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加工でん粉の基礎知識と現状について

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最終更新日:2010年5月10日

加工でん粉の基礎知識と現状について

2010年3月

松谷化学工業株式会社 研究所 第二部 部長 菅野祥三

1.はじめに

 でん粉は、植物の光合成によって産生されるリサイクル資源であり、人間の基盤素材として多岐の工業品や食品に利用されている。また、古くから貴重なエネルギー源として我々の生命を支えてきた食物成分でもある。最近では、地球環境問題から石油代替バイオエネルギーのエタノールや生分解性プラスチックの原料用にも需要が増大している。
 
 年々変化し多様化する食生活は、でん粉本来の水に不溶である点や老化現象などの不可避な負の特性を顕在化させ、でん粉に要求する特性も厳しく高度化している。これらに対応すべく、でん粉に各種加工(酵素的、物理的、化学的)を施して、特性の改質・改善や機能性の付与・増強した種々の加工でん粉が開発されてきた。
 
 わが国においては、化学的処理されたデンプングルコール酸ナトリウムとデンプンリン酸エステルナトリウムが1964年に食品添加物として指定され、他の化学的処理されたものは、1979年9月20日に厚生省(現厚生労働省)発、米国大使館農務参事官宛の通知(環食化第46号)をもって食品としての流通が認められてきた(1)。
 
 これらの化学的処理された加工デンプン11品目は諸外国において食品添加物として取り扱われてきたことから、国際的整合性を図るため(2)、2008年10月1日に食品添加物として新規指定された。
 
 なお、デンプンリン酸エステルナトリウムについては、リン酸化デンプンと成分規格が一部重複し、近年、食品添加物としての使用実績もないことから2009年6月4日に食品添加物の収載リストから削除された(3)。表1に加工デンプンの現状を示す。
 
<DIV><STRONG>表1 加工デンプンの分類と現状</STRONG></DIV>
表1 加工デンプンの分類と現状

2.製法について

 加工デンプンの製法は、反応時のでん粉の状態によって湿式法と乾式法に分けられ(4)、通常は図1の工程図に示すように水中にでん粉が分散した状態(湿式)で反応処理が行なわれる。水とでん粉からなるでん粉乳液に薬剤を添加反応させた後、水洗により異物や薬剤を除去・精製する。次に乾燥工程を経て製品となる。
 
 反応時の薬剤濃度や反応条件など詳細な組み合わせによりさまざまな特性を付与した加工デンプンが得られる。乾式法は、でん粉に薬剤を添加後、加熱反応させて得られ、工程図を図2に示す。
<DIV><STRONG>図1 湿式法の製造工程図</STRONG></DIV>
図1 湿式法の製造工程図
<DIV><STRONG>図2 乾式法の製造工程図</STRONG></DIV>
図2 乾式法の製造工程図
 加工デンプンの製造および加工を行なうには、食品衛生管理者の設置と加工デンプン製造業の許可を取得する必要があり、業界内で対応の取り組みが続いている。
 
 なお、この対応には経過措置期間が設定されており、2011年3月31日までは従前の例によることが出来るとされている。

3.成分規格について

 成分規格は、定義・性状・確認試験・純度試験・乾燥減量からなり、FAO/WTO合同食品添加物専門家会議(JECFA)規格、米国食品化学物質規格集(FCC)規格、EUの食品添加物規格を参考として設定されている。海外における規格と照らし合わせると、日本の規格は、EUと同様JECFA規格に準じており規格項目や規格値において相違点が少ない。
 
 一方アメリカの規格は、製造時の使用薬剤の上限濃度を規定し、純度規格(残留物質濃度)が設定されていないものが多い。設定された純度試験の規格は、共通項目と各品目に対応した個別項目が設けられている。表2に純度試験の個別項目ごとの規格値を示す。
<DIV><STRONG>表2 加工デンプン11品目の純度試験規格(個別項目)</STRONG></DIV>
表2 加工デンプン11品目の純度試験規格(個別項目)
 弊社では、日本の公定法がJECFA法と測定法(試薬、器具、操作手順・方法など)で異なる点が認められ、さらにアメリカの規格では規格値が設定されないものがあることから、規格値の妥当性検証を一から行ない、加工デンプンに相当する製品の成分規格保証を昨年の4月から実施した。
 
 なお、成分規格の適応についても2.で述べた製造および加工に関する手続きと同様の経過措置期間が設定されている。

4.特徴と用途について

 加工デンプンは、図3に示すようにでん粉のグルコース残基の水酸基(2、3、6位)に官能基を付加・導入するなどし、親水性や疎水性などを高めたものが主体である。
 
 代表的な品目について、その特徴と食品への用途について述べる(5)。
<DIV><STRONG>図3 でん粉の基本構造:グルコースユニットと水酸基の位置</STRONG></DIV>
図3 でん粉の基本構造:グルコースユニットと水酸基の位置

(1)リン酸架橋デンプン

 でん粉をトリメタリン酸ナトリウム(またはオキシ塩化リン)でエステル化して得られる。でん粉の分子内または分子間の水酸基が架橋して、糊化が抑制され、耐せん断性や耐酸性に優れる特徴が付与される。
 
 図4は、リン酸架橋デンプン(原料:ワキシーコーンスターチ)のアミログラム(各種でん粉の時間、温度、粘度の関係を表した曲線)で、極めて僅かなリン酸基の導入で粘度抑制されることが分かる。
 
 食品へは、物性改良を中心に、スナック菓子、天ぷら粉やベーカリー類の食感改良など広範に利用される。
<DIV><STRONG>図4 リン酸架橋デンプンのアミログラム(測定濃度6%)</STRONG></DIV><STRONG>(山型の曲線は、温度プログラムパターン。40℃⇒94℃,10分保持⇒30℃)</STRONG>
図4 リン酸架橋デンプンのアミログラム(測定濃度6%)
(山型の曲線は、温度プログラムパターン。40℃⇒94℃,10分保持⇒30℃)

(2)酢酸デンプン

 でん粉を無水酢酸(または酢酸ビニル)でエステル化して得られる。でん粉への酢酸基の導入・付加により糊化開始温度が低下し、老化安定性や透明性に優れる特徴を持つ。
 
 食品へは、食感改良や物性改良を中心に、たれ類の粘度安定性付与や冷凍麺の食感改良など広範に利用される。
 

(3)ヒドロキシプロピルデンプン

 でん粉を酸化プロピレンでエーテル化して得られる。でん粉へのヒドロキシプロピル基の導入・付加により親水性が増大し、糊化開始温度が低下する。老化耐性に優れ、冷蔵安定性や凍結融解にも優れる特徴を持つ。
 
 図5は、ヒドロキシプロピルデンプン(原料:タピオカでん粉)のアミログラムで、官能基付加の程度(DS:置換度)が高くなるに連れて糊化開始温度が5〜10度低下し、最高粘度が上昇することが分かる。
 
 食品へは、食感改良や物性改良、老化耐性の付与を中心に、冷凍食品やベーカリー食品の経時安定性向上など広範に利用される。
<DIV><STRONG>図5 ヒドロキシプロピルデンプンのアミログラム(測定濃度6%)</STRONG></DIV><STRONG>(山型の曲線は、温度プログラムパターン。40℃⇒94℃,10分保持⇒30℃)</STRONG>
図5 ヒドロキシプロピルデンプンのアミログラム(測定濃度6%)
(山型の曲線は、温度プログラムパターン。40℃⇒94℃,10分保持⇒30℃)

(4)オクテニルコハク酸デンプンナトリウム

 でん粉を無水オクテニルコハク酸でエステル化して得られる。でん粉へのオクテニルコハク酸基の導入・付加により乳化能(界面活性)が付与され、乳化および老化安定性に優れる特徴を持つ。
 
 食品へは、油脂の遊離抑制やドレッシングの乳化安定性の付与を中心に、ドレッシング類の安定性向上や乳化香料の基材などに利用される。
 

(5)酸化デンプン

 でん粉を次亜塩素酸ナトリウムで酸化処理して得られる。でん粉粒の非結晶部分に作用して、分子の解重合やカルボキシ基の生成により、低粘性で老化しにくい特徴を持つ。
 
 食品へは、食感改良や物性改良を中心に、スナック菓子類の食味改善や粉末化基材、煎餅用艶出しなど広範に利用される。
 

5.表示変更について

 食品添加物として新規指定された加工デンプンやそれを含む食品、食品添加物製剤は、食品添加物としての表示に変更する必要がある。なお、同じく表示変更についても製造および加工に関する手続きなどと同様の経過措置期間が設定されている。
 
 既に表示変更された市販品の裏面表示を参考例として図6、7に示す。
 
<DIV><STRONG>図6 市販品の裏面表示</STRONG></DIV>
図6 市販品の裏面表示
<DIV><STRONG>図7 市販品の裏面表示</STRONG></DIV>
図7 市販品の裏面表示
 両品とも簡略名「加工デンプン」、「加工でん粉」を用いている。図6では、主たる使用目的が用途名併記を求められる用途(増粘剤、安定剤、ゲル化剤または糊料)中の増粘剤に該当することから用途名が併記されている。
 
 図7では、主たる使用目的がこれらに該当しないことから、用途名が併記されていない。また、加工デンプンの遺伝子組み換え表示は、パブリックコメントの回答(6)が昨年7月に一部修正され、他の食品添加物と同じく表示の必要がないとされた。
 
 加工デンプンやそれを含む食品、食品添加物製剤に該当する製品の包材表示変更については、業界内で取り組みが続いている。
 

6.まとめ

 食品として30年流通してきた加工デンプンは、食品添加物に新規指定後、法令上の変更や運営上の修正がなされ、それに伴う必須の対応(添加物製造業の認可、成分規格の適応、表示の変更など)が、事業者ごとに進められている。
 
 弊社としても経過措置期間内での対応はもちろんのこと、更なる安心・安全性への取組み強化は、素材メーカーとしての使命であり、製造法の見直しや分析技術の開発などに取組んでいる。
 
 こうした取組みを踏まえ、加工デンプンの利用技術を生かすことで豊かな食生活に寄与し貢献出来れば幸いである。

参考文献

1)化工デンプンの取扱通知(米国大使館宛)環食化第46号(昭和54年9月20日)
2)山手政伸:加工デンプン11品目の新規指定について、ALIC(2008年)
3)厚生労働省令第119号(平成21年)、厚生労働省告示第325号(平成21年)
4)高橋禮治:でん粉製品の知識
5)不破英次,小巻利章,檜作進,貝沼圭二:澱粉科学の事典
6)「食品衛生法施行規則」及び、「食品、添加物の規格基準」の一部改正によせられた御意見等について(平成20年10月厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課)
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
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