(マルトース)も代表的なものとして挙げられるが、トレハロースの場合は麦芽糖と異なる部位でグルコース同士が結合している。

(流通の過程)
トレハロースは1980年代まで、酵母から抽出・精製されており、生産効率やコスト面で課題があったが、1994年、ナガセヴィータ株式会社(<旧 株式会社 林原>以下「ナガセヴィータ」)が、世界で初めて微生物・酵素技術を使ったでん粉からの量産を可能にした。これにより価格帯は1キログラム当たり3〜5万円から約100分の1となり1)、利用が拡大した。
現在は、主としてナガセヴィータによる国内製造品が流通している(写真1)。

(国内流通量)
トレハロースの国内流通量は、約3万5000トン程度とされる。税関事前教示回答事例によると、関連するHSコード((1)1702.90-529および(2)2940.00-090)に該当するものとして輸入も確認できる((1)は化粧品用途、(2)は食品原料〈食品添加物〉)ものの、これらのコードにはトレハロース以外の糖質も含まれるため、トレハロースの輸入量を把握することはできない(注2)。
(注2)HSコード1702.90-529は糖類及び糖水(その他のもの):1805トン、
HSコード2940.00-090は糖類(化学的に純粋なものに限るものとし、しょ糖、乳糖、麦芽糖、
ぶどう糖及び果糖を除く。)(糖エーテル及び糖エステル並びにこれらの塩以外のもの)とされる。:4675トン
数値はすべて2024年実績。
(資料:財務省 貿易統計、日本関税協会webタリフより)
(食品表示)
食品表示上は、砂糖は「食品」であり、トレハロースは「食品添加物」である。
なお、食品添加物のうち、「既存添加物」(化学合成品以外の添加物のうち、国内で広く使用され長い食経験を有するもの)である。菓子や加工食品などの原材料表示ラベル上は、スラッシュ( / )の後に表示されている(注3)(図3)。

(注3)消費者庁の食品添加物公定書第10版では、トレハロースは純度98.0%以上のものが該当するとされている。なお、現行の食品表示制度では、食品添加物について原産国表示の義務は課されていない。2)
(原材料)
トレハロースは、コーンスターチなどのでん粉を原料として製造されている。
なお、ナガセヴィータにおいては、国内製造されるコーンスターチや、タイで製造されるタピオカでん粉、北海道で製造されるばれいしょでん粉などを原料としている。
(特性など)
主な特性として、
1)低甘味(甘味度は砂糖の主成分であるショ糖を100とした場合に38程度)であること、
2)高保水性(しっとり感を保つ)、
3)高結晶性(結晶力が高く結晶の状態で安定する)、
4)でん粉の老化抑制(でん粉を含んだ食品のやわらかさを保つ)―などが挙げられる(注4)。
なお、甘味の立ち上がりは早く、甘さは後に引かない。エネルギーは砂糖と同程度(1グラム当たり4キロカロリー)である。
(注4)
2)はトレハロースが水分を強くつかみ、離しにくい分子構造であることに由来する。
3)は分子が対称性の高い安定的な構造であり、結晶を形成しやすいことによる。
4)は保存時にでん粉の水分が抜け、でん粉分子が再配列するのを、2)の効果による保水で防ぐことによる。
(特性を生かした用途)
甘味の付与という点では砂糖が中心的な役割を担う一方、トレハロースが低甘味である点や物理的特性を生かし、砂糖と併用される例を具体的に二つ挙げる。

(製造方法)
トレハロースの原料となるでん粉は、グルコースが長く直鎖状に連なり、一部に枝分かれした構造を持つ。トレハロースは、これを酵素で低分子化し、さらに変換させることにより、以下のような工程を経て生成される(図4、5)。


コラム
ナガセヴィータ岡山機能糖質工場(コラムー写真1)では、トレハロース製造の鍵となるでん粉の液化および糖化工程において、独自設計の特注機械を使用し、専任技術者による設計・プログラミング、メンテナンスを一貫して行っている。 |