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世界のでん粉需給の見通し

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最終更新日:2012年2月10日

世界のでん粉需給の見通し〜天然でん粉と化工でん粉について〜

2012年2月

調査情報部
 

【要約】

 2010年の世界全体の天然でん粉生産量(製品重量ベース)は、コーンスターチ1540万トン、タピオカでん粉761万トン、ばれいしょでん粉160万トン、小麦でん粉128万トンであった。また、デキストリンを含む化工でん粉は765万トンであった。

 アジアにおけるでん粉需要の増加は著しく、2010年、4年ぶりにコーンスターチの純輸入地域となった。これはアジアのタピオカでん粉生産が、2年連続でキャッサバの害虫コナカイガラムシの被害によって不調であったことも影響している。需要の伸びに寄与しているのは中国である。同国は、2007年以降、政策的にとうもろこし由来のでん粉製品生産を制限しているため、増加する需要に国内生産が追い付かず、でん粉製品の輸入量が増加しており、国際市場に与える影響も大きくなっている。 

 今後も、欧米の消費が伸び悩む中、引き続きアジアでの需要が増加すると予測される。

はじめに

 でん粉は、地理的条件や気候などに応じて、とうもろこし、ばれいしょ、小麦、キャッサバなどさまざまな原料作物から生産される。天然でん粉のほか、糖化製品、発酵製品、化工でん粉などの加工品が流通する。

 2010年を振り返ると、とうもろこし、ばれいしょでん粉およびタピオカでん粉などの天然でん粉は、需給のひっ迫などの影響で価格が上昇した。2011年に入っても価格の高止まりは続いており、今後のでん粉国際需給の動向は、でん粉輸入国である我が国にとっても注視すべきものである。

 そこで本稿では、世界の主要な天然でん粉(コーンスターチ、タピオカでん粉、ばれいしょでん粉、小麦でん粉)およびデキストリンを含む化工でん粉の最近の生産状況と消費の見通しについて、英国の調査会社LMC社の報告に基づき紹介する。

 なお、本稿中の数値については、すべて製品重量ベースである。

1.天然でん粉

(1)コーンスターチ 〜2010年はアジアが純輸入地域に〜

 コーンスターチは天然でん粉の中で最も生産量が多く、2010年の生産量は1540万トン(前年比6.5%増)であった。このうち、アジアは1090万トンと、全体の約7割を占めた。次いで北アメリカの241万トン、ヨーロッパの138万トンと続いている。

 2010年の消費量も、アジアが1095万トンと最大の消費地域となっており、次いで北アメリカ229万トン、ヨーロッパ133万トンであった。ヨーロッパは2009年、景気の後退からコーンスターチ需要が落ち込んだものの、2010年は製紙業など工業用向け需要の増加により回復傾向を示すこととなった。しかしながら、輸入需要は、トン当たり166ユーロの輸入関税により限定的であった。今後もこの関税措置がある以上は、ヨーロッパの輸入需要は限定的とみられる。

 アジアは需要が大幅に増加したため、2010年は4年ぶりに純輸入地域(純輸入量5万2000トン)となった。この要因は東南アジアの輸入急増である。東南アジアの純輸入量は、37万7000トンと、前年の20万6000トンの2倍近い水準となった。急増の背景には、タピオカでん粉生産の不調がある。代替としてのコーンスターチへの引き合いが強まり、輸入が伸びたものと考えられる。

 2015年の消費量の見通しについては、今後5年間で世界の消費量は220万トンの増加が見込まれている。これは、欧米の経済の低迷により景気が後退し、ヨーロッパや北アメリカなどでは消費が伸び悩むものの、アジアの消費が伸びると見込まれるためである。2015年のアジアの消費量は、2010年比21.4%増の1329万トンと予測される。
 
 
 
 

(2)タピオカでん粉 〜引き続き害虫対策の動向に注目〜

 タピオカでん粉は、天然でん粉のうち、コーンスターチに次ぐ生産量で、2010年の世界全体でのタピオカでん粉生産量は、761万トン(前年比0.6%増)となっている。地域別には、アジアが696万トンと9割以上のシェアを占めており、次いで南アメリカの53万トン、アフリカの12万トンと続く。

 アジアにおけるキャッサバの害虫コナカイガラムシによる被害は、2009年、2010年と2年連続となった。アジアにおける純輸出量を見ると、2010年に12万6000トンと前年から9.9%の減少となった。今後の需給動向を見通す上では、害虫対策の効果などを注視していくことが重要である。(なお、タイにおけるキャッサバ生産などの最近の情勢については、でん粉情報2012年1月号「キャッサバをめぐる情勢」、本誌「海外のでん粉需給動向」をご覧いただきたい。)

 2010年の消費量も生産量と同様、アジアが683万トンと最も多く、次いで南アメリカ53万トン、アフリカ15万トンとなった。2015年の消費量の見通しについては、これまで国際需要を牽引してきた中国において、今後も堅調な需要が予測されることから、アジアの消費量が2010年比21.8%増の832万トンに増加すると予測される。しかしながら、アジアや南アメリカなど生産地以外の地域では、大きな需要増は見込めず、横ばいで推移すると予測される。
 
 
 
 

(3)ばれいしょでん粉 〜EUにおける政策見直しによる影響を懸念〜

 ばれいしょでん粉は、ヨーロッパが最大の生産地域となっており、2010年の生産量は126万トンと、世界全体(160万トン、前年比6.6%増)の約3/4を占めている。次いで、アジアの28万トン、北アメリカの6万トンとなった。

 2010年のヨーロッパにおけるばれいしょの単収は例年を約2割下回る水準となり、タピオカでん粉の供給減と相まって、ばれいしょでん粉価格は高騰することとなった。2011年は、多雨による塊茎数の減少なども報告されているものの、概ね平年並みの単収が見込まれている。

 ヨーロッパ産ばれいしょでん粉は、約3割がアジア向けに輸出される。中でも、中国向けの輸出量は、中国国内でのばれいしょでん粉の減産が響き、2010年に11万5000トンと前年(5万7000トン)から倍増した。中国政府は、国内のばれいしょでん粉産業を保護するため、2011年5月からEU産ばれいしょでん粉に対して相殺関税措置をとっている。

 2010年の消費量は、ヨーロッパが71万トンと最も多いものの、アジアも68万トンとほぼ同量で続き、次いで北アメリカの16万トンとなっている。今後の消費量の見通しについては、2012年にはアジアがヨーロッパを抜いて最大の消費地域になると見込まれる。2015年にはアジアの消費量は、2010年比23.7%増の84万トンに増加、ヨーロッパは同6.8%増の76万トンになると予測される。

 また、今後のばれいしょでん粉需給において注目されるのが、EUにおける政策見直しによる業界への影響である。すでに生産払戻金(域内産穀物利用に対する補助金)は廃止され、輸出補助金も交付がないが、2012年度(7月〜翌6月)以降は、生産割当制度やでん粉原料用ばれいしょの最低保証価格制度などが廃止されることとなっている。このため、2012年度以降のEUのばれいしょでん粉供給の見通しについては不透明である。業界は安定的な販売先確保のため、域内向け、特にばれいしょでん粉を評価している製紙および食品向けに傾注力していくとみられる。

 なお、EUのばれいしょでん粉政策の詳細に関しては、2010年9月号「EUのでん粉をめぐる状況」を参照されたい。
 
 

(4)小麦でん粉 〜アジアでの需要が増加すると予測〜

 小麦でん粉の生産は、ばれいしょでん粉と同様にヨーロッパが最大の生産地域となっている。2010年の世界全体の生産量は、128万トン(前年比5.0%増)となったが、このうちヨーロッパは73万トンと約6割を占めた。次いでアジアの35万トン、北アメリカの10万トンとなった。

 2010年の消費量は、生産量と同様にヨーロッパが最も多く71万トンで、次いでアジアの40万トン、北アメリカの9万トンとなった。2010年には、ヨーロッパにおいて製紙業などからの需要の回復が見られ、特に経済回復の早かったドイツの輸入量は、前年比62.9%増の13万6000トンとなった。また輸出国として、近年リトアニアが台頭してきており、2011年(1〜10月)の輸出量は、前年同期比34.8%増の8万9000トンになっている。

 2015年までの消費量の見通しについては、ヨーロッパが2010年比6.8%増の76万トンと緩やかに増加する一方で、アジアは同年比44.6%増の58万トンと大幅に増加することが予測される。小麦でん粉は、EUにおいて副産物の小麦たん白需要が高いため、生産コスト面で競争力がある。このため、コーンスターチと比較すると市場は小規模であるものの、成長分野の一つとみられている。一方アジアは、地域内の生産が需要の伸びに追いつくかどうかは不透明である。これは、食料用途との競合の懸念(特に中国において)と、小麦でん粉生産規模の拡大には、小麦たん白市場を高めることが必要となるためである。
 
 
 
 

2.デキストリンを含む化工でん粉 〜中国での需要が増加見込み〜

 2010年のデキストリンを含む化工でん粉の世界全体の生産量は、765万トン(前年比4.1%増)であった。このうち、アジアが278万トンで最も多く、次いで北アメリカの231万トン、ヨーロッパの216万トンとなった。

 2010年の消費量についても、アジアが298万トンで最も多く、次いで北アメリカ214万トン、ヨーロッパ203万トンであった。2009年は景気後退により需要が減少したが、2010年は北アメリカで製紙業などにおいて需要が回復している。一方で、ヨーロッパでの需要回復はわずかにとどまった。また、ヨーロッパ産のアジア向け輸出量は、タピオカでん粉の減産による代替需要もあって大きく伸びた。

 2015年の消費量の見通しについては、増加傾向で推移し、世界全体で2010年比23.6%増の945万トンと予測されるが、この伸びはアジアが牽引するものとみられる。アジアは同38.7%増の413万トンと、大幅な消費の伸びが予測される。特に、中国が寄与する。同国は、とうもろこし由来のでん粉製品などの生産について、2007年から政策的に制限を設けている。このため、この政策下では、今後増加が予測される需要に対し、国内生産で対応することは難しく、輸入に頼らざるを得ない。中国は2009年6月以降、化工でん粉の純輸入国となっている。
 
 

まとめ

 でん粉需要は、2009年に景気後退で落ち込んだが、2010年には回復を見せた。今後の見通しについては、欧米の消費が伸び悩む中、アジアでの需要が増加すると見込まれる。しかしながら、欧州の債務問題に伴う世界経済への先行き不安などが、今後のでん粉需要にどのような影響を及ぼすのか、不透明感も根強い。 今後のでん粉需給を見通す上で特に注目すべき情勢は、(1)中国における関連政策および需給の動向、(2)アジアにおけるコナカイガラムシへの対策の進捗状況とその効果、(3)EUにおけるばれいしょでん粉関連政策の見直し実施による生産体制への影響―と考えられる。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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