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菓子におけるでん粉の機能

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最終更新日:2010年12月27日

菓子におけるでん粉の機能

2011年1月

共立女子大学名誉教授 高橋 節子


【要約】
 でん粉を用いた菓子には、「くず桜」や「わらび餅」「ブラマンジェ」などのように、くずやわらび、とうもろこしなどから抽出されたでん粉を主材料とした菓子と、でん粉が他の成分と共存する米粉や大麦粉などの粉類を用いた「ぎゅうひ(求肥)」や「新粉餅類」、「落雁」などがある。これらの菓子類は、透明感があり、食べたときの硬さや粘り気などの食感が美味しさを左右する。食感はでん粉の種類により大きく異なり、また加熱の仕方による影響が大きい。でん粉の性質を知り目的に応じてでん粉を選ぶこと、そのでん粉の特徴を生かす加熱の方法を行うことが重要である。ここでは地下でん粉を用いる「くず桜」、地上でん粉を素材とする「ブラマンジェ」、そして米粉類については「ぎゅうひ」を取り上げて解説する。

1.でん粉の種類と菓子に求められるでん粉の性質

(1)でん粉の種類 でん粉にはばれいしょ、かんしょ、くず、わらび、タピオカなどのように根や地下茎に貯蔵される地下でん粉(根茎でん粉ともいう)と、とうもろこし、小麦、米、豆類など種子に蓄えられる地上でん粉(種実でん粉)がある。またサゴやソテツのように幹に多量のでん粉を蓄積するものもあり、近年は茎や根に蓄積されるエンセットでん粉1)にも関心が寄せられている。

(2)菓子類に求められる性質 菓子類に求められるでん粉の特性は透明性や粘度、ゲルのテクスチャーや老化性などである。
 ばれいしょでん粉はコーンや小麦のでん粉に比べて透明性が高く、加熱した時(図1)には60℃と低い温度で粘度が出始め糊化しやすく、粘度の高い糊が得られる。これに対しコーンや小麦のでん粉は約10℃高い温度で粘度が出始め、糊化しにくいので調理・加工の際には高温での加熱を継続して糊化を十分に行う必要がある。くずやわらびのでん粉はサゴでん粉に近似し、ばれいしょとコーンのでん粉の中間の粘度特性といえる。
図1 ラピッドビスコアナライザーによる各種でん粉の粘度曲線(7.5%濃度)
 くずでん粉ゲルはサゴやばれいしょのでん粉に近い硬さがあり付着性の少ない性質を示し、わらびでん粉はコーンやかんしょのでん粉に近いゲル特性といえる。でん粉ゲルを低温に保存した場合、白濁して外観を悪くし食味を損ねることがある。図2からばれいしょやサゴのでん粉は白度が低く透明性にすぐれ、5℃で4時間保存後も変化が少ないなど、透明性を必要とする菓子に適するでん粉といえる。くずでん粉はコーンに近い白濁したゲルであるが、保存中の変化は少ないこと、コーンスターチは保存中の白度の上昇が急激で老化しやすく、白く仕上げるブラマンジェなどに適するといえる。
図2 ゲル保存時におけるハンター白度の変化
2.でん粉の菓子への利用例とその機能

(1) でん粉を用いる菓子類

(ア)くず桜:透明なでん粉の衣で甘いあんを包んだ和菓子「くず桜」は、でん粉の濃度が約20%の懸濁液を加熱し、でん粉液が流動性のある間に一個ずつつあんを包むという作業を経て出来上がる。ここではでん粉の種類、糊の作り方や餡の包み方が要点といえる。くず桜に適するでん粉としては、透明で粘りや弾力があり、手に付着しにくく、蒸し加熱しても形が崩れにくいなどの特性が要求され、くずとばれいしょでん粉を3:1の割合に混合して用いると操作しやすい2)とされている。また衣は半糊化の状態の時にあんを包むと作業しやすく、成形した後に4−5分間蒸すことにより、でん粉を完全に糊化させて弾力のある口ざわりを与え、食感を向上させる効果を得ている。このようにくず桜は、でん粉の糊化を巧みに利用した菓子といえる。
くず桜
(イ)ブラマンジェ:ブラマンジェは仏語で白い食べ物の意で、ゼラチンをゲル化剤としアーモンドの搾り汁を用いるフランス風のブラマンジェと、コーンスターチに砂糖・牛乳を加えて作る英国風のブラマンジェ(コーンスターチブディング)の2種がある。英国風のブラマンジェは、身近な素材を用いて家庭で簡単に作ることのできる代表的な冷菓といえる。でん粉と砂糖を混ぜ、牛乳を少しずつ加えて、だまのないように溶き伸ばし撹拌しながら加熱するが、この時の加熱の仕方により食味が大きく異なる。コーンスターチは糊化する温度が96℃と高いので、高温で撹拌・加熱を継続して行うことが重要である。 実際には強火または中火にかけ、泡立ってきて(80℃)から4〜5分間撹拌・加熱を行うと、でん粉糊液は96℃に達しでん粉は糊化されて粘弾性のある、歯切れや形状の良い製品が得られる。この場合、牛乳はでん粉の粘度やゲルの硬さを増す役割を果たしており、特にばれいしょでん粉に及ぼす牛乳の影響が顕著で、粘度、ゲルのテクスチャーともにコーンスターチに近い値となり、ぎゅうひに似た食感が得られる。
ブラマンジェ
(2) 白玉粉や餅粉を用いた和菓子「ぎゅうひ」

 ぎゅうひは「あんみつ」の具として親しまれ、「うぐいす餅」や「はなびら餅」に用いられ、また初夏の菓子「焼きあゆ」では、ぎゅうひがどら焼きの皮に包まれている。さらにぎゅうひは「練りきり」や「すはま(州浜)」などの和菓子を作る場合にはつなぎとして加えられる。
 米粉のうち、もち米から作られる白玉粉や餅粉はアミロペクチン100%で、うるち米の上新粉に比べて、粘性が強く老化しにくい特徴をもっている。
 ぎゅうひは白玉粉や餅粉に、粉の約1,5〜2倍の砂糖を用い、水で溶き伸ばし加熱・糊化して粘りや弾力を十分に出したものである。もち米でん粉の粘りのある特性に加えて、砂糖の保水性による老化しにくい性質が加わり、ぎゅうひは軟らかさや形状を保ち、しかも歯切れの良い食感を作り出している。
 このぎゅうひは、練りきり菓子を作る際には、白練り餡につなぎとして加え、細工しやすくし、その形状を保つという役割を果たしている。またすはま菓子は、きな粉と砂糖が主材料であるが、これにぎゅうひと水飴をつなぎとして加え練った生地である。このようにもち米でん粉の特性は、ぎゅうひの粘りや軟らかさ、形状を保つ性質として和菓子の調製に重要な役割を果たしている。
 以上のように菓子におけるでん粉の機能はさまざまであるが、いずれにおいてもでん粉を十分に糊化させることにより、粘りや弾力を出して食感を良くし、食味を向上させている。また粘弾性のある特性を、練りきりなどの「つなぎ」とすることで、繊細な菓子の姿を作り上げ、形状を保つ働きをするなど多彩である。菓子類はこのようなでん粉の機能を上手に活用して創り上げられているということができる。
うぐいす餅
焼きあゆ
練りきり
1)Rieko Hirose, Yoriko Tezuka, Tomoko Kondo, Kazuko Hirao, Tamao Hatta, Seiko Nemoto, Kyoko Saio, Setsuko Takahashi and Keiji Kainuma:
Characteristic Physico-chemical Properties and Potential Uses of Enset(Ensete ventricosum)Starch: Comparative Studies with Starches of Potato, Sago and Corn
J. Appl. Glycosi., 57, 185-192(2010)
2)寺元芳子、塩田育子、松元文子:
家政誌,Vol. 17, 384-388(1966)
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