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でん粉の膨化力を利用したお菓子

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最終更新日:2012年3月9日

でん粉の膨化力を利用したお菓子〜えびせんべい〜

2012年3月

あいち産業科学技術総合センター 食品工業技術センター 分析加工技術室 近藤 徹弥

はじめに

 せんべいには、うるち米を原料とした米菓せんべいや小麦粉を原料とした瓦せんべい、小麦粉せんべいの他に、でん粉を原料としたものがあります。その代表選手が、えびとでん粉を原料とした「えびせんべい」であり、でん粉の膨化力を利用したお菓子です。伝統的なえびせんべいは、えびのすり身とばれいしょでん粉を混ぜ、型にはめて焼き上げたもので、主な生産地は愛知県です。えびの豊かな旨みと素朴な薄紅色の色合いが好まれています。

1.えびせんべいの歴史

 えびせんべいの始まりには幾つかの説があります。その一つに、明治の中頃に「かまぼこ文吉」という人物が始めたという説があります。以下にこの説をご紹介します。

 当時、三河湾ではアカシャえびが大量に捕獲され、乾燥したものを中国に輸出していました。中国ではこの乾燥えびを原料にしたえびせんべいを作り、日本に輸出していました。この中国版えびせんべいはとても高価なものであり、庶民はなかなか口にすることができませんでした。現在の西尾市一色町で蒲鉾などの練り物製造をしていた文吉は、乾燥えびの代わりに生えびを使い、そのすり身をでん粉と混ぜ合わせて焼くことによって、えびの旨みを十二分に引き出したえびせんべいを考案しました。その後、伊勢からやってきた「ひげ貞」が、大量の生えびを一度に処理する技術を開発したことで、えびせんべいを安価で大量に生産できるようになりました。以来、三河湾沿岸や知多半島周辺でえびせんべいが盛んに作られるようになりました。

 現在では、三河湾沿岸の西尾市(旧幡豆郡一色町、吉良町、幡豆町)、碧南市、知多半島及びその周辺地域に、全国の90%近くを占める100社前後のえびせんべい製造業者があります。出荷額も全国一であり、320〜330億円と推定されています。

2.えびせんべいの原料とえびせんべいの種類

 伝統的なえびせんべいは、えびとでん粉を原料として焼き上げたものです。以前は、三河湾で水揚げされたばかりのアカシャえびが利用されてきました。現在では、アカシャえびの水揚げ高の減少や価格高騰などの理由により、中国、台湾、東南アジアなどから輸入されたタカツメえびや紅すじえびなどの冷凍品も使用されています。手焼きの製品では、むき身の生えびを使いますが、高級品では丸えびのまま使用します。でん粉原料としては、膨張率もよく、無味無臭であるばれいしょでん粉がよく使用されますが、タピオカやかんしょのでん粉を用いた製品もあります。タコ、カニ、イカ、海苔、ワカメなどの水産物に加えて、シソ、アーモンド、梅、ゴマ、ゴボウ、カボチャ、唐辛子などを副原料として使用した製品も多く作られています。味付けも基本の塩味だけでなく、梅味、コンソメ味、カレー味、わさび味などがあります。さらに、焼いた後に油で揚げたものや調味料や油を塗布したもの、形も平板なものからロール状のもの、乾燥エビや海苔をのせたものなど、バリエーションも豊富です(写真1)。
 
 

3.えびせんべいの焼き方とその特徴

 えびせんべいの製造方法は、加熱する回数により「一度焼き」と「二度焼き」に大別されます。

 一度焼きは、糊化と膨化を同時に行う方法です。新鮮なえびをすり身にし、でん粉(主にばれいしょでん粉)や調味料、水を加えて良く練り上げます。この工程はえびせんべいの風味に最も影響を及ぼすため、長年の経験と勘がものをいいます。練り生地の水分は、加水量により44〜45%に調整されます。この練り生地を焼き板上に広げて150〜180℃で焼き上げますが、この過程で糊化と膨化が同時に行われ、「パリッ」と歯触りの良いえびせんべいができあがります。練り生地の水分が多いと焼き上げによる膨化率は高くなりますが、水分が多すぎると生地の流動性が上がります。生地の流動性が上がると、生地重量にバラツキが生じ、作業性も落ちます。でん粉粒の大きいでん粉程、同じ水分量であっても流動しやすくなるため、一度焼きの製品の場合はでん粉粒の小さい品種のばれいしょでん粉が向いています。

 二度焼きの製品は、糊化、乾燥、膨化の3工程を経て製造されます。えびのすり身、でん粉、副原料を水と良く練り上げます。練り生地を焼き板上で加熱して糊化させ、型抜きし、さまざまな形に成形します。それから水分を11〜12%にまで乾燥させた後、加熱して膨化させます。加熱には、電熱やガスを用いて焼き上げる方法と、油で揚げる方法があります。二度焼きの製品は、膨化率が高く、すだちが均一で、ソフトな食感を特徴としています。したがって、膨化率の高い、品質の良い製品を製造するためには、生地が十分に膨らむ製造条件が大切です。原料としては、ばれいしょやかんしょなどの地下系由来のでん粉の方が高い膨張率を示すため、トウモロコシや小麦などの穀類由来のでん粉よりも適していると言われています。地下系でん粉のように粘度の高いでん粉は、膨潤度が大きく、でん粉粒から内容物が流出しやすいために、均一に糊化します。この結果、ばれいしょやかんしょのでん粉を膨化させると、表面がガラス上の薄い膜になってよく膨化します。一方、穀類でん粉を原料にすると、組織が不均一になり、膨化の程度も小さくなります。これは穀類でん粉の膨潤度が小さく、糊化が不均一になるためと考えられています。二度焼きは、生地の乾燥条件が品質に大きく影響し、手間も掛かりますが、製品の色や形をさまざまに加工することができ、「サクサク」とした食感のある製品を作ることができます。

4.えびせんべいの生産システム

 昔ながらの伝統的な手焼き(写真2)と、自動化した機械焼き(写真3)があります。手焼きは手間ひまがかかりますが、特色のある高級品の製造に利用されます。機械焼きは安価で大量生産に向いたシステムです。
 
 
 
 

5.さいごに

 以上、えびせんべいの魅力の一端をご紹介しました。是非、食べ比べて、お気に入りのえびせんべいを見つけてみてください。

参考文献

一色町公式ウェブサイト(www.240kanko.com/issiki/ebisenbei/index.html), 平成24年1月29日アクセス.

「愛知県のえびせんべい特集」,菓子飴新聞,平成23年10月28日.

野村直孝,“愛知県におけるえびせんべい製造業地域の連関と産地発展”,地理学報告,109,17(2009).

伊藤雅子,“えびせんべい”,全国水産加工品総覧, 東京,光琳,p114(2005).

杉本勝之,“バレイショ澱粉の膨化とその応用に関する研究”,博士論文, 東京大学(1978).

撮影・取材協力:三河一色えびせんべい工業組合、イケダヤ製菓(株)、(有)丸源えびせんべい
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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