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ばれいしょでん粉工場廃棄物の有効利用について

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最終更新日:2010年9月1日

ばれいしょでん粉工場廃棄物の有効利用について
〜バイオエタノール製造技術の開発〜

2010年9月

株式会社 竹中工務店 技術研究所先端技術研究部 主任研究員 川尻 聡

1.はじめに

 化石燃料への依存からの脱却や地球温暖化防止のための二酸化炭素排出削減が、国際的な取組みとなっている昨今、バイオマスを有効に活用することが重要となっている。しかし、これらの諸問題に加えて、食料問題も顕在化しており、食料と競合するバイオマスの利用については多くの異論がある。
 
 とりわけ、燃料および食料の自給率が低いわが国にとってこの問題は非常に重要であり、如何にして食料生産を確保しつつ(換言すれば食料需給を圧迫しないで)、バイオマスを利活用するかという視点での技術開発が必要だと考える。
 
 本研究開発では、そういう視点からでん粉製造時における排液とでん粉粕を利用したエタノール製造について実施しているところであり、基本的な考え方及び現時点までの成果について報告を行う。なお、当該研究開発は、農林水産省の「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」に採択され、平成20年度から22年度まで3カ年の予定で実施しているものである。
 

2.開発の背景と目的

 本研究で対象としている原料は、ばれいしょでん粉製造時に排出されるデカンタ排液とでん粉粕(ポテトパルプ)である(図1)。
 
 前者は、非常に生物活性が高く、悪臭の原因になっている。これらは、BOD(*注1)が数万ppmと高く、好気処理などで負荷を軽減するには、大量のエネルギーを必要とする。ところで、これらには、わずか(数g/L)ではあるが糖類が含まれており、これらを有効に利用できれば、食料と競合しないバイオマスとしての活用が可能となる。
 
 
 一方、でん粉粕は、その成分中に炭水化物(繊維質:セルロース)やタンパク質を含んでいる。わが国におけるバイオエタノール製造は、稲わらやもみ殻および木質原料中のセルロースを糖化原料として行う例があるが、ばれいしょでん粉粕中に含まれるセルロースは、これらに比べてヘミセルロース(*注2)やリグニン(*注3)の含有が少なく、糖化原料としては有効であると考えられる。
 
 そこで、でん粉粕中のセルロースを水熱処理によってでん粉そして、単糖まで分解し、それらを発酵させてエタノールを製造するプロセスを構築することを目的として開発を行っている。
 
*注1:生物化学的酸素要求量。水中の有機物などの生物的酸化分解の際に微生物が必要とする酸素の量を表したもの。値が大きいほどその水質は悪いとされる。
 
*注2:植物細胞壁に含まれるセルロースを除く水に不溶性の多糖類の総称。
 
*注3:高等植物の木化に関する高分子のフェノール性化合物であり、木質素とも呼ばれる。
 
 

3.開発の内容と結果

(1)デカンタ排液の分離濃縮

 デカンタ排液のうち、糖として利用可能な成分は、全体の2〜3%であるが、糖以外の成分も多く含まれており、そのままで発酵するのは効率的ではない。また、当該排液には、タンパク質も含まれており、これらは、飼料として製品化が可能である。
 
 これらのことから、原料となる排液を遠心分離、限外ろ過(Ultra Filtration)およびナノろ過(Nano Filtration)という手法を用いて分離・濃縮することで、エタノール発酵原料糖とタンパク質の選択的な高濃度化排水処理負荷の軽減を同時に実施可能なプロセスの検討を行った。
 
 図3のうち、(1)と(3)の分離液にタンパク質は高濃度で含有される。ここで分離されたタンパク質は高濃度タンパク質として製品利用し、分離液は、でん粉粕と混合し低タンパク製品として利用が可能である。エタノール原料のグルコースなどは、(5)に初期濃度の十数倍の濃度まで濃縮された状態で回収される。NF膜を通過した排水は、原液中の有機成分の70%が除去されており、排水処理負荷が大幅に軽減された。
 
 
 
 
 

(2)でん粉粕の水熱可溶化

 でん粉粕は、主にセルロースから構成されており、そのままでは、発酵原料にすることが難しい。そこで我々は、高温高圧化でこれらを低分子化することが可能な水熱処理による、でん粉粕の可溶化・糖化を検討している。
 
 表1には、でん粉粕の成分を示した。これにより、でん粉粕中には、約40%ものセルロース類(ADF)が含有されており、これらを水熱処理によって低分子化した。
 
 図4および図5には、水熱可溶化および糖化試験の結果を示した。いずれも180度の熱水雰囲気化で処理した結果で、可溶化は、処理時間によらず、60〜70%が液体化した。また、処理時間の増加に伴って低分子化が進み、90分の処理においては、単糖(グルコース:分子量180)からオリゴ糖(分子量1000未満)まで低分子化することができた。
 
 可溶化によって液体化しない30〜40%の不可溶成分について、酵素によって糖化を行ったところ、未処理のでん粉粕に比べて3〜4倍の効率で糖化できることを確認した。
 
 
 
 
 
 
 
 

(3)エタノール発酵試験結果

 デカンタ排液を分離・濃縮したサンプルとでん粉粕の可溶化液、不可溶化物の酵素糖化液の3液を混合し、酵母によって発酵した結果を図6に示した。その結果、20.9g/Lの発酵性糖類を消費して11.9g/Lのエタノールが生産された(図は発酵原料糖のうち、グルコースの濃度と比較した)。
 
 現在、発酵原料糖の初期濃度の向上について検討を進めている。
 
 
 

(4)現地での実証試験

 昨年度より、北海道美幌町にあるビホロ農工連工場内で、実用規模の10分の1規模の設備を用いて、デカンタ排液およびでん粉粕の分離および可溶化試験を実施している。昨年度末までに実証規模における処理の基本的特性は把握できた。
 
 今年度は、新たに、高度分離のための膜分離装置、水熱可溶化液の糖化を促進するための水熱糖化機構、酵素糖化槽および発酵槽を追加し、個別の実証機能を確認するとともにプロセス全体の実証試験を実施して、エタノール製造設備の設計に関するデータを収集する予定である。
 
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
Tel:03-3583-8713



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