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でん粉専用品種「コナフブキ」の話1

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最終更新日:2010年3月6日

でん粉専用品種「コナフブキ」の話1
〜いつまで続く「男爵薯」「メークイン」〜

[2009年6月]

【でん粉のあれこれ】

Web ジャガイモ博物館 浅間 和夫

 ばれいしょの「男爵薯」は名古屋以東で、「メークイン」は西で好まれ、それぞれ知名度の高さは抜群です。驚くべきことに、「男爵薯」は19世紀後半北米で見いだされた後1908年にわが国に導入され、「メークイン」も19世紀の終わりにイギリスで世間に紹介された後1917年にわが国に輸入されたもので、100年前後もの間利用され続けてきました。野菜の中でこれだけ長期にわたって生き延び、衰えのきざしさえ見えない品種は珍しい存在と言えます。これらを越える品種が出現しないのは育種家の怠慢のようにも見えましょう。(図1)


図1 男爵薯(左)とメークイン(右)

 しかし、このように特定のばれいしょ品種が長期間利用され続けるという現象はわが国に限ったことではありません。例えば、西部へ西部へと開拓が進められていたアメリカで、植物の魔術師と言われたバーバンクが1914年に育成した「ラシット・バーバンク」が今も広く栽培されておりますし、オランダで学校の先生が育成してクラスの可愛い娘の名前をつけて1910年から売り出した「ビンチェ」は第一次世界大戦(1914〜1918年)ころから普及し、今もヨーロッパでフレンチフライなどに広く使われています。

 ばれいしょの特定品種が長く残るのは、人びとの嗜好が簡単には変わりにくいことが大きな原因と考えられます。また、ばれいしょは種いもによって増殖する作物ですが、増殖率が低いため、ニーズの変化に対し、種いもの増殖・供給という面できめ細かい対応が難しいことも影響しているものと思います。

 生食用のばれいしょではこのように品種交代が難しい面がありますが、でん粉やチップス原料用品種では、従来のものよりでん粉がたくさん含まれるものや、良質のチップスを製造できるもの、あるいは農家の栽培しやすいものが出現すれば比較的容易に入れ替わります。それでも種いもの増殖に年数がかかるので、優良品種が従来品種に置き換わるまでには新品種誕生から早くて10年が必要です。ばれいしょ同様栄養繁殖で増える、りんご、ぶどう、バナナなどでも品種の交代に年数がかかっております。

 このような話を書きますと、ばれいしょ産地として知られる北海道で作付面積が最も大きい品種は「男爵薯」と思われがちですが、トップはでん粉専用品種の「コナフブキ」なのです。(表1)


表1 北海道の主要ばれいしょ品種作付面積
(平成19年,ha)
注)北海道農政部資料より作成。
用途:生=生食、加=加工、澱=でん粉、兼=兼用

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