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国産でん粉のあれこれ

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最終更新日:2011年12月9日

国産でん粉のあれこれ

2011年12月

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
 北海道農業研究センター 上席研究員 野田 高弘

はじめに

 国内において生産されるでん粉の大部分は輸入トウモロコシから生産されるコーンスターチであるが、国産いも類からもでん粉が生産されている。近年における国産でん粉の生産量は、北海道で生産されるばれいしょでん粉が、年間20 万トン前後、南九州で生産されるかんしょでん粉が、年間5万トン前後で推移している。本稿ではこれらの国産でん粉について、原料品種、製法、特性・用途などの一般知識を報告する。

1.原料品種

 でん粉原料用のばれいしょは、主に北海道網走管内、十勝管内で栽培されており、品種は「コナフブキ」が大部分を占める。それ以外では、「紅丸」、「アーリースターチ」、「アスタルテ」、「エニワ」、「サクラフブキ」などがあげられる。また、「男爵薯」、「メークイン」、「キタアカリ」をはじめとする生食用品種や「トヨシロ」、「ホッカイコガネ」をはじめとする加工用品種において、規格外のはね品がでん粉用に仕向けられ、ばれいしょでん粉生産量の約20%が、これらのはね品に由来する。

 でん粉原料用のかんしょは、南九州において栽培されており、「コガネセンガン」、「シロユタカ」、「シロサツマ」、「コナホマレ」、「ダイチノユメ」が代表的な品種である。また、「コガネセンガン」は、焼酎用としても適性がある。

 なお、ばれいしょの皮色は白黄、かんしょの皮色は赤紅なのが一般的であるが、「紅丸」の皮色は淡赤、上述したでん粉原料用のかんしょ全品種の皮色は白であることを付記しておく。

2.製造法

 ばれいしょでん粉工場の操業は、ばれいしょの収穫期にあわせて9月〜11月までの期間に行われる。同様に、かんしょでん粉工場も収穫期にあわせて9月〜12月が操業期間となっている。

 収穫されたばれいしょまたはかんしょは、トラックで現地のでん粉工場に搬入し、そこから混入土砂や石などを取り除き、洗浄する。次いで、摩砕機で摩砕し、得られた摩砕乳は脱汁・篩別を行うが、この過程ででん粉乳、でん粉廃液、でん粉粕に分離される。なお、かんしょを切断した際にヤラピンという乳白色の液が出てくるが、これが篩別の際の妨げとなる。でん粉乳は脱水した後、100℃以上で瞬間的に乾燥を行う。次いで、袋詰めを行い、さまざまな品質管理チェックを経てでん粉製品ができあがる。でん粉製造の際に副生するでん粉粕の用途として、家畜の飼料や肥料があげられるが、かんしょでん粉粕はそれら以外にクエン酸発酵原料としても利用されている。

3.特性・用途

 でん粉の特徴は起源とする植物種により異なり、特徴に応じて用途も変化する。ばれいしょでん粉は、他のでん粉に比べて、リン含量が高い、粒子径が大きい、粘度が高い、糊の透明度が高い、など顕著な特徴がある。

 この特性は意外なところで利用されている。まず、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、さつまあげなどの水産練製品があげられる。水産練製品原料として、漁獲量の多い安価な魚であるスケトウダラ、エソ、タチウオなどのすり身が広く用いられるが、これ自身では練製品の独特な物理的味覚である弾力感(あし)が形成できず、でん粉の使用が必要となる。

 水産練製品は、東日本ではプリプリした食感が好まれるのに対し、西日本ではふっくらしたソフトでかみ切りやすい食感が好まれている。このような嗜好に対応するために、東日本で生産される水産練製品には、ばれいしょでん粉が主に用いられる。すなわち、ばれいしょでん粉では、小麦でん粉やコーンスターチの2倍以上のゲル強度(ゼリー強度)を示すため、これが東日本の練製品におけるプリプリした食感の基本となる。

 ばれいしょでん粉は、菓子類にも広く用いられ、代表的なものとして卵ボーロ、えびせんべいがあげられる。卵ボーロは小児用の菓子として親しまれており、口溶け感のよさが特徴である。そのでん粉原料としては、ばれいしょでん粉のみが使用され、その他、鶏卵、砂糖などが用いられる。

 えびせんべいは、えびのすり身とでん粉を混ぜ、 型にはめて焼いて作る伝統的な菓子で、愛知県で多く生産されている。えびせんべいに用いられるでん粉は、現状ではばれいしょでん粉が最適であるとされている。

 即席麺業界でも広くばれいしょでん粉は利用され、小麦粉に混合するばれいしょでん粉の比率は数%〜数10%となっている。ばれいしょでん粉を利用する目的としては、麺の滑らかさ、色調、調理性の向上などがあげられる。

 一方、かんしょでん粉には、主たる用途として糖化用原料向けがあげられるほか、菓子向けなどのかんしょでん粉の特性を活かした固有用途向けなどがあげられる。
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