この人に聞く
【この人に聞く】こだわりの常陸牛をたくさんのお客様に
〜肉のイイジマ〜
最終更新日:2025年12月5日
広報webマガジン「alic」2025年12月号
飯島充社長にインタビュー
茨城県のブランド牛「
常陸牛」やブランド豚「ローズポーク」を中心に取り揃え、
茨城県水戸市に1963年の創業以来、60年以上にわたり地元の人に愛され続けているお肉屋さん「肉のイイジマ」。

イイジマでは、常陸牛の中でも厳選された常陸牛を提供するために、取り扱いに厳しい基準を設けています。職人が部位ごとに異なる霜降りの程度を見極め、脂肪の質にこだわり、目で見て、触って、選び抜かれた常陸牛がショーケースに並びます。
今回は、2023年に常陸牛の最高級ランクのブランドとして認定された
「常陸牛
煌」の立ち上げメンバーの一人である株式会社イイジマの飯島充社長にお話を伺いました。
生産者と共につくる常陸牛
株式会社イイジマでは、直接牧場に足を運び、飼養環境や飼料まで確認するなど、生産者と二人三脚で品質を磨き上げ、仕入れるだけでなく、共につくる姿勢を大切にしているのだそう。飯島さんからは、『生産者の努力やこだわりをお客様に伝えることで、その価値が正しく評価され、適正な価格での取引が可能になります。これにより、生産者は継続的な品質向上と安定した生産を維持できるため、結果として良質なお肉を安定して提供することにつながります。』と教えていただきました。
専門店ならではのお客様に応じたご提案
今日は家族で焼肉、明日のお弁当用など、そんな日々の食卓のシーンに合わせて、精肉専門店では“お肉のプロ”が最適な部位やカットをその場で提案しています。切り方ひとつで精肉は味わいが変わるそう。
飯島さんはこう語ります。『例えばすき焼きならロースや肩、焼肉ならカルビ(バラ)やウデ、煮込み料理にはスネやスジなど、部位ごとに役割と魅力があります。迷ったら、ぜひ専門店で相談してみてください。お客様の好みやニーズに合わせて、お肉の種類・部位・味付け・調理法などを個別に“パーソナライズ”ができるのは、私たちのような専門店だからこそできることです。お客様の声に耳を傾けながら、料理にぴったりなお肉を提案できることが、対面販売の精肉店ならではの価値です。』
ぜひ、次のお買い物では何を作るかをお肉屋さんに伝えてみてください。きっと、いつもの食卓がもっと豊かになります。
常陸牛新ブランド「煌」の誕生と戦略
2023年に誕生した「常陸牛 煌」は、従来の霜降りの量を重視した評価から脱却し、「風味・口溶け・繊細さ」を科学的に数値化した全国初のブランド基準を導入しました。
認定には、五つの条件「(1)茨城生まれ茨城育ち(2)月齢30カ月齢以上(3)歩留等級A等級のみ(4)オレイン酸比率55%以上(5)小ザシ
(注1)指数110以上」を満たしている必要があります。
この五つの基準を満たした牛のみが「煌」として認定されます。基準づくりは、生産者・研究者・流通関係者が一体となって進めたそう。霜降りの美しさを数値化する「小ザシ指数」の導入は前例がなく、合意形成に時間がかかりましたが、その努力によって「日本初の基準」を持つブランドが誕生しました。今後は国内市場だけでなく、海外展開も視野に入れています。
(注1)小ザシとは、赤身に入ったより細かく均一な脂肪のこと。
より多くの人に常陸牛を食べてほしい
常陸牛の魅力について、『常陸牛は、きめ細やかな肉質と上品な脂が特長です。しつこさがなく、幅広い世代に食べやすいブランド和牛として評価されていて、毎日でも食べられる贅沢さを持つのが常陸牛の真の魅力です』と飯島さんに教えていただきました。
茨城県内で展開する株式会社イイジマは、精肉店「肉のイイジマ」のほか、常陸牛の魅力をより多くの人に届けるために、飲食店や総菜専門店など多彩な形で事業を展開しています。
「お肉のおいしさをもっと身近に伝えたい」という想いから、調理法やお肉の楽しみ方を実際の料理を通して体験できる場を提供しています。例えば、「常陸牛 煌」を味わえる「レストラン イイジマ」や、総菜専門店「iijima DELI-1(デリワン)」、そして石窯焼きピザや和洋中のお惣菜・お弁当が人気の「So-zai iijima」など、茨城県内に展開しています。
さらに、自社のオンラインストアやふるさと納税を通じて全国にそのおいしさを届けています。
レストランで食事をしたお客様が「おいしかったから家でも食べたい」と精肉を購入し、精肉を購入した方が「お店ではどう調理しているのか」とレストランを訪れる。そんな双方向の循環が、事業全体を強く支えています。
お客様の声は新たな商品企画や販売方法のヒントとなり、地域に根ざした食文化の発展にもつながっているそうです。
肉牛生産者へのメッセージ
国際的な穀物需要の増加、社会情勢によるトウモロコシなどの飼料穀物価格の上昇や為替相場の影響などによって、配合飼料価格が高騰しています。飼料費が畜産経営コストに占める割合は高く、およそ牛で全体の4割、豚は7割となっています
(注2)。
おいしい国産のお肉を守るためには、
1 生産にかかるコストが適正に販売価格に反映されること
2 国産のお肉を食べて生産者の方々を応援すること
この二つが大切な要素ではないでしょうか。生産者と二人三脚で共につくることを大切にされている飯島さんに、生産者の方に向けてメッセージをいただきました。
『全国には、地域の風土や文化を活かし、地元のものを飼料に活用するなどの工夫を凝らして育てられた、こだわりの和牛が数多く存在します。生産者はそれぞれの土地で、独自の方法で差別化を図りながら、日々努力を重ねています。
そんなおいしい国産のお肉を守るために、私たち消費者ができることは、まず食べて応援すること。国産のお肉を選ぶことは、生産者の努力に対する評価であり、畜産業を支える力になります。
そしてもう一つ大切なのは、自分が食べるものがどうやってできているのか、どうやって選ぶのかを知ること。食べ物の背景にある物語を知ることで、選ぶ力が育まれます。これは大人だけでなく、子どもたちにも伝えていきたいことです。食育の場をより多く提供し、子どもたちが食べることの意味や地元の食材の価値に触れる機会を増やすことは、未来の消費者を育てることにつながります。国産のお肉を守るためには、こうした学びの積み重ねが何よりも大切だと考えます。
コスト高で大変な状況が続いています。常陸牛をはじめ、新ブランド牛「煌」は、生産者の努力が必ず報われる仕組みをつくるために誕生しました。私たち販売の現場が、その価値を正しく伝え、しっかりと対価につなげていきます。』
(注2)参考:農林水産省「畜産物生産費統計」
飯島 充 氏
株式会社イイジマ 代表取締役社長
1991年 学校法人竹岸学園竹岸食肉専門学校 卒業
以降、株式会社イイジマの食肉部門にて仕入れや精肉加工などに携わる。
2012年10月 代表取締役社長 就任 |
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 総務部 (担当:総務広報課)
Tel:03-3583-8196